ODA評価 年次報告書202128大臣官房ODA評価室長西野恭子ODA評価に携わっていると、評価の2つの目的をどう達成するかということを日々考えさせられます。すなわち、ODAの管理改善と国民への説明責任の実現ですが、この両立は「言うは易く行うは難し」、簡単ではありません。外務省ODA評価室が実施する評価は第三者による外部評価ですが、評価結果を活用して管理改善するという面では、一般的にはその政策や事業の実施主体による内部評価に利があります。その内容に精通する当事者自身が、活用を念頭にどういう評価を実施するか決めることができ、情報へのアクセスも容易だからです。一方で、内部評価はお手盛り評価になるのではとの見方もあり、説明責任の観点からは、独立した第三者による評価のほうが信頼性が高いと見なされ、望ましいと考えられています。また、外部の有識者や評価専門家により質の高い評価を期待できるという点もメリットです。第三者による外部評価により、内部情報へのアクセスに制約がある中で、いかに評価に必要な情報を入手し、客観的に妥当性や有効性、プロセスを検証するか、またそれを踏まえて、政策・事業関係者がその後の管理改善に生かすことができる有用な提言や教訓を導くか。そのためにODA評価室では、第三者評価チームと政策・事業担当者の間の橋渡し役として、評価の円滑な実施に向けた調整を行っています。最近開催されたOECD-DACの開発評価ネットワークの会合でも、このテーマが取り上げられました。議題は「評価の独立性と活用のバランス:評価の『綱渡り』」で、関係者の悩みを端的に示しています。それぞれの評価部局の置かれた状況は異なり、こうすれば良いという単純な答えはありませんが、評価の先進国でも共通の課題を抱えていると知ると、少しほっとします。また、その場で複数の国から言及のあった、評価の過程での評価される側とのコミュニケーションの重要性、それが評価結果の活用につながるという点は、私たちも常に心がけていることで、今後も関係部局との対話を通じた評価への理解、活用の促進を図っていこうとの思いを新たにしました。編集後記
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