その他新独立国家諸国

[ベラル-シ]
 大統領と議会との関係は従来から緊張していたが、11月、大統領権限の強化をはかる憲法改正に関する国民投票を巡り、ルカシェンコ大統領と議会との対立が深刻化した。国民投票の結果、大統領の提案する新憲法が採択されたが、これに対し首都ミンスクでは反大統領派のデモが頻発し、政府側では大統領の政策に反対するチギリ首相が辞任するに至った。対外関係では、ロシアへの傾斜を強め、3月にロシア、カザフスタン、キルギスとともに統合深化に関する条約に、4月にはロシアとの間で国家関係の更なる緊密化を目指す共同体創設に関する条約に署名した。11月にはベラル-シ領内に配備されていた戦略核ミサイルのロシア移送が完了した。国内経済は、生産の下げ止まりやインフレ鎮静化など安定化の兆しも見られたが、依然強い国家統制は金融支援や外国投資を遠ざけている。また、エネルギー供給を依存するロシアとの経済統合を志向している。日本との関係は、従来から日本からのチェルノブィリ関係の人道支援及び非核化支援協定の実施が中心となっている。

[モルドヴァ]
 内政面では、12月に行なわれた大統領選挙(決選投票)の結果、西側及びル-マニアとの関係強化を掲げる現職のスネグル大統領が敗れ、ロシアとの関係改善をはかるルチンスキ-議会議長が当選した。ドニエストル川左岸におけるロシア系・ウクライナ系住民とモルドヴァ中央政府との間の紛争については、モルドヴァ駐屯第14ロシア軍の撤退問題も含め、早期解決の見通しは立っていない。CISの統合に対しては、ロシアとの経済関係の強化には肯定的であるが、軍事的・政治的統合には慎重である。経済面では、インフレは収束しつつあるものの、石油・ガス等のエネルギー不足が深刻なこともあり、引続き経済成長率はマイナスで困難な状況にある。モルドヴァは、12月にODA対象国となり、日本との間では経済協力分野の関係構築が今後の課題である。

[グルジア]
 95年11月に就任したシェヴァルナッゼ大統領は、民族問題、経済問題などの困難を抱えながらも政権の安定化に努めている。アブハジア及び南オセチアにおける分離独立運動を巡っては、概ね停戦が維持されているものの、全面解決の目途は立っていない。アブハジアに展開中のCIS合同平和維持軍のマンデ-トは97年1月末まで延長された。南オセチアでは、11月に独自に大統領選挙が行なわれたが、シェヴァルナッゼ大統領は同選挙が違法である旨声明している。IMF及び世界銀行などの支援を得て、経済は全般的に回復基調にあり、今後は財政赤字を解消するための経済構造改革が最重要課題となっている。日本の支援としては、これまで人道・技術支援が中心であり、ODAの枠内で研修員受入れ事業を行なっている。

[アゼルバイジャン]
 95年11月の議会選挙において大統領側勢力が勝利し、また圧倒的多数の国民の支持により新憲法が採択されて以来、内政面で安定化の兆しがみられていたが、7月にグリエフ首相が辞任し、また汚職などを理由に閣僚8名が解任された。最大の問題であるアルメニアとのナゴルノ・カラバフ紛争については、OSCEが設立したミンスク和平会議の主導の下、紛争解決に向けての努力が続けられ、94年以来停戦は遵守されている。カスピ海の法的地位については、国家セクターによる分割を主張しており、資源の共同開発を主張するロシアやイランなどと対立している。経済面では、IMFとの協議に基づき一部の価格自由化を含む急進的措置を導入したが、全般的に改革は遅れ気味である。カスピ海の石油資源の開発が経済発展への梃子となる期待を集めており、この開発には欧米企業に加えて日本企業も活発に進出を開始しており、9月には貿易保険の引き受けも開始された。日本の支援としては、これまで人道・技術支援が中心であり、ODAの枠内で研修員受入れ事業を行なっている。

[アルメニア]
 9月に行なわれた大統領選挙では、現職のテル・ペトロシャン大統領が再選されたが、選挙数日後、落選候補を支持する民衆が選挙の無効を訴えて首都エレヴァンでデモを行い、これに対し政府側が武力を用いて事態を収拾したため、国際世論の非難を招いた。その後は国際的な信用の回復に努め、10月にはドゥシャレット仏外相が来訪し、テル・ペトロシャン大統領と会談を行った。ナゴルノ・カラバフ紛争に関しては、ナゴルノ・カラバフ州の独立及びアルメニアとナゴルノ・カラバフを結ぶ回廊の設置を主張しているが、アゼルバイジャンはこれに反対し、双方の立場の隔たりは大きい。IMF及び世界銀行の指導により経済改革を推進し、生産の回復とインフレの収束など国内経済は堅調である。また、欧米諸国におけるアルメニア系移民の活動が活発であり、米、EUなどから多大な支援を受けている。日本の支援としては、これまで人道・技術支援が中心であり、ODAの枠内で研修員受入れ事業を行なっている。

[キルギス]
 95年12月の大統領選挙においてアカーエフ大統領が再選を果たし、民主化、市場経済化に向けた改革が継続している。対外的には、ロシアとの関係を重視し、1月にはロシアを含む一部CIS諸国との間で関税同盟を、3月には前述の統合深化に関する4か国条約を締結した。IMF及び世界銀行との協力関係は良好で、経済改革は概して順調に進み、CIS諸国の中でも比較的高い経済成長率を維持している。日本は、従来より積極的に経済協力を行ない、6月にはマナス空港近代化計画に対する大規模な円借款供与が実施された。また、10月には東京で世界銀行主催の支援国会合を開催し、新たにビシュケク・オシュ道路改修計画に対する円借款が決定された。ジュマグーロフ首相の訪日(11月)などの要人往来、在日キルギス名誉総領事の任命に関する実質的な意見の一致など、親日的で知られるアカーエフ大統領の指導の下、緊密な関係を維持している。

[タジキスタン]
 92年以来続いている政府派と反政府派との内戦は、96年に入っても継続したが、12月にラフモノフ大統領とヌリ統一反政府勢力代表との会談がようやく実現し、和平協定の署名が行なわれた。しかしながら、停戦合意はこれまでも幾度となく締結されては破られており、また、新政府の構成など解決すべき課題は多く、情勢は依然として予断を許さない。対外的には、91年の独立以来、周辺諸国との関係緊密化を図っているが、CIS合同平和維持軍がロシア主導の下に展開されるなど、国内情勢の安定化、特にタジク・アフガン国境の警備の上でロシアに大きく依存している。国内経済は極めて困難な状況にあるが、IMF及び世界銀行からの融資が認められるなど明るい要素も現れている。日本は、従来からの研修員受入れ事業及び国際機関を通じた経済協力を行っている。なお、10月には東京で世界銀行主催の支援国会合が開催された。

[トルクメニスタン]
 ニャゾフ大統領の強い指導力の下、政情は比較的安定しているが、94年1月の国民投票で大統領の任期を2002年まで延長するなど、民主化が遅れているとの指摘もある。対外的には、95年12月のトルクメニスタンの永世中立に関する国連総会決議の採択を契機とし、さらに独自の中立政策をすすめ、10月のアフガン情勢に関するロシアと中央アジア諸国の首脳会談を欠席するなど、ロシアからも一定の距離を保っている。経済面では、IMF及び世界銀行からの融資を受けておらず、改革は緩慢であるが、他方で、天然ガスなど豊富な資源の開発を軸とする独自の経済政策をとり、工業生産高は伸びている。日本からは、10月にトルクメンバシ石油精製工場改修プロジェクトに対し、輸銀が同国への初めての融資を行なった。その他、人道・技術支援を中心とする経済協力を行い、ODAの枠内で研修員受入れ事業などを行なっている。