軍縮代表部

   (1) 軍縮会議(CD)
 96年のCDは、会期冒頭からほぼ包括的核実験禁止条約(CTBT)一本に的を絞って交渉を行った。その結果、5月末には第1次議長テキスト、6月末には第2次議長テキストが提示され、CDにおける合意達成まであと一歩のところまでこぎ着けた。しかしながら、インドは、議長テキストがインドを含む44か国の批准を条約発効の要件としていることは受け入れられないとして最後まで反対の立場を貫いたため、CDにおける交渉は不調に終わった。こうした状況を打開するため、豪州及び日本などは、CDでの最終交渉テキストを有志国案という形で国連に持ち込み、事務総長に対し、CTBTを採択するため第50回国連総会の再開会期を開催するよう要請した。こうして開催された総会で、9月10日、CTBTは圧倒的多数(賛成158、反対3、棄権5)をもって採択された。さらに、CTBTは9月24日には署名開放され、日本は橋本総理大臣自らが署名した。また、11月にはCTBT機関準備委員会が設立されたが、暫定技術事務局の設立および同事務局長の選出は見送られ、97年に持ち越された。
 CD拡大問題は永年の課題になっていたが、6月、一定の了解の下に23か国を加盟国として認めることが決定され、とりあえずの解決を見た。今回加入を見送られた国については、今後引き続き検討が行われることになっている。
 96年にはカットオフ特別委員会、核軍縮特別委員会(非同盟諸国の要求)を含め核実験禁止以外の特別委員会は設置されなかったが、諸特別委員会の設置は議題問題とともに97年の大きな課題となろう。

   (2) 国連総会第1委員会
 96年の国連総会第1委員会は、10月14日から11月18日まで開催され、47本の決議案を採択して終了した。主要な決議案としては、「究極的核廃絶」(日本等提案)、「核軍縮」(ミャンマー等)、「ICJの勧告的意見」(マレーシア等)、「対人地雷禁止」(米国等)などがあった。

   (3) 特定通常兵器条約(CCW)再検討会議
 1月及び4月から5月にCCW再検討会議が開催され、地雷等の禁止・制限に関する付属議定書を強化する改正が採択された。対人地雷については、その全面的な禁止に向けた国際的な動きが強まっており、この傾向は97年以降も続くものと見られる。

   (4) 生物兵器禁止条約(BWC)再検討会議
 11月25日から12月6日までBWC再検討会議が開催された。この再検討会議では、条約の再検討に加え検証強化問題が取り上げられたが、この点については、現在行われている政府専門家によるアドホック・グループ会合での検討を継続・強化していくことになった。

   (5) 日本との関係
 日本は軍縮問題を重視しており、上記いずれの分野でも積極的な貢献を行った。  特に、CTBTについては、CDにおける交渉の段階で議長補佐役として財政問題に関する条文交渉のとりまとめを行った。また、CDにおける交渉が不調に終わった後は、豪州とともに国連総会再開会期の開催及びCTBTの採択に向け努力した。国連総会第1委員会では「究極的核廃絶決議案」を提出し、圧倒的多数をもって採択された。CCWについてはその交渉に積極的に参加し、またリヨン・サミットでは対人地雷全面禁止に向けた国際的努力を支持するなどの方針を打ち出した。BWCについては、検証規定の強化とバイオ産業の健全な育成のバランスをとるよう努めている。