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□●□ ODAメールマガジン □●□ 2004年7月21日発行 第47号
 梅雨が去り、本格的な夏を迎えました。早速、浴衣を着て花火大会へ出掛けた方も多いことでしょう。さて、今回のメルマガは、ミャンマーから「ミャンマー、ハンセン病の制圧に対する取り組みと今後の課題」と、エルサルバドルから「シャーガス病対策プロジェクト」の2話をお届けします。

 ODAメールマガジンは、ODA政策や様々な情報をタイムリーにお届けします。また、外務省ホームページODAコーナーでは、新着情報を続々と更新しておりますので、是非ご覧下さい。

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 ○● トピックス ●○

 ○ミャンマー、ハンセン病の制圧に対する取り組みと今後の課題
  (原稿執筆: 在ミャンマー JICAミャンマーハンセン病対策・
         基礎保健サービス改善プロジェクト 石田 裕さん)
 ○シャーガス病対策プロジェクト~エルサルバドルからの発信~
  (原稿執筆: 在エルサルバドル シニア海外協力隊員
         大田 享子さん)
 ○[New!!]ODAホームページ新着情報




 ◇◆ ミャンマー、ハンセン病の制圧に対する取り組みと今後の課題  
(原稿執筆:在ミャンマー 石田 裕さん) 
 石田 裕 1)2)、田中英統 1)、多田祐子 1)2)、藤田実香 1)2) 
 1)JICAミャンマーハンセン病対策・基礎保健サービス改善プロジェクト 
 2)国立国際医療センター国際医療協力局 
 温井 音也(ぬくい おとや)さん) ◆◇ 


 JICAは、ミャンマー保健省保健局と協力して、同国のハンセン病対策(ハンセン病制圧と身体障害の予防対策)に関する技術協力を行っています。

新患(12才男子)を診察中の保健スタッフ、ヤンゴン管区レグータウンシップ、マヤンジャウン病院 新患(12才男子)を診察中の保健スタッフ、ヤンゴン管区レグータウンシップ、マヤンジャウン病院
1.ハンセン病とは
 ハンセン病は、らい菌によって引き起こされ、皮膚と末梢神経のみが侵される感染症です。過去においてはあまり有効な治療法が無く、かつ慢性に進行し身体障害を残すことがあるために、歴史的社会的に非常に恐れられてきた病気でした。しかし、強力な抗菌剤の出現により、ハンセン病は簡単に治癒可能な病気となり、特に過去10年間で最も劇的に対策が進んだ病気です。1980年代には、1000万人以上と言われていた世界の推定患者数は、最近は年間70万にまで減少しました。しかし、病気の性質として恒久的な末梢神経麻痺を残すことがあり、抗菌剤により感染源を絶つ方法のみでは、一生の間に手足や目に重い障害が生じることがあります。この障害の予防・悪化予防の対策は、感染源対策 が最優先されることによって大幅に遅れてきました。世界的なハンセン病の制圧がほぼ完全に達成されつつある現在、ようやく手足や目の障害の予防・悪化予防の対策に対する本格的な取り組みが始まりつつあるのが現状です。

2.ミャンマーでは
 ミャンマーは、歴史的にハンセン病が非常に多い国で、2000年の時点でハンセン病未制圧の6か国の中の一つでした。世界保健機関(WHO)は、世界のハンセン病対策として、1991年の総会で西暦2000年までに世界のすべての国において、ハンセン病の制圧を達成するという議案を採択しました。この方針に基づき、ミャンマー政府は1991年より抗菌剤によるハンセン病の制圧活動を精力的に行ってきました。ハンセン病は、ワクチン等で予防が出来ない病気であるために、制圧の戦略は、新患の早期発見と早期治療で感染源を絶つ方法が取られてきました。加えてミャンマーではポスターやパンフレットの配布、メディアによる啓発キャンペーンなどにより強力なハンセン病対策を進めてきました。その結果、ミャンマーは、2003年1月末でハンセン病の制圧宣を出すことができ、盛大なセレモニーが行われました。その後は、さらに地域ごとの対策を進め、わずか数箇所を残し大部分の地域ですでに制圧レベルを達成しました。
 当JICAプロジェクトは、このハンセン病制圧に全面的に協力した活動を行ってきました。その内容は、ハンセン病を診断し治療を行う第一線の保健スタッフの研修、(診断能力と上位機関への患者照会能力の向上)、政府ハンセン病対策チームに対する能力開発研修、地域での啓発活動、ポスター、パンフレット等の啓発教材の開発と配布、ハンセン病専門医療機関の機能向上とそこへの照会システムの強化、モニタリング・スーパービジョン強化等です。

最初の治療薬を飲んでいるところ(6か月間服用)
最初の治療薬を飲んでいるところ(6か月間服用)
3.ハンセン病による障害の予防・悪化予防対策
 ハンセン病が神経障害を残し治癒した場合、適切な予防手段を講じなければ、徐々に手足や目の障害が進行し、最終的には四肢の切断をしなければならなくなったり、失明したりすることがあります。これらは、ご本人やご家族にとって苦しみであるばかりか、ハンセン病が治癒しない病気であるという間違った認識や、社会的な差別・偏見を生み出して来ました。しかし、WHOのハンセン病制圧の戦略には、ハンセン病の後遺症としての手足や目の障害の予防及び悪化予防の対策は、含まれていません。ミャンマーでは、これまでに治療を終えた人は約46万人と言われていますが、最近我々が行った障害度調査の結果によると、すでに治療を終えた人々の約三分の一に手足か目に何らかの障害を認めています。このことは、少なくとも5~10万人が、障害の予防・悪化予防のケアサービスが必要でありながら放置されていることを意味しています。このため、ミャンマー政府保健局では、ハンセン病制圧を達成した後の次の段階の戦略として、2005年以降、新たにハンセン病による障害の予防・悪化予防のサービスを国家プログラムとして導入することが決定され、これまでパイロットプロジェクトとしてサービスの導入を進めてきた、当JICAプロジェクトの9地域と、他の団体の2地域の合計11地域でこれまで行われてきた活動を、今後は政府のプログラムとして継続し、そこから全国展開することとなりました。この分野での当プロジェクトの活動は、中部ミャンマーの48地域において、保健スタッフに対して研修を行い、ハンセン病による身体障害の予防・悪化予防方法、つまり障害を持って地域で生活している人々へのセルフケアーの指導方法を学んでもらいました。次に、モデルパッケージケアーとして、一連のサービスの開発を行い、2003年度からは、そのサービスを9地域に導入し始めました。

4.今後の課題
 ミャンマーにおいては、ハンセン病の新患登録数は一応の収束を見ましたが、過去の患者数が大変多かったために、手足や目に身体障害を抱えて地域で生活している人々がたくさんいます。これらの人々に対する障害の予防・悪化予防対策、身体的・社会経済的なリハビリテーションは、ハンセン病に対する社会的差別や偏見の人権問題と共に、今後国として取り組んでいかなければならない重要な問題であります。


 ◇◆ シャーガス病対策プロジェクト~エルサルバドルからの発信~  
(原稿執筆:エルサルバドル国派遣 シニア隊員 大田享子さん) ◆◇ 


 かつて、外務省発行『ラテンアメリカ研究』という雑誌に投稿したことがあります。その原稿には、エルサルバドルの有名な詩人アルフレッド・エスピノの詩を引用しました。「Un dia-!primero Dios!-」という感情たっぷりの一節から始まる詩は、中学生くらいの子供なら知っている、国民的人気の高い詩です。

いつの日か(神様がお望みくださるなら!)
貴女がほんの少し僕を好きになってくれればいい。
そうしたら、僕は二人で暮らすための小屋を建てよう。

それ以上何を望もうか?
君の愛と僕の家、一本の木と一匹の犬、
家の前に広がる空と丘、
花咲く小さなコーヒー園・・・

にわとこの香りが立ち込める中で、センソントレの鳥が歌い、
水溜りには小鳥達と蔓の陰が映し出される。

貧しい者が望むもの、
貧しい僕達が愛するもの、
こんなにも恋焦がれるのは、僕達が手にすることのないものだから・・・

それさえあれば、人生は僕のもの。
ただそれだけで、
僕の詩歌と、君のくちづけと、
それ以外のものは手に余ってしまう・・・

だって、一つの山と、一軒の小屋、明星より他に素晴らしいものは何もない。
「愛している」の君の一言と、
花香る小道があれば・・・

UNICEFと作成した教材を子供達に説明しているところ。(後者 野並隊員)
UNICEFと作成した教材を子供達に説明しているところ。(後者 野並隊員)
 この詩を読めば、山々の緑の間にちらりと見える橙色の瓦屋根をのせた家屋が思い浮かび、その家屋の周辺には自然が豊かに広がっている光景を想像することができます。「一軒の小屋と明星」と題されたこの詩を、時が経っても変わることのない、エルサルバドル人の心の風景として、先の原稿に引用しました。ちょうど2001年に起きた大地震後で、くすんだオレンジ色の瓦屋根が悉く壊れ、太陽光線にテカテカ光るアルミニウム屋根に取って変わってしまったことで、デリケートな詩人は驚いているのではないでしょうか。いや、現代エルサルバドル人の心の風景だって昔と変わっていないのだから、心の原景を目指し、国は必ず復興されるはずでしょう、というような趣旨のことを当時書いたと思います。

医昆虫学コースで顕微鏡を覗く参加者達。
医昆虫学コースで顕微鏡を覗く参加者達。
 この詩人はアウアチャパン県出身で、私が従事するシャーガス病対策プロジェクトの対象地と重なります。アルフレッドが幼少期を過ごした1900年初頭には、エルサルバドルで最初のシャーガス病患者が発見されています。以来、JICAプロジェクトがエルサルバドルで開始されるまで、この「声なき」恐ろしい病気は、この国でまともに対策されることがありませんでした。

 シャーガス病は、感染原因の8割以上が吸血性サシガメを介するもので、陽性サシガメの糞に含まれるシャーガス病原虫が、傷口や粘膜から人間の体内に入ることによって感染します。治療薬はあるものの特効薬ではなく、5~20年後に患者は心臓疾患で亡くなります。

プロジェクトのカウンターパートと田原(タバル)専門家(写真向かって左から1人目)、菱田祐子隊員(同2人目)と一緒にサシガメ(媒介虫)を探してエルサルバドルーホンジュラス国境地域のコミュニティを訪問(筆者:写真右から2人目)。
プロジェクトのカウンターパートと田原(タバル)専門家(写真向かって左から1人目)、菱田祐子隊員(同2人目)と一緒にサシガメ(媒介虫)を探してエルサルバドルーホンジュラス国境地域のコミュニティを訪問(筆者:写真右から2人目)。
 詩人の愛した土壁家屋には、サシガメが住み着いていて、夜になると人の血を吸い、貧しい人々の命を脅かしていると書いたら、彼は気絶してしまうでしょうか。

 プロジェクトでは、媒介虫基礎調査、家屋への殺虫剤散布、啓蒙教育などを主な活動としています。2010年までに中米地域からシャーガス病感染を中断させるという、中米地域イニシアティブの大目標に向かい、米州保健機構や保健省と三人四脚で進んでいます。三人四脚は、エルサルバドルだけで行われているのではありません。隣国グアテマラでの先行事例、ホンジュラスでも同プロジェクトが進行中で、地域プロジェクトとして取り組まれています。

「土壁に生息する媒介虫(サシガメ)」
「土壁に生息する媒介虫(サシガメ)」
 この三人四脚、内戦が落ち着いた二十世紀末以降、中米に飛び込んできた保健行政の地方分権化に伴い、NGOやら地方自治体、他国ドナー、国際機関、大学研究機関と、参加者がどんどん増えてきました。また保健行政の地方分権化は、プロジェクトの現場オペレーションにいる私達に、涙と笑いの様々な試練の機会を提供してくれています。トライ・アンド・エラーを繰り返しながらも、エラーをエラーに終わらせず、3機関、3か国間、プロジェクトに協力している組織のネットワーク間で知恵に変え、知恵を共有し、大目標に向かって共に歩んでいます。

 詩人が愛した美しいエルサルバドルの風景を、再び、“美しい”、と心安らかに言える日を迎えられるよう、私達の歩みを止めてはなりません。


 ◇◆ [New!!] ODAホームページ新着情報 ◆◇ 

◆国際緊急援助隊評価(概要・全文)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/report/enjyotai.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2004/0447_1.html

◆2004年度 NGO相談員リスト

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2004/0447_2.html

◆無償資金協力(平成16年度の交換公文締結日別)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou/siryo_5_21.html

◆政策評価法に基づく事前評価書(無償資金協力)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/2004/0447_3.html





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