広報・資料 ODAメールマガジン

ODAメールマガジン/2014年12月25日発行 第291号

ODAメールマガジン第291号は,マダガスカル共和国からの「「将来有望な国」から「現在成長を続ける国」へ」「日本の昔からの知恵と経験が活きる農業・農村開発」と,「第12回ODA評価ワークショップの開催」をお届けします。

マダガスカル共和国

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「「将来有望な国」から「現在成長を続ける国」へ」原稿執筆:在マダガスカル日本国大使館 山田 重周 一等書記官

マダガスカルは,アフリカ大陸の南東約500キロメートルに位置する島国です。人口は2,200万人程度。面積は約58万平方キロメートルで日本の1.6倍程度(フランス本土より少し広い)。海岸線の長さは約5,000キロメートルです。

マダガスカルは,ゴンドワナ大陸分裂の過程で,約6,500万年前(白亜紀後期)にアフリカ大陸から分裂して誕生しました。他の地域と隔絶されたことにより,マダガスカルでは,以降,多くの固有種を誇る独自の自然史が展開されることとなります。また,マダガスカル島の主要部は,古生代以前の古い地層から形成されているため,昔から稀少な鉱物が産することでも知られています。

(写真) (写真)
首都市内の様子

このように,マダガスカルは希少動植物等の観光資源を擁している他,農業や水産業の将来性も高く,鉱物・石油資源や水産資源に恵まれています。また,アジアと東アフリカ間及び喜望峰回りの船舶にとっての主要な航路上にある上,国内市場は人口2千万以上の規模となり,東南部アフリカ及びインド洋の地域経済において重要な役割を果たし得る潜在能力を有しています。

しかし,現在,マダガスカルでは,貧困の悪化が問題となっています。どうしてこのような状況が生じているのでしょうか。

マダガスカルの経済的な潜在能力の高さは,1960年の独立前後から既に注目されていました。但し,若干の皮肉を含みつつ。

マダガスカル独立前後に宗主国であるフランス大統領であったシャルル・ド・ゴール将軍が,「マダガスカルは将来有望な国であるが,「将来有望な国」に留まり続けるであろう」と述べたとの逸話があります。ド・ゴール将軍の発言の真意は不明ですが,残念ながら,事態は同発言のとおりになってしまっているのかもしれません。

マダガスカルの潜在能力がなかなか開花しない理由の一つとして,独立以降,10~15年程度の周期で生じている政治危機に起因する「政治的不安定」をあげることができます。最近では,2009年に政治危機が生じ,憲法手続きに則らない形で暫定政府が発足しました。

マダガスカル経済は,2003年以降2008年までの間,主に繊維業,観光業,鉱業等が経済成長の牽引役となり,約 6%の成長率を記録しました。しかし,2009年政変により暫定政府が発足したことに伴い,国家予算の半分近くを占めていた主要ドナーからの援助は凍結されてしまいます。その結果,経済は停滞し,経済成長率は,2009 年に-0.4%を記録して以降,+2%前後で低迷しています。2013年の世界銀行の報告によれば,国民の92%以上が一日2ドル以下で生活しており,貧困状況は悪化しています。

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首都市内の貧困状況(ゴミ集積場でゴミを拾う人)

2013年末,マダガスカルは日本を始めとする国際社会の支援を受け,民主的に大統領選挙・国民議会選挙を実施しました。2014年1月には,この選挙で選出されたヘリー・ラジャオナリマンピアニナ大統領が就任したことで,政治危機を脱出しました。新政権にとり,政治危機の間に停滞してしまった経済復興が最大の課題となっています。

政治危機の間は,日本もマダガスカルに対する新規案件の実施を停止していました。しかし,2014年4月にようやく,マダガスカルの経済成長停滞の大きな理由となってきた政治的不安定を解消すべく,民主的に選出された新政権を支えるために,日本は他ドナーに先駆けて経済協力の再開を表明しました。

経済協力の再開に伴い,日本政府は,マダガスカル政府と対話しながら対マダガスカル国別援助方針の策定をしていくこととしています。この中,マダガスカル政府が特に重要視している課題として,(1)農業・農村開発,(2)経済インフラ開発,(3)基礎生活分野の向上(保健・教育),(4)ガバナンスの改善の4分野が挙げられ,日本は各分野における協力の可能性を検討しています。

具体的には,(1)の農業・農村開発分野では,マダガスカルの主食であるコメ生産を中心に,同じくコメを主食とする日本の知見・経験を活かすことを考えています。農業インフラの整備・生産性向上・流通システム改善等を通じて,貧困層の経済自立及び食糧安全保障確立のための支援を検討中です。

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日本人専門家による技術移転

(2)の経済インフラ開発分野では,経済の安定的成長を支えると同時に,現在及び将来においてマダガスカルで事業を展開する日本企業の活動に資するよう,日本の技術力を活用しつつ,港湾等の経済インフラの開発を支援していくことを検討しています。

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日本の無償資金協力によって敷設された首都市内バイパス道路

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道幅の狭い道路(首都市内)

(3)の基礎生活の向上分野では,保健・教育分野における人材育成・インフラ整備を実施することで,マダガスカル国民の生活水準の向上に貢献できるものと考えています。

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日本の無償資金協力によって建設された母子保健センター

上記(1)~(3)は,2009年政変以前にも,日本の対マダガスカル経済協力において重要分野として掲げられており日本が伝統的に得意とする分野です。他方で2014年1月に就任した大統領は,経済復興のためには「グッドガバナンス及び法治国家の確立」が最重要事項であると表明していることから,今後は,経済発展のための土台構築に向けた支援の重要性が高まっています。

「ガバナンス」はその指示対象が広い用語ですが,その中でも,マダガスカルで課題とされている国家歳入増加を実現するための税徴収システム改善などの財政分野をはじめ,司法分野,汚職対策分野でのガバナンス改善といった課題に対し,日本の知見・技術が活用できると考えています。

こうした課題に対し日本が支援することによって,マダガスカルが政治的安定を確立しつつその潜在能力を開花させ,「将来有望な国」から「現在成長を続ける国」になることで,マダガスカル国民の生活向上が達成されるとともに,日本の重要なビジネスパートナーとして立ち現れてくることになります。

日本政府は,このようなウイン・ウイン関係の構築を目指し,今後も,同国において,日本らしいきめ細やかな支援を実施していきます。



「日本の昔からの知恵と経験が活きる農業・農村開発」原稿執筆:JICAマダガスカル事務所 首藤 めぐみ 企画調査員

マダガスカルでのODA事業の筆頭にあげられるのが,稲作を中心とした農業・農村開発です。当国は位置的にアフリカに分類されますが,日本と同様にコメを主食とし,その国民の多くは,見た目にも性格的にも,実にアジア的です。そのためか,当地では日本がかつて利用してきた知恵があちこちに取り入れられ,それが大きな成果を上げています。

改良稲作技術の開発・普及を目指す技術協力プロジェクト「中央高地コメ生産性向上プロジェクト(PAPRIZ)」では,日本で培われた様々な稲作技術を紹介しています。例えば,収量増加に向けて丈夫な苗にするため,水苗代と畑苗代を併せた日本生まれの「折衷苗代」(*1)の技術が導入されています。実践した農家の殆どが,その収量を2倍以上も増加させるほどの成果を出しており,こうした技術はこの国で着実に広まりつつあります。最近では,田植えが近づくころに水田地帯を通りすぎると,この短冊型の緑のじゅうたんのような苗代をあちこちで見かけるようになってきました。ちなみに,田植えにかなり小さな若苗を利用することも,日本の水田のように規則正しく一定の間隔を空けて植える手法も,当地の在来技術にはありませんでした。農民たちには,収量が上がるのに播く種子の量が大幅に減ったと,大好評です。

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プロジェクトで作った苗代(PAPRIZ)
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ラインマーカーによる正条植えを習う女性の農民たち(PAPRIZ)

また,稲作現場で利用される農業器具にも,除草機,脱穀機,唐箕(とうみ)(*2)など,モーター付きの農業機械が導入される以前の日本で利用されていたものとほぼ同じ型のものが導入されています。この手動式の素朴な農機でも,農作業の効率化には大きく役立つため,同プロジェクトでは,あちこちの農村でデモンストレーションを行ったり,農機を製造する職人に製造方法を伝授する研修を行ったりして,その普及に取り組んでいます。

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水田用除草機のデモンストレーション(PAPRIZ)
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農民対象の唐箕(とうみ)のデモンストレーション(PAPRIZ)
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足踏み脱穀機のデモンストレーション(PAPRIZ)

その他にも,過去に日本で実施した研修に対するフォローアップ協力を利用して行っている「農村生活改善プロジェクト」は,第二次世界大戦後,貧困に喘いでいた日本の農村部で展開された生活の質の向上のための取り組み「生活改善運動」を,現地で再現しようとする試みです。日本の生活改良普及員にあたる現地の普及員たちが,農民たちに,この生活改善アプローチを紹介していきます。今では世界有数の経済大国となった日本の経験に基づくアプローチということが農民の関心を引くようで,発音が難しいにもかかわらず,普及員たちは,「Seikatsu Kaizen」という日本語を敢えてそのまま使っています。日本独特のこの精神論も,農民たちに意外とすんなり受け入れられ,生活水準向上に向けた彼らの意識改革・行動変容が確認されています。農業生産だけでなく,保健衛生,栄養,教育,給水,住居,被服,環境保全,収入創出活動に治安対策まで,ありとあらゆるセクターの活動に及び,農村にちょっとした革命を起こしているところです。

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村の衛生向上のための公衆トイレ建設作業(農村生活改善)

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子供たちの服を作ろうと洋裁を習う女性たち(農村生活改善)

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村ごとの生活改善活動の1コマ(農村生活改善)

このプロジェクトの中で,特に,戦後の日本の家庭でも利用されていた「改良かまど」がブームとなっています。当地では,森林伐採,焼畑,森林火災が原因による森林の消滅が進んだ結果,調理用の燃料となる薪の調達が困難な状況にあります。そのため必要な薪の量が3分の1に減少するという経済的・環境的な効果のあるこの改良かまどが,今,注目を集めており,他の国際機関からも問い合わせが舞い込むほどです。煙の量も減るため健康への害も少なく,さらには,材料は農家の庭先にある土や藁などで,誰でも簡単に作れることもあり,たくさんの家庭で多く利用されるようになってきています。広く普及するだけでなく,農民のアイデアで,かまどの質や型もどんどん進化しています。このかまど以外にも,日本が発明したマイクロファイナンスの原型とも言える頼母子講(*3)を導入しているコミュニティーもあり,中にはこのシステムを利用して,家を建てた農民もいます。

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改良かまどの作り方講習(農村生活改善)

このように,マダガスカルの農業・農村開発の協力現場に訪れると,昔の日本の農村風景を彷彿させ,非常に懐かしい気持ちに駆られます。日本生まれのこうした素朴な技術の移転は,単なる農業・農村開発に寄与するだけでなく,農民の日本への関心と親近感を高めることで,マダガスカルの農民と日本を繋ぐ外交的な架け橋としても貢献しています。

(*1) 水苗代と畑苗代とを組み合わせたもの。苗床を水に浸したり干したりして水量を変える方式で,丈夫な苗ができ,収穫増が見込める。
(*2) 脱穀した穀物に風を送り,その風によって,籾殻や藁くずを選別する農具。
(*3) 別名を無尽とも言い,資金の融通を目的とする民間互助組織。定められた期日に構成員が掛け金を出し合い,くじや入札などで決定した構成員内の当選者に一定の金額を給付するもの。全構成員にこの給付の機会が行き渡ったときに解散する。その起源は,鎌倉時代に遡り,江戸時代に流行した。


「第12回ODA評価ワークショップの開催」原稿執筆:大臣官房ODA評価室

12月2日(火曜日)及び3日(水曜日),外務省はマレーシア首相府経済企画院(Economic Planning Unit)との共催により,マレーシアのクアラルンプールにおいて,アジア大洋州地域の17か国から参加を得て,第12回ODA評価ワークショップを開催しました。

このワークショップは,より効果的な開発政策の策定と実施に資する各国の評価能力の向上を目的としています。相互学習とネットワーキングの場として,参加国からは自国の評価制度や評価事例の共有があり,また,開発パートナー及び評価専門家からは評価のトレンドや理論的背景の紹介がありました。今回のワークショップは,2001年に第1回会合を開催して以来,12回目の開催となります。

日本からは,豊田外務省国際協力局審議官を代表として,外務省,在マレーシア日本国大使館,JICA関係者が参加しました。冒頭,豊田審議官から開会の挨拶があり,続いて村岡JICA評価部長から評価機能の強化に向けた協力の事例,評価手法の改善の動きを紹介するとともに,廣野良吉成蹊大学名誉教授(アジア大洋州評価協会会長)が開発政策と評価機能の連携に関する歴史的背景と課題についてプレゼンテーションを行いました。また,米(USAID),仏,国連開発計画(UNDP)及びアジア大洋州評価協会事務局長ほかから,各機関による評価の先進事例などが紹介されました。

会議では,より効果的な開発政策及び事業形成のためのツールとして,また国内の説明責任の明確化の手段として,評価機能の整備に対する国内各方面からの期待が高まっていることが伺える一方で,方法論や体制整備,結果の活用などについては試行錯誤が続いている現状が報告され,活発な議論が行われました。

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New!ODAホームページ新着情報
「ODA出前講座」講師を派遣いたします!
任期付外務省職員の臨時募集(緊急・人道支援分野)(12月31日締切)
非常勤職員(経済協力専門員(草の根・人間の安全保障無償資金協力))の募集(1月9日締切)
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「国際問題」(2014年12月号)焦点「ODAの60年を振り返る」 他のサイトへ
ラオスの不発弾除去に関する日米協力の実施(報道発表)
モンゴルに対する無償資金協力(2件)に関する交換公文の署名
フィリピンにおける台風22号の被害に対する緊急援助物資の供与
日・インドネシアODA不正腐敗防止協議会の開催(報道発表)
モルディブに対する我が国の中小企業の製品を活用したノン・プロジェクト無償資金協力に関する書簡の交換
モルディブにおける水生産施設の火災による水供給不安定化に関する専門家の派遣
グルジアに対する我が国の中小企業製品を活用したノン・プロジェクト無償資金協力に関する書簡の交換
カーボヴェルデにおける火山噴火被害に対する緊急援助物資供与
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ニジェールに対する無償資金協力(食糧援助)に関する書簡の交換
ニジェールに対する無償資金協力「コミュニティ及び州における治安維持能力強化計画」に関する書簡の交換
ザンビア共和国における大統領補欠選挙に対する緊急無償資金協力
ケニア,ナイジェリア及びルワンダに対する無償資金協力「村落環境整備計画」に関する書簡の交換
ソロモン諸島に対する一般プロジェクト無償資金協力「ククム幹線道路改善計画」(詳細設計)に関する交換公文の署名
国連気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20),京都議定書第10回締約国会合(CMP10)
JCM署名国会合(ハイレベル・ラウンドテーブル)の実施及び共同声明の発出(報道発表)
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