第2章 地域別に見た外交 第1節 法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の推進 2 各国との連携・協力 2025年においても、日本は、FOIPの実現に向け外交活動を積極的に推進した。 (1)米国 2月、米国を訪問した石破総理大臣は、ワシントンD.C.においてトランプ大統領と日米首脳会談を行い、厳しく複雑な安全保障環境に関する情勢認識を共有しつつ、FOIPの実現に向けて緊密に協力し、日米同盟を新たな高みに引き上げていくことを確認した。 10月、トランプ大統領が訪日した際に行われた日米首脳会談では、高市総理大臣から日米同盟はインド太平洋地域の平和と繁栄の礎であるとともに、その更なる強化は日本の外交・安全保障政策の最優先事項であると述べ、米国にとっても、日本はインド太平洋における不可欠なパートナーであることを強調した。また、高市総理大臣は、FOIPを日本外交の柱として、引き続き力強く推進し、時代に合わせて進化させていく決意を示し、両首脳はFOIPを力強く推進するため、緊密に連携していくことを確認した。その上で、両首脳は、そのビジョンの下で、日米韓、日米比(フィリピン)、日米豪印といった地域の同志国ネットワークを強化していく重要性を確認した。 これに加え、12月に公表された米国の新たな国家安全保障戦略でも、FOIPに対するコミットメントが改めて示された。 このように、日米外相会談やFOIPに関する日米協議など様々な機会において、日米両国がFOIPの実現に向け引き続き緊密に連携していくことを確認してきている。 (2)日米豪印 日米豪印4か国は、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を強化していくとの目標の下、FOIPの実現に向けて、重要・新興技術、海洋安全保障を始め様々な分野で実践的な協力を進め、より多くの国々へ連携を広げていく重要性を共有している。また、4か国は、AOIPを全面的に支持し、FOIPに関する欧州を始めとする各国の前向きな取組を歓迎している。1月、米国新政権発足翌日に開催された日米豪印外相会合においてもFOIPの強化に向け、共同声明を発出した。また、7月に米国で行われた日米豪印外相会合において、4か国の外相はFOIPの実現に向けたコミットメントを再確認し、今後の日米豪印の優先的な協力事項として、海洋・越境安全保障、経済的繁栄・経済安全保障、重要・新興技術及び人道支援・緊急対応の四つの分野を推進することを確認し、地域に裨(ひ)益する実践的な協力を引き続き継続していくことで一致した。 (3)日米韓 日米韓を取り巻く戦略環境が厳しさを増す中、日米韓3か国は、FOIPの実現のため、様々なレベルで意思疎通を行い、結束を強化してきており、2025年は、5回の外相会合を実施した。10月の外相会合では、FOIPの実現のため、強固な日米同盟・米韓同盟、そしてその戦略的連携を示し続けることの重要性を再確認し、2月、4月及び9月の外相会合の際に発出した日米韓外相共同声明においても、FOIPを維持するとのコミットメントを繰り返し確認してきている。このほか、7月には日米韓次官協議を実施し、また、日米韓調整事務局会合も繰り返し実施してきている。 そして、これらの会合において、行動志向の議論を行い、特に北朝鮮への対応や、経済安全保障を含む安全保障分野で具体的な取組を実現してきている。 特に、FOIPの実現に向けては、5月には、日米韓の海上保安機関が共同で、ASEANに対する能力向上支援を実施したほか、9月には、複数領域における日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」を実施している。また、経済安全保障分野では、9月の量子技術の保護に関する日米韓会合の実施を始め、重要・新興技術の保護・促進や、重要鉱物を含むサプライチェーン強靭(じん)化に向けた取組を進めてきている。 (4)インド 8月、石破総理大臣は、訪日したモディ首相との間で首脳会談を行い、基本的価値と戦略的利益を共有する日印両国は、インド太平洋地域ひいては国際社会の平和と安定に大きな責任を負っており、モディ首相と共にこの責任を果たしていきたいと述べ、首脳間でFOIP実現の重要性を確認した。 また、高市内閣の下、10月のASEAN関連首脳会合の際に行った日印外相会談及び11月のG20サミットの際に行った日印首脳会談でもFOIP実現に向けた連携を確認した。 (5)東南アジア諸国連合(ASEAN) 日本とASEANの間では、2020年に「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)協力についての第23回日ASEAN首脳会議共同声明」を発出し、AOIPとFOIPが本質的な原則を共有していることを確認した。2023年に岸田総理大臣からFOIPのための新たなプランを発表した際には、AOIPとFOIPが共鳴するビジョンであることを強調し、同年9月の日ASEAN首脳会議では、ASEANの連結性強化、ひいては一層の域内統合を促す「日・ASEAN包括的連結性イニシアティブ」を発表した。2025年10月の日・ASEAN首脳会議で、高市総理大臣は、FOIPを改めて日本外交の柱と位置付け、時代の変化に合わせて進化させていくこと、中でもAOIPとの連携をより一層強化し、日本とASEANが共に強く、豊かになるための協力を進めていくことを表明した。さらに、この会議では、「AOIPの更なる推進と実施に関する日ASEAN首脳共同声明」を採択し、AOIPとFOIPが本質的な原則を共有していることを再確認し、更なる協力の促進及び推進を確認したほか、AOIPとFOIPが共有する本質的な原則に貢献するAOIPプロジェクトを実施していくことで合意した。同月の東アジア首脳会議(EAS)では、高市総理大臣の代理で出席した茂木外務大臣から、このAOIP協力に関する共同声明にも沿って、具体的な協力を更に推進していくと表明した。 (6)オーストラリア・ニュージーランド オーストラリアとは、9月に実施した第12回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)の機会に共同声明を発出し、日豪両国の、包摂的で強靱なFOIPの実現に主導的な役割を果たすための、かつてない戦略的一致と、共通の意思及び能力を確認した。また、10月に高市総理大臣は、アルバニージー首相と首脳会談を実施し、日豪はFOIPの実現のために主導的役割を果たす意思と能力を有する同志国であると述べた。 ニュージーランドとの間では、7月に岩屋外務大臣が、ピーターズ外相と外相会談を実施し、地域の戦略環境が厳しさを増す中、両国がFOIPの担い手として連携を強化していることは心強く、「戦略的協力パートナーシップ」を強化していきたいと述べた。 (7)カナダ カナダは2022年にインド太平洋戦略を発表しており、これまで日加は「FOIPに資する日加アクションプラン」に基づく具体的な取組を着実に進めている。 11月、高市総理大臣は、カーニー首相との間で、FOIPの実現に向けて、「日加アクションプラン」を土台として、緊密に協力していくことで一致した。 「日加アクションプラン」に基づき、カナダは航空機や艦船を継続的に地域に派遣し、「瀬取り」(2)を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動に従事したほか、沿岸警備艦船を派遣し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策などの任務を実施してきている。 (8)欧州 ア 欧州連合(EU) 7月、石破総理大臣は、コスタ欧州理事会議長及びフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長と第30回日・EU定期首脳協議を実施した。欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であることを改めて確認し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、日・EU間で緊密に連携していくことを確認した。11月、英利アルフィヤ外務大臣政務官は、ブリュッセル(ベルギー)で開催された「第4回EUインド太平洋閣僚会合」に出席し、FOIPを引き続き力強く推進し、時代に合わせて進化させていくことを強調した。 イ 北大西洋条約機構(NATO) 6月、ハーグ(オランダ)で開催されたNATO首脳会合関連行事として、ルッテNATO事務総長とインド太平洋パートナー(IP4:日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国)の会合が開催され、岩屋外務大臣が出席した。同会合では、国際的な安全保障環境について意見交換が行われ、NATOのインド太平洋への関与拡大に加え防衛産業分野を始めとするNATOとIP4との具体的協力の重要性が確認された。 ウ 英国 3月、日英経済版2+2閣僚会合(経済版2+2)の初回会合が開催され、経済安全保障における日英連携について閣僚レベルの議論が行われたほか、両国が自由で開かれたルールに基づく国際経済秩序の擁護者であり続けるべきと再確認した。8月から9月にかけて、英国空母打撃群(CSG25)が横須賀及び東京に寄港し、石破総理大臣による英国空母視察や日英防衛大臣会談が行われたほか、インド太平洋地域の安全保障や経済面の連携強化を議論する国際シンポジウム「太平洋未来フォーラム」が開催され、日英両国の防衛大臣が基調演説を行った。11月に実施された日英首脳会談では、高市総理大臣とスターマー首相が、東アジア情勢などの国際情勢についても意見交換を行い、国際社会の諸課題について、日英が引き続き緊密に連携していくことで一致した。 エ フランス 5月、岩屋外務大臣は、バロ欧州・外務相と日仏外相会談を実施し、インド太平洋地域における安全保障分野での日仏協力や、鉱物資源のサプライチェーンの強靱化のための協力の進展を確認した。11月、茂木外務大臣は、バロ欧州・外務相と日仏外相会談を行い、インド太平洋国家でもあるフランスと、FOIPの実現や法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、緊密に協力していくことについて議論した。同月、高市総理大臣とマクロン大統領は意見交換を行い、「特別なパートナー」である日仏両国が、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分との認識の下、安全保障や経済を始め、あらゆる分野で引き続き緊密に協力していくことで一致した。 オ ドイツ 2020年9月に閣議決定した「インド太平洋ガイドライン」に基づき、ドイツ政府が同地域への関与の強化に取り組む中、日独間の安全保障協力は一段と深化した。8月には、ヴァーデフール外相が訪日し、第1回日独外相戦略対話を実施。岩屋外務大臣から、ドイツのアセット展開などを通じたインド太平洋地域への関与継続を歓迎すると述べ、両外相は、安全保障分野での両国間協力を今後更に具体化するため、次回外務・防衛閣僚会合(「2+2」)の早期開催等で一致した。また、9月には航空自衛隊F15機等が初めてドイツに寄航するなど、これまでの両国のアセット派遣や日独物品役務相互提供協定(日独ACSA)発効を通じた協力が更に進展した。さらに、11月には、高市総理大臣がメルツ首相と会談し、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分の中、FOIPの実現に向けて連携していきたいと述べた。 カ イタリア 3月、石破総理大臣は、マッタレッラ大統領との間で日伊首脳会談を実施し、安全保障を含む幅広い分野で両国間の協力関係が深化していることを歓迎した上で、2024年に発表した「日伊アクションプラン」に基づき日・イタリア関係を一層強化していくことで一致した。3月から4月にかけて、イタリア海軍フリゲート艦「アントニオ・マルチェリア号」が横須賀及び大阪に寄港し、北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動を行った。5月、石破総理大臣はメローニ首相との間で日伊首脳電話会談を実施し、イタリアがインド太平洋への関与を強める中、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)を始め安全保障に関する協力についても更に進展させていくことで一致した。9月、2024年11月に署名が行われた日伊物品役務相互提供協定(日伊ACSA)が発効した。 キ オランダ 2月、岩屋外務大臣は、ミュンヘン安全保障会議で、フェルドカンプ外相と外相会談を実施し、防衛協力などを深化させることで一致した。4月、石破総理大臣は、訪日中のスホーフ首相との間で首脳会談を実施し、様々なグローバルな課題への連携で一致した。6月、岩屋外務大臣はNATO首脳会合でスホーフ首相と会談し、物品役務相互提供協定(ACSA)の交渉開始で一致した。9月、石破総理大臣は国連総会の際スホーフ首相との間で首脳会談を実施し、国際社会の喫緊の諸課題に対して緊密に連携することで一致した。12月、日・オランダ物品役務相互提供協定(日・オランダACSA)への署名が行われた。 (2) ここでの「瀬取り」は、2017年9月に採択された国連安保理決議第2375号が国連加盟国に関与などを禁止している、北朝鮮籍船舶に対する又は北朝鮮籍船舶からの洋上での船舶間の物資の積替えのこと