第4章 国民と共にある外交 3 地方自治体などとの連携 外務省は、内閣の最重要課題の一つである地方創生にも積極的に取り組み、地方との連携による総合的な外交力を強化するための施策を展開している。 日本国内では、外務大臣が各地方自治体の知事と共催し、各国の駐日外交団や商工会議所、企業関係者などを外務省の施設である飯倉公館に招き、レセプションの開催やブースでの展示を通じて地方の多様な魅力を内外に広く発信する「地方創生支援 飯倉公館活用対外発信事業」を実施している。2023年は、3月に栃木県との共催でレセプションを実施し、約190人の関係者が出席した。林外務大臣からは、栃木県の観光地やいちごなどの特産品の多様な魅力を紹介しつつ、駐日外交団を始めとする参加者に対し、栃木県の素晴らしい魅力をSNSなどで発信することについて協力を求めた。同レセプションでは、栃木県の特産品、観光、産業、G7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合、ホストタウン交流などを紹介するブースを設けるとともに、日光東照宮・雅楽のパフォーマンス披露などを通して多様な魅力をPRし、駐日外交団を始め、駐日商工会議所、企業関係者などの参加者と栃木県との更なる交流の促進につながる機会となった。 栃木県知事との共催レセプションで挨拶する林外務大臣 (3月24日、東京・外務省飯倉公館) また、林外務大臣及び武井俊輔外務副大臣は、地方の魅力を世界に発信する「地方を世界へ」プロジェクトを実施した。同プロジェクトは、外務大臣及び外務副大臣などが駐日外交団と共に日本の地方を訪れるものである。駐日外交団に地方の魅力を体験してもらい、地域の方々との対話を通じて地方への理解を深めてもらうことにより、参加外交団から自国民への発信を促しインバウンド需要を喚起すること及び外務大臣と地域の方々との対話を通じて(340ページ 第3節1(4)参照)地域の更なる活性化を図ることを目的としている。駐日外交団と共に、2月に岡山県を、6月に秋田県を、また8月には長野県を訪問した。 「地方を世界へ」プロジェクト:秋田市民俗芸能伝承館を視察する林外務大臣一行(6月17日、秋田県) このほか、外務省は地方自治体などとの共催で、各国の駐日外交団や商工会議所、関連企業などの関係者に対して各地域の地元産品、観光や産業、投資などの施策や魅力を発信する「地域の魅力発信セミナー」を実施している。10月19日に東京都内で開催したセミナーには、奈良県、静岡県、福島県郡山市及び茨城県石岡市が参加し、プレゼンテーションを通じた地域の魅力の発信、参加者との交流会における各地域の特産品、観光スポット、産業などの紹介、伝統文化の実演などが行われた。セミナーは、東京に居ながらにして地方の魅力を直接体験できる貴重な場であるとして参加者から好評を得るとともに、地方自治体と駐日外交団などの参加者との交流の促進にも資するものになった。 地域の魅力発信セミナーでの参加地方自治体によるプレゼンテーション(10月19日、東京) また、外務省と地方自治体との共催で、駐日外交団に地方の多様な魅力を現地で直接体験してもらうことを目的に「駐日外交団による地方視察ツアー」を実施している。7月18日及び19日に福岡県北九州市へのツアーを実施し、参加した駐日外交団は、ものづくりの街・北九州市を代表する企業や環境関連の先進企業などを訪問し、北九州市の地元の食材を使用した食文化などについての理解を深めた。8月2日及び3日に実施した福島県へのツアーでは、参加した駐日外交団は、東日本大震災の直接的な被害を受けた浜通り地方を中心に視察し、東日本大震災の発生当時の状況や復興が進む福島の現状、また、安全で美味(おい)しい福島の食の魅力について認識を深めた。10月12日及び13日には新潟県佐渡市へのツアーを実施し、参加した駐日外交団は、世界遺産登録を目指す「佐渡島(さど)の金山」の文化的価値や歴史を体験できる施設を視察し、また、日本政府が「伝統的酒造り」の無形文化遺産登録も目指していることを踏まえ、佐渡島の酒造りのほか、食、伝統芸能、自然などの多様な魅力を堪能した。11月28日及び29日に実施した静岡県へのツアーでは、参加した駐日外交団は、2023年の東アジア文化都市にも選定された静岡県の歴史、文化芸術、食、自然や日本有数のものづくり産業に関連する施設を視察し、静岡県の多様な魅力に対する理解を深めた。本ツアーの実施をきっかけに参加国と新たな交流を始める地方自治体や参加外交団とのつながりをいかして来訪者の増加を目指す地方自治体も出てきている。 小倉城を訪れた外交団(駐日外交団による地方視察ツアー) (7月19日、福岡県) 福島県主催交流会(駐日外交団による地方視察ツアー) (8月2日、福島県) 道遊の割戸を訪れた外交団(駐日外交団による地方視察ツアー) (10月13日、新潟県) 久能山東照宮を訪れた外交団(駐日外交団による地方視察ツアー)(11月28日、静岡県) さらに、外務省では地方自治体に対し、地域レベルの国際交流活動に密接に関係する最新の外交政策などに関する説明の場を提供しており、その一環として、1月に「地方連携フォーラム」をウェビナー形式で開催した。第1部の外交政策等説明会では「コロナ禍を乗り越えて、地方の魅力をいかにして世界へ発信するか?」のテーマで、第2部の外部有識者による説明会では「地方自治体におけるSDGs推進 持続可能なまちを考える」のテーマでそれぞれ講演が行われた。 海外での事業については、東日本大震災後の国際的な風評被害対策として、食品輸入規制の撤廃・緩和の働きかけと併せ、地方創生の一環として日本の地域の魅力発信、日本各地の産品の輸出促進、観光促進などを支援する総合的な広報事業である「地域の魅力海外発信支援事業」を実施している。2023年7月から2024年3月にかけて、中国及び香港においてオンライン形式での情報発信を含む形で実施した。SNSを活用して多くの人々に日本の観光・文化・食などの地域の魅力を体感してもらうことを目標に、期間中、中国においては、40の自治体が、在中国日本国大使館の微博(中国SNSウェイボー)アカウントで、日本各地の動画を配信した。また、在中国日本国大使館が主催するイベントにおいて、日本の自治体による食や工芸品のPRを行ったほか、中国各地で行われる日本の魅力を発信するイベントなどにインフルエンサーの派遣を行い、日本の地域の魅力を発信した。香港では、7月に実施された香港ブックフェアにおいて東北地方などのPRを行った。 地域の魅力海外発信支援事業で在中国日本国大使館のSNSアカウントから発信した自治体のPR動画 また、在外公館施設を活用して地方自治体が地方の魅力を発信することを通じて、地方産品の販路拡大、インバウンド促進などを目的とした「地方の魅力発信プロジェクト」を9件実施した。 加えて、例年天皇誕生日の時期に合わせて開催される「在外公館における天皇誕生日祝賀レセプション」で地方自治体の産品や催事などを紹介・発信する場を設けている。2023年は新型コロナによる各種制限が緩和されたこともあり、234の在外公館において対面開催され、そのうち114公館において地方自治体の魅力発信を行った。 このほか、外務省では様々な取組を通じて日本と海外の間の姉妹都市交流や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のホストタウン交流を始めとする日本の地方自治体と海外との間の交流を支援してきた。具体的には、在外公館長や館員が海外の姉妹都市提携先を訪問して、国際交流・経済交流関係担当幹部などと意見交換を行うことや、在外公館長の赴任前や一時帰国の際に地方を訪問し、姉妹都市交流やホストタウン交流に関する意見交換や講演を行うことで、地方の国際的取組を後押ししている。また、日本の地方自治体と姉妹都市提携を希望している海外の都市などがある場合は、都道府県及び政令指定都市などに情報提供し、外務省ホームページの「グローカル外交ネット」3で広報するなどの側面支援を行っている。 地方連携の取組を紹介する広報媒体としては、「グローカル外交ネット」のほか、毎月1回メールマガジン「グローカル通信」4を配信し、加えて「X(旧ツイッター)」5による投稿を行っている。これら広報媒体においては、外務省の地方連携事業や各地方自治体が進める姉妹都市交流、ホストタウン交流、地方の国際的取組などを紹介している。 また、各地の日本産酒類(日本酒、日本ワイン、焼酎・泡盛など)の海外普及促進の一環として、各在外公館における任国要人や外交団との会食での日本産酒類の提供、天皇誕生日祝賀レセプションなどの大規模な行事の際に日本酒で乾杯するなど日本産酒類の紹介・宣伝に積極的に取り組んでいる。またその際には、「伝統的酒造り」を2024年ユネスコ無形文化遺産登録に向け提案中であることも積極的にアピールしている。 さらに、開発途上国の急速な経済開発に伴いニーズが急増している水処理、廃棄物処理、都市交通、公害対策などについて、ODAを活用して日本の地方自治体の経験やノウハウ、また、これを支える各地域の中小企業の優れた技術や製品も活用した開発協力を進め、そうした開発途上国の開発ニーズと企業の製品・技術とのマッチングを進めるための支援を実施している。これらの取組は、地元企業の海外展開やグローバル人材育成にも寄与し、ひいては地域経済・日本経済全体の活性化にもつながっている。 3 外務省ホームページ「グローカル外交ネット」https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/local/index.html 4 地方連携推進室メールマガジン「グローカル通信」https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/lpc/page25_001870.html 5 地方連携推進室X(旧Twitter):https://twitter.com/localmofa