ODA評価 年次報告書2021
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ODA評価 年次報告書202116本案件において、登録難民の流入が比較的少ない南部地域の各県に、他地域と比較して難民登録者人口相応以上の機材・製品が配分されていることについて、公表された情報を参照するだけではその根拠となる考え方を理解することは容易ではない。本案件は、計画で想定した効果を達成していると評価され、ターゲット・グループの設定に問題は認められなかった。しかし、外務省により公表された情報を参照するだけでは、本案件のターゲット・グループが、ヨルダン側の問題設定に基づきヨルダン国全土に設定されたという経緯を直ちに理解することは困難であり、意思決定プロセスの適切性について、より丁寧な説明が必要だったのではないか。今後の案件説明においては、この改善が必要である。アウトカム・インパクトの明瞭化、アウトプットからアウトカムにつながる効率と効果にかかる理論的な説明、また、指標の設定と測定による「成果の明確化」は、プロジェクトの実施において有効である。よって、先方政府からの支援要請内容の確認段階からロジカル・フレームワークを簡素化した目標体系図を作成・共有することにより、インプット→アウトプット→アウトカム・インパクトの理論性を明確にした実施管理と、指標の設定と測定による成果管理を導入することは検討に値する。本案件の広報は、中東外交での枠組み、難民支援や人道支援を含む人間の安全保障に関する取組み、ヨルダンとの二国間関係の歴史など、全体像と関連付けたストーリー性のある、効果的かつ魅力的な広報展開が望まれる。我が国にとって非常に重要な中東地域のシリア危機、難民問題、人道支援などにおいて、国際的な責任を担う姿とプレゼンスを適切な形で積極的に内外にアピールすることは、国民の理解を深める上で重要。実施機関の既存のモニタリング・システム上に、本件により供与された機材・製品の運用状況を把握できる方便を工夫することが求められる。例えば、実施機関は定期的に会計報告や事業報告を行う義務を負っているが、その一環で資産管理を行っていることが想定され、機材・製品の所有・運用状況を把握していると考えられ、これら既存の機材・製品管理を利用して、本案件により供与された機材・製品の運用状況をモニタリングする体制を整えることは、今後、同様の案件実施に際して有効であろう。また、在ヨルダン日本国大使館は、現地視察を通じた利用状況のモニタリングを行う予定とのことであり(本調査時、コロナウイルス蔓延の影響により中止されていた)、その実施は有意義である。廃棄物分野の支援にかかる機材引渡し式機材引渡し式における鍵の供与(1) 丁寧な案件説明の必要性(2) 目標体系図の導入による成果管理(3) 効果的な広報の実施(4) 機材・製品の運用と維持管理にかかるモニタリングと効果測定評価結果に基づく提言

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