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PCM手法

PCM手法は、援助する側がより効率的かつ効果的な開発援助事業(プロジェクト)を行うために開発された手法です。この手法では、途上国の人々と援助する国(例えば日本)の関係者が一堂に集まり、援助を必要とする人々の抱えている問題や課題を考えながら、事業を計画します。

本来、援助する側が開発した手法ですが、その特徴である参加型、一貫性、論理性は、人々が協力しあって共に考え、作り上げる運動や行動の基本として、市民主体の活動に広く応用できると認識され、日本の市民運動の中でも、また教育の中でも活用されようとしています。

この手法の日本の学校での利用には、以下の方法と利点があげられます。

  1. 問題の認識、対応方法の確認、現実的な行動範囲、アクションプランの作成、という一連の方法を生徒が身につけられる。これは、生徒が将来、一般社会人としても、将来の国際的な業務の中でも利用することができる。
  2. この手法が本来目的とした開発援助事業を例にしてこの手法を活用すると、手法の方法論だけでなく、途上国の現状理解、開発援助の課題、難しさを理解することができる。
  3. この手法は、問題の認識に留まらず、アクションプランの作成、そして実施中のモニタリング、実施後の評価まで含まれているので、生徒が活動への参加の意義と同時に自己の責任を認識できる。

次に、PCM手法の概要について説明します。

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PCM手法の構成と特徴

PCM手法は、参加型計画手法とモニタリング・評価手法(M&E)の2つの手法から構成されています。この2つの手法は、プロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM)と呼ばれる1枚の書式(図2)によって連結されます。

言い換えれば、プロジェクトの発掘・形成、実施、モニタリング、評価というプロジェクト・サイクルの一連の過程を一貫して(「一貫性」)管理運営できるということです。これが第一の特徴です。

PCMの第二の特徴は、「論理性」です。現状の問題点を【原因-結果】の因果関係から明確に分析し、問題を解決するための手段を【手段-目的】の関係から導きだすことができます。

PCM手法はドイツで開発されたプロジェクトの立案のためのZOPP手法*を参考にし、「参加型」を第三の特徴としています。援助機関、ターゲット・グループなど、プロジェクトの関係者がプロジェクトの計画立案時から協力しあうことによって、それぞれの知識と経験を最大限に活用し、お互いのコミュニケーションを促進することができます。関係者が文化的、社会的な障害を最小限に抑え、相手国やターゲット・グループのニーズをより正確に把握することにより、プロジェクトの効果と持続性を高めます。

図1 参加型計画手法(4つの分析ステップ)

参加型計画手法の図

図2 プロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM)

PDMの図

* Zielorientierte Projektplanungの略:ドイツ技術協力公社(GTZ)が開発した目的指向型プロジェクト立案手法のこと。

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参加型計画手法の主要ステップ

参加型計画手法は、関係者分析、問題分析(系図 図3)、目的分析、プロジェクトの選択の4つの分析ステップ(図1)とプロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM図2)および活動計画案から構成されています。

前半は現状の把握、問題や手段の分析が中心で、後半はプロジェクト・コンセプトの形成、詳細設計となります。

図3 問題系図

問題系図の図

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プロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM)

プロジェクトの概要をコンパクトにまとめたものがPDM(Project Design Matrix)です。

プロジェクトが行う活動、その結果である成果、めざす目標、さらに上位に位置する目標が一番左の列に記載されます。また、外的なリスクとして外部条件が一番右の列に、また、中央の二列には、成果と目標の達成度合いを客観的に測定するための指標と、そのデータを得る手段が書かれます。

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PCMワークショップ

参加型計画手法の特徴の一つである参加型では、担当者が一人でプロジェクトを計画するのではなく、関係者が集まって知恵を出し合い計画を練り上げていく過程を重視します。援助機関や受益者である村人、相手国政府の役人などが、プロジェクトの構想を具体的に検討するミーティングを開きます。この一連のミーティングのことをワークショップと呼びます。

PCMのミーティングがワークショップと呼ばれるのは、作業を伴うからです。ワークショップはモデレーターと呼ばれる専門の進行役によって進められます。参加者は自分の意見をカードに書き、カードをボードに貼って意見を視覚化し、参加者全員のチームアプローチで分析を進めて行きます。

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実際に行動を起こすための計画づくり

さて、PCM手法は関係者分析から始めますが、本ハンドブックにあるほかの手法を使い、すでに対象となる地域や関係する人々の状況や問題が分かってきているとします。現状が理解された段階は、PCM手法の関係者分析と問題分析にあたりますので、ここでは、次の目的分析から具体的に手法の使い方を説明します。

なお、PCM手法は系図を作成しながら検討していきますが、本項では系図を使わず、議論の内容を黒板に書き出すか、カードに書いて貼る簡便な応用方法について説明します。

1) 目的分析

問題や課題のある現状に対し、それらを解決された時、どのようなよりよい状態(めざす方向や目標にあたります)が具体的にイメージされるか、グループで話し合います。開発協力を例にすれば、近くの小川に橋を架ける、読み書きのできない人に字を教える、村に共同便所をつくるなど、様々な目標が出てきます。問題や課題から解決された後の望ましい、達成したい状態を目標として、できるだけ多くあげ、話し合いに参加した人々やグループが見える所に板書あるいはカードに書いて貼り出します。

次に、その目標に対し、どうやったらその目標がかなうか、方法や必要なものを考えます。実際には使えるものや方法は限られているのですが、ここでは、全く無理なものは別にして、できるだけ自由に、いろいろな方法をあげることが大切です。例えば表1のようになります。

表1

表1

2)プロジェクトの選択

次に、1)で出された様々な目標のうち、実際に計画し、実行するものを一つ選びます。そのため、まず、何のために、誰のために、計画を実施するのか、もう一度、グループで確認します。もともと、村の老人のためになる活動を考えていた、とか、村全体が仲良くなるために何かすることが重要であった、などです。そのためあまり関係のない目標があれば、外します。また、計画を実施するために使える資源や資金を明確にします。例えば、グループで貯めてある1万円が利用できる、労働を手伝ってくれる人が10人いるなどです。その予算内で実施できないものがあれば、その理由をつけて、議論から外します。表2を見てください。

1) で出された手段や方法のうち、実際に実施するのが難しいものには、その理由をつけておきます。例えば、村の共同便所を掘るのに、大きなシャベルカーなど村ではとても使えないので、このような手段は無理として、印をつけておきます。また、計画を実行するのにどれだけの時間がかかるか、どれだけの時間が与えられているか、なども検討し、期間内にできる内容を考えます。このほか、ある方法を取ると、かえって状況を悪くするものもあるので、注意します。例えば、便所をつくって、汚物をきちんと処理しなければ、悪臭や虫の発生源となり、その周りの環境をより悪くすることにもなります。

このように、この段階では、目標は意味があるか、それに至る方法は適当か、時間や資源は十分かを話し合い、目標はよくても手段が不適切なものや、方法は簡単でも目標にあまり意味がないものなどは外して、いくつかある目標から一つ選びます。ここでは橋を架けるが選ばれたとします。

表2

表2

3) PDMの作成

PDMの作成とは、計画の具体的な内容を詰めていくことです。計画に必要な以下の項目について、グループで話し合いながら決めていきます。

  1. プロジェクト名
    活動の目的が分かるような名前を付けます。

  2. 目的
    この場合、橋をつくる。グループの皆が協力して完成する物や内容のことです。

  3. 期間
    橋をつくるまで半年とします。
    いつから開始し、いつ終えるかハッキリさせます。

  4. 効果(上位目標)
    橋をつくるとどのようないいことが起こるか、そのいいことは多くの人に望まれていることで、グループ全員が賛成する内容とします。例えば、橋ができると、隣村に行くのに時間が半分で済む、などです。

  5. 成果
    どうやって橋をつくっていくか、大体の手順を決めます。
    • 測量する
    • 設計図をつくる
    • 材料を集める
    • 土台をつくる
    • 木を加工する
    • 横板を渡す、等

  6. 活動
    大まかな手順にそって、具体的に何をするか、いつまでにするか、誰がするか、話し合い決めます。ここで日程を考えます。
    例えば、「測量する」の具体的な作業は、川の水位を測る、川幅を測る、川の昔の記録を調べる、目印の杭を立てる、....

  7. 投入
    6.の活動を行う時に必要な物やお金、手伝ってくれる人を決めます。
    例 測量するのに必要な物、人:測量機器、ポール、測量技術者1人、手伝い3人、等

  8. 外部条件

今までグループで話し合いをもちながら、何か心配や不安の種は無かったでしょうか? グループ内でどんなに話し合ったり、考えたりしても、計画を行うに際し、予想がつかない事柄があるものです。このような事柄は、気がついたときに書き出しておき、計画が始まってからも、注意しておく必要があります。

例えば、川は10年に一度ぐらい大水で土手が崩れることがある、と村人がいっている、とても大きな荷物を積んだ荷馬車を通してよいか、等、橋をつくることとその利用を考えると、重要な、しかし、予測がつかない事柄があります。

以上が計画の主な内容です。7.の投入まで話し合った後、予定のお金や物では間に合わなくなる時(予算オーバー)があります。その場合は、また、1.に戻って、小さな規模の計画に変えたり、予算を増やす方法を検討して、それも活動に入れるなどします。

計画は実際に行いながら、よりよく改善していきますので、ここまで説明してきた内容について、どのような話し合いがあり、どのように結論が出されたのか、すべて記録しておき、改善の時に利用します。

(執筆:第2章第1節 PCM手法:岡田尚美 財団法人国際開発高等教育機構 事業部次長)

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