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ODAメールマガジンバックナンバー


□●□ ODAメールマガジン □●□ 2005年1月5日発行 第58号
 あけましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願いします。さて、今年最初のODAメルマガは、平成16年ODA民間モニター・カンボジア班から「ODAを実施する人間同士の信頼」、フィリピンから「フィリピンにおける「麻疹抑制計画」について」と、メキシコから「メキシコ大気汚染対策の植林事業」をお届けします。

 ODAメールマガジンは、ODA政策や様々な情報をタイムリーにお届けします。また、外務省ホームページODAコーナーでは、新着情報を次々と更新しておりますので、是非ご覧下さい。

 なお、このODAメールマガジンでは、ODAの現場で働いている人々や実際にODAを視察した民間モニターの方々の生の声をお伝えしておりますので、本メルマガに掲載されている意見は執筆者個人の意見であり、政府の立場を示すものではありません。


 ◆ODAホームページ
  http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index.html

 また、このODAメールマガジンの内容について改善していきたいと考えておりますのでご意見・ご要望がありましたら、こちらからどうぞ。

 ◆ご意見・ご要望 Eメール:ご意見メール


 ○● トピックス ●○

 ○ODAを実施する人間同士の信頼
  (原稿執筆:平成16年度ODA民間モニター・カンボジア班
   佐藤 健実さん)
 ○フィリピンにおける「麻疹抑制計画」について
  (原稿執筆:在フィリピン日本大使館 佐々木孝治書記官
   国際協力機構(JICA)フィリピン事務所 瀧澤郁雄所員
   世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局 佐藤芳邦医官、平岡久和技官)
 ○メキシコ大気汚染対策の植林事業
  (原稿執筆:国際協力銀行 メキシコシティー駐在員
   藤井 亮一さん)
 ○[New!!]ODAホームページ新着情報




 ◇◆ ODAを実施する人間同士の信頼  
(原稿執筆:平成16年ODA民間モニター・カンボジア班
 佐藤 健実さん) ◆◇ 


 最初に、今回の視察には様々な制約があったことを述べておきたい。私たちは基本的に「見ることのできるもの」しか見ていない。そのような制約を前提に、今回見た案件を総合して点数を付けるとすると、「80点」である。

 ほぼすべての案件において、そこに携わる人たちはみな一生懸命取り組んでいたように思えたし、現地の人と協調しながら、援助を有効に実施しようという姿勢が見られた。その成果もはっきりと見える形で現れていたように思えた。基本的にはすばらしい活動ばかりだった。援助の必要性についても、カンボジアには最低限のものすらないので、やや誇張して言えば「何をやっても無駄はない」という状態であり、疑問はなかった。一方で、手放しで大満足とは言えない残り20点の部分が存在したこともまた正直な感想である。

 それは、明らかなマイナス点というよりは、「だいたいはいいと思うけど・・なんか引っかかるな」という感じの、微妙な違和感、と言ったほうが適切だ。その違和感は、案件の内容に対するもの、例えば、その援助は本当に必要なのか、機材はちゃんと使われているのか、一部の人の利益のためにやっているんじゃないか、などというものよりは、「援助という行為」そのものにもともと内在している困難や矛盾に原因があるように思われた。

 例えば、貧困削減や貧困層への医療の提供はいいが、その後どう自律的に回していくのか?近代技術を導入してその先に目指すものは「先進国の生活」なのか、それはよいことなのか?といった容易に答えが出ない疑問がどうしても膨らんだ。

 次に強く感じたのはODAの評価の難しさである。評価には様々な困難を感じたが、日本にいては見えにくいと感じたのは、社会が自律的に回るための仕組み、例えばカンボジア人同士が技術や知識を教えあえる仕組みなどである。これらは重要であるにも関わらず、現場にいなければ実感することが難しく、過小評価されがちかもしれない。

 繰り返しになるが今回の視察では日本のODA活動のごく一部しか見ていない。だが、それにも関わらずカンボジアでの日本のODA活動を概ね肯定したいという気持ちになった。それはODA関係者の方々の誠実な対応に負うところが大きい。われわれの質問に対しごまかすことなく誠心誠意答えてくれた。結局のところわれわれ国民がODAを隅々まで監視することは困難なのだから、ODAの是非の判断も、最終的にはODAを実施する人間が信頼できる人間なのかどうかにかかっている。情報開示や監査体制ももちろん重要だが、国民個人レベルが実感として「納得」するには、結局は人間同士の信頼が重要なのかもしれない。


 ◇◆ フィリピンにおける「麻疹抑制計画」について  
(原稿執筆:在フィリピン日本国大使館 佐々木孝治書記官、
 国際協力機構(JICA)フィリピン事務所 瀧澤郁雄所員、
 世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局 佐藤芳邦医官、平岡久和技官) ◆◇ 


 2004年2月にフィリピンで行った政府開発援助(ODA)「麻疹抑制計画」について、携わった各機関による共同執筆により、ご報告致します。

背景及び我が国支援開始まで(佐々木さん)

 世界保健機構(WHO)によると、麻疹(いわゆる「はしか」)は全世界における主な乳幼児死亡原因の一つであり、2002年には約61万人の死亡例が報告されているウイルス性の感染症です(厚生労働省研究班報告によると、我が国では約20万人(2000年)の患者が発生していると推計されています。)

 麻疹を予防するためにはワクチン接種が有効であり、当地フィリピンにおいても、これまでキャンペーン等によって、予防接種が行われてきました。1998年に行われた予防接種キャンペーンでは患者数の減少が見られましたが、その後患者数は再び増加し始めたことから(図1)、流行(アウトブレイク)を未然に防ぐため、フィリピン政府は2004年2月に再び予防接種キャンペーンを行うこととし、これに対し我が国は、WHOやユニセフといった国際機関との連携により、政府開発援助(ODA)による支援を行うこととしました。

 具体的には、我が国からは、麻疹ワクチンを2,500万ドース、ワクチン接種に必要な注射器を2,400万本等についての供与(平成14年度無償資金協力「麻疹抑制計画」。供与限度額;8億8,100万円)を行い、フィリピン全国の生後9ヶ月から8歳未満の子供たちへの予防接種に役立ててもらいました。

図1:フィリピンにおける麻疹患者数の推移

「麻疹抑制計画」実施に向けての準備(瀧澤さん)

 計画策定の段階でまず問題となったのが予防接種の対象となる人口の推計でした。当時得られた公式の人口推計は1995年の国勢調査を基に算出したものであり、2000年の国勢調査結果と照らし合わせても、既に実態と乖離(かいり)があることが危惧されました。

 また、麻疹ワクチンは冷蔵保存が必要であるため、大量のワクチンを、キャンペーンに間に合うように全国に行き渡らせるため、フィリピン保健省が保有する冷蔵倉庫の容量に合わせて、ワクチンを数回に分けて国内に納入する等、担当コンサルタントを通じたワクチンメーカー等との綿密な調整が必要でした。

 さらに、今回のキャンペーンはWHO西太平洋地域事務局(WPRO)の技術指導のもと、貧困地区や山間部地区の戸別訪問による予防接種活動(ドア・トゥー・ドア戦略)が行われることになり、キャンペーンの実施方法を、末端のヘルスワーカーに至るまで周知徹底するためには、各種ガイドラインやマニュアルを作成すると共に、事前のオリエンテーションを全国各地で開催する必要がありました。このため、技術協力の実施機関である国際協力機構(JICA)も、保健省のイニシアチブの下、WHOやユニセフ等の機関と協力しながらキャンペーンに向けた準備を進めて参りました。

供与機材引渡し式の様子 キャンペーン開始
(写真左上:供与機材引渡し式の様子 写真右上:キャンペーン開始)

キャンペーンの成果(平岡さん)

 今回のキャンペーンは前述のとおり、戸別訪問方式による予防接種活動(ドア・トゥー・ドア戦略)が大きな特徴でした。このように、接種率を向上させるための細かい配慮が十分になされ、全国平均92%という極めて高い予防接種率を達成することができました。

 その結果、フィリピンの感染症指定医療機関の一つである国立サン・ラザロ病院(在マニラ)のように、麻疹症例報告数の激減が各地で顕著に見られました(図2)。また、今回のキャンペーンの成果については、国際的な感染症対策機関の権威の一つである米国疾病管理予防センター(CDC)からも高く評価されました。

 WHO西太平洋地域事務局としては、このような当面の短期的な成果は評価するものの、中長期的に新たな流行の兆しが現れないか、今後も注意深く監視(サーベイランス)を続けていく必要があると考えていますが、フィリピン政府が目指している2008年の麻疹制圧に向けて、今回のキャンペーンが大きなはずみとなったものと考えております。

図2:サン・ラザロ病院における麻疹患者数の推移

地域への貢献(佐藤さん)

 麻疹制圧計画は、WHO西太平洋地域事務局(フィリピンも加盟国の一員)が開催した2003年地域委員会においても、同地域内における感染症対策の最重要課題の一つとして位置付けられました。麻疹制圧は、多くの解決すべき困難を抱えており、制圧達成には、関係各国の理解と協力を得て達成された「ポリオ根絶計画」(2000年に京都にて根絶宣言が行われました。)と同様の各国の強い相互連携がなくては達成できないものと考えております。

 人口規模や疾病構造からみて、フィリピンは今後の同地域における麻疹制圧達成の鍵を握る戦略拠点と捉えております。このような状況の下、今回の日本の、このキャンペーンに対する支援は、フィリピンのみならず、広く地域協力の観点からも重要であり、麻疹症例の減少という直接的な成果に加え、多方面への波及効果の大きい支援であったと近隣諸国や国際機関から高く評価されているところです。

 なお、WHO西太平洋地域事務局は、日本政府機関と緊密な連携を保ち、フィリピン以外の、具体的には、ベトナム、カンボジア、ラオス、パプアニューギニアといった国々に対しても既に麻疹制圧に向けた種々の協力を進めているところです。今後とも、日本の皆様からも多大な支援を得ながら、各国間との強い協力、連携の下、同地域内の麻疹制圧達成に向け努めていくつもりです。

セブの水上生活者の様子。戸別訪問により、貧困地域にもキャンペーンの成果が行き届いた。
(写真上:セブの水上生活者の様子。
戸別訪問により、貧困地域にもキャンペーンの成果が行き届いた。)


 ◇◆ メキシコ大気汚染対策の植林事業  
(原稿執筆:国際協力銀行 メキシコシティー駐在員
藤井 亮一さん ◆◇ 



 メキシコシティーと聞けば、世界でも名立たる大気汚染の都市と思う人は少なくないと思います。メキシコシティーと周辺の都市で構成されるメキシコ首都圏(面積7,410平方キロメートル、東京都の3.4倍)は人口約1,800万人の大都会であり、四方を山で囲まれた高度2,240メートルに位置する盆地であるため、汚染された大気が滞留しがちです。そのためか、20~30年前に比べ相当改善されたと言われる現在でも、私の自宅にある日本から持ってきた最新の空気清浄機は、乾季では常時センサーが反応しています。

 メキシコシティーには大気汚染の環境基準があり、例えばオゾン等が基準値を上回った場合など、自動車の運転規制(ナンバープレートの末番によって運転が禁止される日がある)等が発動される日があります。メキシコシティーの環境局の資料によれば、これらの規制警報・発動日数は、1991年の1年間には270日もあったようです。また、全浮遊粒子物質(TSP)の24時間平均濃度は、1988年当時の東京では、最高の日でも129マイクログラム/立方メートルであったのに対し、メキシコシティーでは1,494マイクログラム/立方メートルと東京の10倍以上を記録する日もありました。このような状況下、メキシコは、排ガス規制等から成る大気汚染対策計画を策定し、1992年、その一環としての植林事業に、我が国が約104億円の円借款を供与することによって協力することとなりました。

 2003年12月には、円借款支援によって、種子選定から苗木が約30センチメートルの高さになるまで育てられる育苗場、その苗木を植える植林地に通じる林道(171キロメートル)、乾季に頻発する山火事を監視するルックアウトタワー等が完成しました。日本企業が受注した育苗場では、生存率の高い種子の研究を行なう研究室や、植林地周辺に自生する松から種子を選定する装置、育苗用ポットに肥料を混合する装置、そのポットに自動的に種子を植え付ける装置、自動撒水機等があります。育苗場では、種子なら何でも植えればいいというわけではなく、いかに効率的に植林を行なうかという観点から、大きさ、重さ、密度等を考慮した生存率の高い種子の分析・選定が重視されています。

 育苗場で育てられた苗木は、育苗場から車で約1時間程度の場所にある、メキシコシティー南部の高度3,000メートル以上の山林地帯(植林対象面積約327平方キロメートル、東京23区の約半分)に植林されています。この山林の中には、山火事、売却目的の違法伐採や放牧目的の伐採等によって、禿げた場所が点在しています。これらの禿げた場所を中心に苗木を植えていますが、メキシコシティーの植林にとって最大の敵は山火事です。メキシコシティーでは大体10月から翌年4月頃まで乾季となり、山火事が発生しやすくなります。せっかく選ばれ、育てられた苗木が山火事によって被害を受けることもあります。実際、視察に行って見ると、やや黒く焦げた育苗場出身の苗木がある場所も見受けられます。私が見たその苗木(5歳程度、高さ約1メートルまで成長)はやや焦げたものの、消火が間に合い、生き残ることが出来たようです。整備された林道は苗木を運ぶためのものですが、それとは別に、燃えてしまう草木がない林道は、山火事の拡大を防ぐという重要な役割も担っています。また、幾つかの見晴らしのよい場所(高度約4,000メートル)には、山火事監視のためのルックアウトタワーが建設され、山火事発生の早期発見・消火作業に大きく貢献しています。現在、植林地に植えられた苗木は、大きなもので2メートルほどまで(6歳程度)成長しましたが、「彼らが全浮遊粒子物質(TSP)削減等の大気汚染対策として力を発揮してくれるのは、15歳を過ぎてから」と聞きます。円借款によって植林事業運営のためのインフラが整備されたので、これからは彼らを山火事から守っていくことも植林事業において重要な課題であると認識しています。現在、メキシコシティー当局が、周辺住民に苗木を守ってもらうインセンティブのための予算手当てを行ない、政府と住民が一体となって植林に取り組んでいることは心強い限りです。

 上述のとおり、メキシコシティーでは大気汚染対策計画における様々な施策によって、規制警報・発動日数は、1991年の270日から、2003年には2日に減少しています。また、20~30年前には隣のビルさえ見えない日もあったと言われる状況と比べると、特に大気汚染のひどい乾季でも2~3キロメートル先は見渡せる現在は、大幅に改善されたと言えますが、例えば全浮遊粒子物質(TSP)は、尚260マイクログラム/立方メートル程度を記録しており、1988年時点の東京より悪い数値が出ています。大気汚染の街というイメージから抜け出すためには、また、空気清浄機のセンサーが反応しないようにするためには、大きくなった苗木達の力が必要なのかもしれません。

植林地 育苗場
(写真左から:植林地、育苗場)


 ◇◆ [New!!] ODAホームページ新着情報 ◆◇ 

◆スマトラ島沖大地震及びインド洋津波被害によるタイに対する緊急援助について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_1.html

◆スマトラ沖の大地震およびインド洋津波被害によるタイでの津波災害に対する緊急援助について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_2.html

◆有償資金協力(平成16年度の交換公文締結日別)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou/siryo_5_23.html

◆無償資金協力(平成16年度の交換公文締結日別)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou/siryo_5_21.html

◆月刊広報誌「国際協力プラザ」2004年 12月号

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_3.html

◆モルディブにおける津波災害に対する緊急援助について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_4.html

◆スリランカにおける津波災害に対する緊急援助について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_5.html

◆インドネシアにおける地震・津波被害に対する緊急支援の実施について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_6.html

◆スリランカにおける集中豪雨災害に対する緊急援助について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_7.html

◆平成17年度外務省ODA予算(政府案)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/yosan/yosan05/index.html

◆無償資金協力(入札結果等の公表)(平成16年度)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_8.html

◆無償資金協力(入札結果等の公表)(平成15年度)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_9.html

◆外務大臣会見記録(ODA予算関連)(平成16年12月21日付)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/gaisho/g_0412.html#7-B

◆事務次官会見記録(ODA予算関連)(平成16年12月20日付)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/jikan/j_0412.html#3-C

◆国際協力50周年記念シンポジウム
 「日本の援助は現地からどのように見られているのか」議事録

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/annai/50/ tm_gijiroku.html

◆フィリピンにおける集中豪雨災害に対する緊急援助について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2005/0558_10.html





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