ODA評価 年次報告書2021
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ODA評価 年次報告書202110*(注) レーティング: 国別開発協力方針は、日本側及びブラジル側の関係者と適切な協議を行った上で策定されており、事業展開計画も毎年更新されている。実施プロセスにおいても、実施体制の整備、ニーズの把握、対ブラジル支援重点分野に基づく個別案件の実施、モニタリング、広報が適切に行われてきている。(評価結果:高い B)日本とブラジルは2009年以降、継続して要人の往来を実現している。また、日本は従来、中南米地域を世界経済における生産・輸出拠点、資源の一大供給地及び有望な市場として重視し、経済関係の強化に取り組んできており、2014年からは対中南米政策の3つの指導理念(共に発展(経済関係強化)、共に主導(国際社会での連携)及び共に啓発(人的交流、文化・スポーツ交流などの促進))、2019年からは中南米の3つの「連結性強化(経済、価値、知恵)」という方針に即して、関係強化を進めている。さらに、日本とブラジルは、環境・気候変動問題、軍縮・不拡散、国連安保理改革、北朝鮮問題及び南シナ海・東シナ海問題といった多くの国際的共通課題について連携、協力してきている。このような観点から、対ブラジルODAは外交的な重要性を有している。日本とブラジルには継続した活発な交流実績があり、日本の支援が両国の友好関係促進に寄与した事例も多数見られる。また、ブラジルは、国連安保理改革、貿易、環境、軍縮・不拡散などの分野を始めとして、国際社会での活躍が顕著である。かかる中、日本はブラジルとの協力関係構築に努めてきたが、特に国連安保理改革において、両国は常任理事国候補として共通の立場を有しており、改革の実現に向け緊密な協力関係を構築することが必要である。さらに、経済関係強化の指標の一つとして進出日系企業拠点数を見ると増加傾向にあり、ODAが日本企業進出の一助となったとも考えられる。国別開発協力方針に設定されている開発重点分野は、日本の能力の高さ及び専門性等を生かしつつ、これまでの協力実績を生かせる分野での課題設定となっている。政策策定においては、ブラジル側の政策に対し、長期的、戦略的、かつ地球規模的視点により、協力の妥当性を判断することが必要である。加えて、そのような政策策定を行っている点を日本国民に見えやすくする点も重要である。同時に、高所得国に見合った円借款の実施、科学技術協力、デジタル社会のニーズに応えていく職業訓練、日系社会と連携した協力、インバウンド・地方創生を意識した日ブラジル双方へ裨益する取組をブラジルコミュニティと協働していくなど、これまでの協力をさらに高度戦略化し展開していくことが望ましい。ブラジルは、自国が地域における地政学的な役割や自国よりも開発の遅れた国に対して協力を行う能力を有しており、その役割を果たすことで先進国のドナーの中で独特の役割を担うとともに対等なパートナーシップを強化できると考えている。今後、日本は対ブラジル支援の軸に三角協力を据え、ブラジルが被援助国から中南米地域の援助国へと移行するためのドナー化支援を通じたパートナーシップの強化をも目指す、新しい協力の形を模索・形成していくことが望ましい。日本のODAの重点分野として三角協力の枠組みをさらに効果的に活用するため、まずはプログラム全体の方針を策定し、個別のプロジェクトに落とし込む仕組み作りを検討する。また、受益国も含めた三か国間での定期的かつ継続的なモニタリング・評価体制を確立することが望ましい。既存の日ブラジル間の政府・民間での対話・連携枠組みに積極的かつ横断的に関与し、日本にはないブラジルの新しい技術をブラジルのニーズに活用していくことが望ましい。それによって、人材育成、生産現場の効率化、インフラ構築・改善、格差解消などが促され、SDGs分野における社会課題解決・ビジネス展開にも大きく寄与することが期待できる。ブラジル都市部の様子 (写真提供/JICA)(3) プロセスの適切性(2) 外交的な波及効果(1) 開発協力の戦略性の強化● 外交の視点からの評価(1) 外交的な重要性極めて高い A/高い B/一部課題がある C/低い D(2) 三角協力を軸としたブラジルのドナー化支援を 通したパートナーシップの強化(3)三角協力における関係国間の対話の強化(4) 民間連携を活用した社会課題解決の促進評価結果に基づく提言

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