第4章 国民と共にある外交 3 地方自治体などとの連携 外務省は、内閣の最重要課題の一つである地方創生にも積極的に取り組み、地方との連携による総合的な外交力を強化するための施策を展開している。 日本国内では、駐日外交団や商工会議所、企業関係者などを外務省の施設である飯倉公館に招き、レセプションの開催やブースでの展示を通じて地方の多様な魅力を内外に広く発信する「外務大臣及び知事共催レセプション」を実施している。1月に新潟県、3月に徳島県との共催でレセプションを実施し、駐日外交団を始めとする参加者と両県との更なる交流の促進につながる機会となった。新潟県との共催レセプションでは、約170人の関係者が出席し、上川外務大臣から、新潟県の多様な魅力を紹介しつつ、「佐渡島(さど)の金山」の世界遺産登録に向け、その文化遺産としての素晴らしい価値が評価されることが重要であるとして、駐日外交団を始めとする参加者に対し、新潟県の魅力を発信することについて協力を求めた。同レセプションでは、県産品である水産物、米加工品、地酒や佐渡島の金山、錦鯉(にしきごい)、翡翠(ひすい)、伝統工芸品、観光などを紹介するブースを設けるとともに、ステージでは佐渡の古典芸能である「鬼太鼓(おんでこ)」のパフォーマンスも行った。徳島県との共催レセプションでは、約230人の関係者が出席し、上川外務大臣から、徳島県の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取組について紹介するとともに、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーとしてのホストタウン交流についても触れつつ、徳島県の魅力が更に世界に発信されることを祈念すると述べた。同レセプションでは、県産品である食品、地酒、伝統工芸品やSDGs達成に向けた取組、ホストタウン交流などを紹介するブースを設けるとともに、ステージでは徳島県の「阿波(あわ)おどり」のパフォーマンスも行われた。 新潟県知事との共催レセプション(背景は「佐渡島の金山」の紹介パネル)(1月23日、東京・外務省飯倉公館) 徳島県知事との共催レセプション(3月13日、東京・外務省飯倉公館) このほか、外務省は地方自治体などとの共催で、各国の駐日外交団や商工会議所、関連企業などの関係者に対して各地域の地元産品、観光や産業、投資などの施策や魅力を発信する「地域の魅力発信セミナー」を実施しており、2024年度は2025年1月に開催した。 また、外務省は地方自治体との共催で、駐日外交団に地方の多様な魅力を現地で直接体験してもらうことを目的に「駐日外交団による地方視察ツアー」を実施している。1月30日及び31日には、関西広域連合との共催で「ガストロノミーと歴史・文化を巡る関西」をテーマに奈良県及び大阪府堺市へのツアーを実施し、2025年大阪・関西万博の開催を控える関西エリアの歴史、文化、食、産業、観光、特産品などを紹介した。6月6日及び7日には、「茶のくに八女(やめ)の伝統を巡る」をテーマに福岡県八女市へのツアーを実施し、参加した駐日外交団は、600年の歴史がある八女茶を始め、同市の伝統工芸や文化などについて理解を深めた。10月10日及び11日に実施した福島県へのツアーでは、参加した駐日外交団は、東日本大震災の直接的な被害を受けた浜通り地方を訪れ、東日本大震災の発生当時の状況や復興が進む福島の現状を視察したほか、安全で美味(おい)しい福島の食の魅力について認識を深めた。10月30日及び31日には、京都市へのツアーを実施し、参加した駐日外交団は、スタートアップ企業を含む同市に本社を置く企業との交流、京都迎賓館への訪問などを通じて、同市の産業、歴史、文化について理解を深めた。11月18日及び19日には、市制20周年を迎える栃木県佐野市へのツアーを実施し、同市が牽(けん)引するクリケットを体験したほか、同市の伝統工芸品、産業、観光などについて理解を深めた。 奈良県・大阪府堺市の視察先を訪問する外交団(駐日外交団による地方視察ツアー)(1月30日奈良県、31日大阪府堺市) 八女中央大茶園を訪れた外交団(駐日外交団による地方視察ツアー) (6月7日、福岡県八女市) 京都迎賓館を訪れた外交団(駐日外交団による地方視察ツアー) (10月31日、京都市) 福島県主催交流会(駐日外交団による地方視察ツアー) (10月10日、福島県) 佐野市国際クリケット場を訪れた外交団(駐日外交団による地方視察ツアー) (11月18日、栃木県佐野市) さらに、外務省では地方自治体に対し、地域レベルの国際交流活動に密接に関係する最新の外交政策などに関する説明の場を提供しており、その一環として、1月及び12月に「地方連携フォーラム」をウェビナー形式で開催した。1月のフォーラムでは、第1部は、外務省から「経済外交と官民連携」のテーマで、第2部は日本外交協会から「自治体の中古消防車・救急車等を通じた国際貢献・地方交流」のテーマで、第3部は観光庁から「コロナ禍後のインバウンド観光の最新動向と地方における取組」のテーマでそれぞれ講演を行い、第3部では自治体参加者との間で質疑応答が行われた。12月のフォーラムでは、第1部は、外務省から「日・ASEAN関係」のテーマで、第2部は、日本酒コーディネーターから「SAKEから観光立国」のテーマでそれぞれ講演が行われた。また、第2部の講演の後は、蔵元やソムリエとして日本酒に関わるパネリストを交えたパネルディスカッション及び自治体参加者との間での質疑応答が行われた。 海外での事業については、東日本大震災後の国際的な風評被害対策として、食品輸入規制の撤廃・緩和の働きかけと併せ、地方創生の一環として日本の地域の魅力発信、日本各地の産品の輸出促進、観光促進などを支援する総合的な広報事業として「地域の魅力海外発信支援事業」を実施している。7月から2025年3月にかけて、中国及び香港においてオンライン形式での情報発信を含む形で実施した。SNSを活用して多くの人々に日本の観光・文化・食などの地域の魅力を体感してもらうことを目標に、41の日本の自治体がそれぞれの魅力を伝える動画を作成し、在中国日本国大使館の微博(ウェイボー)(中国SNS)アカウントなどで配信した。また、在中国日本国大使館が主催するイベントにおいて、日本の食品関連企業や自治体が食や観光のPRを実施した。香港では、7月に実施された香港ブックフェアにおいて東北地方などのPRを行った。こうした取組では、キー・オピニオン・リーダー(KOL)やインフルエンサーも活用することで、より多くの人々に日本の地域の魅力が伝わっている。 地域の魅力海外発信支援事業で在中国日本国大使館のSNSアカウントから発信した自治体のPR動画 また、在外公館施設を活用して地方自治体がその魅力を発信することを通じて、地方産品の販路拡大、インバウンド促進などを目指す「地方の魅力発信プロジェクト」を9件実施した。 加えて、例年天皇誕生日の時期に合わせて開催される「在外公館における天皇誕生日祝賀レセプション」で地方の産品や催事などを紹介・発信する場を設けている。2024年は、245の在外公館において対面開催され、そのうち119公館において地方の魅力発信を行った。 このほか、外務省では様々な取組を通じて日本と海外の間の姉妹都市交流や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のホストタウン交流を始めとする日本の自治体と海外との間の交流を支援してきた。具体的には、在外公館長や館員が海外の姉妹都市提携先を訪問して、国際交流・経済交流関係担当幹部などと意見交換を行うことや、在外公館長の赴任前や一時帰国の際に地方を訪問し、姉妹都市交流やホストタウン交流に関する意見交換や講演を行うことで、地方の国際的取組を後押ししている。また、日本の自治体と姉妹都市提携を希望している海外の都市などがある場合は、都道府県及び政令指定都市などに情報提供し、外務省ホームページの「グローカル外交ネット」(3)で広報するなどの側面支援を行っている。 地方連携の取組を紹介する広報媒体としては、「グローカル外交ネット」のほか、毎月1回メールマガジン「グローカル通信」(4)を配信し、加えて「X(旧ツイッター)」(5)による投稿を行っている。これら広報媒体においては、外務省の地方連携事業や地方自治体が進める姉妹都市交流、ホストタウン交流、地方の国際的取組などを紹介している。 また、各地の日本産酒類(日本酒、日本ワイン、焼酎・泡盛など)の海外普及促進の一環として、各在外公館における任国要人や外交団との会食での日本産酒類の提供、天皇誕生日祝賀レセプションなどの大規模な行事の際に日本酒で乾杯するなど日本産酒類の紹介・宣伝に積極的に取り組んでいる。その際には、2024年にユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」についても積極的にアピールしている。 さらに、外務省及び独立行政法人国際協力機構(JICA)はODAにおいても地方自治体などと連携しており、開発途上国が経済成長に伴って直面している、水処理、廃棄物処理、都市交通、公害対策などの課題について、日本の地方自治体の経験やノウハウ、各地域の中小企業の優れた技術や製品を活用する形で開発協力を進めている。 (3) 外務省ホームページ「グローカル外交ネット」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/local/index.html (4) 地方連携推進室メールマガジン「グローカル通信」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/lpc/page25_001870.html (5) 地方連携推進室 X(旧Twitter):https://twitter.com/localmofa