【国際交流の重要性】
今日の国際社会においては、グローバリゼーションの進展に伴い国家間の人の往来も活発化しているが、一方でそのような社会においてこそ、民族、文化の多様性を再認識し、相互理解を促進する態度が真の友好関係を築く上で不可欠である。このような観点から、日本は、日本文化の海外への紹介や知的対話をはじめとする人的交流などの国際交流を通じて、国際相互理解の増進、国際友好親善の促進に努めている。
98年の国際交流関連行事を振り返ると、日本の外交にとって国際交流の重要性が今まで以上に高まっていることがよくわかる。1月に英国文化紹介事業である英国祭UK98の開幕に合わせてブレア英首相が来日し、4月にシラク仏大統領が来日して「日本におけるフランス年」開会式に出席した。また、2月に長野オリンピックが開催され、世界各国から要人を含む多数の人々が長野を訪れた。9月のロシア日本文化祭の主要な事業の一つである新日本フィル交響楽団のロシア公演では、小澤征爾氏とチェロ奏者のロストロポーヴィッチ氏が共演したが、エリツィン・ロシア大統領と橋本前総理大臣の出席を得て、日露友好関係の増進を象徴するコンサートとなった。また、12月のメネム・アルゼンティン大統領訪日の際に、日本、アルゼンティン両国において一年にわたって実施された日・アルゼンティン修好100周年記念事業のハイライトとなる行事が催された。このように文化交流やスポーツの祭典は、首脳の往来等を通じて諸外国との友好親善に寄与している。
【98年の動き】
98年の国際交流の動向を見ると、留学生交流を含めた青少年交流の重要性がこれまで以上に増してきている。7月、小渕内閣の初閣議において留学生交流の重要性が再確認され、在外公館における留学生への情報提供体制の整備や元日本留学生への支援の拡充等、留学生交流の体制強化が進められることになった。また、各国との首脳会談において、次世代を担う留学生及び青少年の交流の重要性が強調され、青少年交流の一層の推進を目指すことが確認された。10月の金大中韓国大統領訪日の際には、今後10年を目途に、日本の理工系大学に在学する韓国人学部留学生が1000人に達することを目標とする日韓共同理工系学部留学生事業や、今後10年間で1万人規模を目途とする中高生交流事業、そして、11月の江沢民中国国家主席訪日の際には、今後5年間に1万5000人規模の青年の相互訪問・交流の実現に向けて努力することが示された。さらに、11月の小渕総理大臣訪露の際には、政府は、青年交流の抜本的な拡大を目指し「日露青年交流センター」を設立する用意があることを表明した。
海外青年を日本の地方自治体に招聘し、中・高等学校における外国語指導や国際交流活動に従事させるJETプログラム(Japan Exchange and Teaching Programme)には、87年の制度発足以来、平成9年度までに延べ約3万6000名が参加しており、地域レベルの国際交流に貢献している。
アジアを中心とする多国間の官民共同での文化交流にも活発な動きが見られる。97年1月の橋本総理大臣の提唱を受けて日・ASEAN各国の官民から成る多国籍文化ミッションが活動を開始し、98年4月に日本で開催された総括会合では、日・ASEANの今後の友好関係・共同体意識の醸成に資する文化交流の指針を提言にまとめた。また、5月に小渕外務大臣が提唱したことを受け、12月にアジア各国の知的リーダーを日本に招聘し、「アジアの明日を創る知的対話」シンポジウムを開催した。このシンポジウムの成果は同月の日・ASEAN首脳会議で高く評価され、99年に第2回会合を行うことが提案された。
さらに、98年は、文化遺産保存に向けた国際文化協力が注目された年であった。11月-12月に、京都で開催された第22回世界遺産委員会は、世界遺産保護の重要性を再確認し、同分野における日本の貢献をアピールする良い機会となった。同会議では、「古都奈良の文化財」(日本で9件目)を含む30件が新たに世界遺産一覧表に記載された。また、文化遺産保存・修復における国際協力については、日本は、従来よりユネスコに設けた文化遺産保存日本信託基金を通じて積極的に支援してきているが、11月に日中首脳間でシルクロード文化遺産の保存の重要性が確認されたことを受け、日本はこれらの文化遺産保存のために同信託基金への追加的拠出を行うこととした。さらに、開発途上国の文化振興に協力するため、文化無償協力により積極的に資機材を供与している。
また、10月の第2回アフリカ開発会議開催に合わせて日本で初めてのアフリカ現代美術展である「アフリカ・アフリカ」展が開催されたことは日本とアフリカ地域のつながりが経済協力の分野のみならず、文化交流の分野でも広がりを見せていることを示している。
【今後の方向性】
今日、国民各層が様々な分野に横断的に参加する、いわば「国民交流」という形で、国際交流が進展している。したがって、国家レベルで国際交流を推進していくに当たっては、地方自治体やNGOを含めた民間団体が実施する国際交流活動と連携・協力していくことが極めて重要である。一方、政府としてはこのような国際交流が円滑かつ効果的に実施されるよう交流の環境を整備していくことが重要との観点から、様々な支援及び各国政府との協力を行っている。98年には韓国、中国、オーストラリア、ヴィエトナム、エジプト、イラン、カナダの文化交流分野における政府関係者との間でそれぞれ文化協議を実施した。また、きめ細かい施策の実施に向けて大使館や総領事館のネットワークを生かし、各国の国情に則した国際交流政策を企画立案している。
国際交流の重要性が増大する中、国際交流の実施機関である国際交流基金の機能強化が急務である。1月の有識者からの提言を受け、更に活力のある開かれた国際交流基金を目指して、地域別事業方針の策定機能強化や社会により開かれた事業企画等を図っていく考えである。
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