ODABOOK_vol1
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6「シェルナースを用いた持続可能な漁業に係る案件化調査」2017年4月〜2018年5月 「シェルナースを用いた持続可能な漁業に係る普及・実証事業」2018年度採択 海洋建設代表取締役社長片山 真基氏実際の現地調査では、地元の漁業組合や大学の協力を受けながら、JFシェルナースの調整と分析を続けました。その間は沿岸地域の暮らしを肌で感じることができました。この経験は大きな収穫だと思っています。また、JFシェル「JFシェルナース」引き上げ後の魚介類調査では、現地の大学と共同で実施。予想を超える種類を確認することができた。海洋建設の魚礁「JFシェルナース」。貝殻を材料に使用することで魚の棲処としての役割を担っている。地元漁師の理解・協力を得ながらの設置・調査が実施された。魚介類の最適な生息場となるだけでなく、廃棄処理に困っていた貝殻の再利用にもつながる海洋建設株式会社の貝殻リサイクル魚礁「JFシェルナース」は、日本各地の港湾・漁場において12,000基以上が活躍しています。その豊富な実績をもとに、メキシコでのODA事業に挑戦した同社の片山真基社長に経緯や概要についてうかがいました。岡山県 海洋建設株式会社漁業資源の減少に危機感をもつメキシコメキシコは、自動車産業や鉱業に次いで、水産業が盛んな国です。しかし、近年の乱獲や気候変動などにより、イワシやスズキ、ハタ、ブリ、タイなどの漁獲量が大幅に減少し、同国水産業の未来に強い危機感をもたらしています。また、剥き身後に発生するホタテなどの貝殻(廃棄物)が大量に堆積し、その処理も大きな社会問題となっています。この漁業経済の悪化と環境問題の深刻化というメキシコの2つの課題を知った当社は、貝殻を再利用するJFシェルナース(注1)ならばこれらを同時に解決できるのではないかと考え、JICAの中小企業海外展開支援事業(案件化調査)に応募しました。里海を育むことの大切さを伝える調査の対象地域となった南バハカリフォルニア州では、当初、貝殻を焼却処理する予定でした。そんな中、廃棄物である貝殻を使い、魚や微生物の“棲処”にするという当社の提案は、同州政府にとって全くの想像外だったようです。「魚を増やす」という発想がなかったのです。そのため、訝る現地の行政官や漁師の方々に対し、JFシェルナースの機能や効果だけでなく、「魚礁とは何か」、さらには持続可能性を大事にする「里海(注2)を育む」ことの大切さを説明していきました。複数人の通訳を介しながらで手間はかかりましたが、繰り返し説明していった結果、徐々に里海の意義を理解し、納得してもらえるようになりました。OKAYAMA02SATOUMIの大切さを伝えたい廃棄物の貝殻で魚の棲処をつくる

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