(14) 日本とカナダ:協力のためのアジェンダ

(96年11月27日、東京)

 日本国総理大臣とカナダ首相は、日加関係に今後の見通しと方向性を与えるため、本日会談を行った。両首脳は、日本とカナダが共有する民主主義的な価値及び世界の平和と繁栄の推進のために協力する意図を確認した。両首脳は、国連、G7サミット、APEC及び他の国際場裡における二国間の協力が成功を収め、生産的であることを歓迎し、二国間関係が非常に良好な状況にあることを賞賛した。
 この強固な友好関係を基盤に、両首脳は、日加両国の外交政策において重要性を増しつつある要素として、両国関係を広げ、深めることを検討した。
 両首脳は、カナダにとってのアジア太平洋地域の重要性及び同地域の将来の安定と繁栄を促進する上でのカナダの役割に対するカナダ国民の認識及び理解を促進するに当たり、1997年のカナダのアジア太平洋の年の重要性を協調した。日本は、このイニシアティブを歓迎し、アジア太平洋社会の強化のためカナダと協力する。
 本日の会談は、日加関係に新たな幕を開けた。よって、両首脳は、日加両国政府が、特に、以下に掲げる分野において、二国間の協力を促進することを再確認した。

1.アジア太平洋における協力
 日加両国は、アジア太平洋地域におけるパートナーとして、同地域の平和と安定と繁栄を促進するため協力し、そのため、ASEAN地域フォーラム(ARF)等が提供する地域安全保障対話の場の発展を支持する。
 両国政府は、日加の著名な学者に、日加の安全保障協力に関し共同研究を行い、1997年春までに両国政府に報告書を提出するよう委嘱した。両国政府は、この報告書を検討し、安全保障に関する協議を開始する。
 アジア太平洋経済協力(APEC)は、アジア太平洋地域において鍵となるフォーラムである。カナダは、1997年のAPEC議長国である。日加両国は、1997年を通じて、APEC地域における食料、環境、エネルギー、経済成長及び人口(FEEEP)という相互に関連する課題についてのシンポジウムをカナダで開催することをはじめとして、貿易及び投資の自由化及び円滑化の推進並びに経済・技術協力の拡大のために引き続き緊密に協力する。

2.二国間関係の発展
 我々は、両国の経済成長の見通しを改善し、商業取引の機会を増進するためにそれぞれが行っている改革努力の重要性に留意する。我々は、透明性を向上させ、基準適合性の相互承認を促進し、市場アクセスを改善するための規制緩和措置を通じ、貿易及び投資を円滑化させるよう努力する決意である。
 我々は、民間部門と協力し、カナダの対日アクション・プランのようなメカニズムを通じ、二国間の貿易、投資及び観光の拡大のために引き続き努力する。我々は、1997年にトロントで第20回会議を祝賀する日本・カナダ経済委員会の作業及び最近の経団連訪カナダ・ミッションの訪加によって示されたような、両国経済界の間に存在するダイナミックな対話を歓迎する。
 我々は、日本の通商産業大臣とカナダの国際貿易大臣が、第三国の市場、特に、アジアの市場における日加企業間の民間協力を円滑化することについての協力を開始するとの決定を発表したことを喜んで留意する。
 両国政府は、理解と協力を増進するため、日本の外務省とカナダの外務国際貿易省との間で人事交流を開始する。また、我々は日本の通商産業省とカナダの外務国際貿易省が同様の交流を開始する意図を有することに留意する。
 我々は、日本国政府とカナダ政府との間の科学技術協力に関する協定の下で、それぞれの大学、研究機関及び省庁の間の研究及び開発(R&D)に関する二国間協力を拡大することを勧奨する。また、我々は、製造技術者交流プログラム等を通じ、民間部門の協力を引き続き支援する。
 日本政府は、両国間の文化交流の拡大のために、日加基金に対して、140万カナダ・ドル(1億円)を拠出した。また、両国政府は、カナダにおける日本研究及び日本におけるカナダ研究を慫慂していく。日本政府は、この目的のため、今年度よりカナダとの平和友好交流計画を開始した。
 日加両国の若者の間の交流及び相互理解を促進するため、両国政府は、JETプログラムとワーキング・ホリディ制度の更なる充実の重要性を強調する。
 両国政府は、「日本外務省ホームページ」及びカナダ外務国際貿易省の「日加オン・ライン・ホームページ」を経由したインターネットを通じ、日加関係に関する情報を増加させることにより、国民の認識の向上を図る。

3.平和、安全保障及び環境に関する政治協力
 両国政府は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准とその早期発効及び化学兵器禁止条約の効果的な実施並びに軍縮会議におけるカット・オフ条約交渉の開始を推進する。
 両国政府は、10月の「オタワ宣言」で発表されたとおり、対人地雷の世界的禁止に関する効果的で法的拘束力のある国際的取極を精力的に追求する。また、両国政府は、地雷除去作業、地雷探知及び除去のための新技術の開発並びに地雷による犠牲者のリハビリに関する国連の取組みに対する国際的な支持を強化するために日本が1997年3月に主催する会議が成果を収めることを確保するため協力する。
 両国政府は、国連が地球的規模の挑戦への取り組みに一層備えることができるように、平和及び安全保障、財政並びに開発の分野を含め、全体として均衡のとれた形で国連を改革するとの強いコミットメントを共有する。両国政府は、安全保障理事会の議席を増加し、構造を改善することにより、その実効性を強化させるために努力する。
 日加両国は、特に、国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)への参加を通じ、平和維持活動(PKO)の分野における協力を強化し、PKOの緊急展開能力の向上並びに予防外交及び平和構築の強化に関し国連を支援していく。アフリカ大湖地域における人道上の危機を緩和するため、国際的な対応を調整することの緊要性は、これらの事業の重要性を示している。
 日加両国は、地球環境の保護に対するコミットメントを共有している。我々は、今後12ヶ月以内に、第二回日加環境協議を行う。日加両国は、1997年を通じて、環境問題に関する国際協力を、特に、日本が主催する国連気候変動枠組条約第3回締約国会議において、追求する。日加両国は、森林の保存と持続可能な開発についての国際的なコンセンサスの追求及び実際の持続可能な森林経営の例を利用したモデル的な森林の国際的ネットワークの開発を通じ、持続可能な林業を推進するために努力する。
 日加両国は、海洋生物資源の持続可能な利用に対するコミットメントを共有し、この観点から、1978年の日加漁業協定の規定の下で協力する。両国政府は、分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源及び高度回遊性魚類資源に関する国連協定を支持する。

4.国際経済に関する協力
 リヨン・サミットにおいて、日加両国は、他のG7諸国とともに、経済成長及び雇用を促進し、経済及び通貨協力を強化し、貿易及び投資を促進し並びに開発のための新たなグローバル・パートナーシップを実施するための幅広いイニシアティブを支持した。カナダは、リヨンで日本が提案した「世界福祉構想」に関心を表明し、双方は、他のG7諸国とともに同構想を更に検討するために協力する意図を確認した。
 日加両国は、多角的貿易体制及びその地域貿易協定に対する卓越性を支持するに際し、ウルグァイ・ラウンド合意及びビルト・イン・アジェンダの完全実施を確保し、貿易と投資、貿易と競争政策、貿易と環境等のウルグァイ・ラウンド後の新たな課題に取り組むことによって、シンガポールにおける第1回WTO閣僚会議を成功させていくために協力する。両国政府は、情報技術合意(ITA)の妥結及び医薬品の関税撤廃イニシアティブの対象範囲の拡大の実施を通じて、更なる自由化を促進するために協力する。
 また、我々は、漸進的な貿易自由化の主要な手段として、更に、より重要なこととして、多角的で規律に基づく枠組が、一方的な方法よりも、グローバル化が進む経済の要請に最も適切に対応することを示すために、WTOを強化することへのコミットメントを再確認する。
 我々は、WTOの加盟国を、WTO上の義務を果たし、かつ、意味のある市場アクセスのコミットメントを行う用意があるすべての経済に拡大することの重要性を強調する。我々は、中国を含むいくつかの追加的な経済が近い将来WTOに加入することを楽しみにしている。
 我々は、開発途上国の多角的貿易体制への完全な統合を支持することの重要性に留意する。この観点から、日加両国は、貿易に関連した後発開発途上国(LLDC)のための技術援助プログラムを策定するために、1997年の早い時期に、貿易及び援助機関、国際金融機関、WTO並びに援助国及び被援助国からなる合同会合を開催する努力を完全に支持する。
 日加両国は、OECDの開発援助委員会(DAC)で採択された新開発戦略(「21世紀に向けて」)の実施のために協力し、ヴィエトナム、インドネシア、フィリピン、ケニア、南部アフリカ等における共同開発事業を引き続き実施していく。また、アフリカでの開発に対する支援努力を調整していく。
 日加両国は、多国間金融機関が途上国の開発に果たす重要な役割を認識し、アジア開発基金第6次財源補充交渉が成功裡に終結するよう協力する。
 両国政府は、途上国における過度の軍事支出の削減につき関心を共有し、同様の意識を持った他の諸国とともに、DACにおいて、協力する。DACは1997年3月にオタワでこの問題に関する国際シンポジウムを開催する。
 OECDは、国内的及び国際的な経済・社会問題に対する新しい取組み方法を促進し、開発途上諸国の世界経済への統合を円滑化するに当たって重要な役割を有する。我々は、ドナルド・ジョンストン事務総長がOECDを、より適切で、効率的で、効果的なものに改革するとの使命を遂行することを支持する。

5.日加フォーラム
 両国政府は、1991年に、あらゆる分野において両国関係を強化するための提言を作成するため、日加フォーラム2000を設置した。日加フォーラム2000及び同フォーラムのフォロー・アップ委員会の報告書は、新たなより恒常的な委員会の基礎となった。
 本日、我々は、日加間の対話を継続し、両国間のより強力でより効果的なパートナーシップを発展させるため、様々な部門を代表する傑出した日本人及びカナダ人から成る日加フォーラムを創設することを発表する。