(ハ) テロリズムに関する宣言(仮訳)

(96年6月27日、リヨン)

 ダハランにおける卑劣な攻撃により多数の米国市民の命が奪われ罪のない何百人もの人々が傷つけられたことを受け、我々主要先進7ヵ国は、この残虐で且つ正当化され得ない行為を非難するとともに、この厳しい試練に直面した米国及びサウディ・アラビアに対し、心からの結束の意を表す。我々は、犠牲となった者に対し哀悼の意を表すとともに、その遺族と米国及びサウディ・アラビアの国民とに対し深甚なる弔意を表す。我々は、また、この他の最近の非道なテロ事件を非難する。
 我々は、これらの悲劇的な出来事により、今日のすべての社会及び国家にとってテロリズムが重大な挑戦であるとの信念を一層強めた。我々は、改めて、その犯人又は動機を問わずあらゆる形態及び主張のテロリズムを無条件に非難する。テロリズムは、憎むべき犯罪であり、その犯罪者を法の裁きにかからしめる上で免責又は例外はあってはならない。
 我々は、努力と決意を結集し、すべての法的手段を用いてテロリズムと闘うという共通の決意を宣言する。オタワにおいて8ヵ国によって採択された行動指針に沿って、我々はすべての国に対し、テロリストへのいかなる支持も行わないよう強く求める。我々は、資金の調達、テロ活動の計画、武器の調達、暴力行為の呼びかけ、及びテロ行為の勧奨を含むテロリスト及びその支援者の活動を封じるために、一層努力を傾注するとともに、他の国に対して、我々とともに努力するよう奨励する。テロ目的のために核物質、生物及び化学物質並びに毒素が使用されることの脅威に対し、特別な注意が払われるべきである。
 我々は、テロリズムとの闘いを我々の最優先課題と認識し、関連する国際条約をすべての国が遵守する必要があることを重ねて表明する。犯罪に対処するために明日8ヵ国が検討する勧告の多くは、その実施に伴い、我々の法執行当局がテロリズムと闘うべく協働するためのより適切な体制をもたらすこととなる。また、我々は、さらに、すべての国と協力し、国際社会がテロリズムを打破する能力を強化するすべての措置を検討し実施する決意である。この目的のため、我々は、更なる行動を検討し勧告するための閣僚会合を7月にもパリにおいて開催することを決定した。




 (ニ) ボスニア・ヘルツェゴヴィナに関する決定(仮訳)

(96年6月29日、リヨン)

 我々は、和平合意に対する支持、また、二つのエンティティから構成され民主的かつ多元的なボスニア・ヘルツェゴヴィナ国家の確立に対する支持を確認する。
 和平合意の実施の第一義的責任は、異なる勢力とその指導者にある。和平合意遵守と市民社会再建への積極的参加を抜きには、国際社会及び主要援助国が和平履行と復興の努力の主たる負担を負うことを期待することはできない。
 和平履行評議会フィレンツェ会合で採択された結論を支持し、我々は、以下の決定を行った。

1.選挙及び政治機構

  • 我々は、欧州安全保障・協力機構(OSCE)により9月14日に設定された選挙の準備に大きく貢献する。このため、我々は、なかでも2000人の監視要員の配置及び独立したメディアの展開に貢献し、OSCEに対する支援を強化している。
  • 当事者もまた、自らの役割を果たし、移動及び結社の自由、すべての立候補者のメディアへのアクセス、難民及び避難民による投票権の行使を含め、自らのすべてのコミットメントを実施しなければならない。
  • 我々は、国連安保理決議第1022号に従い、最初の自由且つ公正な選挙の実施の後、10日目の日に制裁措置を国連安保理が終了させることを想起する。
  • 我々は、安全且つ安定した環境の創設、後方支援の供与、必要な場合にはIFORの資源の集中的投入を含め、これらによって、選挙の過程へのIFORの支援が強化されることを要請する。
  • 我々は、上級代表が、大統領評議会、閣僚評議会、議会、憲法裁判所及び中央銀行といった新たな機構の確立のために当事者と行っている準備作業を支持する。我々は、将来の政府当局に対し、必要な憲法上及び法律上の支援を供与する。我々は、すべての関係機関の同意により、中央国家と各エンティティの機構の最初の任期を調整することを勧告する。
2.国際刑事裁判所
  • すべての国家及びエンティティは、和平合意の下、起訴された者を逮捕する行動をとることにより、国際刑事裁判所と全面的に協力すべき義務を負っている。国際刑事裁判所によって起訴されたすべての者は、ハーグの同裁判所に出頭すべきである。
     戦争犯罪の起訴を受けた者の公職の保持、又は、これらの者が公選の職に就こうとする試みは、和平合意に対する明白な違反である。我々は、カラジッチ氏がすべての公的職務から速やかにかつ永久に引退し、政府の決定に一切関与しないことを強く要求する。同氏は、スルプスカ共和国憲法に規定された方法によって、すべての権力を新たな指導者に委譲すべきである。スルプスカ共和国の新しい指導部は、和平合意の実施につき、国際社会と協調していく意志を示すべきである。このことによって、和平合意の下で利用可能な支援がスルブスカ共和国に届くことができる。
     制裁に関する規定を含む国連安保理決議第1022号を想起し、我々は、上級代表及びIFOR司令官を支持し、必要に応じ、彼らの勧告に従う。我々は、和平合意のすべての当事者に対する制裁措置の適用を検討する用意がある。
  • 我々は、当事者の国際刑事裁判所との協力義務と一致する形で、すべての当事者が幅広い赦免の法を実施することを求める。
3.安定化計画
  • 和平プロセス安定化のための2カ年計画に関する仏提案に留意し、我々は、民生面での安定化の計画の目的、手段及び時間的枠組みを示した行動計画を具体化するよう、6月14日の和平履行評議会フィレンツェ会合が同評議会の運営委員会に対して行った要請を支持する。
4.復興
  • 経済復興は、永続的な平和にとって死活的である。我々は、すべての支援国に対し、1996年について表明された支援の支払いを加速し、少なくともその支払いの50%を1996年12月までに、また100%を1997年6月までに行うためのあらゆる努力を払うよう要請する。
  • 経済支援は、和平プロセスの履行状況に応じて、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのすべての当事者に供与されるべきである。9月14日の選挙の成功裡の実施後には、運営委員会が次回支援国会合の開催につき決定を行うことが可能となる。
  • 我々は、協力と和解を奨励するプロジェクトを支持する。我々は、中央銀行、新たな通過、共通の関税政策、統一的支払いシステム、国、エンティティ及び県の間の歳入の適正な配分を含む、共通の経済組織と政策を当事者が策定するよう呼びかける。
  • この関連で、我々は、IMFが経済の安定化及び改革の計画について合意するためにボスニア・ヘルツェゴヴィナと話し合うことを待望する。
  • 我々は、上級代表の調整任務の遂行を完全に支持することを確認する。
  • 我々は、地雷除去活動、難民への住居の供給及び雇用創出プロジェクトに高い優先度が与えられることを主張する。
5.難民及び法の支配
  • 我々は、当事者が難民及び避難民が自由にかつ安全に帰還できることを保証するよう要求する。難民の早期帰還は、ボスニア・ヘルツェコヴィナの経済的回復の加速に役立つ。
  • 我々は、難民の帰還計画を含め、UNHCRの努力を支持する。この計画の実施は自主的拠出の増加を意味しよう。
  • IFORは、移動の自由に関して引き続き注意を払わなければならない。
  • 復興プログラムは、難民の帰還を促進すべきである。我々は、ボスニア・ヘルツェコヴィナの8の地域にわたる19の目標区域を優先させ、そのことにより本年末までに18万5千人の帰還を促進することを歓告する。
  • 所有権の問題は、早急に解決されなければならない。
  • 法の支配を強化するために、我々は、法務に係る技術支援を行う用意がある。我々は、国際警察タスク・フオースの利用に供する手段を増加させ、同タスク・フオースの有効性を高めることを確保する。
6.地域及び安全保障に関する問題
  • 我々は、6月14日にフィレンツェで署名された軍備管理協定に規定されている日程に従うことの必要性を強調する。我々は、OSCEに対し軍備管理協定の遵守状況を検証するための手段を提供し、また、同協定の履行を注意深く見守る。
  • ブルチコ問題を解決するには、第三の仲裁官について当事者間で早期に合意することを含め、より急速な進展が図られなければならない。我々は、当事者に対し、可及的速やかに解決策を見いだすよう求める。
  • 我々は、南東欧州における安定、良好な隣国関係及び経済開発を促進するためのイニシアティブを支持する。
  • 我々は、ワーキング・グループによって行われている。国あるいは民族レベルでの少数民族に関する作業及び承継問題に関する作業の加速を求める。我々は、また、関係国がこれらワーキング・グループと十分協力するよう要請する。
7.これらの決定は、和平協定によって設定された枠組みの中で実施されるべきである。