【日本人の海外渡航と邦人保護】
97年の海外渡航者数は、前年比0.6%増の史上最高1680万人を記録した。また97年10月1日現在で海外に3か月以上滞在している長期滞在者は50万7749人、在留国から永住資格を得ている永住者は27万4819人に達し、海外在留邦人総数は前年比2.4%増の78万2568人に達し、過去最高となった。
海外渡航者の増大に伴い、邦人が海外で事件・事故に巻き込まれるケースが増大していることを踏まえ、外務省は、97年12月に渡航情報及び退避に関する情報を5段階の「海外危険情報」に統合した(98年12月中旬の時点では、危険度1「注意喚起」が52件、危険度2「観光旅行延期勧告」が37件、危険度3「渡航延期勧告」が21件、危険度4「家族等退避勧告」が4件、危険度5「退避勧告」が11件発出されている)。5月のインドネシア危機もあり、「海外危険情報」に対する国民の関心は高まりつつある。外務省は、海外の安全に関する情報の国民に対する提供に努めており、外務省インターネット・ホームページに「海外危険情報」の全文を掲載しているほか、外務省海外安全相談センターによるFAX・テレフォンサービスや「海外安全週間」の実施などを通じて広報している。さらに、海外安全面での官民の対話や協力の推進にも努めている。
【在外選挙】
5月に在外選挙実施のための「公職選挙法の一部を改正する法律」が公布され、これに伴い、99年5月から在外選挙のための登録関連業務が開始されることとなった。そして、2000年5月以降の国政選挙(ただし比例代表選出議員選挙に限る)の際に在外投票が行われることになる。具体的には、在留邦人は、原則として、投票所を設置している在外公館に出向き投票することができ、一部の遠隔の地に在留している邦人等は、郵便による投票も行うことができるようになる。外務省としては、自治省とも協力して在外選挙が円滑に行われるよう体制整備を含めた各種準備を行っている。
【領事体制の強化】
海外在留邦人数の飛躍的増加、その活動の多様化等に伴い在外公館における領事業務はますます複雑多岐にわたっている。新規業務である在外選挙関連業務も含めた領事業務を円滑かつ迅速に行うためにも、外務省として領事専門官の育成や領事事務のOA化等による合理化に積極的に取り組んでいる。
【旅券の偽変造法事対策】
近年、旅券等の渡航文書が国際犯罪組織や国際テロリストによって偽変造され、悪用されていることから、渡航文書の偽変造対策の強化がグローバルな課題としてサミット等の国際会議の場で取り上げられている。外務省としては、各国との効果的な協力体制の構築が不可欠であるとの観点から、98年11月アジア7か国の旅券発行当局者及び偽変造対策専門家を招聘し、「旅券偽変造防止セミナー」を開催するなど、アジア地域諸国の旅券偽変造技術の向上及び情報ネットワーク作りに努めているほか、サミット等においても先進各国との積極的な協力体制作りを推進している。
【日系社会の世代交代への対応】
今日、移住者及びその子孫である日系人により形成される中南米の日系社会は150万人に達すると推定されている。日系社会では世代交代が進んでおり、現在は日系二世・三世がその中心となりつつあり、日本で就労する者も多い。これら日系人は、居住国の各界で活躍して各国の発展に貢献し、また、日本との架け橋として貴重な役割を果たしている。外務省としてもこうした日系人の活動への支援に引き続き積極的に取り組んでいる。
【在日外国人】
97年に日本に入国した外国人の数は466万人(95年424万人)、また、97年末の外国人登録者数は148万人(96年142万人)と漸増傾向にあり、今後も、日本の国際化の更なる進展とともに漸次増加していくものと考えられる。一方、近年日本を訪れ滞在期限を超過して不法に残留する外国人は、98年1月現在で約27万6千人と93年5月のピーク時に比べれば約2万2千人の減少となっているものの依然大きな数字である。このような不法滞在者が犯罪を引き起こす場合も多く、日本国内において一部に在日外国人に対する偏見を生むと同時に、これら外国人の出身国における日本のイメージを損なうことがあるなど健全な国際交流の妨げとなっている。
外務省は、不法就労等を目的とする者をできるだけ入国させないようにする一方で、人的交流促進の観点から規制緩和推進計画の一環として査証手続きの簡素化及び迅速化を継続して推進してきている。98年には、一部の中・東欧諸国及び豪州に対する査証免除措置を含む簡素化及び迅速化を行った。
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