第2章 地域別に見た外交 第8節 アフリカ 1 概観 アフリカは、54か国に約15億人(1)を擁し、2050年には世界人口の4分の1を抱えるようになるといわれるなど、若く、エネルギーと潜在力にあふれた地域である。豊富な鉱物資源や高い経済成長率を誇り、日本の経済安全保障やバリューチェーンの確保の観点からも重要な地域であると言えるほか、更に開拓すべき投資先として世界の関心も集めている。 加えて、アフリカは、いわゆる「グローバル・サウス」の中核を占める地域であり、近年の経済成長やアフリカ連合(AU)(2)を中心とした政治・経済統合の動きも相まって、国際社会における存在感を一層強めている。アフリカ諸国との連携強化は、責任あるグローバル・ガバナンス(3)の構築を含め、日本が重視する外交政策を国際社会で推し進めていく観点からも、極めて重要と言える。 一方、アフリカ地域では依然として、紛争やテロ、政治的混乱が平和と安定を脅かしている地域も存在し、また、貧困や飢餓といった深刻な開発課題も抱えている。こうしたアフリカ地域が直面する諸課題は世界の課題にも直結し得るものであり、早急な対策が必要となっている。 2025年もアフリカの複数の地域において、不安定な政治・治安情勢が見られる年となった。1月末以降、コンゴ民主共和国東部において武装勢力による攻撃が激化し、同地域の主要都市を実効支配した。アフリカ東南沖のインド洋に位置するマダガスカルでは、9月末以降、若者を中心とした抗議活動が発生し、大統領の辞任・政権交代に要求が発展した。同大統領の国外退避に伴い、軍司令官が暫定大統領に就任した。アフリカ西端部に位置するギニアビサウでは、11月に大統領選挙が実施されたが、その暫定結果発表予定日の前日に、同選挙に立候補した現職のエンバロ大統領らが軍に拘束され、陸軍参謀総長が暫定大統領に就任するクーデターが発生した。また、西アフリカ中央部のギニア湾岸に位置するベナンでは、12月に軍の一部によるクーデター未遂が発生した。サヘル地域(4)では2020年以降、マリ、ブルキナファソ及びニジェールで軍事的政権奪取が発生した後もテロの脅威が続いている。 2025年、ガボン、カメルーン、コートジボワール、ギニアビサウ、中央アフリカ、ギニア、マラウイ、セーシェル、タンザニアでは大統領選挙が行われた。 4月、岩屋外務大臣は、セネガルを訪問し、同国大統領、首相及び外相と意見交換を行った。また、この機会に、岩屋外務大臣は、日本の支援で1984年に設立したセネガル日本職業訓練センターを視察するとともに、現地の日本企業関係者と意見交換を行った。8月に横浜で開催した第9回アフリカ開発会議(TICAD(5) 9)には、33人の首脳級を含むアフリカ49か国に加え、共催者(国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)(6))、国際機関、民間企業、国会議員及び市民団体等が参加し、「革新的な課題解決策の共創」をテーマに、「経済」、「社会」、「平和と安定」の3分野について活発な議論が行われた(8ページ 巻頭特集参照)。特に、各分野を横断する重要事項として、「民間セクター主導の持続的な成長」、「若者・女性」、「地域統合及び域内外の連結性」に焦点が当てられた。3日間の議論の成果は、首脳宣言である「TICAD 9横浜宣言」にまとめられ、採択された。 一つ目の柱の「経済」では、日本から、民間セクター主導の持続的な成長の促進、地域統合と域外との連結性強化、産業エコシステム強化による経済多角化などに関する日本の取組を紹介した。アフリカ各国や国際機関等を含む参加者からは、アフリカの潜在力をいかした経済成長のため、鉱物資源の活用を含む産業の育成、経済の多角化、法制度整備等のグッド・ガバナンス、インフラ整備やアフリカ大陸自由貿易経済圏(AfCFTA)等による域内貿易やバリューチェーン強化、デジタル化、教育・人材育成等の人への投資、債務問題、適切な資金調達、エネルギーアクセス改善等が指摘されるとともに、日本企業の更なるアフリカへの投資やパートナーシップの強化に期待が示された。 二つの目の「社会」では、日本から、誰一人取り残すことのない社会をアフリカと共に創り上げるため、教育・人材育成、保健、環境、防災分野に関する日本の取組について紹介した。アフリカ各国や国際機関等を含む参加者間での議論の中では、質の高い教育へのアクセス改善、職業訓練といった人への投資や、若者・女性の能力強化、保健システムの強化、水・衛生、気候変動対策、防災等の取組が不可欠との指摘があるとともに、日本の更なる協力への期待が示された。 三つ目の「平和と安定」に関しては、日本から、「平和と安定」は、持続的な経済成長、包摂的な社会の礎であるとして、同分野における日本の取組を紹介した。アフリカ各国や国際機関等を含む参加者は、開発と繁栄にとって平和と安定が不可欠の前提であることを強調しつつ、アフリカ自身による解決、アフリカの機構や取組の強化、若者・女性の役割強化、紛争の予防や根本原因への対処等の必要性や国連安全保障理事会改革の重要性等が指摘されたとともに、更なる協力強化への期待が示された。 (1) 2023年7月時点(“World Population Prospects, 2024”, Population Division, Department of Economic and Social Affairs, United Nations) (2) AU:African Union (3) グローバル・ガバナンス:国内のように上位の統治機構が存在しない国際社会において、国家間にまたがる課題への対応に予見可能性や安定性、秩序を持たせるための取組(機関、政策、規範、手続、イニシアティブの総体) (4) 「サヘル」とはサハラ砂漠の南に位置する広範囲な地域のことで、厳密な定義はないが、一般にモーリタニア、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、チャドなどが位置する地域を指す。 (5) TICAD:Tokyo International Conference on African Development (6) AUC:African Union Commission