ドイツ

基礎データ
英語名称:  Federal Republic of Germany
首  都: ベルリン(Berlin)
面  積: 35.7万km2
人  口: 8,114万人(人口増加率0.5%)
言  語: ドイツ語
民  族: ゲルマン系を主体とするドイツ民族
宗  教: キリスト教(プロテスタント40.8%、カトリック34.8%)
略史:1871年ドイツ帝国成立後、共和制(ワイマール共和国)、ヒトラーの独裁制を経て1949年ドイツ連邦共和国とドイツ民主共和国が成立。1961年築かれたベルリンの壁は1989年開放、1990年10月3日再統一達成。
政  体: 連邦共和制(16州)
元 首: ローマン・ヘルツォーク(Roman Herzog、大統領)
首 相: ヘルムート・コール(Helmut Kohl)
外 相: クラウス・キンケル(Klaus Kinkel)
軍事力: 総兵力35.8万人(陸25.3万、海2.9万、空7.7万)96年予算319億ドル
G N P: 20,754.5億ドル[一人当たり25,580ドル]
経済成長率: 1.9%(1995年)、 2.9%(1994年)、▲ 1.1%(1993年)
物価上昇率: 1.8%(1995年)、 2.7%(1994年)、  4.5%(1993年)
失 業 率: 12.9%(1995年)、11.4%(1994年)、 10.4%(1993年)
通   貨: マルク(1ドル=1.55ドイツ・マルク)
対日輸入: 22,947百万ドル・自動車、コンピューター等
対日輸出: 12,232百万ドル・自動車、医薬品等
我が国の政府開発援助: ---百万ドル
    無償資金協力: ---百万ドル
      技術協力: ---百万ドル
     政府貸付等: ---百万ドル
日本からの直接投資: 5億4,695万ドル
在 留 邦 人 数: 23,843名

 10月で発足満14年を迎えたコール政権は、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)の連立政権として維持されてきた。国内では、一時的には400万人を越える失業問題(失業率約10%)を抱え、野党勢力からは厳しい批判にさらされている。コール首相は、欧州統合、なかでも欧州通貨同盟の実現と参加を最大の目標としており、その収斂基準を満たすため、財政赤字をGDPの3%以下にすべく緊縮財政を実施している。そのため、財政赤字削減パッケージを打ち出し、社会保障関連部分について、野党の反対を押し切って病欠手当の100%支給を80%支給に改める等の社会保障の切り込みを企図したものの、結局労働者のストに使用者側が屈する形で実現に移されないことも多く、必ずしも政府の思い通りに改革が進まないことが改めて浮き彫りになる一幕もあった。
 連立与党であるFDPは、93年10月以降に行われた13の州議会選挙で一州を除き議席獲得に必要な5%以上の得票率を確保できなかったため全議席を喪失していたこともあり、現政権は次回の選挙前に崩壊するとの見方も一部ではなされていた。ところが3月の3州における州議会選挙でFDPは議席の維持に成功し、低落傾向に一応歯止めをかけた。しかし、11月以降税制改革問題を巡り、「減税の党」という姿勢を前面に出すFDPは他の連立与党と対立し、また、12月の世論調査では支持率が2%にまで落ち込む等その動向は今後も予断を許さない。
 野党第一党の社会民主党は、95年11月に新しい党首に就任したラフォンテーヌの下で徐々に党勢を回復しつつあるが、政策面で党執行部の中でも不一致を抱え、特に経済政策面では国民に説得力ある対案を提示できない状況にある。「同盟90/緑の党」は、順調に党勢を拡大し、FDPに代わる第三勢力としての地位を確保したが、党内での路線対立に加え、地方レベル(特に旧東独地域)で旧東独社会主義統一党の後継政党である民主社会主義党(PDS)との関係強化に不満を持つ旧東独時代の人権運動家がCDUに鞍替えする等、不安定な問題も抱えている。
 経済面では96年の第3四半期までの成長率は2.4%(対前年同期比)とようやく景気が上向きになりつつあるが、その一方で米と異なり景気の回復が雇用の拡大に結びつかないということが問題点として認識されつつある。独政府は、また、産業立地としての独の魅力を改善することが急務として、前述の病欠手当の変更等投資環境の改善に努力しているが、特に、旧東独地域で、生産性の向上のないままに賃金だけ西の水準に近付けてしまった結果、投資が進まず、成長も足踏み状態に陥り、旧西独地域以上の深刻な失業問題(旧東独平均15%)が存在している。なお、連立与党は閉店法を改正し、商店の開店時間規制を緩和した。レクスロート経済大臣はこれを独にも改革能力のある証明と賞賛し、引き続き規制緩和に努力していく旨述べているが、閉店法改正以外の点では大きな進展は見られていない。なお、ドイツ・テレコムの民営化で11月に株式の一般公募が行われ、株価も順調な推移を示しており、大きな関心を集めた。
 対外関係については、独はEU統合、就中通貨統合の実現を当面最大の目標として努力し、12月の欧州理事会で安定協定等残された障害について原則的合意をもたらし得たことは大きな成果であった。他方で、独は中東欧諸国のEU、NATO加盟を積極的に支持してきており、97年には加盟候補国の第一陣が決定されることとなる。
 ロシアとの関係では、コール首相は一貫してエリツィン大統領を支持し、エリツインの再選により独ロ関係は良好に推移しているが、ロシアがNATO拡大に反対しているため、当面NATO拡大が最大のテーマである。
 チェッコとの間では第二次大戦後のチェッコによるドイツ人の追放を巡り、95年以来和解文書の作成が進められていたが、12月にようやく原則合意にこぎつけ同国との間で戦後処理の問題に区切りがつけられた。
 旧ユーゴーへの連邦軍派遣については、和平実施部隊(IFOR)への参加に引き続き、その後継部隊(SFOR)にも約3,000人の兵士を参加させ、戦闘任務を帯びた部隊をボスニア・ヘルツェゴヴィナに直接派遣することとした。
 日本との関係では、5月に池田外務大臣が訪独し、キンケル外相との間で外相定期協議を開催し、21世紀に向けてグローバルな責任を有する日独が「日独パートナーシップのための行動計画」を確定した。また、11月にはコール首相が訪日し、橋本総理との間で首脳会談を行い、日独関係に新たな弾みを与えるために、年1回首脳会談を行うことで一致したほか、社会保障協定(仮称)、環境協定の早期締結に向けて努力することを確認する等二国間関係において大きな成果を挙げた。さらに、日本側よりは99年から2000年にかけて行われる予定の独における大型文化学術行事への支援要請を行い、独側もこれを歓迎した。