ジュネーヴ代表部

   (1) WTO(世界貿易機関)
 96年の主要な活動としては、12月にシンガポールで第1回WTO閣僚会議が開催され、ウルグアイ・ラウンド(UR)合意の実施状況の点検と将来の作業計画を中心に議論が行われ、貿易と投資、貿易と競争政策等の新たな分野の問題にも取り組むため作業部会(WG)を設置することなどが含まれた閣僚宣言が発出された。また、情報技術合意(ITA)に日、米、EUを含む28の国・地域が合意した。
 サービス貿易の分野では、UR合意で継続交渉とされた基本電気通信交渉は4月末、海運交渉は6月末が期限とされていたが、結局交渉はまとまらず、基本電気通信については97年2月15日を新たな期限とし、海運については、一旦交渉を中断し、99年末までに交渉を開始するとされている包括的サービス自由化交渉とともに交渉を再開することとなった。
 96年にWTOの紛争解決機関(DSB)に取り上げられた案件は29件、このうち13件につきパネルが設置された。そのうち1件は上級委員会に申し立てられている。日本が関与する案件も増加し、95年からの酒税問題に加えて、フィルム問題、インドネシア及びブラジルの自動車政策問題等に関し日本は当事国になっている。
 WTO加盟国は、96年末には129か国になり、加入申請国は、97年初頭現在で中国、ロシア、サウディアラビアなど30か国である。

   (2) UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
 UNHCRが、96年に支援の対象とした難民・避難民の総数は約2,610万人であり、緒方貞子高等弁務官のリーダーシップの下、難民・避難民に対する緊急の保護・支援の提供や、紛争解決後の自主的帰還の促進に力を注いでいる。特に、ルワンダ・ブルンディ難民問題の解決に中心的な役割を果たしており、また、旧ユーゴーにおける難民・避難民の帰還促進については、他の国際機関や援助国と連携して帰還の障害を取り除き、98年中に解決の道筋をつけることを目指している。日本は、UNHCRに対し米国に次いで第2番目の拠出を行うとともに、クロアチアにおける難民収容施設プロジェクトの推進や環境専門家を派遣する等、様々な形で協力している。

   (3) ICRC(赤十字国際委員会)
 ICRCは戦時救済の中心的機関として、全世界的に捕虜と抑留者の訪問、救援活動、医療活動等を行っている。特に、他の国際機関等のアクセスが困難な紛争地域下で独自の人道的役割を果たしており、12月の在ペルー日本国大使公邸占拠事件に際し、食糧・水の搬入、医療活動、衛生状況の改善等人質への人道的支援を行ったほか、中立の立場からペルー政府と犯人側の間の直接対話を促して事件の平和的解決に尽力した。
 日本は、ICRCへの資金協力を中心に協力を行っており、紛争地域への対応についても協力関係を深めている。

   (4) IOM(国際移住機関)
 IOMは、移住問題については、95年に策定した「21世紀に向けての戦略計画」に基づき不法移民問題を最重要課題と位置づけた活動を展開し、人道支援問題については、UNHCR等国連人道関係機関と密接に協力しつつルワンダ、旧ユーゴ等で活動を展開した。日本は、米に次ぐ第二の分担金支払国として難民・避難民問題を中心に協力している。

   (5) UNCTAD(国連貿易開発会議)
 4月から5月に南アフリカ共和国で開催された第9回UNCTAD総会では、30年余の活動を総括し、機構の活性化をいかに図るかが課題とされ、対象事業の絞り込み、他の国際機関との協力と重複回避、政府間会合数の削減等について一致した。日本は、南南協力、開発経験の移転、節約資金の再投資構想等を提唱し積極的な貢献を行った。また、95年より、日本の資金協力で東アジアの経験の他地域への応用に関するプロジェクトが開始され、10月の第43回貿易開発理事会における議論にて大きく取り上げられるなど、各国から高い評価を得た。