7従来の障害のとらえ方は、障害は病気や外傷等から 生じる個人の問題であり、医療を必要とするものであるという、いわゆる「医学モデル」の考え方を反映したものでした。一方、障害者権利条約では、障害は主に社会によって作られた障害者の社会への統合の 問題であるという、いわゆる「社会モデル」の考え方が 随所に反映されています。これは、例えば、足に障害 をもつ人が建物を利用しづらい場合、足に障害がある この条約の目的は、「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」です。この条約では、障害者 条約の第2条(定義)では、障害者の人権と基本的 自由を確保するための「必要かつ適当な変更及び調整」であって、「均衡を失した又は過度の負担を課さない もの」を「合理的配慮」と定義しています。これは、 例えば車椅子用に段差に渡し板を敷いたり、窓口で 筆談や読み上げ等により理解を助けること等が当たり ます。そして、障害に基づく差別には「合理的配慮の条約の第9条(施設及びサービス等の利用の容易さ) では、締約国は、障害者が輸送機関、情報通信等の 施設・サービスを利用する機会を有することを確保 ことが原因ではなく、段差がある、エレベーターが ない、といった建物の状況に原因(社会的障壁)がある という考え方です。国連の議論においては、主に1980年代の様々な 取組を通じて障害に対する知識と理解が深まり、 障害者の医療や支援に対するニーズ(リハビリテーション等)と障害者が直面する社会的障壁の双方に 取り組む必要性が認識されるようになり、この条約も そうした認識に基づき作成されました。には「長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な 機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む」とされています。否定」が含まれます。また、第4条(一般的義務)では、締約国に障害者に対する差別となる既存の法律等を修正・撤廃するための適切な措置をとることを求めているほか、第5条(平等及び無差別)では、障害に基づくあらゆる差別を禁止することや、合理的配慮の提供が確保されるための適当な措置をとることを求めて います。この「合理的配慮の否定」を障害に基づく 差別に含めたことは、条約の特徴の一つとされています。対する報告を作成するに当たり、先の第4条の規定に十分な考慮を払うこととされています。これらの規定には、いわゆる“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)の 考え方を背景として、障害当事者の声を重視するというこの条約の特徴が表れています。するため、適当な措置をとることを定めています。 この措置には、施設・サービス等の利用の容易さに 対する妨げ・障壁を特定し、撤廃することが含まれ ます。条約における障害のとらえ方条約の目的平等・無差別と合理的配慮意思決定過程における障害当事者の関与条約の第4条(一般的義務)では、締約国は障害者に 関する問題についての意思決定過程において、障害 者と緊密に協議し、障害者を積極的に関与させるよう 定めています。また、第35条(締約国による報告) では、条約に基づき設置されている「障害者の権利に 関する委員会(以下、「障害者権利委員会」という。)」に施設及びサービス等の利用の容易さ条約の主な内容
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