【国際社会及び日本の取組】
世界の平和と繁栄のためには人権の擁護と民主化の促進が必要不可欠であるとの認識が国際社会において広く共有されるようになってきている。世界人権宣言採択50周年並びにウィーン宣言及び行動計画(VDPA)5周年に当たった98年にはこの分野で様々な動きが見られた。VDPAの見直しについては、7月の経済社会理事会調整セグメント及び国連総会において議論が行われ、各々合意結論及び決議が採択された。また、12月10日の「人権デー」に世界人権宣言50周年を記念する総会本会議が開催され、人権賞の授与等各種行事が行われたほか、人権擁護者宣言が採択された。
また、日本としても引き続き人権分野で積極的な対応を行っていくことが重要との観点から、1月にロビンソン国連人権高等弁務官(UNHCHR)を招いて第3回アジア太平洋地域人権シンポジウムを東京で開催し、世界人権宣言の今日的意義を再確認した。さらに、12月10日には両陛下御臨席の下、世界人権宣言50周年等記念式典を開催した。
日本は、人権高等弁務官事務所(OHCHR)等国連による人権分野での活動を積極的に支援してきており、財政面では、各国による人権状況改善努力を支援するための諮問サービス基金をはじめOHCHRが運営する各種基金に対し、98年に約80万ドルを拠出した。日本は82年以来国連人権委員会のメンバーとして、討議や決議案の検討に積極的に参加しており、3月-4月に開催された第54回会期では高村外務政務次官が出席し、日本の人権外交の基本方針に関するスピーチを行った。また、7月に第2回日中人権対話を行ったほか、人権問題に関し、あらゆる機会を利用して諸外国との間で協議を行っている。さらに、開発途上国等における民主化及び人権の擁護・促進のための協力として、法・司法制度や選挙制度の整備への支援、司法・警察官の研修等をはじめとする「民主的発展のためのパートナーシップ(PDD)」協力を従来より推進している。
【女性、児童】
女性の地位向上に向けた取組として、日本は、3月に開催された第42回国連婦人の地位委員会において、第4回世界女性会議のフォローアップ等に関する審議や決議の採択に積極的に参加した。また、開発途上国の女性の能力向上支援等のための開発における女性(WID)基金、国連婦人開発基金、日本のイニシアティヴにより設置された「女性に対する暴力撤廃のための国連婦人開発基金信託基金」、「国際婦人調査訓練研修所」等に対して98年中約580万ドルを拠出するなど、世界の女性に対する支援を行っている。
また、児童の権利保護や保健・教育の促進、緊急援助等に対し、国連人権委員会等での検討や国連児童基金(UNICEF)を通じた協力を行っており、98年の同基金への拠出は2653万ドルに上った。さらに、世界各地の紛争下で犠牲となっている児童を保護し、権利及び福祉を確保するため、この問題に関する国内外の意識啓発を目的として、11月に児童と武力紛争に関する国連事務総長特別代表事務所、国連大学及び日本ユニセフ協会との共催で、オトゥヌ特別代表を招いて「児童と武力紛争」国際シンポジウムを東京において開催した。
【社会開発】
日本は、国連社会開発委員会のメンバーとして、2月に開催された第36回会期では、社会的弱者の支援等の検討に各国と協力して取り組んだほか、国内においては、社会開発サミットの「宣言」及び「行動計画」に基づき「西暦2000年及びそれ以降に向けての社会開発のための国内戦略」を作成した。また、日本はODAにおいても医療・保健・教育等の社会開発分野を重視しており、二国間のODAに占めるこの分野の割合は91年の12.3%から97年には22.8%へと増加傾向にある。
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