第2章 地域別に見た外交 2 米国 (1)米国情勢 ア 政治 2024年の米国内政は、11月の大統領選挙を中心に展開した。大統領選予備選が1月中旬から6月初旬まで行われ、バイデン大統領とトランプ前大統領がそれぞれ再選を目指した。3月中旬には、両者は各党の大統領候補指名に必要な代議員を獲得し、全国党大会での正式指名を待つことなく、実質的な党大統領候補として競うこととなった。しかし、6月の大統領候補テレビ討論会を契機に民主党内で候補者交代論が高まり、7月、同大統領の選挙戦からの撤退を受けて民主党大統領候補者がハリス副大統領に交代した。11月の本選ではトランプ前大統領が勝利し、その後は、トランプ次期大統領による閣僚及び高官の指名が相次いだ。 (ア)大統領選予備選 大統領選予備選は、1月15日のアイオワ州党員集会を皮切りに開始した。民主党では、バイデン大統領に対する有力対抗候補が不在のため、大統領候補討論会は行われず、大統領選予備選では主に同大統領の高齢や政策が問われた。政策については、物価高によって国民の経済状況が圧迫されたこと、及び前年に発生したガザ情勢の悪化へのバイデン政権の対応をめぐり、支持層の一部から批判が噴出したことが支持率抑制の一つの要因となった。特にガザ情勢をめぐっては、州人口の2%程度がアラブ・イスラム系住民であるミシガン州を中心に、同州住民や左派の一部活動家が、民主党大統領選予備選でバイデン大統領に抗議票を投じて中東政策の修正を迫る運動を開始し、同州のほか、ペンシルベニア州やノースカロライナ州で、抗議票が総投票数の1割強に達した。この運動は、特に僅かな票差が勝敗を左右する接戦州において、バイデン大統領の再選を妨げ得る脅威となった。 一方、共和党予備選には、2022年11月に出馬を表明したトランプ前大統領のほか、ヘイリー前国連大使・前サウスカロライナ州知事、デサンティス・フロリダ州知事、ハッチンソン前アーカンソー州知事、起業家のラマスワミ氏らが立候補した。しかし、知名度と支持率で圧倒的な優位にあったトランプ前大統領は、共和党候補者テレビ討論会には1度も出席せず、同氏とそれ以外の候補者が直接対決する議論が行われないまま、予備選に突入した。予備選初戦のアイオワ党員集会の結果を受け、トランプ前大統領とヘイリー氏以外の候補者は、選挙戦から撤退した。二者対決となってからは、ヘイリー氏が共和党支持層内の反トランプ派と一部無党派層の唯一の受け皿となり、トランプ派対反トランプ派の対決の構図となったが、カリフォルニア州など15州で予備選が実施されたスーパーチューズデー(3月5日)では、トランプ前大統領が圧勝した。この結果を受け、翌日にヘイリー氏は撤退を発表し、トランプ前大統領が事実上の共和党大統領候補となった。 3月12日、バイデン大統領とトランプ前大統領は早々に各党の大統領候補指名に必要な代議員を獲得し、予備選への注目は大きく低下したが、予備選のプロセスは、その後の大統領選本選における両候補をめぐる争点を浮き彫りにした。すなわち、バイデン大統領については、2022年の「ドブス対ジャクソン女性健康機構」訴訟の判決(ドブス判決)を受けた中絶の権利が選挙戦を戦う上で有利に、同氏の高齢、物価高を中心とする経済政策の実績及びガザ情勢への対応が不利に、それぞれ働き得ることが浮き彫りとなった。一方、トランプ前大統領については、不法移民・南部国境問題が有利に、共和党支持層内の反トランプ派の動向と同氏をめぐる四つの刑事裁判の行方が不利に働き得ることが明らかとなった。また、トランプ前大統領をめぐる民事訴訟は多大な弁護費用を要し、同氏の政治資金を圧迫した。 (イ)民主党大統領候補交代 予備選が6月初旬に終了し、選挙が本選に突入していく中、バイデン大統領は全国及び本大統領選挙の接戦7州(ペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州、ジョージア州、ノースカロライナ州、アリゾナ州、ネバダ州)の双方において、おおむね年初から継続的にトランプ前大統領に支持率でリードされていた。この時点において、トランプ前大統領による支持率リードについて民主党内では不安が広まっていたものの、あからさまに大きな現状変更を求める動きは見られなかった。 しかし、大統領候補討論会から約1か月間、大統領選をめぐる民主党側の政治情勢は目まぐるしく展開した。すなわち、6月27日の大統領候補討論会において、バイデン大統領が言葉の詰まりや、言い間違いを繰り返したことにより、民主党連邦議員の一部から大統領候補交代論が噴出した。その約2週間後、7月13日にはペンシルベニア州でトランプ前大統領が演説中に銃撃され、同氏は負傷するも、翌々日の15日から18日までウィスコンシン州ミルウォーキーで行われた共和党全国党大会に出席し、演説を行った。同大会は、負傷したトランプ前大統領の下で共和党全体の団結が強化され、勢いが付いた状況で実施され、党副大統領候補として当時39歳だったJ・D・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出)を選出した。この共和党の弾みを受け、大統領候補討論会以降一部にとどまっていた民主党内の不安及び警戒感は短期間で一気に表面化・大勢化し、大統領候補交代論が急速に台頭した。7月21日、バイデン大統領は大統領選からの撤退を表明した。バイデン大統領撤退表明直後には、ハリス副大統領が代替の大統領候補として支持を集め、党内オンライン投票で党大統領候補の仮指名を獲得した。その後、8月19日から22日までイリノイ州シカゴで開催された民主党全国大会で、ハリス副大統領が民主党大統領候補、ウォルズ・ミネソタ州知事が同党副大統領候補として選出された。 民主党大統領候補交代により、選挙戦の注目はますますハリス副大統領とトランプ前大統領に収斂(れん)していった。ハリス副大統領は米国史上初の黒人女性大統領候補として選挙に新鮮さを持ち込むとともに、年齢問題も払拭することができたが、選挙活動が本選まで3か月未満と短い中、予備選を経ずに大統領候補となったことに関する正統性を有権者に説明することや、バイデン政権の副大統領を務めつつも、同時に支持が低迷していた同大統領と自らを差別化することを両立させることが求められた。また、民主党側は候補交代により、年初から続いていた支持率の劣勢を全国で一時的に覆すことはできたが、予備選で炙(あぶ)り出された争点のうち、バイデン政権の物価高を中心とする経済政策の実績、不法移民・国境対策、ガザ紛争への対応に関する有権者の信任については、トランプ前大統領のリードを崩せないまま11月の大統領選に突入した。また、ハリス副大統領対トランプ前大統領という新たな対決構図の発生とともに、選挙戦における第三候補や第三政党の存在感は大きく低下し、特に、注目されていたケネディ・ジュニア候補は8月下旬に撤退した後、トランプ陣営に加わった。 (ウ)大統領選本選及び連邦議会選 11月5日、大統領選・連邦議会選・州知事選などが全米で行われ、議会選の一部を除き、接戦による混乱が生じ得るとの多くの専門家達の事前予測に反し、開票結果は比較的迅速に判明した。トランプ前大統領は接戦7州全てを制し、獲得選挙人も過半数の270人を大きく上回る312人に達した。しかし、総投票数約1億5,230万票のうち、得票数ではハリス副大統領との差は僅か約230万票(約1.5%)であり、実態は接戦だった。したがって、過去数回の大統領選と同じく、特に接戦州を中心とする僅か数%の有権者が選挙結果を左右する構図は不変だった。有権者の動向としては、特に従来大多数が民主党支持層と考えられてきた黒人男性有権者の2割とヒスパニック系有権者の5割がトランプ前大統領に投票したことが注目された。 また、共和党は大統領選のみならず、連邦議会両院選でも勝利した。上院では53議席、下院では220議席をそれぞれ獲得し、過半数を制した。 本大統領選の結果を受け、米国内の一部からは、共和党がトランプ前大統領によって富裕層の政党から、過去数十年で最も多人種な労働者階級政党に再編される一方、民主党は労働者や社会的弱者の政党から、比較的裕福な教育水準の高い有権者が支える政党へ変貌したとの評価が出た。 (エ)第2期トランプ政権への準備 トランプ前大統領は、不法移民・国境対策、治安・薬物対策、経済対策を優先課題としつつ、大統領選結果判明以降の約1か月で、国務長官官など大半の閣僚人事の指名を終えた。中でも、選挙中に同氏を資金などで支援した富豪で実業家のイーロン・マスク氏とヴィヴェク・ラマスワミ氏を新設の役割である政府効率化担当とする人事などが注目された。 イ 経済 (ア)経済の現状 実質GDPは、2023年通年は前年比2.9%であったが、2024年は、前年比2.8%と一層のプラス成長が続いた。10月から12月においては前期比年率2.3%と10四半期連続のプラス成長となり、GDPの約7割を占める個人消費も前期比年率2.8%とGDPの成長を牽(けん)引した。高い金利水準の継続に伴う影響による下振れリスク、今後の政策動向による影響に留意する必要がある。 国民の関心を集めたインフレについては、消費者物価指数(CPI)が2022年9月に約40年ぶりに前年同月比率9%台を記録して以降鈍化し、7月に約3年ぶりに3%を下回った。政策金利誘導目標については、連邦公開市場委員会(FOMC)(5)は、2023年7月以降約1年にわたり、5.25%から5.50%に据え置いていたが、インフレ率が低下したことを受けて2024年9月に同目標を4.75%から5.00%とし、約4年半ぶりに利下げした。さらに11月のFOMCで0.25%の追加利下げを実施し、4.2%から4.5%となった。雇用においては、2023年に引き続き、失業率は年間を通じ4%前後と依然として低水準で推移し、雇用者数も着実に増加した。 (イ)主な経済政策 経済政策は大統領選挙の最も大きな争点の一つとなった。米国経済は、2024年第4四半期時点でGDPは11期連続のプラス成長を維持し、失業率は依然として低水準で推移するなど、比較的好調であった。しかし、国内の経済格差は年々拡大しており、2024年上半期のセントルイス連邦準備銀行の統計によると上位10%が所有する家計資産は全体の約67%を占めたのに対し、下位50%が所有する家計資産が全体に占める割合はわずか約2.5%であった。米国市場における株価の長期上昇傾向を始めとする好景気の恩恵を受けた国民は一部にすぎず、インフレが長引く中、そのような現状に対する国民の不満が選挙結果に一定の影響を及ぼしたと考えられる。 米国社会や国内政治の分断に注目が集まる中で、対中政策は超党派の支持を集めて進められた。4月、米国連邦議会において、一定の条件を満たさない場合にTikTokを含む中国のバイトダンス(ByteDance)社が管理するアプリの米国内での利用などを禁止する内容の法案が成立した。5月、米国政府は、国内法令(通商法第301条)に基づき2018年以来実施してきた中国からの輸入産品に対する関税措置の見直し結果を公表し、バイデン大統領が米国通商代表(USTR)に対し、中国に対する一部関税の関税率引上げについて指示を行った。具体的には、対中関税を引き上げる対象分野として今回挙げられたのは、鉄鋼・アルミ、半導体、電気自動車(EV)、バッテリー・重要鉱物、太陽電池、港湾用クレーン、医療関連品で、総額で180億ドル(米国の年間対中輸入額の約4%)に相当する見込みとなった。6月、米国財務省は、安全保障に重大な影響を及ぼすおそれのある先端技術に関する対外投資の規制案を発表し、中国・香港・マカオから成る「懸念国(Countries of concern)」への投資を規制対象とした。9月、米国通商代表部は、太陽光電池及び半導体製造に必要なポリシリコン及びウェーハを追加関税の引上げの対象に追加することを提案し、港湾用クレーンについて一部猶予措置を設けるなど通商法第301条に基づく対中追加関税の見直しの最終修正案を公表した。また、12月、米国商務省は、中国に対する半導体の輸出管理を強化するため、特定の半導体製造装置を新たに輸出規制対象とする暫定最終規則と、140の企業をエンティティー・リストへ追加する最終規則を発表した。また同月、米国通商代表部は、通商法第301条に基づく中国のレガシー半導体に関する調査を開始する発表した。 2025年1月に就任したトランプ新大統領は、就任式において腐敗した権力階級が市民から権力や富を搾取していると訴え、インフレ対策・価格引下げに取り組むことや、それに当たって国家エネルギー緊急事態を宣言し、化石燃料生産を促進することなどを表明した。また、就任直後から、不公正かつ不均衡な貿易、中国との経済・貿易関係、経済安全保障に関する調査などを行い、4月1日までに是正措置等の勧告を含む報告書の提出を関係機関に指示する大統領覚書「米国第一の貿易政策(America First Trade Policy)」や、グリーン・ニューディール政策の廃止と称してインフレ削減法やインフラ投資・雇用法により計上された資金の支出の一時停止を命じる行政命令「米国エネルギーの解放(Unleashing American Energy)」など、多くの経済分野の大統領令に署名した。 (2)日米政治関係 2024年1月から2025年2月末までに、日米は首脳間で計5回(うち電話会談1回)、外相間で6回(うち電話会談1回)会談を行った。岸田総理大臣は、4月に日本の総理大臣として9年ぶりに国賓待遇で米国を公式訪問し、バイデン大統領との個人的信頼関係と絆(きずな)を深めた。首脳間、外相間の深い信頼関係の下、日米同盟はかつてなく強固なものとなっている。日米同盟は日本の外交・安全保障の基軸であり、インド太平洋地域、そして国際社会の平和と繁栄の基盤である。日米両国は、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けて、地域情勢、安全保障、経済、地球規模課題、人的交流など、あらゆる面で緊密に連携している。 1月12日、ワシントンD.C.を訪問した上川外務大臣は、ブリンケン国務長官と日米外相会談を行った。両外相は、インド太平洋地域情勢、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢を含む地域情勢について意見交換を行い、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けた取組を進めていくことで一致した。 4月8日から14日まで、岸田総理大臣は日本の総理大臣として9年ぶりに国賓待遇で米国を公式訪問した。 4月9日、岸田総理大臣は、アーリントン国立墓地を訪問し、無名戦士の墓に献花を行った。その後、岸田総理大臣夫妻は、バイデン大統領夫妻による招待を受け、ホワイトハウスを訪問するとともに、非公式な夕食会に出席した。岸田総理大臣夫妻は、バイデン大統領夫妻からホワイトハウス内について案内を受けるとともに、日本から持参した桜の苗木を贈呈するなど、和やかで友好的な雰囲気の中、バイデン大統領夫妻との間で親密な交流を行った。両首脳夫妻は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)とトヨタ自動車株式会社が研究開発中の月面与圧ローバの模型とともに写真撮影を行い、アルテミス計画への日本の貢献に対する期待とその重要性を確認した。その後行われた非公式の夕食会では、打ち解けた雰囲気の中で親睦を深め、両首脳夫妻間の個人的信頼関係と絆を深めた。 輪島塗の工芸品などの贈呈品をバイデン大統領夫妻に説明する岸田総理大臣(4月9日、米国・ワシントンD.C. 写真提供:首相官邸ホームページ) 4月10日、岸田総理大臣は、ホワイトハウスで開催された歓迎式典に出席した。バイデン大統領は、日米同盟はインド太平洋地域、そして国際社会の平和、安全保障、そして繁栄の礎であり、日米両国は真にグローバルなパートナーであり、日米両国は今や最も近い友人であると述べた。岸田総理大臣は、日本はグローバルなパートナーとして、米国と共にインド太平洋地域、そして世界の課題解決の先頭に立つと述べ、日米友好の象徴となっているポトマック河畔の桜に言及し、近く米国が迎える建国250周年を記念し、250本の桜を新たに寄贈することを決めたと発表した。 歓迎式典 (4月10日、米国・ワシントンD.C. 写真提供:首相官邸ホームページ) 同日、岸田総理大臣は、バイデン大統領と日米首脳会談を行った。岸田総理大臣は、日米両国は深い信頼と重層的な友好関係で結ばれており、このかつてない強固な友好・信頼関係に基づき、日米両国が二国間や地域にとどまらず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に維持・強化するグローバル・パートナーとなっていると述べ、両首脳はこの点で一致した。さらに、両首脳は、国際社会が分断の度合いを深め、かつてないレベルでの挑戦を受けているとの認識を共有した上で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に維持・強化していくことで一致した。日米同盟の役割がかつてなく高まる中、岸田総理大臣から、国家安全保障戦略に基づき、強い決意を持って防衛力の強化に取り組んでいることを伝え、バイデン大統領から改めて強い支持を得た。さらに、両首脳は、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化が急務であることを再確認し、安全保障・防衛協力を拡大・深化していくことで一致した。また、バイデン大統領から、日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントが改めて表明された。 両首脳は中国をめぐる諸課題や、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応、ウクライナ情勢、中東情勢を含む地域情勢について意見交換を行い、力又は威圧による一方的な現状変更の試みは、世界のいかなる場所であれ、断じて許容できず、同盟国・同志国と連携し、引き続き毅(き)然として対応することを再確認した。 両首脳は、宇宙分野での日米協力を一層推進していくことで一致し、日本からの月面与圧ローバの提供と日本人宇宙飛行士の2回の月面着陸を含む、与圧ローバによる月面探査の実施取決めの署名を歓迎した。さらに、両首脳は、重要なベンチマークが達成されることを前提に、アルテミス計画の将来のミッションで日本人宇宙飛行士が米国人以外で初めて月面に着陸するという共通の目標を発表した。 両首脳は、前年の「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」の発出を含む、核軍縮に関する現実的・実践的な取組が進んでいることを確認し、岸田総理大臣から、米国の「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)フレンズ」への参加を歓迎すると述べた。 両首脳は、揺るぎない日米関係の礎は人と人との絆であり、これを一層強化するため、人的交流を更に促進していくことが重要であることを再確認した。 会談を受けて両首脳は、国際社会の平和と繁栄の礎である法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を何としても維持・強化していくという日米両国の不退転の決意を表明し、その指針を記したものとして、日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」を発出した。 4月11日、岸田総理大臣は米国連邦議会上下両院合同会議において、「未来に向けて -我々のグローバル・パートナーシップ-」と題する演説を行った。本演説は、ジョンソン下院議長が主宰し、ハリス副大統領(上院議長)や、上下両院指導部を始め、多くの上下両院議員や各界の関係者などが出席し、岸田総理大臣は何度も温かい拍手やスタンディング・オベーションを受けた。岸田総理大臣は、日米は、堅固な同盟と不朽の友好に基づく、未来のためのグローバルなパートナーであり、今後もそうあり続けるとのメッセージを発した。 連邦議会上下両院合同会議において演説する岸田総理大臣 (4月10日、米国・ワシントンD.C. 写真提供:首相官邸ホームページ) 7月28日、上川外務大臣は、日米安全保障協議委員会(「2+2」)及び日米豪印外相会合出席のため訪日したブリンケン国務長官と日米外相会談を行った。両外相は、経済安全保障を含む共通の課題への対応や南シナ海情勢を含む日本を取り巻く地域情勢について意見交換を行い、日米の連携の重要性、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した。 日米外相会談(7月28日、東京) 9月21日、デラウェア州を訪問した岸田総理大臣は、バイデン大統領の私邸において日米首脳会談を行った。会談の冒頭、岸田総理大臣はバイデン大統領と共に私邸内を二人で歩きながら、バイデン大統領から建物や私邸周辺にある湖などについて紹介を受け、和やかな雰囲気で会談を行った。両首脳は、日米関係のこれまでの進展を包括的に振り返るとともに、日米共通の課題について率直な意見交換を行った。両首脳は、日米同盟の抑止力・対処力を引き続き向上させることの重要性及び日米安全保障協力の取組を着実に進めることで一致した。岸田総理大臣は、両国はG7、日米豪印、日米韓、日米比などを通じた同志国連携を通じて、FOIPを更に発展させていくとともに、こうした協力をグローバル・サウスとの間でも進めていく必要性を強調した。 日米首脳会談 (9月21日、米国・デラウェア 写真提供:首相官邸ホームページ) 両首脳は、中国をめぐる諸課題や、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応、ウクライナ情勢、中東情勢を含む地域情勢について意見交換を行い、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致した。岸田総理大臣から、今後も日米で連携して「核兵器なき世界」に向けた取組を主導していくことの重要性を強調した。最後に、両首脳は、今後も日米両国が、自由で開かれた国際秩序の中核を担うグローバル・パートナーであり続けることを確認した。 10月に発足した石破政権でも、日米同盟の強化は、政権の外交・安全保障政策上の最優先事項と位置付けられている。10月2日、石破総理大臣はバイデン大統領と電話会談を行った。石破総理大臣から、自由で開かれた国際秩序の中核を担うグローバル・パートナーとして、日米両国で引き続き緊密に連携していきたいと述べ、両首脳は、日米同盟の抑止力・対処力を引き続き向上させることの重要性で一致した。また、両首脳は、経済安全保障協力などにも共に取り組んでいくこと、及び日米韓、日米豪印、日米比などの同志国ネットワークを更に発展させていくことで一致した。両首脳は、中国をめぐる諸課題や、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応、ウクライナ情勢について、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致した。 10月2日、岩屋外務大臣はブリンケン国務長官と電話会談を行った。岩屋外務大臣から、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に維持・強化するグローバル・パートナーとして、ブリンケン国務長官と緊密に連携し、かつてなく強固になった日米同盟をより一層強化していきたいと述べた。両外相は、7月の日米「2+2」の成果を踏まえ、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けた協力を進めていくこと、及びインド太平洋地域におけるルールに基づく経済秩序の維持・強化や経済安全保障協力などにおいて、日米で緊密に連携していくことで一致した。 11月7日、石破総理大臣は、トランプ次期米国大統領と電話会談を行った。冒頭、石破総理大臣から、トランプ次期大統領の大統領選挙での勝利に対して祝意を伝えた。両者は、日米同盟を新たな高みに引き上げるために協力していくことを確認し、双方にとり都合の良い、できるだけ早期のタイミングで対面での会談を行うことで一致した。 11月14日、アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議に出席するためペルー・リマを訪問中の岩屋外務大臣は、ブリンケン国務長官と対面で初めてとなる会談を行った。中国をめぐる諸課題や核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応、ウクライナ情勢といった地域情勢について意見交換を行うとともに、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けた協力や同志国連携を進めていくことで一致した。 日米外相会談(11月14日、ペルー・リマ) 11月15日、同じくAPEC首脳会議に出席するためペルー・リマを訪問した石破総理大臣は、バイデン大統領と会談を行った。日米同盟の強化や、日米韓などの同志国ネットワークの更なる発展に向け、今後も引き続き協力していくこと、また、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮情勢への対応について引き続き日米で緊密に連携していくことで一致した。 日米首脳会談 (11月15日、ペルー・リマ 写真提供:首相官邸ホームページ) 2025年1月7日、岩屋外務大臣は訪日したブリンケン国務長官とワーキング・ランチを行い、岩屋外務大臣から、ブリンケン国務長官のこれまでの日米同盟に対する貢献に謝意を述べた上で、両外相は、かつてなく強固になった日米関係を維持・強化するため、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致した。 1月20日、ワシントンD.C.を訪問した岩屋外務大臣は、米側からの招待を受け、トランプ大統領の就任式に出席した。 日米外相会談(2025年1月20日、米国・ワシントンD.C.) 1月21日、岩屋外務大臣はルビオ国務長官と初めてとなる外相会談を行い、岩屋外務大臣からルビオ国務長官の就任への祝意を述べ、両外相は、今後も日米同盟を新たな高みに引き上げるとともに、FOIPの実現に向け、日米で協力していくことで一致した。さらに、両外相は、かつてなく強固になった日米関係を維持・強化するため、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致した。 2月7日、ワシントンD.C.を訪問した石破総理大臣は、トランプ大統領と対面で初めてとなる会談を行った。両首脳は、厳しく複雑な安全保障環境に関する情勢認識を共有し、FOIPの実現に向けて緊密に協力し、日米同盟を新たな高みに引き上げていくことを確認し、日米同盟の抑止力・対処力を高めることで一致した。石破総理大臣からは、日本の防衛力の抜本的強化への揺るぎないコミットメントを表明し、トランプ大統領はこれを歓迎した。トランプ大統領は、米国による核を含むあらゆる能力を用いた、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを強調した。両首脳は、日米安全保障条約第5条が尖(せん)閣諸島に適用されることを改めて確認した。また、両首脳は、辺(へ)野古における普天間飛行場代替施設の建設及び普天間飛行場の返還を含む沖縄統合計画に従った在日米軍再編の着実な実施へのコミットメントを確認した。両首脳は、中国をめぐる諸課題や核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応といった地域情勢について意見交換を行った。また、両首脳は、日米豪印、日米韓、日米比といった同志国連携を更に強化していくことの重要性を確認した。両首脳は、かつてなく強固になった日米関係を維持・強化するため、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致し、日米首脳共同声明を発出した。最後に、石破総理大臣はトランプ大統領に、早期の日本への公式訪問を招待した。 日米首脳会談(2025年2月7日、米国・ワシントンD.C. 写真提供:首相官邸ホームページ) (3)日米経済関係 日米経済関係は、安全保障、人的交流と並んで日米同盟を支える3要素の一つである。例えば、日本は、米国内の直接投資残高で5年連続世界最大の対米投資国(2023年は7,833億ドル)であり、2022年には約97万人の雇用を創出した(英国に次ぎ2位)。日本企業による関係強化に加え、2024年は、総理大臣の訪米を始め、日米経済関係が一層の深化を遂げる1年となった。 4月10日、岸田総理大臣は、バイデン大統領と日米首脳会談を行い、両首脳は、日米両国が世界の経済成長を共に牽引していく上で、民間企業を始めとする双方向の投資の促進が重要であるとの認識で一致した。岸田総理大臣からは、米国滞在中に訪問を予定していたノースカロライナ州における日本企業の投資にも触れつつ、日本企業が投資や雇用創出を通じて米国経済に大きく貢献していることを説明し、バイデン大統領から賛意が示された。その上で、両首脳は、半導体、人工知能(AI)、量子などの先端技術分野での競争力の維持・強化に向け、研究開発協力の具体化を歓迎するとともに、イノベーションを促進するスタートアップ環境の整備や人材育成交流といった連携を加速化することを確認した。両首脳はまた、経済的威圧、非市場的政策・慣行や過剰生産の問題への対応、サプライチェーンの強靱(じん)化や、脱炭素化などによる持続可能で包摂的な経済成長の実現に向け、協力を強化していくことで一致した。この文脈で、経済安全保障の確保に向けて、二国間やG7を含め、様々な枠組みを通じて連携を更に深めていくことで一致した。さらに、岸田総理大臣から、米国のインド太平洋地域への経済的関与が不可欠であると述べ、同地域の経済秩序についてやり取りを行った。 また、日米は、インド太平洋地域の持続可能で包摂的な経済成長を目指し、地域のパートナーと共に幅広い分野での連携を強化している。2022年5月、バイデン大統領の訪日に合わせて立ち上げられたインド太平洋経済枠組み(IPEF)(6)(269ページ 第3章第3節2(1)ア(イ)参照)に関しては、2024年2月24日、IPEFサプライチェーン協定(柱2)が発効した。さらに、6月、シンガポールでIPEF閣僚級会合及び投資家フォーラムが開催され、IPEFクリーン経済協定(柱3)、IPEF公正な経済協定(柱4)及びIPEF協定の署名式が行われた。10月11日、IPEFクリーン経済協定及びIPEF協定が、また、同月12日、IPEF公正な経済協定が発効した。 2021年11月に立ち上がった「日米通商協力枠組み」でも、2024年7月に会合を実施し、インド太平洋地域における通商分野における日米協力の強化やグローバルアジェンダに関する日米協力などについて議論した。また、2022年1月に立ち上がった日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)においては、2024年9月に次官級協議を開催し、赤堀外務審議官、松尾経済産業審議官、フェルナンデス国務次官、ラーゴ商務次官の間で、(ア)インド太平洋地域におけるルールに基づく経済秩序の強化、(イ)重要・新興技術の育成・保護に向けて、日米の取組を更に具体化していくことを確認するとともに、日米相互の投資の拡大を含む両国経済関係の一層の強化に向けて取り組んでいくことで一致した。日米双方は、経済版「2+2」が、経済安全保障などの分野における日米協力を進める上で有効な枠組みとして機能してきたとの認識で一致するとともに、引き続き、この枠組みを通じて、外交・安全保障と経済を一体として議論し、経済安全保障、ルールに基づく経済秩序の維持・強化といった日米共通の課題について、一層連携を強化していくことを確認した。 5月、10月に実施された第8回、第9回の日米グローバル・デジタル連結性パートナーシップ(GDCP)(7)専門家レベル作業部会において、オープンRAN、5G、海底ケーブルなどに関し、政府関係者や民間事業者の間で意見交換が行われるなど、様々な機会を捉えて、デジタル分野における日米の協力強化が図られた。特に、オープンRANや5GなどのICTインフラに関しては、日米両国が共通のビジョンを持って共に関与する優先的な国を特定するとともに、包摂的なインターネット接続を促進し、安全なICTインフラを構築するための協力の拡大を目指して継続的に議論を行うことが確認された。 連邦政府と並んで、特色豊かな各州とも緊密な関係を築くことは、より身近なレベルでの日米経済関係の深化につながる。2024年には、日米財界人会議、中西部会合同会議、南東部会合同会議が米国で対面開催された。個別の機会でもテキサス州、アイダホ州の知事などが訪日した。 さらには、日米経済関係の土台を草の根レベルから強化するため、政府一丸となって対日理解促進にも取り組んでいる。2017年の「グラスルーツからの日米関係強化に関する政府タスクフォース」の立ち上げ以降、各地域の特徴や日本への関心の高さに応じたテイラーメイドの関係構築に努めてきた。一例として、日系企業による地域経済への貢献を発信する「草の根キャラバン」や岸田内閣が掲げた「新しい資本主義」を踏まえた日本のスタートアップ企業の支援に関する事業など、各省庁・機関の協力の下で様々な取組を実施してきている。今後も、日米経済関係の更なる飛躍に向けて、様々な取組をオールジャパンで実施し、草の根レベルでの対日理解促進などに更に取り組んでいく。 コラムパレードの街ニューヨークの新たな伝統 ─ジャパン・パレード─ 在ニューヨーク日本国総領事館 皆さんはニューヨーク(NY)の風景といえば何を思い浮かべますか? 摩天楼の夜景、それともタイムズスクエアの新年の喧(けん)騒でしょうか。しかしここNYは実はパレードの街としても知られ、年間約200から250件のパレードが開催されているといわれています。週末ともなればNYのどこかで、特定の祝日や国・人種をテーマにしたパレードが時には1日に数件も開催されています。歴史のある感謝祭パレードをニュースで見たことがある人も多いかと思いますが、それ以外にもアイルランド系、イタリア系、カリブ系など、ありとあらゆるパレードが行われます。しかし、これまで日本については、単発的なもの(1860年の遣米使節団の歓迎パレードなど)はあったものの、恒例のパレードは行われてきませんでした。 長年にわたり、日本のアニメや食といった文化、日系企業や総領事館、日系人を含む日系コミュニティの活動が、米国、そしてNYでも、身近にある自然なものとして大衆に受け入れられてきました。このことに対し、日系コミュニティ全体としてNYへの感謝の念を示すため、2022年5月、第1回ジャパン・パレードがマンハッタンのど真ん中、セントラルパーク西通りで開催されました。 パレードには、日本人・日系人、さらには日本に関心のある米国人などが参加し、伝統芸能からアニメのファン、学校や地元警察・消防に至るまで、様々なグループが行進し、沿道の観衆に日米間の多岐にわたる交流を印象付けました。また、日本の人気アニメのキャラクターや演舞、数多くの日本食を紹介するブースも設けられました。その模様は、米国テレビの三大ネットワークを始め、様々なメディアでも取り上げられました。 2024年5月に開催された第3回ジャパン・パレードでは、2,500人が行進に参加し、沿道には5万人が集うまでに成長するなど、本パレードは既に初夏のNYの風物詩となりつつあり、日本のプレゼンスや、米国社会・経済への貢献を広く米国に示す好機となっています。 特に、第3回パレードには、「日米観光交流年2024」を記念したフロート(山車)が参加したほか、ニューヨーク・タイムズ紙が発表した「2024年に行くべき52か所」の3番目に掲載された山口市が日本の地方自治体として初めて参加しました。山口市の魅力や文化をアピールするため、伊藤和貴(かずき)山口市長や山口祇園囃子(ぎおんばやし)保存会のメンバー、湯田温泉マスコットキャラクター「湯田ゆう子」ちゃんらを乗せたフロートは、観衆の大きな注目を集め、パレードのハイライトの一つとなりました。観衆から「ぜひ山口に行ってみたい」との声が聞かれたように、山口市の参加は、地方都市へのインバウンド需要の取り込みに向けたグッド・プラクティスとしても注目され、地方連携推進の観点からも意義がありました。 第3回ジャパン・パレードの様子(5月11日、米国・ニューヨーク) パレードに参加した山口市のフロート(5月11日、米国・ニューヨーク) NYでは、日々様々な日本関連の行事、そしてこのジャパン・パレードが行われてきています。百聞は一見にしかず。ぜひ皆さんも機会があれば、NYの中の日本を体感してみてください。 コラムマウイ島火災支援 在ホノルル日本国総領事館 2023年8月8日、ハリケーン・ドラの影響下、乾燥した強風により、ハワイ諸島の各地で山火事が発生しました。マウイ島では、少なくとも102人の方々が亡くなり、ラハイナ地区で約2,200棟、クラ地区で約550棟の建物が被害を受けました。被害総額は推定55億ドルで、これは米国歴史上、過去100年で最も壊滅的な火災といわれています。 特に被害が大きかったラハイナ地区は、19世紀初頭のハワイ王国首都で、アメリカ国家歴史登録財及び歴史的保護区に指定されています。歴史的・文化的建造物が多く存在し、マウイ島の主要観光地の一つでした。しかし、その街は瞬く間に焼き尽くされ、多くの住人や観光客は着の身着のまま避難せざるを得ない状況でした。 日本とハワイは歴史的、文化的、経済的、地政学的に深く強い結び付きがあり、火災発生後、日本の地方自治体、企業、任意団体や個人などから多くの支援が届けられました。日本政府も被災者の方々へ、米国赤十字社及びジャパン・プラットフォーム(JPF)1を通じ、総額200万ドル規模の支援を行いました。また、日系アメリカ人によって創設され、現在も活発に活動している日系団体である米日カウンシル(USJC)2と連携し、「Kibou for Maui Project」を実施しました。このプロジェクトは、被災した生徒やハワイ州及びマウイ郡の実務家を日本に招き、日本の災害復興・再建に関する経験と知見を共有し、より災害に強い未来を築くことをテーマとしたものです。 同プロジェクトの一つである生徒向けプログラム「TOMODACHI Kibou for Maui」により、2024年3月と7月にマウイ島の高校生21人が東北地方に招待されました。2011年に日本で東日本大震災が起きた時にも、USJCと在日米国大使館によって「TOMODACHIイニシアチブ」3という同様のプログラムが実施されました。当時は東北の生徒がハワイに招待され、体験学習を通じ、心の癒やしを提供するプログラムに参加しました。今回、日本でマウイ島高校生受入れの中心を担ったのは、その当時の参加者でした。マウイ島の高校生からは、日本の人々との交流や各自治体の復興、防災や環境保護の取組、リーダーシップを学び、未来への希望の光が見えたという声が聞かれました。 TOMODACHI Kibou for Maui 第1期参加者 (3月、宮城県東松島市 写真提供:USJC) 5月には、マウイ郡の実務家向けプログラムが実施され、ビッセン・マウイ郡長を団長に15人が訪日しました。東北地方では自治体関係者と意見交換を行い、地元企業及びエネルギー施設を視察し、東京では防災・減災事業に取り組む企業を訪問しました。帰国後の8月には、参加生徒や実務家が訪日体験を共有する意見交換会が開催され、ラハイナ地区の復興・再建に向けた活発な意見交換が行われました。ラハイナ地区の主要産業である観光について、歴史や文化を重視しつつ、地元住民の生活環境とのバランスを維持する方策、更なる経済発展に向けた取組、自然環境の変化に伴う対策など、より良い形での街造りに関与していこうと、生徒たちも積極的に議論に参加しました。 Kibou for Maui Project 実務家プログラム参加者 (5月、東京 写真提供:USJC) 日本とハワイは、長い間、自然災害を含む共通の課題に対して、協力し、助け合い、学び合いながら、人と人との絆(きずな)を育んできました。このマウイ島火災に対する日本の支援が、被災地の復興に貢献し、日本とハワイの相互理解や相互信頼を深め、一層強い絆で結ばれた未来につながっていくことが期待されます。 1 JPF(Japan Platform):特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、2000年8月に設立されたNGO(特定非営利活動法人格取得は2001年5月)。海外での自然災害・難民発生などの際の日本のNGOによる迅速で効果的な緊急人道支援活動を目的として、NGO、経済界、日本政府が共同して設立した。 2 USJC(U.S.-Japan Council):2009年に設立された教育的非営利団体で、ワシントンD.C.に本部を置き、カリフォルニア、ハワイと東京に拠点を置き活動している。 3 TOMODACHIイニシアチブとは、東日本大震災後の日本の復興支援から生まれ、教育、文化交流、リーダーシップといったプログラムを通して、日米の次世代のリーダーの育成を目指す米日カウンシルと在日米国大使館が主導する官民パートナーシップ (5) FOMC:Federal Open Market Committee (6) IPEF:Indo-Pacific Economic Framework for Prosperity (7) GDCP:Global Digital Connectivity Partnership