[国際社会の取組]
人権の擁護と民主化の促進が世界の平和と繁栄の基礎であるとの認識が国際社会において広く共有されるようになってきており、93年6月にウィーンで開催された世界人権会議では、人権が国際社会に共通な普遍的価値であり正当な国際的関心事であるとの宣言が行われた。国連を中心とする国際社会は、従来より重大な人権侵害を行っている国に対する決議の採択や、人権関係条約の作成といった活動を行ってきたが、近年各国の人権状況改善努力を直接支援する動きも広まっている。国連人権センターは、各国からの要請に応え、人権状況改善のため、専門家を派遣して助言を与えているほか、セミナーを開き公務員を訓練するなどの活動を行っている。
[民主化の促進と人権の擁護に向けた日本の協力]
各国の人権状況の改善を進めていくためには、人権状況に問題のある国に対して国際社会として懸念を表明する一方で、当該国との対話を通じて改善への努力を促し、その改善努力を支援してゆく姿勢が不可欠である。このような考えに基づいて、日本は、人権状況に問題があると思われる国に対し機会を捉えて懸念を伝えるとともに、対話を通じて状況改善への努力を求めてきた。他方、重大な人権侵害が見られた国に対しては、ODA 大綱に基づき援助方針を見直すなどの措置をとってきている。
他方、人権や民主化状況に問題がある国に対し懸念を伝えたり、援助方針を見直すだけでは十分とは言えない。世界には、民主化や人権状況の改善に努力していながら、そのための制度や人材を欠いている国も多く存在している。そこで日本としては、この面での技術協力を進めるため、「民主的発展のためのパートナーシップ(PDD)」をリヨン・サミットにおいて表明した。これは、従来より行われてきた、法・司法制度、選挙制度の整備支援、司法・警察官の研修など、民主化・人権の擁護・促進に資する技術協力をより積極的かつ総合的に二国間及び多国間援助を通じて実施しようとするものである。
日本は、また、国連を中心とする国際的な活動にも積極的に参加してきた。国連人権委員会においては、82年以来メンバーとしての活動を続け、国連人権センターに対しても、諮問サービス基金への拠出などの支援を行っている。
人権意識の向上に関する取組としては、95年に引き続き、7月に第2回アジア太平洋地域人権シンポジウムを国連大学とともに開催した。これは、多様性に富むアジア太平洋地域において人権に関する共通認識を醸成し、また地域レベルでの国際協力の方途を探る機会となっている。また、人権教育を促進する目的で、第49回国連総会で宣言された「人権教育のための国連10年」のもとで、日本は95年12月に総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年推進本部」を設置している。
[女 性]
女性の地位向上に向けた取組としては、日本は、国連婦人の地位委員会のメンバーとして95年に開催された第4回世界女性会議のフォローアップの審議に参加しているほか、国連婦人開発基金(UNIFEM)、国際婦人調査訓練研修所(INSTRAW)、国連開発計画(UNDP)などを通じて女性に対する支援を行っている。また、第50回国連総会に日本が提出した決議により設置された「女性に対する暴力撤廃のための国連婦人開発基金信託基金」への協力を進めているほか、特に開発途上国における女性支援(WID)の強化を推進している。
[児 童]
児童の権利の擁護は、最近国際社会の関心の高い分野となってきており、8月には児童の商業的性的搾取に反対する世界会議がスウェーデンにおいて開催され、児童売買春・児童ポルノといった問題と闘う決意が表明された。日本は、日本ユニセフ協会の協力を得て児童買春の根絶を訴えるポスターを作成するなどの啓発活動を展開している。
[社会開発]
社会開発の分野では、日本は96年より国連社会開発委員会のメンバーとなり、95年に開催された社会開発サミットのフォローアップとしての貧困撲滅、雇用、社会的弱者の疎外などに関する議論に参加している。また、ODA において医療・保健、教育等の社会開発分野を重視しており、二国間の ODA に占めるこの分野の割合は、91年の12.3%から95年には26.7%へと増加傾向にある。
|