第2章 地域別に見た外交 第2節 アジア・大洋州 3 朝鮮半島 (1)北朝鮮(拉致問題含む。) 日本は、2002年9月の日朝平壌(ピョンヤン)宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を図ることを基本方針として、引き続き様々な取組を進めている。 北朝鮮は、2025年も、弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、核・ミサイル開発を継続した。一連の北朝鮮の行動は、日本の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であるとともに、地域及び国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、断じて容認できない。また、国際的な核不拡散体制の維持は、日本にとって極めて重要である。日本としては、引き続き、米国や韓国を始めとする国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行に向けた取組を進め、北朝鮮による核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めていく。 拉致被害者やその御家族も御高齢となる中で、人命にかかわる拉致問題は、一刻も早く解決しなければならない人道問題であるとともに、国家主権の侵害である。 北朝鮮に対して2014年5月の日朝政府間協議における合意(ストックホルム合意)(13)の履行を求めつつ、米国及び韓国を始めとする国際社会とも緊密に連携し、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現を含め、北朝鮮との諸課題を解決するため、あらゆる手段を尽くして取り組んでいく。 ア 北朝鮮の核・ミサイル問題 (ア)北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる最近の動向 北朝鮮は、累次の国連安保理決議に従った、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄を依然として行っていない。 2025年、北朝鮮は、4回にわたり、少なくとも5発の弾道ミサイルの発射を行った。1月6日に、「新型極超音速中長距離弾道ミサイル」と称する弾道ミサイルを、5月8日に「600mm多連装放射砲」及び「戦術弾道ミサイル「火星砲11カ型」」と称する弾道ミサイルを、10月22日には「極超音速飛行体」と称する弾道ミサイルを、11月7日にも弾道ミサイルを、それぞれ発射した。 北朝鮮が関連国連安保理決議に違反する活動を続けているにもかかわらず、2024年4月には、ロシアの拒否権により、国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネルの活動が終了した。こうした状況を踏まえ、同年10月に日本を含む同志国が設立した「多国間制裁監視チーム(MSMT)(14)」は、関連安保理決議に基づく制裁の違反及び回避に関する情報を参加国間で共有し、国際社会に向けて発信していくことで、関連安保理決議の完全な履行に貢献するため、取組を強化している。具体的には、2025年5月、MSMTは、武器移転を含む北朝鮮とロシアとの間の不法な軍事協力をテーマに、第1回目の報告書を公表した。同報告書では、北朝鮮とロシアの間における武器移転やロシアへの北朝鮮兵士の派遣、違法な取引ネットワークといった、北朝鮮に関連する安保理決議に定められた制裁措置の違反及び回避に係る具体的な情報を記載している。7月には、MSMT参加国が、ニューヨークの国連本部において、同報告書に関するブリーフィングを開催し、同報告書に記載された主要な調査結果を国連加盟国に共有し、それまで専門家パネルが果たしてきた、北朝鮮による制裁措置の違反及び回避についての監視及び報告という役割を継続していくことを確認した。また、10月には、MSMTは、北朝鮮によるサイバー及びIT労働者の活動をテーマとした第2回目の報告書を公表した。同報告書では、北朝鮮による暗号資産窃取及びその資金洗浄や利用、IT労働者による外貨獲得、情報窃取といったサイバー活動に係る具体的な情報を記載している。日本としては、引き続き、MSMT参加国を含む国際社会と緊密に連携しながら、関連国連安保理決議の完全な履行に向けた取組を進め、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めていく。 また、日本政府は、対北朝鮮措置として、これまで合計で144団体・133個人を資産凍結などの対象に指定している。 北朝鮮の核開発関連活動については、2025年2月8日の朝鮮人民軍創建記念日に金正恩(キムジョンウン)国務委員長が国防省を訪問し、核を含む全ての抑止力を強化するための新たな計画事業に言及し、核武力を一層高度化していく方針を改めて表明した。また、ミサイル総局の発表として、9月8日に金正恩国務委員長が炭素繊維複合材料を利用した大出力固体燃料エンジンの地上燃焼試験を視察し、同エンジンの開発は、戦略核武力を拡大・強化する上で重大な変化を予告するものになると述べたと報じられた。さらに9月26日に金正恩国務委員長が核兵器研究所を始めとする核関連分野の科学者・技術者らと面会して核物質生産及び核兵器生産に関する重要協議会を指導したと公表し、核能力を高度化していくための綱領的な課題を提示したと発表した。 加えて、北朝鮮は、不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の資金源となる、暗号資産窃取を含む悪意あるサイバー活動やIT労働者による活動を拡大している。2025年10月に発表されたMSMTの第2回目の報告書によれば、北朝鮮は、暗号資産窃取やIT労働者の活動を核・ミサイル計画の推進に活用しており、2024年には約12億ドル相当の、2025年1月から9月までの間には約16.5億ドル相当の暗号資産を窃取したと指摘されている。また、IT労働者を外国に派遣し、身分を偽って仕事を受注することで収入を獲得しており、その手口は一層巧妙化し、世界的に活動を拡大させていることや、こうしたIT労働者が情報窃取などの悪意あるサイバー活動に関与している可能性にも言及されている。 (イ)日本の取組及び国際社会との連携 北朝鮮による度重なる弾道ミサイルなどの発射は、日本のみならず、地域及び国際社会に対する深刻な挑戦であり、断じて容認できない。また、国際的な核不拡散体制の維持は、日本にとって極めて重要である。北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄に向け、国際社会が一致結束して、国連安保理決議を完全に履行することが重要である。日本は、これらの点を、各国首脳・外相との会談などにおいて確認してきている。 こうした北朝鮮の増大する脅威に対応するため、日米韓は様々なレベルで意思疎通を行い、結束を強化してきている。2025年には、特に、5回の日米韓外相会合を実施し、北朝鮮への対応を一層進展させることを確認してきている。例えば、9月の会合では、三者は、北朝鮮の増大する脅威について議論し、あらゆるレベルで意思疎通を一層強化していくことを確認した。具体的には、核・ミサイル開発について、深刻な懸念を表明するとともに、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に向けての3か国のコミットメントを再確認した。また、露朝軍事協力の進展及び核・ミサイル計画の資金源となる暗号資産窃取を含む悪意あるサイバー活動などについても、緊密に連携して対応していくことを再確認した。さらに、北朝鮮による累次の弾道ミサイル発射を受け、北朝鮮に関する日米韓外交当局間電話協議を実施し、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであるとして強く非難するとともに、日米韓で緊密に連携することを確認してきている。また、日米間では、10月、訪日したトランプ米国大統領と高市総理大臣との間で行われた日米首脳会談において、両首脳は、北朝鮮情勢について認識を共有し、核・ミサイル問題に共に対処する必要性や、北朝鮮の完全な非核化に向けた確固たるコミットメントを確認した。 また、日本は、自衛隊による警戒監視活動の一環及び海上保安庁による哨(しょう)戒活動として、国連安保理決議違反が疑われる船舶の情報収集を行っている。国連安保理決議で禁止されている北朝鮮籍船舶との「瀬取り」(15)を実施するなど、違反が強く疑われる行動が確認された場合には、国連安保理北朝鮮制裁委員会等への通報、関係国への関心表明、対外公表などの措置をとってきている。「瀬取り」を含む違法な海上活動に対して、米国に加え、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド及びフランスが、国連軍地位協定に基づき、在日米軍施設・区域を使用し、航空機による警戒監視活動を行った。また、米国海軍及び韓国海軍の艦艇、英国海軍哨戒艦「スペイ」及びフリゲート「リッチモンド」、オーストラリア海軍駆逐艦「シドニー」、カナダ海軍フリゲート「オタワ」及び哨戒艦「マックス・バーネイズ」、イタリア海軍フリゲート「アントニオ・マルチェリア」、ニュージーランド海軍補給艦「アオテアロア」、フランス海軍補給艦「ジャック・シュバリエ」、多用途駆逐艦及びフリゲート「プレリアル」が、日本周辺海域において警戒監視活動を行った。このように、国連安保理決議の完全な履行及び実効性の確保のため、関係国の間での情報共有及び調整が行われていることは、多国間の連携を一層深めるという観点から、意義あるものと考えている。 また、日本は、北朝鮮の不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の資金源となっている悪意あるサイバー関連活動を深刻に懸念し、米国及び韓国を始めとする国際社会と緊密に連携して対応してきている。例えば、8月には第4回北朝鮮サイバー脅威に関する日米韓外交当局間作業部会を実施し、行動志向の議論を行い、具体的な取組を進めていくことを確認した。また、日米韓3か国では、1月に「北朝鮮による暗号資産窃取及び官民連携に関する共同声明」、8月に「北朝鮮IT労働者に関する共同声明」をそれぞれ発出した。さらに、8月には東京において、北朝鮮IT労働者に関する日米韓官民連携行事を共催し、官民共同での防護を強化するための議論を実施した。関係省庁とも連携して対応しており、8月には、警察庁、財務省及び経済産業省と共に、北朝鮮IT労働者の活動に関する国内向けの注意喚起を更新し、関連企業に対して、手口の詳細を周知し、本人確認手続の強化といった対策を呼びかけた。さらに、G7でも、6月のカナナスキス・サミット(カナダ)において、日本から、北朝鮮の暗号資産窃取につき懸念を表明し、議長サマリーにおいて、G7首脳は北朝鮮の暗号資産窃取に共に対処する必要性を表明した。 特集北朝鮮によるサイバー関連の脅威に対する取組 10月、日本を含む同志国が設立した多国間制裁監視チーム(MSMT)は、「北朝鮮によるサイバー及びIT労働者の活動」をテーマとした報告書を公表しました。 同報告書によれば、北朝鮮は、暗号資産窃取やIT労働者の活動を核・ミサイル計画の推進に活用しており、2024年には約12億ドル相当、2025年1月から9月の間には約16.5億ドル相当の暗号資産を窃取したと指摘されています。また、IT労働者を外国に派遣し、身分を偽って仕事を受注することで収入を獲得しており、その手口は一層巧妙化し、世界的に活動を拡大させていることや、こうしたIT労働者が情報窃取などの悪意あるサイバー活動に関与していることにも言及があります。 日本においても、2024年、北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループによって、暗号資産関連事業者から暗号資産が窃取されました。また、北朝鮮IT労働者が日本人になりすまして、日本企業等が提供する業務の受発注のためのオンラインのプラットフォームを利用して業務を受注するなどし、収入を得ている事例も確認されています。 このように、北朝鮮の悪意あるサイバー関連活動の脅威は一層高まっています。日本は、不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の資金源となっているこうした活動を深刻に懸念し、米国及び韓国を始めとする国際社会と緊密に連携して対応してきています。 日米韓では、2025年8月に、第4回北朝鮮サイバー脅威に関する日米韓外交当局間作業部会において行動志向の議論を行い、具体的な取組を進めていくことを確認しました。また、1月に「北朝鮮による暗号資産窃取及び官民連携に関する共同声明」、8月に「北朝鮮IT労働者に関する共同声明」をそれぞれ発出しました。さらに、8月には東京において、北朝鮮IT労働者に関する日米韓官民連携行事を共催し、官民共同での防護を強化するための議論も実施しました。 日米韓官民連携行事(8月26日、東京) 加えて、G7でも、6月のカナナスキス・サミット(カナダ)において、日本から、北朝鮮の暗号資産窃取につき懸念を表明し、議長サマリーにおいて、G7首脳が北朝鮮の暗号資産窃取に共に対処する必要性を表明した、と記載されました。 こうした国際社会との連携に加え、日本は、北朝鮮当局の下部組織とされ、暗号資産関連企業などを標的にしていると指摘されているラザルス・グループ等を、日本独自の対北朝鮮措置の対象に指定しています。また、8月には、北朝鮮IT労働者の活動に関する国内向けの注意喚起を更新し、関連企業に対して、手口の詳細を周知し、本人確認手続の強化といった対策を呼びかけています。 日本は、引き続き、北朝鮮による悪意あるサイバー関連活動に対処するため、米国及び韓国を始めとする国際社会、そして、民間部門とも緊密に連携し、対応を強化していきます。 イ 拉致問題・日朝関係 (ア)拉致問題に関する基本姿勢 現在、日本政府が認定している日本人拉致事案は、12件17人であり、そのうち12人がいまだ帰国していない。北朝鮮は、12人のうち、8人は死亡し、4人は入境を確認できないと主張しているが、そのような主張について納得のいく説明がなされていない以上、日本としては、安否不明の拉致被害者は全て生存しているとの前提で、問題解決に向けて取り組んでいる。北朝鮮による拉致は、日本の主権や国民の生命と安全に関わる重大な問題であると同時に、基本的人権の侵害という国際社会全体の普遍的問題である。また、人命にかかわる拉致問題は、被害者のみならず、その御家族も御高齢となる中、一刻も早く解決しなければならない人道問題であり、「決して諦めない」との思いを胸にこの問題の解決に向けた取組を続けている。日本は、拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ないとの基本認識の下、その解決を最重要課題と位置付け、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全の確保と即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しを北朝鮮側に対し強く要求している。10月には、高市総理大臣が所信表明演説で、「被害者や御家族が御高齢となる中で、拉致問題はこの内閣の最重要課題です。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するために、あらゆる手段を尽くして取り組んでまいります。」と表明した。 (イ)日本の取組 北朝鮮による2016年1月の核実験及び2月の「人工衛星」と称する弾道ミサイル発射を受け、同月に日本が独自の対北朝鮮措置の実施を発表したことに対し、北朝鮮は全ての日本人拉致被害者に関する包括的調査を全面中止し、特別調査委員会を解体すると一方的に宣言した。日本は北朝鮮に対し厳重に抗議し、ストックホルム合意を破棄する考えはないこと、北朝鮮が同合意に基づき、一日も早く全ての拉致被害者を帰国させるべきことについて、強く要求した。 また、11月には、高市総理大臣は、「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」において、「日朝の、互いに実りある新たな関係に向けて、金正恩委員長と首脳同士で正面から向き合い、私自らが先頭に立って、様々な状況に応じて果敢に行動するということで、具体的な成果に結び付けたいと考えております。あらゆる選択肢を排除せず、私の代で、何としても突破口を開き、拉致問題を解決したい、その決意に満ちています。」と表明した。 (ウ)国際社会との連携 拉致問題の解決のためには、日本が主体的に北朝鮮側に対して強く働きかけることはもちろん、拉致問題解決の重要性について諸外国からの理解と支持を得ることが不可欠である。日本は、各国首脳・外相との会談、G7サミットを含む国際会議などの外交上のあらゆる機会を捉え、拉致問題を提起している。例えば、6月のG7カナナスキス・サミットでは、石破総理大臣から、G7首脳に対し、拉致問題の即時解決に向け、引き続き理解と協力を改めて求めた。また、10月の日・ASEAN首脳会議では、高市総理大臣から、北朝鮮による拉致問題の即時解決は急務であるとして、引き続き各国の理解と協力を要請した。ASEAN側からも、拉致問題の解決の重要性について言及があった。さらに、11月のG7外相会合では、茂木外務大臣から、拉致問題の即時解決に向けたG7各国の理解と協力を改めて求めた。 米国については、2月に石破総理大臣とトランプ大統領との間で行われた日米首脳会談において、拉致問題の即時解決について、石破総理大臣から、引き続きの理解と協力を求め、改めてトランプ大統領から全面的な支持を得た。さらに、10月に高市総理大臣とトランプ大統領の間で行われた日米首脳会談においても、拉致問題の即時解決について、高市総理大臣から、引き続きの理解と協力を求め、トランプ大統領から全面的な支持を得た。加えて、トランプ大統領及びルビオ国務長官は、拉致被害者御家族と面会し、日米首脳会談と合わせ、拉致問題の即時解決に向けた米国の全面的な協力と日米の強固な連携を再確認する機会となった。 中国については、2024年11月に続き、2025年10月の日中首脳会談においても、拉致問題を含む北朝鮮情勢について意見交換を行った。 韓国については、例えば、2025年8月や2026年1月の日韓首脳会談において、拉致問題の即時解決に向けた李在明(イジェミョン)大統領の引き続きの理解と協力を求め、その取組の重要性について一致した。 4月には国連人権理事会において、また、12月には国連総会本会議において、日本が共同提案国となった北朝鮮人権状況決議案が無投票で採択された。日本は、今後とも、米国を始めとする関係国と緊密に連携、協力しつつ、拉致問題の即時解決に向けて全力を尽くしていく。 ウ 北朝鮮の対外関係など (ア)米朝関係 米国は、様々な機会において、北朝鮮の完全な非核化に向けたコミットメントを確認すると一貫して発信してきている。例えば、10月に行われた日米首脳会談では、高市総理大臣とトランプ大統領との間で、北朝鮮情勢について認識を共有し、核・ミサイル問題に共に対処する必要性や、北朝鮮の完全な非核化に向けた確固たるコミットメントを確認した。 また、米国は、北朝鮮による核・ミサイル計画や北朝鮮からロシアへの違法な武器移転、北朝鮮による不法なサイバー活動などへの対応として、2025年に入り、1月、7月、8月、9月及び11月に、それぞれ個人や団体を北朝鮮に対する制裁の対象に追加する措置を決定した。さらに、米国は、日本及び韓国と共に、9月には3回目となる複数領域における日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」を実施した。 こうした北朝鮮に対する圧力を継続する一方で、1月に就任したトランプ大統領は、金正恩国務委員長と良好な関係を築いていると発信しており、8月に行われた米韓首脳会談においても、適切な時期に金正恩国務委員長と会談することを希望すると述べた。 これに対して、9月21日、金正恩国務委員長は、最高人民会議第14期第13回会議において、「もし米国が荒唐無稽な非核化の執念を捨て、現実を認めたところに基づき、我が方との真の平和共存を望むならば、我が方も米国と向き合えない理由はない。私はまだ個人的には現米国大統領トランプに対する良い思い出を持っている。」と述べたと報じられた。 さらに、10月27日、韓国訪問を前にトランプ大統領は、金正恩国務委員長が会いたいなら喜んで会いたいと述べたが、韓国訪問中の10月29日には、タイミングの調整がうまくいかなかったと発言した。 (イ)南北関係 6月、韓国の李在明大統領は、就任式において、韓米同盟に基づく強力な抑止力で北朝鮮の核と軍事挑発に備えつつ、対話と協力を通じた朝鮮半島の平和の構築を強調した。8月の光復節演説では、北朝鮮の体制を尊重し、いかなる形態の吸収統一も追求せず、「9・19軍事合意」を先制的・段階的に回復し、平和共存と共同成長の朝鮮半島の新しい時代を開くと明らかにした。さらに、9月の国連総会一般討論演説において、交流(Exchange)、関係正常化(Normalization)、非核化(Denuclearization)を中心とした包括的な対話で朝鮮半島における敵対と対決の時代を終結させるとする「ENDイニシアチブ」を打ち出し、また、非核化について、核とミサイル能力の高度化の「中断」から始め、「縮小」の過程を経て「廃棄」に至る段階的解決策を主張した。また、李在明政権は、6月に民間団体による北朝鮮向けビラ散布の中止要請や拡声器による北朝鮮向け宣伝放送の中止、7月に北朝鮮向けラジオ・テレビ放送中止、8月に南北軍事境界線付近に設置されていた対北朝鮮向けの拡声器の撤去など、緊張緩和を企図する措置を実施した。 一方、北朝鮮は、2023年12月の朝鮮労働党中央委員会第8期第9回全員会議で、金正恩国務委員長が、南北関係について、「もはや同族関係、同質関係ではない、敵対的な二つの国家の関係、戦争中にある二つの交戦国の関係」と述べ、南北統一という目標の放棄を表明しており、さらに韓国の李在明政権発足後の2025年7月にも、金与正(キムヨジョン)党中央委副部長談話を通じ、北朝鮮向け放送の中断は韓国が自ら招いた問題であり、評価を受けるに値しないと述べつつ、政権に関係なく、韓国は和解と協力の対象にならないと主張した。そして、9月の最高人民会議第14期第13回会議において金正恩国務委員長は、韓国について、一切相手にしないとしつつ、統一を行う考えが全くなく、韓国とは決して一つになり得ない二つの国家であることを国法として固定化させると述べた。 (ウ)中朝関係 2025年、中朝間ではハイレベルの要人往来が行われた。9月、金正恩国務委員長は、北京で開催された「中国人民抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利80年記念大会」に出席し、習近平(しゅうきんぺい)中国国家主席との間で約6年3か月ぶりに首脳会談を行った。同月、続けて崔善姫(チェソンヒ)外相が訪中し、王毅(おうき)中国外交部長との間で外相会談を行った。さらに10月には、李強(りきょう)中国共産党中央委員会政治局常務委員会委員・国務院総理が平壌で開催された朝鮮労働党創建80年慶祝行事に出席するとともに、金正恩国務委員長との間で会談を行った。 北朝鮮の対外貿易の9割以上を占めるとされる中朝貿易の総額は、中国当局の発表値によれば、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受けた往来の制限のため、感染拡大前と比較して規模が大幅に縮小していたが、2023年には同感染症流行以前に近い水準に回復した。2024年は前年(2023年)比で多少減少したものの、2025年は前年(2024年)比で約25.5%増加した。 (エ)露朝関係 2025年4月末、ロシアは、2024年12月に発効した「包括的戦略的パートナーシップ条約」に基づいて北朝鮮兵士がロシア・クルスク州における戦闘に参加したことを発表した。同発表に続き、北朝鮮も、同条約に基づいて「参戦を決定」したと発表した。こうした軍事協力の進展のみならず、ハイレベルの要人往来も継続している。首脳間では、2025年8月に金正恩委員長とプーチン大統領との間で首脳電話会談が行われたほか、9月には「中国人民抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利80年記念式典」に出席するため訪中した金正恩国務委員長とプーチン大統領との間で首脳会談が行われ、プーチン大統領は露朝関係を「同盟的な性格を持つに至った」と述べた。外相間では7月に、ラヴロフ外相が北朝鮮の元山(ウォンサン)を訪問し、外相戦略対話を行い、10月には崔善姫外相がモスクワを訪問し、外相会談を行った。 露朝軍事協力の進展は、ウクライナ情勢の更なる悪化を招くのみならず、日本を取り巻く地域の安全保障に与える影響の観点からも、深刻に懸念すべき動向である。ロシアに対する北朝鮮からの派兵を含む軍事支援の見返りとして、ロシアの核・ミサイル関連技術が北朝鮮に移転するおそれも深く懸念される。こうした認識の下、5月には、日本を含む多国間制裁監視チーム(MSMT)が、武器移転を含む露朝間の不法な軍事協力をテーマに第1回目の報告書を公表した。また、この機会に、MSMT参加国は、関連する国連安保理決議の完全な履行に向けた共通の決意を改めて確認する共同声明を発出した。日本としては、米国及び韓国並びにG7を始めとする国際社会と緊密に連携し、関連情報の収集・分析を行うとともに、露朝軍事協力に対する深刻な懸念を累次の機会に表明するといった取組を通じ、関連する国連安保理決議の完全な履行や、ウクライナにおける一日も早い公正かつ永続的な平和の実現に向け取り組んでいる。 (オ)その他 2025年、日本海沿岸では、北朝鮮からのものと見られる漂流・漂着木造船などが計12件確認されており(2024年は13件)、日本政府として、関連の動向について重大な関心を持って情報収集・分析に努めている。また、2020年9月には、日本海の大和堆(やまとたい)西方の日本の排他的経済水域(EEZ)において北朝鮮公船が確認されており、外務省は、このような事案が発生した際には、北朝鮮に対して日本の立場を申し入れてきている。引き続き、関係省庁の緊密な連携の下、適切に対応していく。 エ 内政・経済 (ア)内政 北朝鮮は、2021年1月の第8回党大会で提示されたと報じられた「国防科学発展及び武器体系開発5か年計画」(2021年から2025年)等に基づき、核・ミサイル開発などの軍事力の強化を進めているとみられる。金正恩国務委員長は、2025年1月に核物質生産基地と核兵器研究所を視察し、5か年計画の締めくくりとなる2025年は、兵器級核物質生産計画を超過遂行し、核の盾を強化する上で画期的な成果を収めるべき極めて重要な年であると述べたと報じられた。5月の朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議では、「国防科学及び工業分野の一連の新たな計画事業」が承認されたと報じられた。さらに、金正恩国務委員長は、8月に「重要軍需企業所」を視察した際、ミサイル生産能力が拡大し、各種ミサイルの量産に入ったと高く評価し、9月の最高人民会議第14期第13回会議では、非核化を否定し、核は手放さないなどと主張する演説をしたことが報じられた。10月には、朝鮮労働党創建80周年を祝う閲兵式が行われ、「大陸間弾道ミサイル『火星20』型縦隊」などが参加したと報じられた。北朝鮮兵士のロシア・クルスク州における戦闘参加については、4月に朝鮮労働党中央軍事委員会書面立場文を通じて、これを内外に初めて明らかにした後、8月に朝鮮人民軍海外作戦部隊に対する表彰式を行い、また、朝鮮中央テレビを通じて、2024年8月に派兵を決定し、同年10月に参戦したことを明らかにした。 (イ)経済 1月に開催された最高人民会議第14期12回会議において、北朝鮮は、自力更生などを核とする「国家経済発展5か年計画」(2021年-2025年)の最終年である2025年に必ず達成すべき部門別課題を提示し、採択された予算案では、歳出総額の44.1%を経済建設に充てると報じられた。さらに、9月の最高人民会議第14期第13回会議では、基幹工業部門・主要経済部門はまだ満足を感じられる水準ではないとする一方、5か年計画が成功裏に完遂される見込みであり、農業部門は2024年に続き安定した作況にあり、平壌市内及び農村の住宅建設も順調であると述べたと報じられた。また、金正恩国務委員長出席の下、6月に元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区、10月に平壌総合病院の竣工式が行われた。 オ その他の問題 北朝鮮からの脱北者は、滞在国当局の取締りや北朝鮮への強制送還などを逃れるため潜伏生活を送っている。日本政府としては、こうした脱北者の保護や支援について、北朝鮮人権侵害対処法の趣旨を踏まえ、人道上の配慮、関係者の安全、脱北者の滞在国との関係などを総合的に勘案しつつ対応している。なお、日本国内に受け入れた脱北者については、関係省庁間の緊密な連携の下、定着支援のための施策を推進している。 (2)韓国 ア 韓国情勢 (ア)内政 2024年12月3日夜、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は非常戒厳を宣言するも、翌4日未明に韓国議会は「非常戒厳解除要求決議案」を可決し、尹大統領は非常戒厳を解除した。「共に民主党」を始めとする当時の野党は、非常戒厳発布は違憲として尹大統領の弾劾訴追案を提出し、12月14日に同案が議会で可決されたことで、尹大統領の職務権限が停止された。2025年1月15日、尹大統領は、現職大統領として初めて逮捕、拘束され、同月26日には内乱首謀罪で起訴された。 4月4日、憲法裁判所は尹大統領の弾劾訴追を全員一致で妥当と判断し、尹大統領の罷免を宣告し、尹大統領は直ちに失職した。これを受けて6月3日に実施された大統領選挙では、野党「共に民主党」の李在明候補が与党「国民の力」の金文洙(キムムンス)候補などを破って当選し、李氏は翌4日に第21代大統領に就任した。 李大統領は就任後、国家安保室長に魏聖洛(ウィソンナク)議員(元駐露大使)、国家情報院長に李鍾奭(イジョンソク)元統一部長官、国務総理に金民錫(キムミンソク)議員、外交部長官に趙顕(チョヒョン)元同部第1次官、国防部長官に安圭伯(アンギュベク)議員、統一部長官に鄭東泳(チョンドンヨン)議員・元同部長官などの高官人事を進め、政権の陣容を整えた。 一方の尹前大統領は、内乱首謀のほか、職権乱用、一般利敵等の罪で追起訴され、金建希(キムゴニ)夫人が斡旋(あっせん)収賄や資本市場法違反及び政治資金法違反、韓悳洙(ハンドクス)前国務総理が内乱首謀幇(ほう)助の罪でそれぞれ起訴される等、前政権の関係者らに対する責任追及が進められている。 政界では、8月、与党「共に民主党」は鄭清来(チョンチョンネ)議員を、野党「国民の力」は張東赫(チャンドンヒョク)議員をそれぞれ新たな代表として選出した。2026年6月にはソウル市長選、釜山(プサン)市長選を含む、統一地方選が行われる予定である。 (イ)外政 2025年上半期は大統領弾劾をめぐり内政上の動きが続いていた。この間、外交面では、趙兌烈(チョテヨル)外交部長官が2月にドイツ・ミュンヘンで開催された日米韓外相会合、3月に東京で開催された第11回日中韓外相会議に参加するなどの動きがあった。 6月3日の大統領選挙で当選した李大統領は、就任直後にトランプ米国大統領と電話会談を行ったほか、同月にカナダで開催されたG7カナナスキス・サミットに出席し、石破総理大臣を含む各国首脳らと会談して首脳外交を再始動させた。また、10月31日及び11月1日には慶州(キョンジュ)において高市総理大臣を含む主要国の首脳らの参加を得て、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議を成功裏に開催した。 対米関係については、趙顕(チョヒョン)外交部長官が7月に米国を訪問し、ルビオ国務長官と会談した。8月には李大統領が日本に次いで米国を訪問し、トランプ大統領と首脳会談を行った。10月には慶州APEC首脳会議を機にトランプ大統領が韓国を訪問し、李大統領との間で2度目となる首脳会談が行われた。同会談では、経済や米韓同盟の現代化、朝鮮半島問題、地域情勢、米韓間の造船・製造業における協力などについて包括的に議論する中で、特に、韓国側からは、安全保障環境の変化を背景とする韓国への原子力潜水艦導入について提起がなされ、米側は、韓国による建造を承認するとともに、米韓原子力協定及び米国の法的要件に従い、韓国による平和利用を目的とした民生用ウラン濃縮及び使用済み燃料再処理につながるプロセスを支援することとした。また、7月に米韓間で合意を発表していた、米国の韓国に対する関税措置の内容を明確にするとともに、韓国による3,500億ドルの対米投資の内訳についても合意に達した。 対中関係については、2月と9月に禹元植(ウウォンシク)国会議長が中国を訪問し、趙楽際(ちょうらくさい)中国共産党中央政治局常務委員兼全国人民代表大会常務委員会委員長と会談した(2月の訪中時は、習近平国家主席とも会談)。同9月には趙顕外交部長官も訪中し、王毅同党中央政治局委員兼外交部長と中韓関係や朝鮮半島問題などについて協議した。11月には、李大統領は慶州APEC首脳会議の機会に国賓として訪韓した習近平国家主席と初めての対面での首脳会談を行った。中国側から国民感情の向上が提起されたほか、人民元・韓国ウォンの通貨スワップの延長や中韓自由貿易協定(FTA)の二段階目の交渉の加速、越境的詐欺犯罪への対応に向けた協力強化などで合意した。 (ウ)経済 2025年、韓国のGDP成長率は1.0%と、前年の2.0%から減少した(韓国中央銀行速報値)。総輸出額は、前年比3.8%増の約7,097億ドルで、総輸入額は、前年比横ばいの約6,317億ドルとなり貿易収支は約780億ドルの黒字と、2017年以来で最大の黒字幅を計上した(韓国産業通商部統計)。 2024年12月の非常戒厳令の発布以降、消費者心理指数(CCSI)が大幅下落し経済成長率に低迷が見られたが、補正予算による景気刺激や、民間消費の回復、半導体を中心とした輸出の回復を受けて、下半期にかけて緩やかに景気回復を見せた。その後、李在明政権は2025年9月、今後5年間、政府が重点的に推進する国政運営のロードマップとして「123の国政課題」を選定し、その中で経済分野として「世界を導く革新経済」、「皆が豊かに暮らす均衡成長」及び「基本が堅固な社会」を公表した。11月には、米国の追加関税や韓国の対米投資3,500億ドルに関する合意内容を含む共同ファクトシートを発表した。またこれに続けて、韓国のサムスングループやSKグループなど4大財閥が、総額約5,500億ドルの国内投資計画を表明した。 イ 日韓関係 (ア)二国間関係総論 日本と韓国は、互いに国際社会における様々な課題への対応にパートナーとして協力していくべき重要な隣国であり、現下の戦略環境の下、日韓関係の重要性は一層増している。2025年においても首脳の「シャトル外交」を始め、ハイレベルなものを含め、両国間で緊密な意思疎通が行われ、様々な分野における協力が更に拡大した。 6月17日、石破総理大臣は、カナダで開催されたG7カナナスキス・サミットの機会に、李大統領との間で、対面では初となる首脳会談を行い、日韓関係の安定的発展に向けて両国政府間で緊密な意思疎通を推進していくこと、近年の両国関係の良好な基調の下、両国間の国民交流や経済面での交流が活発に行われていることを踏まえ、国交正常化60周年である2025年も、政府としてもそうした取組を後押ししていくことで一致した。また、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応についても、引き続き日韓、日米韓で緊密に連携していくことを確認した。 8月23日、石破総理大臣は、訪日中の李大統領との間で首脳会談を行った。発出された共同プレスリリースにおいて、両首脳は、1965年の国交正常化以来これまで築かれてきた日韓関係の基盤に基づき、日韓関係を未来志向で、安定的に、大きく発展させていくことで一致した。両首脳は、地方創生、少子高齢化・人口急減、農業、災害に対する強靱(じん)性の確保など、両国が直面する共通の社会・経済課題について、両国が互いの知見を共有し、協力して解を見つけていくため、両政府間の協議の枠組みの立ち上げで一致した。また、両国間のワーキング・ホリデー制度の拡充の決定を歓迎し、両国国民間の交流及び相互理解を促進するための取組を政府として後押ししていくこととした。両首脳は、経済分野の新たな地平として、水素・アンモニア、AIなどに関する両国間の協力を一層推進していくことでも一致した。 日韓首脳会談(8月23日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ) 9月30日、石破総理大臣は、韓国・釜山を訪問した。李大統領との首脳会談では、8月の東京での首脳会談の成果の上に、日韓関係を安定的に大きく発展させていくことで一致し、AIを含む科学技術分野における協力について議論するため、日韓科学技術協力委員会を開催していくことでも一致した。両首脳は、厳しさを増す現下の戦略環境において、日韓両国が連携して対応するため、安全保障、経済安全保障分野についての戦略的な意思疎通を続けていくことを確認した。両首脳は、インド太平洋やパレスチナを含む地域情勢についても意見交換を行い、核・ミサイル問題を含む北朝鮮への対応については、北朝鮮の完全な非核化に向け、日韓、日米韓で緊密に連携して対応していくことを再確認した。 10月30日、高市総理大臣は、APEC首脳会議出席のため韓国を訪問し、李大統領との間で初となる首脳会談を行った。両首脳は、隣国ゆえに立場の異なる諸懸案はあるが、これらを両首脳のリーダーシップで管理し、国交正常化以来これまで築かれてきた日韓関係の基盤に基づき、日韓関係を未来志向で安定的に発展させていくことで一致した。また、両首脳は、「シャトル外交」を積極的に実施し、両政府間で緊密に意思疎通を続けていくことで一致した。 2026年1月13日、高市総理大臣は、奈良県を訪問中の李大統領との間で首脳会談を行った。両首脳は、日韓関係の戦略的重要性について認識を共有し、両国が地域の安定に連携して役割を果たしていくべきとの点を確認した。また、日韓、日米韓の安全保障協力を含む戦略的な連携の重要性についても議論された。加えて、両首脳は、経済、経済安全保障の分野で、戦略的で、互いに利益をもたらす協力を進めていくため、関係部局間で議論を進めていくことで一致した。また、両首脳は、核・ミサイル問題を含む北朝鮮への対応についても議論し、北朝鮮の完全な非核化に向け、日韓、日米韓で緊密に連携していくことを改めて確認した。両首脳は、今後も、「シャトル外交」の積極的実施を含め、日韓両政府間で緊密に意思疎通を続けていくことで一致した。 日韓首脳会談(2026年1月13日、奈良 写真提供:首相官邸ホームページ) 日韓両首脳によるドラムセッションの様子(2026年1月13日、奈良 写真提供:首相官邸ホームページ) こうした首脳・閣僚間のものに加え、この1年間で、日韓次官戦略対話、日韓共通の社会課題への対応に係る当局間協議、日韓科学技術協力委員会といった様々なレベルでの意思疎通も活発に行われた。 (イ)旧朝鮮半島出身労働者問題 日本政府は、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づき日韓関係を発展させていく必要があり、そのためにも2018年の大法院判決を受けた旧朝鮮半島出身労働者問題の解決が必要であるとの考えの下、この問題について、両国の外相間を始めとする外交当局間で緊密な意思疎通を行ってきた。 2023年3月6日、韓国政府は旧朝鮮半島出身労働者問題に関する自らの立場を発表し、韓国の財団が、2018年の大法院の確定判決の原告に対して判決金及び遅延利息を支給するなどとした。 これを受け、同日、日本政府は、韓国政府により発表された措置を、2018年の大法院判決により非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価するとの立場を表明した(16)。 一方、韓国大法院は、2025年12月にも、同種の複数の訴訟について、2018年の判決に続き、日本企業に損害賠償の支払を命じる判決を確定させた。これらの判決については、日本政府として、これまでの日本の一貫した立場に基づいて申入れを行った。韓国政府は、2023年3月6日に行われた措置の発表の中で、旧朝鮮半島出身労働者に関して現在(注:発表当時)係属中であるほかの訴訟が原告勝訴として確定する場合の判決金及び遅延利息は、韓国の財団が支給する予定であると表明している。 2025年11月時点で、原告側の元労働者26名について韓国の財団による支払が行われた。韓国政府は今後も原告の理解を得るため努力をしていくとしており、日本政府としては、引き続き韓国側と緊密に意思疎通を行っていく。 旧朝鮮半島出身労働者問題に関する外務省ホームページの掲載箇所はこちら  https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_004516.html (ウ)慰安婦問題 慰安婦問題は、1990年代以降、日韓間で大きな外交問題となってきたが、日本はこれに真摯に取り組んできた。日韓間の財産及び請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に」解決済みであるが、その上で、元慰安婦の方々の現実的な救済を図るとの観点から、1995年、日本国民と日本政府が協力してアジア女性基金を設立し、韓国を含むアジア各国などの元慰安婦の方々に対し、医療・福祉支援事業及び「償い金」の支給を行うとともに、歴代総理大臣からの「おわびの手紙」を届けるなど、最大限の努力をしてきた。 さらに、日韓両国は、多大なる外交努力の末に、2015年12月の日韓外相会談における合意によって、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。また、同外相会談の直後に、日韓両首脳間においても、この合意を両首脳が責任を持って実施すること、また、今後、様々な問題に対し、この合意の精神に基づき対応することを確認し、韓国政府としての確約を取り付けた。この合意については、潘基文(パンギムン)国連事務総長(当時)を始め、米国政府を含む国際社会も歓迎している。この合意に基づき、2016年8月、日本政府は韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」に対し、10億円の支出を行った。この基金から、2023年12月末日までの間に、合意時点で御存命の方々47人のうち35人に対し、また、お亡くなりになっていた方々199人のうち65人の御遺族に対し、資金が支給されており、多くの元慰安婦の方々の評価を得ている。 しかしながら、2016年12月、在釜山日本国総領事館に面する歩道に慰安婦像(17)が設置された。その後、2017年5月に文在寅(ムンジェイン)政権が発足し、外交部長官直属の「慰安婦合意検討タスクフォース」による検討結果を受け、(1)日本に対し再協議は要求しない、(2)被害者の意思をしっかりと反映しなかった2015年の合意では真の問題解決とならないなどとする韓国政府の立場を発表した。また、2018年11月には、女性家族部は、「和解・癒やし財団」の解散を推進すると発表し、その後解散の手続が進んだ。財団の解散に向けた動きは、日韓合意に照らして問題であり、日本として到底受け入れられるものではない。 さらに、2021年1月8日、元慰安婦などが日本国政府に対して提起した訴訟において、韓国ソウル中央地方裁判所が、国際法上の主権免除の原則の適用を否定し、日本国政府に対し、原告への損害賠償の支払などを命じる判決を出し、同月23日、同判決が確定した(18)。同年4月21日、類似の慰安婦訴訟において、ソウル中央地方裁判所は、国際法上の主権免除の原則を踏まえ、原告の訴えを却下したが、2023年11月23日、本件控訴審において、ソウル高等裁判所は、国際法上の主権免除の原則の適用を否定して、原告の訴えを認める判決を出し、同年12月9日、同判決が確定した。2025年4月25日には、元慰安婦の遺族が日本国政府を相手として提起した訴訟において、清州(チョンジュ)地方裁判所が、国際法上の主権免除の原則を否定し、日本国政府に対し、原告への損害賠償の支払を命じる判決を出し、同年5月15日、同判決が確定した。日本としては、国際法上の主権免除の原則から、これらの慰安婦訴訟について日本政府が韓国の裁判権に服することは認められず、本件訴訟は却下されなければならないとの立場を累次にわたり表明してきている。前述のとおり、慰安婦問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に解決」されており、また、2015年12月の日韓外相会談における合意によって、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」が確認されている。したがって、これらの判決は、国際法及び日韓両国間の合意に明らかに反するものであり、極めて遺憾であり、断じて受け入れることはできない。日本としては、韓国に対し、国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講ずることを強く求めてきている。 日韓合意は国と国との約束であり、これを守ることは国家間の関係の基本である。日韓合意の着実な実施は、国際社会に対する責務でもある。日本は、前述のとおり、日韓合意の下で約束した措置を全て実施してきている。韓国政府もこの合意が両国政府の公式合意と認めており、日本政府としては、引き続き、韓国側に日韓合意の着実な実施を強く求めていく方針に変わりはない(国際社会における慰安婦問題の取扱いについては30ページ参照)。 (エ)竹島問題 日韓間には竹島の領有権をめぐる問題があるが、竹島は歴史的事実に照らしても国際法上も明らかに日本固有の領土である。しかしながら韓国は、警備隊を常駐させるなど、国際法上何ら根拠がないまま、竹島を不法占拠し続けてきている。日本は、竹島問題に関し、様々な媒体で日本の立場を対外的に周知するとともに(19)、韓国国会議員などの竹島上陸、韓国による竹島やその周辺での軍事訓練や海洋調査などについては、韓国に対し、その都度強く抗議を行ってきている。2025年は竹島やその周辺での軍事訓練が行われ、これらにつき、日本政府として、竹島に関するこれまでの日本の一貫した立場に基づき、強く抗議を行った(20)。引き続き、竹島に関する日本の基本的な立場に基づき、毅(き)然と対応していく。 竹島問題の平和的手段による解決を図るため、1954年、1962年及び2012年に韓国政府に対し国際司法裁判所への付託などを提案してきているが、韓国政府はこの提案を全て拒否している。日本は、竹島問題に関し、国際法にのっとり、平和的に解決するため、今後も粘り強い外交努力を行っていく方針である。 (オ)交流・往来 両国間の往来について、2020年初旬以降、新型コロナウイルス感染症拡大に係る水際対策の強化により、2021年に両国間の往来者数は約3万人に大幅に減少したが、2024年及び2025年には往来者数が好調に増加し、2024年は約1,204万人、2025年は約1,311万人といずれも過去最高を記録した。 日本では若年層を中心に「K-POP」や関連のコンテンツが広く受け入れられており、韓国のドラマや映画は世代を問わず幅広い人気を集めている。韓国語学習の人気も高まっており、これらのコンテンツや言語が異文化理解をより身近なものとしていると考えられる。また、2025年は日韓国交正常化60周年に当たり、この60周年という節目の年を通じて、地域や世代、分野を問わず様々な交流が行われた。日韓間の最大の草の根交流行事である「日韓交流おまつり」は、2025年は東京とソウルで開催され、両国合わせて約11万6,000人が参加した。日本政府は、「対日理解促進交流プログラム(JENESYS2025)」の実施を通じ、日韓の青少年を中心とした相互理解の促進、未来に向けた友好・協力関係を後押ししている。 (カ)その他の問題 日韓両国は、2016年11月、安全保障分野における日韓間の協力と連携を強化し、地域の平和と安定に寄与するため、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)を締結し、同協定は、それ以降2017年及び2018年に自動的に延長されてきた。しかし、韓国政府は、2019年8月22日、日本による輸出管理の運用見直しと関連付け、GSOMIAの終了の決定を発表し、翌23日、終了通告がなされた。その後、日韓間でのやり取りを経て、同年11月22日、韓国政府は8月23日の終了通告の効力を停止することを発表した。尹大統領の訪日直後の2023年3月21日、韓国政府から2019年8月の日韓GSOMIAの終了通告を取り下げるとの正式通報があった。現下の地域の安全保障環境を踏まえれば、同協定が引き続き安定的に運用されていくことが重要である。 日本海は、国際的に確立した唯一の呼称であり、国連や米国を始めとする主要国政府も日本海の呼称を正式に使用している。韓国などが日本海の呼称に異議を唱え始めたのは1992年からである。また、それ以降、韓国などは国連地名専門家グループ(UNGEGN)会議(21)や国際水路機関(IHO)を始めとする国際機関の場などにおいても日本海の呼称に異議を唱えてきたが、この主張に根拠はなく、日本はその都度断固とした反論を行ってきている(22)。 また、盗難被害に遭い韓国に持ち出され、日本政府として早期の返還を韓国政府に働きかけてきた文化財(23)については、2025年1月、韓国政府側から所有者である日本の寺院に返還された。大田(テジョン)地方検察庁から当該文化財を引き渡された観音(かんのん)寺は、100日法要を行うために当該文化財を貸与してほしいという韓国側寺院の希望を踏まえ、当該文化財を同寺院に一時的に貸し出したが、100日法要終了後の同年5月に浮石寺(プソクサ)から観音寺に本件仏像が返還され、対馬に戻された。 そのほか、在サハリン「韓国人」への対応(24)、在韓被爆者問題への対応(25)、在韓ハンセン病療養所入所者への対応(26)など多岐にわたる分野で、日本は、人道的観点から、可能な限りの支援や施策を進めてきている。 ウ 日韓経済関係 2025年の日韓間の貿易総額は、約11兆4,621億円であり、韓国にとって日本は第5位、日本にとって韓国は第4位の貿易相手国である。なお、韓国の対日貿易赤字は、前年比8.5%増の約2兆4,562億円(財務省貿易統計)となった。また、日本からの対韓直接投資額は約44億ドル(前年比28.1%減)(韓国産業通商部統計)となった。 また、日韓は、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の締約国として協力しているほか、世界貿易機関(WTO)、アジア太平洋経済協力(APEC)、経済協力開発機構(OECD)、インド太平洋経済枠組み(IPEF)など各種の経済的枠組みにおいても、連携を図っている。 韓国政府による日本産食品に対する輸入規制については、日本は、様々な機会を捉えて韓国側に対して早期の規制撤廃を働きかけている。 コラム日韓国交正常化60周年 1965年6月22日、日韓両国は「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」を調印、同年12月18日に批准書を交換し、国交が正常化しました。2025年は、「日韓国交正常化60周年」という節目の年に当たります。この60年間、日韓間では、政治・経済・文化といった幅広い分野で、様々な交流・協力が積み重ねられてきました。 特に、現在の良好な日韓関係を支えているものの一つは、国民間の活発な交流です。日韓両国では、この1年を通じ、国交正常化60周年を記念して、「両手を携え、より良い未来へ」というキャッチフレーズの下、様々な交流や事業が行われ、外務省において認定した、日韓双方の民間団体や企業等が実施した周年記念事業数は、500件を超えました。今や、特に若い世代において、自然な形で、日韓交流が行われるようになりました。今後も、この60周年という機会を通じて育まれた日韓両国の輪が、大きく広がっていくことを期待します。 2月15日、「私たちが照らす日韓交流」をテーマに、国民間における日韓交流への関心の高まりと相互理解の増進を願いながら、東京タワーのライトアップが行われました。同日同時刻には、韓国のNソウルタワーのライトアップも行われ、60周年の幕開けを華やかに印象付ける機会となりました。 6月1日から30日までの30日間、日韓双方の一部空港において、一定の利用条件を満たす日韓両国国民を対象に、入国手続の円滑化措置が実施されました。また、同月にソウルと東京でそれぞれ在大韓民国日本国大使館、駐日大韓民国大使館主催の記念レセプションが開催され、様々な分野において日韓交流に携わる人々と共に、国交正常化60周年をお祝いしました。それぞれのレセプションでは、石破総理大臣と李在明大統領も祝辞を贈り、石破総理大臣は、日韓協力の裾野を更に広げながら、これまで紡いできた交流のバトンをしっかりと次の世代へとつないでいきたいと述べました。 2005年の国交正常化40周年を機にソウルで始まった「日韓交流おまつり」は、例年より大規模に開催されました(9月27日・28日に東京で、10月12日にソウルで開催)。東京では、古くからの日韓交流の象徴である外交使節団「朝鮮通信使」の装束を再現したパレードが音楽や踊りで会場を盛り上げたほか、チヂミや韓国のり巻きなど、韓国料理のグルメブースなどが設けられ、日韓両国のアーティストによるK-POPコンサートも両日開催されるなどし、約4万9,000人が集まりました。ソウルでは、韓国の伽倻琴(カヤグム)(韓国の伝統的な弦楽器)奏者と、日本の箏(こと)奏者、日本の書家が共演し、音楽と書で「友情」を表現する特別ステージが披露されるなどし、約6万7,000人が集まりました。 そのほか、60年前に署名され、発効した日韓基本条約とその関連文書の展示(外交史料館にて)や、韓国を象徴する文化や動植物をイラストで表現した特殊切手の発行など多くの記念事業が行われました。 日韓交流おまつりでの朝鮮通信使の再現ステージ(9月27日、28日 東京) 日韓交流おまつりでの展示ブース(9月27日、28日 東京) (13) 2014年5月にストックホルムで開催された日朝政府間協議において、北朝鮮側は、拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を約束した。 (14) MSMT:Multilateral Sanctions Monitoring TeamMSMTの設立に関する共同声明については、外務省ホームページを参照:https://warp.ndl.go.jp/web/20250902221142/https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01273.html (15) ここでの「瀬取り」は、2017年9月に採択された国連安保理決議第2375号が国連加盟国に関与などを禁止している、北朝鮮籍船舶に対する又は北朝鮮籍船舶からの洋上での船舶間の物資の積替えのこと (16) 資料編:旧朝鮮半島出身労働者問題 参考資料 参照 (17) 分かりやすさの観点から、便宜上、「慰安婦像」との呼称を用いるが、この呼称は、これらの像に係る元慰安婦についての描写が正しいとの認識を示すものでは決してない。 (18) 資料編:慰安婦問題 参考資料 参照 慰安婦問題についての日本の取組に関する外務省ホームページの掲載箇所はこちら: https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/rp/page25_001910.html (19) 2008年2月、外務省は「竹島 竹島問題を理解するための10のポイント」と題するパンフレットを作成。現在、日本語、英語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語、ロシア語、中国語及びイタリア語の11言語版が外務省ホームページで閲覧可能。また、2013年10月以降、外務省ホームページにおいて、竹島に関する動画やフライヤーを公開し、現在は上記11言語での閲覧が可能になっている。加えて、竹島問題を啓発するスマートフォンアプリをダウンロード配布するといった取組を行っている。 外務省ホームページ掲載箇所はこちら:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/index.html (20) 7月及び12月、韓国軍が竹島に関する軍事訓練を実施した。日本は、直ちに、竹島に関するこれまでの日本の一貫した立場に基づき強く抗議した。 (21) 各国の地名や地理空間情報などの専門家らが、地名に関する用語の定義や地名の表記方法などについて技術的観点から議論を行う国連の会議。2017年、これまで5年ごとに開催されていた国連地名標準化会議と2年ごとに開催されていた国連地名専門家グループが統合され、国連地名専門家グループ(UNGEGN)会議となった。 (22) 日本海呼称問題に関する外務省ホームページの掲載箇所はこちら:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nihonkai_k/index.html (23) 2012年に長崎県対馬市で盗難され韓国に搬出された後、韓国政府が回収し保管している「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」について、所有権を主張する韓国の寺院が韓国政府に対して引渡しを求める訴訟を提起した。2017年1月、第1審の大田地方裁判所は原告(韓国寺院)勝訴の判決を出したが、2023年2月、第2審の大田(テジョン)高等裁判所は一審判決を取り消し、原告の請求を棄却する判決を出した。原告側は上告したが、同年10月、大法院は上告を棄却する判決を出した。 (24) 第二次世界大戦終戦前、様々な経緯で南樺太(からふと)に渡り、終戦後、ソ連による事実上の支配の下、韓国への引揚げの機会が与えられないまま、長期間にわたり、サハリンに残留することを余儀なくされた朝鮮半島出身者に対し、日本政府は、一時帰国支援、サハリン再訪問支援などを行ってきている。 (25) 第二次世界大戦時に広島又は長崎にいて原爆に被爆した後、日本国外に居住している方々に対する支援の問題。これまで日本は、被爆者援護法に基づく手当や被爆者健康手帳などに関連する支援を行ってきている。 (26) 2006年2月、「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」が改正され、第二次世界大戦終戦前に日本が設置した日本国外のハンセン病療養所の元入所者も国内療養所の元入所者と同様に補償金の支給対象となった。また、2019年11月、「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」が制定され、ハンセン病元患者の家族も補償対象となった。