第2章 地域別に見た外交 第5節 欧州 2 欧州地域情勢 (1)欧州連合(EU) EUは、総人口約4億5,000万人を擁し、27加盟国から成る政治・経済統合体であり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、国際社会の共通の課題に共に取り組む、日本の戦略的パートナーである。 〈EUの動き〉 EUは、前年12月に発足した新体制の下、2025年は欧州防衛の強化を最優先課題として取り組んだ。3月、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、(1)債務上限緩和による防衛支出増、(2)加盟国に1,500億ユーロ規模の融資を行う欧州安全保障行動(SAFE)規則、(3)民間資本の動員の三つを柱とする欧州再軍備計画(ReArm Europe Plan)を公表した。また、同月、欧州防衛白書を公表し、強力な防衛産業基盤を構築するための解決策を提示するとともに、日本を始めとするインド太平洋のパートナーとの防衛産業協力の機会を探求すべきであるとした。ウクライナ情勢への対応は引き続きEUにとって最優先課題の一つであるが、3月及び6月の欧州理事会(EU首脳会合)では、ウクライナ情勢の結論文書に関しハンガリーが反対し、ハンガリーを除く26の加盟国首脳が支持した内容を公表するなど、加盟国間の立場の相違が見られた。EUはウクライナに対し、総額1,775億ユーロ(2025年10月1日時点)の人道・財政・軍事支援を実施してきた。2025年、EUは新体制の下で域外国との首脳協議を相次いで実施し、特に5月、2020年の英国のEU離脱後初となるEU英国首脳協議を開催し、欧州の安全保障・防衛強化に共に取り組むことを確認した。 〈日・EU関係〉 日本とEUは、2019年に発効した日・EU経済連携協定(日EU・EPA)(7)及び2025年1月に正式発効した日・EU戦略的パートナーシップ協定(日EU・SPA)(8)の下、協力を強化している。 7月、石破総理大臣は、来日したコスタ欧州理事会議長及びフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との間で、第30回日・EU定期首脳協議を実施した。日本とEUは、2024年11月に公表した日・EU安全保障・防衛パートナーシップに基づき、サイバー、防衛産業、海洋安全保障、宇宙、情報などの分野での協力を着実に実施していくことで一致した。また、双方は、「日・EU競争力アライアンス」の立ち上げ、経済安全保障、産業政策、イノベーション政策、エネルギーなどの幅広い分野で具体的な協力を推進することで一致した。 4月、第2回日・EU外相戦略対話を実施し、岩屋外務大臣とカッラスEU外務・安全保障政策上級代表は、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識を改めて共有するとともに、岩屋外務大臣から、「欧州防衛白書」において、日本を含むインド太平洋のパートナーとの安全保障・防衛協力強化について明記されたことを高く評価すると述べた。岩屋外務大臣は、ミュンヘン安全保障会議の機会に、また、第30回日・EU定期首脳協議の機会に、カッラスEU外務・安全保障政策上級代表と会談を行った。 第30回日・EU定期首脳協議 (7月23日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ) 第2回日・EU外相戦略対話(4月4日、ベルギー・ブリュッセル) 11月、英利アルフィヤ外務大臣政務官は、ブリュッセルで開催された「第4回EUインド太平洋閣僚会合」に出席し、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分な中で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化することの重要性を訴えた。 EUは、米国に次ぐ経済規模を有し、日本の輸入相手の第3位、輸出相手の第3位、対日直接投資残高の第1位の位置を占めるなど、経済面でも日本にとって重要なパートナーである。2019年に日EU・EPAが発効したことにより誕生した世界のGDPの約2割近くを占める巨大な経済圏の下、日・EU間のつながりは一層強いものとなっている。日EU・EPAについては、協定発効から6年が経過し、拡大傾向にある日・EU貿易を一層発展させるため、両者は、物品貿易、貿易の技術的障害、サービス貿易・投資・電子商取引、政府調達、貿易と持続可能な開発、規制協力などに関する各専門委員会・作業部会を通じて協定の各分野における着実な実施及び運用を確保してきている。EUとのより幅広い戦略的連携を推進する他の取組として、5月、岩屋外務大臣は、武藤容治経済産業大臣、シェフチョビチ欧州委員会貿易・経済安全保障担当兼機関間関係・透明性担当委員との間で、第6回日・EUハイレベル経済対話を開催し、経済安全保障分野における連携、サプライチェーンの強靱(じん)化のための協力及び世界貿易機関(WTO)を中核とするルールに基づく多角的自由貿易体制を維持するための日・EU間の連携の重要性などを確認した。今後も、日・EU定期首脳協議の共同声明及び関連文書の着実な実施、日EU・EPAの引き続きの活用、日・EUハイレベル経済対話での連携などにより、日・EU経済関係の更なる発展に向けた取組を推進していく。 第6回日・EUハイレベル経済対話(5月8日、東京) (2)英国 5月、イングランドで地方選挙が実施され、ファラージ党首率いる右派ポピュリスト政党「改革UK党(Reform UK)」が保守党や労働党を大きく上回る議席を獲得した。6月、スターマー政権は国家安全保障戦略、産業戦略及び貿易戦略を立て続けに発表した。国家安全保障戦略では「NATOファースト」の方針を発表しつつも、インド太平洋を欧州・大西洋に次ぐ優先地域とし、日本をインド太平洋地域、そして世界の安全保障上、死活的に重要なパートナーであると位置付けた。9月、住宅購入時の税金の過少支払を指摘されていたレイナー副首相が辞任したことに伴い、内閣改造が実施された。ラミー外務・開発相は副首相、大法官兼司法相に就任し、新たにクーパー外務・開発相(前内務相)が就任した。 日英の政府間では、首脳・外相を始め様々なレベルで対話が活発に行われた。石破総理大臣は、4月にスターマー首相と電話会談を行い、米国の関税措置の影響を踏まえつつ、経済分野を中心に幅広くかつ詳細に議論した。高市総理大臣は、11月、G20ヨハネスブルグ・サミットの際にスターマー首相と会談を行った。 2026年1月、スターマー首相が初めて訪日し、高市総理大臣と会談を行い、両首脳は、「強化されたグローバルな戦略的パートナー」として、あらゆる分野において協力をより一層強化していくことで一致するとともに、「日英戦略的サイバー・パートナーシップ」に関する共同声明を発出した。 日英首脳会談 (2026年1月31日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ) 3月にはラミー外務・開発相及びレイノルズ・ビジネス貿易相が訪日し、岩屋外務大臣及び武藤経済産業大臣と共に、日英経済版2+2閣僚会合(経済版2+2)を初めて実施した。岩屋外務大臣は、ラミー外務・開発相との間で、3月の同外相訪日時及び同月のG7外相会合の際に会談を行った。また、岩屋外務大臣は、クーパー外務・開発相との間で、9月に電話会談を行った。茂木外務大臣は、11月、G7外相会合の際にクーパー外務・開発相と会談を行った。 安全保障面では、6月、日本、英国及びイタリアが共同開発を進めるグローバル戦闘航空プログラム(GCAP)(9)の機体設計及び開発を担う合弁会社「エッジウィング」が英国に設立された。8月から9月にかけて、英国空母「プリンス・オブ・ウェールズ」率いる英国空母打撃群(CSG(10)25)が横須賀及び東京に寄港し、太平洋未来フォーラム(PFF)(11)を始めとする多くのイベントが艦上で開催された。 文化面では、5月の大阪・関西万博の英国ナショナルデーの際、ナンディ文化・メディア・スポーツ相が訪日し、日英の人的交流促進のための英国の新たな取組である「Musubi」イニシアティブの立ち上げが発表された。奨学金支援、スポーツ・文化交流、ビジネスでの女性活躍促進などを通じて、日英の次世代のリーダーの育成が期待されており、岩屋外務大臣からも同イニシアティブを歓迎するとのビデオ・メッセージが発出された。 (3)フランス 2024年12月、マクロン大統領は、不信任動議可決によるバルニエ内閣の総辞職後、与党連合のパートナーであるバイルー氏を首相に任命した。バイルー首相は大規模な歳出削減等を試みたが、議会において賛同は得られず、9月8日、フランス国民議会において内閣信任投票が否決された。これに伴い、バイルー首相は辞表を提出し、バイルー内閣は総辞職した。翌9日、マクロン大統領はルコルニュ軍事相を新たな首相に任命し、10月5日、ルコルニュ内閣が発足した。しかし、組閣人事に対して野党等から批判が寄せられ、十分な支持を得られず、翌6日、ルコルニュ首相はマクロン大統領に辞表を提出した。その後、マクロン大統領は、10日にルコルニュ氏を再度首相に任命し、与野党との協議を経て、14日、ルコルニュ内閣(第2期)が発足した。野党から内閣不信任動議が提出されるも、ルコルニュ首相は、年金改革の適用の一時停止等を発表し、不信任動議は否決された。 外政面では、ロシアによるウクライナ侵略に関し、ウクライナ支援の継続と対露制裁の強化に取り組んでいる。マクロン大統領は、国際社会におけるウクライナ支援を主導する役割を果たしている。2月には、ウクライナと欧州の安全保障に関する欧州緊急首脳会合を行った。また、3月には、ウクライナの平和と安全保障に関する首脳会合をそれぞれパリで開催し、英国等と共に有志連合と呼ばれる会合を開催している。8月、マクロン大統領は、ゼレンスキー・ウクライナ大統領及びその他欧州関係国の首脳と共にワシントンD.C.(米国)を訪問し、トランプ米国大統領とウクライナ情勢について協議した。 また、中東情勢に関しては、フランスは、ガザを始めとするこの地域の永続的な平和を保障することのできる唯一の解決策である二国家解決を支持しており、具体的な貢献に取り組んでいる。フランスは、サウジアラビアと共同で、7月28日から30日まで二国家解決の実現に関する国連会議を開催し、「ニューヨーク宣言」を発出した。 日仏関係については、岩屋外務大臣とバロ欧州・外務相は、2月のG20外相会合及び3月のG7外相会合の機会に、それぞれ外相会談を実施した。4月、石破総理大臣はマクロン大統領と首脳電話会談を実施し、米国の関税措置やそれに対抗する中国の報復措置が世界経済や多角的貿易体制に与える影響を踏まえつつ、経済分野について幅広くかつ詳細に議論を行った。5月には、岩屋外務大臣が訪仏し、バロ欧州・外務相と外相会談を実施した。同会談において、両外相は、インド太平洋地域における安全保障分野での日仏協力を高く評価するとともに、経済安全保障分野においてレアアース等重要鉱物の安定供給確保のための協力が進んでいることを歓迎し、価値や原則を共有する「特別なパートナー」である日仏両国で一層緊密に連携していくことで一致した。さらに、2027年のパリ日本文化会館30周年、2028年の日仏友好170周年、2029年のパリ国際大学都市日本館100周年といった佳節を控え、準備に両国で取り組んでいくことを確認した。また、岩屋外務大臣は、バイルー首相表敬も実施した。岩屋外務大臣は、9月にもバロ欧州・外務相と電話会談を行った。茂木外務大臣は、11月、G7外相会合の際にバロ欧州・外務相と会談を行った。高市総理大臣は、11月、G20ヨハネスブルグ・サミットの際にマクロン大統領と意見交換を行った。 日仏外相会談(11月12日、カナダ・ナイアガラ) また、大阪・関西万博のフランス・パビリオンには多くの訪問客が訪れるとともに、フランスからも政府要人を始め、数多くの地方自治体関係者、民間企業関係者が訪れ、二国間関係の強化につながった。 (4)ドイツ 2024年11月にショルツ(社会民主党(SPD))政権は、財政政策などをめぐる路線対立を受け、自由民主党(FDP)が11月に政権を離脱し、SPDと緑の党の2党による少数政権となったが、同年12月、ショルツ首相が自身に対する信任投票動議を連邦議会に提出した結果、同動議が否決され、同首相はシュタインマイヤー大統領に対し、連邦議会選挙の前倒し実施に向け、連邦議会を解散することを提案した。同大統領は与野党との協議を経て、12月27日に連邦議会を解散し、2025年2月23日に連邦議会選挙を実施することとなった。連邦議会選挙の結果、野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が第1党に復帰し、第3党に後退した社会民主党(SPD)との連立交渉を経て、4月、連立協定に合意した。5月6日には、連邦議会においてメルツCDU党首が首相に選出され、CDU/CSUとSPDによる連立政権が発足した。また、同選挙では、厳格な移民政策などを掲げた極右政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」が第2党に躍進した。 外交面では、メルツ首相は欧州諸国と緊密に連携し、EUにおいて積極的な役割を果たす決意を強調している。また、ウクライナ情勢に関しては、メルツ首相は就任後間もないタイミングで英国、フランス及びポーランドの首脳と共にウクライナを訪問したほか、同国への地対空ミサイルシステム「パトリオットシステム」の供与を含め、引き続き積極的に同国支援を推進している。政権発足前の3月には、CDU/CSUとSPDの提案により、国防費増額が可能となる基本法改正を行ったほか、6月のNATO首脳会合においては、各国が合意した目標を大幅に前倒しをし、2029年までにGDP比3.5%の中核的国防要求の目標達成を表明するなど、現下の国際情勢を受けた安全保障の強化に向けて積極的に取り組んでいる。また、インド太平洋地域の日本を含む同志国との関係を重視し、9月には米国・ニューヨークにおいてヴァーデフール外相の主催により「欧州・インド太平洋パートナーズ会合」を開催し、岩屋外務大臣が出席した。 日本との関係では、ドイツは価値や原則を共有する重要なパートナーであり、メルツ政権発足後も引き続き活発なハイレベル交流が行われている。6月には日独首脳会談と日独外相会談が実施されたほか、シュタインマイヤー大統領が大阪・関西万博の機会に訪日し、石破総理大臣と会談した。8月にはヴァーデフール外相が訪日し、岩屋外務大臣と第1回日独外相戦略対話を実施した。11月にはG20ヨハネスブルグ・サミットに出席するため南アフリカを訪問した高市総理大臣が、メルツ首相との間で初の日独首脳会談を実施した。安全保障面では、9月には航空自衛隊F15機等が初めてドイツに寄航するなど、これまで両国のアセット派遣や日・独物品役務相互提供協定(日独ACSA)発効を通じた協力が更に進展した。また、経済安全保障の分野においても、2024年7月に首脳間の合意により創設された日独経済安全保障協議の第2回協議を2025年10月に東京で実施するなど、協力が深まっている。日独知的・人的交流の基盤であるベルリン日独センターは2025年に設立40周年を迎え、10月にヴァーデフール外相が同センターを訪問し講演を行ったほか、12月には日独フォーラムと合同で日独関係をテーマに公開討議を行った。 日独首脳会談(11月23日、南アフリカ・ヨハネスブルグ 写真提供:首相官邸ホームページ) (5)イタリア メローニ政権は、右派政権として安定した政治基盤を実現しており、外交・経済面では欧米協調路線を維持している。内政では不法移民対策、少子高齢化対策が引き続き課題となっている。非正規移民の抑制に取り組むと同時に、国内の労働力不足を踏まえ、EU域外からの正規入国枠を拡大した。 2025年は大阪・関西万博もあり、イタリアから多くの要人が訪日するなど、両国の交流が活性化した。3月のマッタレッラ大統領の公式訪問は16年ぶりのイタリア大統領の訪日であり、石破総理大臣との会談で、両首脳は、「日伊アクションプラン-ファクトシート」を公表したほか、2026年の日伊外交関係樹立160周年に向け、幅広い分野で両国関係の更なる強化を行っていくことを確認した。5月には、石破総理大臣とメローニ首相の間で首脳電話会談を実施し、G7を始めとする国際場裡(り)での連携を深めるとともに、良好な日伊関係を今後一層発展させていくことで一致した。11月、高市総理大臣はメローニ首相と首脳電話会談を行った。外交関係樹立160周年に当たる2026年1月にはメローニ首相が実務訪問賓客として訪日した。首脳会談において、高市総理大臣とメローニ首相は、幅広い分野における両国の関係を更に促進するため、二国間関係を「特別な戦略的パートナー」とし、更なる高みを目指すことで一致した。 日伊首脳会談(2026年1月16日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ) 岩屋外務大臣とタヤーニ外相の間では、3月のG7外相会合で会談を実施し、安全保障や経済等の幅広い分野で協力を強化していくことを確認した。 安全保障分野では、3月から4月にかけてイタリア海軍フリゲート艦「アントニオ・マルチェリア」が横須賀及び大阪に寄港した。また、2024月6月に交渉を開始し、同年11月にローマで岩屋外務大臣がクロセット国防相との間で署名を行った日・伊物品役務相互提供協定(日伊ACSA)が、国会での審議を経て、2025年9月に発効した。 (6)スペイン サンチェス第3期政権の下、経済は堅調に推移し、EU加盟諸国平均を大きく上回る経済成長を記録し(2024年はEU平均1.0%に対してスペインは3.5%)、国防支出をGDP比2%まで引き上げた。スペインは電源構成の56%が再生可能エネルギーであるが、4月に発生した大規模停電により、過電圧などの再生可能エネルギー導入拡大に伴う技術的課題が顕在化した。 日本との関係では、2018年に両国首脳間で発表した戦略的パートナーシップの下、連携を強化している。5月には大阪・関西万博スペイン・ナショナルデーに参加するためエレウ産業・観光相が訪日したほか、プラナス農業・漁業・食料相も訪日した。6月にはマロト上院第一副議長らスペイン上院日本友好議員連盟一行が訪日し、関口昌一参議院議長や林芳正官房長官を表敬訪問した。同月セビリアで開催された、SDGs達成に向けた開発資金の在り方について議論する国際会議である第4回開発資金国際会議(FfD4)(12)に日本政府を代表して出席した松本尚(ひさし)外務大臣政務官は、マルティネス外務・EU・協力省外交・グローバル問題担当長官と会談した。9月にはクエルポ経済・通商・企業相が前年7月に引き続いて訪日し、武藤経済産業大臣との会談を行い、両国の経済関係の関係強化に向けて引き続き連携していくことを確認した。 4月には、約2年ぶりに日・スペイン経済合同会議が東京で行われたほか、10月にはバルセロナで第25回日本・スペイン・シンポジウムが開催され、日本とスペイン両国で官民の協力が促進された。 両国間の防衛協力・交流も着実に深化・拡大しており、7月には、英国率いる空母打撃群(CSG25)の実施するハイマスト作戦に参加するスペイン海軍フリゲート「メンデス・ヌニェス」が横須賀及び呉に寄港した。また、11月に東京で行われた第9回日・スペイン外務次官級政務協議の機会に、日・スペイン防衛装備品・技術移転協定が実質合意に至ったことを歓迎した。 (7)ポーランド ロシアによるウクライナ侵略が開始されて以降、ポーランドはウクライナの隣国として積極的に対応し、対ウクライナ支援のハブとして大きな役割を果たしている。また、ポーランドはウクライナ避難民を多数受け入れており、負担や脆(ぜい)弱性が高まっていたことを踏まえ、日本はポーランドへの支援を実施している。 日本との関係では、2025年はポーランド側からの要人の訪日が頻繁に行われた。2月にはシコルスキ外相が訪日し、岩屋外務大臣と会談を実施するとともに、「2025年から2029年までの日本国政府とポーランド共和国政府との間の戦略的パートナーシップの実施のための行動計画」の署名式を行った。4月にノヴァツカ国民教育相が訪日し、あべ俊子文部科学大臣との意見交換を行ったほか、7月にはガフコフスキ副首相兼デジタル化相が訪日し、平将明デジタル大臣及び城内実経済安全保障担当大臣と会談を行った。大阪・関西万博ポーランド・ナショナルデーの10月1日には、ヴィエリホフスカ下院副議長が訪日した。 (8)ウクライナ 2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であるとの強い問題意識の下、日本は、一貫してウクライナ支援と対露制裁を継続してきた。2025年も、G7を始めとした国際場裡での諸外国との連携を通じて、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現に向けた取組を展開してきた。 侵略から3年目に当たる2月24日、石破総理大臣は、ウクライナ政府の主催によりハイブリッド形式で開催された「ウクライナ支援に関する首脳会合」にオンラインで出席し、平和実現のための各国の外交努力により、長年にわたる戦闘行為が終結し、困難な状況の打開が行われることを期待すると述べた。 4月3日、NATO外相会合の機会に、岩屋外務大臣はシビハ外相と会談し、ウクライナの外交努力が公正かつ永続的な平和の実現につながることが重要であり、ウクライナ、G7と連携しつつ、ロシア側による前向きな対応を強く求めていくことを伝達した。 6月17日には、G7カナナスキス・サミットに出席した石破総理大臣がゼレンスキー大統領と対面で初めて会談し、石破総理大臣からウクライナに公正かつ永続的な平和がもたらされるよう、国際社会、G7と緊密に連携してウクライナの取組を後押ししていくこと、また、ウクライナ支援を継続していくことを述べつつ、両首脳は、引き続き緊密に連携していくことで一致した。 7月10日、藤井比早之外務副大臣は、イタリア政府・ウクライナ政府共催の「ウクライナ復興会議」に出席し、ステートメントでは、ウクライナ侵略は、日本にとって遠い欧州の問題ではなく、国際秩序の在り方そのものに係る問題であることを強調した。同月10日に藤井外務副大臣はウクライナ・ドナー・プラットフォーム閣僚級会合にも出席し、日本のウクライナへの貢献について説明したほか、引き続き国際社会と緊密に連携し、ウクライナの取組を全面的に後押ししていくと述べた。 8月4日、大阪・関西万博に参加するため、カチカ副首相及びシビハ外相が訪日した。同日、岩屋外務大臣はシビハ外相と会談し、岩屋外務大臣から、ウクライナに公正かつ永続的な平和が一日も早くもたらされるよう、ウクライナの取組を後押ししていくことを強調するとともに、両外相は、ウクライナを取り巻く情勢や国際的な取組の最新の状況について率直な意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致した。 石破総理大臣は、8月13日、8月17日、8月19日及び9月4日に開催された「ウクライナに関する有志連合オンライン首脳会合」に参加し、石破総理大臣からは、各会合において、ウクライナにおける早期の全面停戦、公正かつ永続的な平和の実現が、各国の共通の目標であり、そのために有志国が結束して対応する必要があることに言及するとともに、日本として、国際社会と連携したウクライナ支援を継続し、ウクライナ、米国、欧州各国のパートナーと緊密に連携しつつ、取り組んでいくと述べた。 9月24日、国連総会の機会にウクライナ政府主催で第5回クリミア・プラットフォーム首脳会合が開催され、日本からは岩屋外務大臣が石破総理大臣の発出したメッセージを代読した。メッセージでは、クリミアを含むウクライナの主権と領土一体性を一貫して支持し、力による一方的な現状変更は許されないとの原則を国際社会に発信していくことを伝達するとともに、公正かつ永続的な平和に向けたロシアからの迅速かつ前向きな反応を引き出すため、日本として積極的に議論に参画していく決意を示した。 ウクライナの地雷対策の加速化及び復旧・復興への国際的モメンタム(機運)を高めるため、10月22日及び23日に日本は東京でウクライナ地雷対策会議(UMAC2025)を開催した。22日の開会セッションには茂木外務大臣が出席し、地雷がウクライナの復旧・復興を妨げており、その対策強化が日本の対ウクライナ支援における責務であることを強調するスピーチを行った。また、会議では、茂木外務大臣から、日本による支援パッケージとして「ウクライナ地雷対策支援イニシアティブ」を発表し、人材育成や能力強化支援、社会経済の活性化、医療・福祉分野への貢献など、復興プロセスに不可欠な様々な支援を今後も進めていくこと、また、国際社会との連携を強化し、より迅速・安全かつ持続可能な地雷対策の実現を目指し、ウクライナと伴走していく考えを表明した。1日目のクロージング・セッションにおいて発表された成果文書では、会議のテーマ「復興に向けた加速」の下、3本柱である(ア)人、(イ)技術、(ウ)ネクサス(地雷対策から復旧・復興への円滑な移行)それぞれにおいて、ウクライナにおける今後の地雷対策のために重要な要素に関する共通認識及び今後の方向性が確認されるとともに、課題に対処するためには専門家や民間企業などの関係者の間の緊密な連携が重要であることが再確認された。また、12月2日には、「ウクライナ地雷対策支援イニシアティブ」を具体化する協力として、日・ウクライナ政府間で無償資金協力「人道的地雷及び不発弾除去のための緊急対応計画」に関する書簡の署名・交換が行われた。 10月22日、茂木外務大臣は、ウクライナ地雷対策会議に出席するため訪日したソボレフ・ウクライナ経済・環境・農業相と会談し、「ウクライナと共にある」との日本の立場は一貫しており、引き続き、国際社会、G7と緊密に連携しつつ、ウクライナの公正かつ永続的な平和の実現に向け、全力で取り組んでいくことを表明した。 ウクライナ地雷対策会議2025開会セッション(10月22日、東京) 10月24日、新たに就任した高市総理大臣は英国・フランス政府の主催で開催された「ウクライナに関する有志連合オンライン首脳会合」に出席し、「ウクライナと共にある」との日本の立場は不変であること、また、即時の戦闘停止、ひいては公正かつ永続的な平和の実現に向けて、国際社会と連携したウクライナ支援及び対露制裁を引き続き推進すると述べた。 「ウクライナに関する有志連合オンライン首脳会合」への高市総理大臣の参加(10月25日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ) 11月5日、高市総理大臣はゼレンスキー大統領との間で初めてとなる首脳電話会談を行い、「ウクライナと共にある」との日本の姿勢は変わらないことを強調しつつ、日本がこれまで実施してきた対ウクライナ支援について説明し、引き続きウクライナの復旧・復興に向けた支援を実施していくと述べた。戦争の帰結が国際秩序に影響を及ぼすとの問題意識を持って、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の1日も早い実現に向け、今後もウクライナの取組を力強く後押ししていくと伝達し、両首脳は引き続き緊密に連携していくことで一致した。 また、ウクライナの復旧・復興に向けて、日本は、支援を行っている。2月27日には、無償資金協力「緊急復旧計画(フェーズ4)」に関する書簡の署名・交換が行われた。日本は、同協力を通じて、日本の技術も活用しつつ、エネルギー等の分野で支援を行っている。さらに、4月18日には、経済危機に直面するウクライナ政府への財政支援としてG7プーリア・サミットで一致した「ウクライナのための特別収益前倒し(ERA)融資」の枠組みの下で供与する、円借款「ウクライナのための特別収益前倒し融資」(供与限度額:4,719億円)に関する書簡の署名・交換が行われた。12月には、ウクライナの財政が特にひっ迫する2026年前半の資金ニーズに応えるため、総額約60億ドルの支援を行うことを表明した。同支援では、2026年度の前半に、ERA融資に関して、既に拠出済みの850億円に加え、1,934.5億円を拠出するとともに、世界銀行のウクライナへの融資に対して45億ドルの信用補完を行うこととしている。 (7) 日EU・EPA:Japan-EU Economic Partnership Agreement (8) 日EU・SPA:Japan-EU Strategic Partnership Agreement (9) GCAP:Global Combat Air Programme (10) CSG:Carrier Strike Group (11) PFF:Pacific Future Forum (12) FfD4:4th International Conference on Financing for Development