(13) アジア太平洋経済協力閣僚会議フィリピン会合関連文書

(96年11月23日、マニラ)

  (イ) マニラ共同声明(骨子)

1.閣僚共同声明の構成
1.1995年のAPEC経済首脳の行動宣言の進展と及び1996年APEC行動計画

  • APECマニラ行動計画(MAPA)
  • 貿易及び投資の自由化及び円滑化
         
    • 個別行動計画    
    • 共同行動並びに貿易及び投資の問題    
    • WTOシンガポール閣僚会議への貢献

  • 経済・技術協力
         
    • 共同行動の進展及び関連する閣僚会議の成果    
    • 経済及び分野横断的問題    
    • 長期的かつ相互に関連した食糧、エネルギー、環境、経済成長及び人口問題(FEEEP)に関する作業の進展
II.APECにおける経済協力及び開発の強化
III.民間部門の参加
IV.機構及び財政問題
      
  • APEC事務局   
  • 参加問題   
  • 予算及び財政問題
V.その他事項

2.各事項の記述振り

  • 参加閣僚により、ボゴール宣言の目標達成のために、「大阪行動指針(OAA)」の完全及び効果的実施が再確認される。
I.1995年APEC経済首脳の行動宣言の進展及び1996年APEC行動計画
  • 貿易・投資の自由化・円滑化・経済・技術協力というOAAの3つの柱の間のバランスと補完性を反映した本年の成果を歓迎。
  • APECマニラ行動計画(MAPA)
  • APECマニラ行動計画(個別行動計画、共同行動計画、経済・技術協力分野の活動の成果)を採択、APEC経済首脳に付託。ABAC等民間/ビジネスセクターの関与の重要性につき合意。
  • 管理の手段としての、APEC行動報告・モニタリング制度(ARMS)の価値を認識。
  • 貿易及び投資の自由化及び円滑化
    • 個別行動計画
  • 大阪行動指針第一部(貿易及び投資の自由化及び円滑化)に関し、全APECメンバーよりの個別行動計画(IAPs)の提出を歓迎。IAPは、APEC各メンバーの自主的なコミットメントであり、自由で開かれた貿易及び投資という長期的目標に向けての具体的な第一歩である。また、IAPは今後とも、見直し、協議という過程をへて改善されていく継続的作業であることを確認。さらに各IAP間の透明性及び同等性を確保することの重要性に留意。
  • IAPは、1997年1月より実施が開始される。
  • IAPの改善における民間部門の関与を歓迎。
    • 共同行動並びに貿易及び投資の問題
  • 貿易投資委員会による共同行動計画の提出を歓迎。今次共同計画の公表及び策定過程が将来共同を拡張していく上で重要であることを認識。
  • TILF特別勘定を通じてのプロジェクトの成功裡の開始を歓迎。本メカニズムの一層の活用を奨励。
  • 共同行動の進展していく性格を強調、CTIに対して共同行動の拡大・推進作業を続けるよう要請。
  • APEC地域における経済成長の原動力としての投資の増大する重要性を強調。
  • 豪州、韓国、フィリピンによる97年からのAPECビジネス・トラベル・カードの試験的導入を歓迎、また、査証免除取決め及び数次入国ビジネス査証等を通じてのビジネスの機動性促進を歓迎。
  • 税関手続、知的所有権、政府調達、紛争仲介、競争政策及び規制緩和の各分野での活動の進捗を留意。
    • WTOシンガポール閣僚会議への貢献
  • 貿易の自由化における多角的貿易制度の優越性を再確認。APECの多角的自由化過程へのコミットメントを再確認し、右強化及び補完の役割を果たそうという決意を確認。
  • 第一回WTOシンガポール閣僚会議の成功への強い支持を強調。UR合意等の完全、効果的かつ期限通り実施の重要性を強調。
  • 金融サービス交渉、基本電気通信交渉及び原産地規則交渉の時間内の成功裡完了のコミットメントを強調。海運サービスを含むその他サービス交渉の再開を期待。
  • ビルト・イン・アジェンダがWTO作業計画の基礎を提供することにつき見解を共有。分析・情報交換の過程という更なる作業の推進につき意見が一致。
  • 物品及びサービスのより自由かつ無差別の貿易追求のイニシャティヴを歓迎。情報技術分野の重要性を認識し、情報技術協定(ITA)のシンガポール閣僚会議までに解決するとのWTOにおける努力を支持し、全WTOメンバーの取組を要請。
  • 多角的貿易制度及び世界経済の発展への対応確保の上で中心的役割を果たすWTOの重要性を強調。既存及び新興の地域貿易取決めがWTO協定に整合的であること等の重要性を認識。WTOを全世界的なものとするために議定書に係る事項と市場アクセスについての実質的交渉の加速を奨励。
  • 経済・技術協力
    • 共同行動の進捗及び関連する閣僚会議の成果
  • 大阪行動指針第二部に記された経済・技術協力一層の強化の必要性を再確認。経済・技術協力に関するAPECの各作業部会及びフォーラムがAPECメンバー間の経済的格差縮小のため、また、持続可能な成長と衡平な開発達成のために共同で努力したことを賞賛。
  • 「前進のためのパートナー(PFP)」の成功裡の開始を歓迎し、全メンバーに対しPFPメカニズムの一層の活用を奨励。
  • 中小企業技術交流訓練センター(ACTETSME)、アジア太平洋エネルギー研究センター(APERC)、APEC労働市場情報(LMI)システム、貿易・投資データベース(TIDDB)システム、アジア太平洋情報基盤(APII)等の各種活動から得られる具体的利益を認識。
     a.人材養成(HRD)
     b.産業技術(IST)
     c.中小企業(SMEs)
     d.エネルギー
     e.運輸
     f.電気通信
     g.観光
     h.貿易・投資データ(TID)
     i.貿易促進
     j.海洋資源保全(MRC)
     k.漁業
     l.農業技術協力(ATC)
     m.持続可能な開発
    • 経済及び分野横断的問題
  • 経済委員会(EC)の報告を歓迎。APEC域内の持続的成長と衡平な発展の達成に関する問題の分析と研究の重要性を留意。経済見通し(エコノミック・アウトルック)及び経済・技術協力報告書の作成を賞賛。
  • 経済・技術協力、貿易・投資の自由化・円滑化の分野において、ECの下に設立されたタスクフォースで進行中のプロジェクトの重要性及び各APECフォーラムとの協力の必要性を強調。この分野においてインフラに焦点を当てることを歓迎。
  • インフラに関する「ベスト・プラクティス」円卓会議及び概説書の出版を賞賛。輸出信用機関による協力的対話の開始を歓迎。
  • 作業部会とAPECフォーラムは、分野横断的問題についての共同作業の可能性を一層の探求という任務を受託。また、分野横断的かつ連関性のある問題に対処するための緊密な協力を呼びかけ。
  • ECの2年間の任務遂行を賞賛すると共に、今後の新たなマンデートを承認。
    • 長期的かつ相互に関連した食糧、エネルギー、環境、経済成長及び人口問題(FEEEP)に関連する作業の進展
  • 長期的課題への取組に関する経済委員会の報告を歓迎。また、経済委員会の下に新たに食糧タスク・フォース(日豪共同議長)を設置したこと、作業計画につき合意したことを評価。タスク・フォースは首脳の要求に基づき、これら分野の域内での理解促進を図るため、まず域内の食糧問題を調査し、将来起こりうる食糧課題対処のための共同行動の選択肢を検討する。
  • エネルギー作業部会による作業(域内エネルギー市場の改革・自由化の努力、エネルギーが地域の経済発展の障害にならないことを確保するための努力、及びAPERCの地域エネルギー見通し作成作業)を留意。本件長期的課題に関連し、エネルギー作業部会の作業がFEEEPと関連していることを留意。
  • 1997年ヴァンクーバー非公式首脳会議への報告のための、関連フォーラムのFEEEP作業への貢献のコミットメントを歓迎。1997年9月のFEEEPシンポジウム(於カナダ)開催の提案を歓迎。来年国際的議論が行われる地球環境問題へ貢献するものであることに留意。
II.APECにおける経済協力及び開発の強化
  • 地域の持続可能な成長、衡平な開発及び経済的・社会的福利向上に向けてのAPECにおける経済協力・開発強化の重要性を認識。
  • この関連で、優先分野・具体的目標・指導原則等を明記した経済協力・開発強化に関する枠組みを採択。APECの経済・技術協力が結果指向であり、具体的里程標及び実績評価基準の必要性につき合意。共同による協力行動に優先事項を付与。
  • 自由化、円滑化及び経済・技術協力の相互補完的関係を強調。
III.民間部門の参加
  • APECビジネス諮問委員会(ABAC)の提言に留意し、民間/ビジネス部門のハイレベルからの助言を提供するというABACの役割を歓迎。ABACより経済首脳に提出するABAC報告書への評価を表明。
IV.機構及び財政問題
  • APEC事務局
  • 各会合開催に際してのAPEC事務局の作業に感謝。高級実務者に対し、管理事項に関するタスク・フォースの勧告の早期実施を指示。
  • 参加問題
  • マニラにおいては、限定された数の新規メンバーを認めるべく、凍結を延長しないことを決定。APECが開かれた発展しつつある過程であることを改めて表明。参加申請審査のための基準をより精緻にし、改訂した上で、97年ヴァンクーバー会合において採択。98年クアラルンプールにおいて、基準に基づき新規メンバー名を発表。99年オークランドで新規メンバーの参加を認める。
  • APEC作業部会への非メンバーの参加問題に関する包括的ガイドラインを採択。
  • 予算及び財政問題
  • プロジェクト提案の審査、予算手続きの能率化及び運営・管理の有効性及び効率性の向上に係る行財政委員会(BAC)の本年の作業を賞賛。1997年度予算案及び分担金を承認。
  • 貿易・投資の自由化・円滑化の推進に当たり、TILF特別勘定の成功裡の設置を賞賛。TILF特別勘定への日本の貢献に謝意を表明。
V.その他事項
  • 第9回閣僚会議への準備
  • 1997年にヴァンクーバーで開催される第9回APEC閣僚会議の準備に関し、カナダが貴重な説明を行ったことに対し謝意を表明。
  • 将来のAPEC会議開催地
  • 第10回及び第11回閣僚会議は、それぞれ1998年にマレイシアにおいて及び1999年にニュー・ジーランドにおいて開催。ブルネイの2000年の第12回閣僚会議の主催の申し出を歓迎。

  (ロ) APEC経済首脳宣言(仮訳)-ビジョンから行動へ-

(96年11月25日、スービック)

  1. われわれアジア太平洋経済協力会議の経済首脳は、本日、フィリピンのスービックで4回目の会合を行った。われわれの共同の成果である持続的な経済成長、雇用増加及び地域的安定は、成長指向型の政策、地域経済及び世界経済への最も広範な参加並びに安定しかつ安全な環境に対するわれわれの共通のコミットメントの成果である。われわれは、スービックに参集してこのコミットメントを強化するとともに、われわれの個別又は共同の努力の究極の目的が、持続可能な形ですべての市民の生活を豊かにし、生活水準を向上させることである点を再確認した。
  2. われわれは、3年前にブレーク島で、「国民のために安定、安全保障及び繁栄を実現するという共通の展望に基づいて、われわれの地域社会の精神を深めること」にコミットした。その1年後のボゴールでは、この地域の自由で開かれた貿易及び投資という目標にコミットすることにより、このビジョンを実現するためのプロセスを開始した。昨年の大阪では、貿易と投資の自由化、これらの円滑化並びに経済・技術協力を通じて築き上げられるわれわれの共通の目標へ到達するための将来の作業の枠組みについて合意した。
  3. 本日のスービックでは、われわれは、アジア太平洋地域のコミュニティの精神を深化させるとともに、持続的な成長と衡平な発展に対するコミットメントを確認した。
  4. われわれは、
       
    • 自由で開かれた貿易及び投資に関する指針を実施段階に移し、  
    • ビジネス円滑化措置を打ち出し、  
    • 世界貿易機関(WTO)における共通の目標を前進させることにつき意見の一致をみ、  
    • 経済・技術協力の強化のための方策を策定し、また、  
    • ビジネス部門をAPECプロセスの完全なパートナーとして関与させた。
APECマニラ行動計画
  1. われわれは、大阪行動指針を実施するとの自主的なコミットメントを履行するために、個別及び共同のイニシアティブをスービックに持ち寄った。われわれは、APECマニラ行動計画(MAPA)として提出されたこれらのイニシアティブを1997年1月1日から実施する。
  2. APECマニラ行動計画(MAPA)は、大阪行動指針に従ってボゴールの目標を2010年/2020年までに達成することを目指した漸進的かつ包括的な貿易及び投資の自由化の発展的なプロセスの最初の措置を含んでいる。われわれは、レビューと協議という継続的プロセスを通じてこの計画のダイナミズムを維持する決意である。われわれは、MAPAを拡充していくこと及び個別行動計画をその同等性と包括性を含めて改善することにコミットする。
  3. この目的のために、われわれは、閣僚が、個別行動計画を民間部門の意見も考慮しつつ見直すために1997年に会合するとの決定を行ったことを歓迎する。われわれは、来年、われわれが会合するときに閣僚がその結果を報告するよう要請する。
  4. われわれは、更に、閣僚が、早期の自主的な自由化がそれぞれのAPECメンバー内及びこの地域の貿易、投資及び経済成長に建設的な影響をもたらすであろう部門を特定し、これがいかに達成され得るかについての提言を提出するよう指示する。
  5. われわれは、また、われわれの市民に対しAPECによる共同行動に関する作業の成果を賞賛するものである。この成果は、ボゴールと大阪でまかれた種の初めての収穫であり、また、APECメンバー内及びメンバー間のビジネス活動を円滑化し、競争力を向上させ、取引費用を削減するものである。本年、われわれは、関税制度をより透明性が高いものにした。われわれは、関税分類を本年末までに、また、通関手続を1998年までに調和させることにつき意見の一致をみた。われわれは、われわれの規格を国際規格に整合化させ、相互の規格を認証することにつき意見の一致をみた。
  6. われわれは、閣僚に対し、通関手続の簡素化、知的所有権に関するコミットメントの効果的な実施、関税評価の調和、包括的なサービス貿易の円滑化及び投資環境の強化のための作業を1997年に一層促進するよう指示する。
多角的貿易体制
  1. われわれは、WTO協定に基づく開かれた多角的貿易体制の優越性を再確認する。われわれは、地域的及び多角的な貿易及び投資が相互に支持し合い、強化し合うことが不可欠であると考える。われわれは、サブ・リージョナルな取決めから得られる利益をすべてのメンバーに供与するとのAPECメンバーの努力を賞賛する。われわれは、APECにおいて自主的にコミットした広範な自由化措置及びすべてのメンバーが既に実施している大幅な開放を多角的貿易体制の一層の自由化に向けての触媒として機能させることを決意した。われわれは、WTOメンバーに対して、APECにおいて着手している漸進的な自由化及び透明性の向上のプロセスを更に前進させるよう呼びかける。
  2. われわれは、APECのメンバー内において開催される第1回WTO閣僚会議で、多角的かつルールに基づいた貿易体制を強化するために必要な活力と目的が生み出されることを確保するとの決意を確認する。この努力のために不可欠な基礎の一つが、それぞれのWTOメンバーによるウルグァイ・ラウンドのコミットメントの効果的な実施である。われわれは、すべてのメンバーが、懸案になっている電気通信分野及び金融サービス分野の交渉の終結並びにWTOを前進させるための実質的かつバランスのとれた更なる作業計画の作成に向け、断固として努力することを促す。
  3. われわれは、物品及びサービスのより自由かつ無差別な貿易のためのイニシアティブを支持する。APECの経済首脳は、21世紀における情報技術の重要性を認識し、2000年までに関税を大幅に撤廃する情報技術協定を、ジュネーブで交渉が進展するに伴って柔軟性が必要であることを認識しつつ、WTO閣僚会議までにまとめるよう呼びかける。
  4. われわれは、WTOを全世界的なものとするために、議定書に係る事項と市場アクセスに関する実質的な交渉を加速することを奨励する。
経済・技術協力
  1. われわれのコミュニティのビジョンは、われわれの努力がすべての市民の利益となる場合にのみ強化されることを認識する。貿易及び投資の課題への不可欠な補完的要素である経済・技術協力は、APECメンバーが、開放的な世界貿易環境へより完全に参加し、かつ利益を得る上で有益である。これにより、自由貿易が、持続可能な成長及び衡平な発展並びに経済的格差の縮小に確実に寄与することとなる。
  2. 本年、われわれは、経済・技術協力に関する作業を大いに進展させた。これに一層の弾みを与えるために、われわれは、閣僚が採択したAPECにおける経済協力・開発の原則の枠組みに関する宣言を支持する。われわれは、閣僚に対し、関連するAPECのフォーラムの活動にこれらの原則を適用し、開発に人間らしさを与え、それにより以下のテーマを優先事項とするよう指示する。すなわち、人材の養成、安定しかつ効率的な資本市場の育成、経済インフラの強化、将来の技術の活用及び環境的に持続可能な成長の促進及び中小企業の育成である。
  3. われわれの経済協力指針は、すべてのAPECメンバーが貢献をするという真のパートナーシップに基づき実施される。われわれは、閣僚に対し、民間部門と協力し、すべてのAPECメンバーによるこれへの参加を慫慂する方途を特定するよう指示する。さらに、われわれは、閣僚に対し、女性と若者が完全に参加できるよう特別な配慮を払うことを要請する。
  4. 健全な環境及びわれわれの市民の生活の質の向上を確保しつつ急速な経済成長を進めることは基本的な課題である。この観点から、われわれは、人材養成、中小企業、産業技術、電気通信、エネルギー及び持続可能な開発をそれぞれ担当する大臣会合を含む様々なAPECのフォーラムで行われている作業を歓迎する。
  5. この課題に取り組むために、われわれは、閣僚が、持続可能な海洋環境、クリーン・テクノロジー及びクリーン・プロダクション並びに持続可能な都市を含むAPECにおける持続可能な開発に向けた当初の作業計画実施のため、民間部門と調整を行いつつ具体的なイニシアティブを策定するよう指示する。われわれは、閣僚が持続可能な成長に関する作業を強化し、1997年にバンクーバーで開催される次の首脳会議に進捗状況を報告するよう要請する。われわれは、相互に関連する食糧、エネルギー、環境、経済成長及び人口の問題について既に作業が進められていることに留意する。われわれは、これらの課題についての検討を行う様々な国際的フォーラムが来年開催されることにかんがみ、これらの重要課題につき一層の進展のための努力を行うことで意見の一致をみた。
  6. われわれは、安定した資金フロー及び為替レートを維持する上での健全なマクロ経済政策、この地域における各メンバー内の金融・資本市場の発展の加速、並びにインフラ開発への民間部門の参加の促進の重要性を再確認する大蔵大臣会合の結論を支持する。われわれは、大蔵大臣に対し、これらの目的を達成するための具体的かつ実際的な措置を探求するよう要請する。
  7. インフラの欠如は、持続的な成長を著しく制約する。公的資金は、この地域の膨大な需要に十分に対応することはできないので、民間部門による投資が動員されなければならない。金融、経済、商業及び規制に係る適切な環境を整備することが、このような投資を促進する際に鍵となる。
     われわれは、関連する閣僚に対し、民間部門の代表並びに輸出信用機関(*)を含む国内的及び国際的な金融機関と共に、この目的のための枠組みを策定するよう要請する。
    (*訳注:日本の場合、貿易保険機関を指す。)
ビジネス部門の役割
  1. われわれは、APECプロセスにおいてビジネス部門が中心的な役割を果たすことを確認する。本年、APECビジネス諮問委員会(ABAC)がわれわれの求めに応じて組織され、招集された。われわれは、ここにABACが行った価値ある作業に謝意を表明するとともに、ABACの提言を実施する方法を検討するため、来年、ビジネス部門との緊密な作業を行うことを閣僚に対し求める。
  2. 特に、われわれは、ABACが求めているビジネス関係者の移動の円滑化、投資フローの促進、投資保護策、すなわち、透明性、予測可能性、仲裁及び契約の執行の面での強化、地域内の自由職業資格の整合化、インフラ整備計画への民間部門の参画、中小企業を援護する政策の策定並びに経済・技術協力へのビジネス部門の一層の参加について閣僚が検討することを求める。
  3. われわれは、ビジネス部門との対話の機会を歓迎し、APECビジネス・フォーラムを召集したフィリピンのイニシアティブに感謝をもって留意した。
共有するビジョン
  1. われわれは、APECの強さがその多様性に由来していること、また、われわれがアジア太平洋コミュニティというビジョンを共有することによって結ばれていることを認識する。したがって、APECのアプローチに則ったコミュニティの精神を深化させることが、APECが引き続きこの地域及び世界に積極的な影響を与える上で死活的重要性を有している。このコミュニティというビジョンが必要としているのは、社会のあらゆる分野においてAPECの成功とのかかわり合いを強化することである。このため、われわれは、APECにおいて一層の官民間のパートナーシップを育むことにコミットする。また、われわれは、人と人との一層のつながり、特に教育及びビジネスに携わる人々の間のつながりを促進することをに大きな価値を置く。
  2. 最後に、われわれは、APECプロセスが、来世紀までにすべての市民が生活の改善を実感できるような、実質的、具体的、測定可能かつ持続可能な成果をもたらすことへの確信を表明する。

  (ハ) 経済協力・開発の強化に向けた枠組みに関する宣言(骨子)(仮訳)

(96年11月23日、マニラ)

 APECメンバーの閣僚は1996年11月22日及び23日マニラで会合し、大阪行動指針第2部(経済・技術協力)を実施する際の指針として、「経済協力・開発の強化に向けた枠組み」を採択することを決定。

1.目標(APECにおける経済・技術協力と開発の目標は以下のとおり。)
 ・持続可能な成長と衡平な発展の達成  ・経済格差の縮小、
 ・経済的・社会的福利の向上      ・地域共同体の精神の深化
2.指導原則(以下の諸原則に従い、経済協力・開発を遂行する。)
 ・相互の尊重及び平等         ・互恵及び相互支援、
 ・建設的で真のパートナーシップ    ・コンセンサスの形成
3.APECの経済・技術協力の性格
 ・結果指向(明確な目的、里程標及び実績評価基準が必要)
 ・民間部門の参画・イニシアチヴを重視
 ・各メンバーの自主的貢献とその成果の共有
4.テーマと優先事項(下記の6テーマの共同協力行動に優先的に取り組む。)
 ・人材養成
 ・安定した安全で効率的な資本市場の発展
 ・経済インフラの強化
 ・未来に向けた技術の活用
 ・環境的に健全な成長を通じた生活の質の確保
 ・中小企業のダイナミズムの発展強化