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(1) 経済協力開発機構(OECD) 96年のOECDでは、84年以来12年間にわたって事務総長の職にあった仏出身のペイユ氏に代わり、加出身のジョンストン元法務大臣が初めての非欧州地域出身の事務総長として6月に就任した。また、米国における国際機関予算の見直し等を発端として厳しい財政状況が顕在化し、新事務総長の下で、組織全体にわたる合理化・効率化が議論された。 マクロ経済及び構造政策については、欧州を中心とする高失業の問題に対処する一方、中期的な財政健全化の必要性がOECD諸国にとっての主たる政策課題となる中、適切なマクロ経済政策に加えて経済構造改革の必要性が繰り返し強く謳われた。この関連では、日本の提唱により95年以来、規制制度改革に関する分析作業が着実に進捗しており、5月の閣僚理事会に中間報告が提出された後、97年の閣僚理事会に具体的政策提言を含む最終報告を提出するべく、セクター別及びテーマ別の研究が進められている。また12月には、規制改革に関する東京シンポジウムが事務総長の出席を得て開催された。他方、経済のグローバリゼーションが進展する中、その「陰の部分」の諸問題(貧困、社会的疎外等)に取り組む必要性が特に欧州大陸諸国から強く提起されている。 多角的体制の維持・強化については、多数国間投資協定(MAI)の交渉がハイ・ペースで進められ、条文案が相当程度固まりつつある一方で、地域的経済統合や地方政府の問題等の重要論点については、なお97年の閣僚理を目指して協議が続けられている。また「貿易と競争」及び「貿易と労働基準」につき96年の閣僚理に報告書が提出されたほか、貿易と規制改革等の中長期的課題に対する取り組みも行われている。 96年はハンガリー、ポーランド、韓国のOECD加盟が実現した。中でも韓国の加盟は、アジア・太平洋地域の経済発展を受けOECDが世界経済の実態に呼応した機関であり続けるとの観点から有意義な成果であった。また5月の閣僚理事会の際、ロシアから正式な加盟申請が行われた。開発問題では、5月の開発援助委員会(DAC)上級会合で新しい開発戦略「21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献」が採択された。 厳しい財政状況に対応して、ジョンストン新事務総長はOECDの改革を大きなテーマに掲げている。管理・サポート部門の合理化(予算削減)、OECD諸活動の戦略的なプライオリティ付け、域外国関連の諸活動の再編等が効率化に向けた今後の作業の焦点となろう。 マクロ・構造問題、多角的体制、開発等の各方面にわたる幅広い分析能力を生かし、世界経済の諸課題に先行して取り組むことがOECDの特質であり、日本は、OECDの活動強化に向けて努力を行ってきた。上記の規制改革関連作業はその一例であり、またリヨン・サミットにおける橋本総理大臣の提案を受けて、「世界福祉構想」関連作業をOECDの場で取り進めることにも尽力した。また、96年の閣僚理事会において、予算問題を始めとするOECD改革を検討するための「特別理事会」の開催を提案して各国の賛同を得た。
(2) 国際エネルギー機関(IEA) |