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人権・人道

人種差別撤廃条約第1回・第2回定期報告(仮訳)

IV.第4条

留保

  1. 我が国は、本条約を締結するに当たって、第4条(a)及び(b)に関して、次のような留保を付している。
     「日本国は、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約第4条の(a)及び(b)の規定の適用に当たり、同条に「世界人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮を払って」と規定してあることに留意し、日本国憲法の下における集会、結社及び表現の自由その他の権利の保障と抵触しない限度において、これらの規定に基づく義務を履行する。」

  2. これは、次の理由によるものである。
     我が国憲法は第21条第1項において、集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由(以下、これらを併せて「表現の自由」という。)を保障している。表現の自由は、個人の人格的尊厳そのものにかかわる人権であるとともに、国民の政治参加の不可欠の前提をなす権利であり、基本的人権の中でも重要な人権である。かかる表現の自由の重要性から、我が国憲法上、表現行為等の制約に当たっては過度に広範な制約は認められず、他人の基本的人権との相互調整を図る場合であっても、その制約の必要性、合理性が厳しく要求される。特に最も峻厳な制裁である罰則によって表現行為等を制約する場合には、この原則はより一層厳格に適用される。また、我が国憲法第31条は、罪刑法定主義の一内容として、刑罰法規の規定は、処罰される行為及び刑罰について、できるだけ具体的であり、かつ、その意味するところが明瞭でなければならないことを要請している。
     本条約第4条(a)及び(b)は、人種的優越又は憎悪に基づく思想の流布や人種差別の扇動等を処罰することを締約国に求めているが、我が国では、これらのうち、憲法と両立する範囲において、一定の行為を処罰することが可能であり、その限度において、同条の求める義務を履行している。しかし、同条の定める概念は、様々な場面における様々な態様の行為を含む非常に広いものが含まれる可能性があり、それらすべてにつき現行法制を越える刑罰法規をもって規制することは、上記のとおり、表現の自由その他憲法の規定する保障と抵触するおそれがある。そこで、我が国としては、世界人権宣言等の認める権利に留意し、憲法の保障と抵触しない限度において、本条約第4条に規定する義務を履行することとしたものである。

  3. 我が国においては、次に述べるような国内法の執行により差別による人権侵害を防止するとともに、粘り強く国民一般の人権意識を啓発することにより、差別行為を自主的に排除させ、又は、将来の再発を防止することに相応の効果を挙げているところである。政府としては、国民、社会の人権意識は本来、表現の自由によって保障されている自由な言論等を通じて高められていくべきものであって、現存する差別、偏見も、国民一人一人が自由や権利の濫用を禁じる憲法の規定(第12条)を踏まえて、社会内で自発的に是正していくことが最も望ましいとの立場であり、政府による啓発措置がかかる社会の自浄作用の促進につながることを望んでいる。

流布、扇動、暴力の処罰化

  1. 「人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布」に関して、我が国は、本条約を締結するに際し上述の留保を行っていることからも明らかなとおり、憲法で保障する基本的人権である集会、結社及び表現の自由等の重要性にかんがみ、人種的優越又は憎悪に基づく思想の流布にあたる人種差別的な表現類型を一般的に処罰の対象とはしていない。しかし、それが、特定の個人や団体の名誉や信用を害する内容を有すれば、刑法の名誉毀損罪(第230条)、侮辱罪(第231条)又は信用毀損・業務妨害罪(第233条)で処罰されるほか、特定個人に対する脅迫的内容を有すれば、刑法の脅迫罪(第222条)、暴力行為等処罰に関する法律の集団的脅迫罪(第1条)、常習的脅迫罪(第1条の3)等により処罰される。

  2. 「人種差別の扇動」については、上記で述べた各罪が成立する場合に、その教唆犯(刑法第61条)又は幇助犯(同法第62条)として処罰されるほか、公務員の平等取扱の原則違反(国家公務員法第27条、109条、地方公務員法第13条、60条)など差別的取扱いを禁じる法令に違反する行為を教唆し、幇助する行為についても、同様に処罰の対象とされている。

  3. 「いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団に対するすべての暴力行為」に関して、我が国には、特定集団に対する暴力行為のみ取り出して重罰化した法律は存しないものの、刑法は、多衆が集合して行った場合として騒乱罪(第106条)を規定するほか、強姦罪(第177条)、殺人罪(第199条)、傷害罪(第204条)、凶器準備集合罪(第208条の2)、強盗罪(第236条)等を規定し、暴力行為を処罰している。また、暴力行為等処罰に関する法律は、集団的暴行・脅迫・器物損壊等(第1条)及び常習的暴行・傷害・器物損壊等(第1条の3)の処罰を、爆発物取締罰則及び火炎びんの使用等の処罰に関する法律は、爆発物や火炎びんを使用する行為等の処罰を、それぞれ規定している。

  4. 「(これら暴力)行為の扇動」については、前段落で述べた罪が成立する場合に、その教唆犯(刑法第61条)又は幇助犯(同法第62条)として処罰されるほか、刑法第206条が、傷害の現場助勢罪を処罰している。

  5. 「人種主義に基づく活動に対する資金援助を含むいかなる援助の提供」に関しては、援助を受けた者が上記で述べた犯罪を犯した場合に、刑法第62条の幇助犯として処罰される。

  6. 本条項に関連して、1994年の春から夏にかけて、全国各地で、在日朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせや暴行等の事象が発生し、この中には、朝鮮学校に通う女子生徒らに対する、差別言辞・言動、駅構内トイレにおける差別落書、チマ・チョゴリ(朝鮮の民族衣装)を切るなどの暴行事件など人権擁護上、看過できないものも多く見受けられた。
     警察では、被害が予想される場所における警戒強化、登下校の時間帯における警戒強化、関係機関との連携及び学校側との協力などにより、この種の事案の未然防止及び早期検挙を図った。
     この関連の事案の検挙事例としては、例えば次のようなものがある。

    (a)電車内で朝鮮学校女子生徒のチマ(スカート)の腰付近を縦約13センチ、横約9センチにわたり切り取った成人被疑者1名を暴行罪及び器物毀棄罪の容疑で逮捕した。)

    (b)ゲームセンターで遊戯中の朝鮮学校男子生徒を手挙で殴打し、傷害を負わせた少年被疑者1名を傷害罪の容疑で検挙した。

     また、平成10年8月の北朝鮮によるミサイル発射後、同年末までに被害届により警察は朝鮮学校又はその生徒に対する嫌がらせ事案を6件認知した。この6件は、登校中の女子生徒が列車内でランドセル鞄を切られた事案(東京)、登校中の男子生徒が腹部を殴られた事案(東京)、登校中の女子生徒が髪の毛を引っ張られた事案(愛知)、下校中の女子生徒が駅構内でナイフで手を切られた事案(東京)、及び大阪、岐阜の朝鮮学校外壁に落書きされた事案であり、必要な調査を行っているところである。
     法務省の人権擁護機関においても、この種の事象に関する情報の収集に努めるとともに、人権侵犯の疑いのある事案については、関係者等から事情聴取を行うなど事実関係の調査を行い、こうした嫌がらせ等の事象の発生を防止するため、広く国民の間に在日朝鮮人を始めとする在日外国人の人権についての正しい認識の定着を図り、嫌がらせ等の事象の発生を根絶するよう強力な啓発活動を展開した。具体的には、差別防止を呼びかけるリーフレット等の配布や啓発ポスターの掲示、「外国人差別や嫌がらせ等の根絶」を訴える緊急街頭啓発、在日朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の事象についての相談の呼びかけ、講演会やシンポジウム等のテーマへ「在日外国人の人権問題」の追加、等の啓発活動を実施した。
     また、上記北朝鮮のミサイル発射後の在日朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等については、法務省人権擁護局ではその情報収集及び事実関係の調査に努めると共に、当該事象の発生を根絶するため、平成10年9月10日、人権擁護局から法務局・地方法務局に対して啓発活動の取り組みの強化をするよう依命通知を出して指示した。
     具体的な取り組みとしては、在日韓国・朝鮮人児童・生徒が多数利用する通学路、利用機関等において街頭啓発を行い、事件の防止を呼びかけるリーフレットやチラシ等を配布すると共に、ポスター掲示等を行い、嫌がらせ等の防止を呼びかけている。
     また、地域によっては、直接朝鮮人学校に出向き、児童・生徒が嫌がらせ等を受けたときは、直ちに法務省の人権擁護機関に相談するよう呼びかけを行っている。

情報分野における規制等

  1. 我が国においては放送法の規定により、放送事業者は、国内放送の放送の番組の編集に当たっては、公安及び善良な風俗を害しないこと、政治的に公平であること、報道は事実を曲げないですること等とされているほか、放送番組の編集の基準(番組基準)を定め、これに基づいて放送番組の編集をし、また、放送番組の適正を図るために放送番組審議機関を設置することとされている。これらの規定を通じて、各放送事業者は、放送番組が、人種差別の流布、扇動及び暴力を正当化し、もしくは助長することによって、公安及び善良な風俗を害すること等のないよう適切に放送を行うことが責務となっている。

  2. また、全国の日刊新聞社は日本新聞協会を設立し、その指導精神として「新聞倫理綱領」を定め、報道・評論の自由に対し自らの節制により制約を設けることにより、報道や評論に当たって高い倫理水準を確保するよう図っている。

  3. 近年普及が著しいインターネットについては、1996年2月、パソコン通信サービスを提供する事業者を会員とする電子ネットワーク協議会は、電子ネットワークを活用する上での倫理的観点からガイドラインである「電子ネットワーク運営における倫理綱領」及び「パソコン通信を利用する方へのルール&マナー集」を作成し、人種的憎悪に基づく誹謗・中傷等の倫理的な問題が生じないよう努めている。また、郵政省が1996年12月に取りまとめた研究会の報告書を受け、1997年5月、インターネットプロバイダー事業者を会員とするテレコムサービス協会が、「インターネット接続サービス等に係わる事業者の対応に関するガイドライン」を公表し、利用者が差別措置を含めた違法・有害情報の発信をしないよう利用契約で定め、違反には削除等の措置を執るなどの自主的な対応をしているところである。

扇動団体の活動の禁止

  1. 人種差別撤廃条約第4条(b)は、「人種差別を助長し及び扇動する団体及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動」の禁止、並びに「このような団体又は活動への参加」を犯罪として処罰することを求めている。
     我が国には、人種差別の助長及び扇動一般を構成要件として特定の団体及び活動を禁止し、及びそれらの団体への参加を処罰する規定は現行法上存しないが、人種差別を助長し及び扇動する団体が破壊活動防止法上の暴力主義的破壊活動を行った場合には、同法により、一定の要件の下に、当該団体の活動制限及び解散指定処分並びにそれらの処分に反する個人の行為を処罰することが可能である。人種差別を助長又は扇動する団体が、破壊活動防止法所定の要件に該当するものとして、処分がなされた事例はない。


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