第2章 しなやかで、揺るぎない地域外交 3 南部アフリカ地域 (1)アンゴラ アンゴラは安定した政治基盤を有し、積極的な多国間外交を通じて、地域の平和と安定に重要な役割を果たしている。アフリカ屈指の産油国であり、ダイヤモンドなどの鉱物資源にも富んでいる。ロウレンソ大統領は、経済多角化・安定化を目指し、ビジネス環境の改善や国内産業の振興に取り組んでいる。 3月、実務訪問賓客として訪日したロウレンソ大統領は、日・アンゴラ・ビジネスフォーラムに出席した。また、岸田総理大臣との会談では、ビジネス関係強化やロシアによるウクライナ侵略などが議論されたほか、透明で公正な開発金融の重要性を確認した。8月、西村康稔経済産業大臣がアンゴラを訪問した際、日・アンゴラ投資協定が署名されたほか、日アンゴラ・ビジネス・ラウンドテーブルが開催された。 日・アンゴラ首脳会談(3月13日、東京 写真提供:内閣広報室) (2)エスワティニ エスワティニは、国王であるムスワティ3世の下、アフリカ唯一の絶対君主制が維持されている。2018年に国名を「スワジランド王国」から「エスワティニ王国」に変更した。アフリカで唯一台湾との外交関係を有する国である。2月、髙木啓外務大臣政務官が訪問先のエチオピアでドラドラ外務・国際協力相と会談を行った。10月には国会議員選挙が行われ、国王が新たな首相及び閣僚を任命した。 ドラドラ・エスワティニ外務・国際協力相と会談する髙木外務大臣政務官 (2月16日、エチオピア・アディスアベバ) (3)ザンビア 銅を始めとする豊富な鉱物資源を有するザンビアは、2020年11月にデフォルトに陥ったが、2023年6月に、G20の共通枠組みの下、公的債権者委員会と債務再編案について大筋合意した。内政も安定しており、3月に米国主催の第2回民主主義サミットをアフリカ代表として共催するなど、西側諸国との関係を強化している。7月に同国で外務次官級の意見交換が行われたほか、8月には西村経済産業大臣が同国を訪問し、ヒチレマ大統領を表敬した。 (4)ジンバブエ 8月に大統領選挙を含む総選挙が5年ぶりに実施された。日本は無償資金協力「選挙支援計画(UNDP連携)」を通じて、選挙関連機材供与や研修を実施し、同国の民主主義の定着や法の支配に寄与した。現職のムナンガグワ大統領が再選し、新内閣を発足させたが、欧州連合(EU)など一部の国際選挙監視団は選挙の公正性に懸念を示している。欧米は、特定企業・個人の資産凍結や渡航禁止などの制裁措置を継続しており、新政権は長引くインフレや超過債務の対応など経済運営に課題を抱える。 (5)ナミビア ナミビアは、1990年の独立以来安定した政治状況にあり、また、豊富な海洋・鉱物資源を有する南部アフリカ地域大西洋側の物流の重要拠点である。また、「2023年世界報道自由度ランキング」でアフリカ第1位となった。4月、アルウェンド鉱山・エネルギー相が訪日した。6月には日本企業ミッションが同国を訪問したほか、8月には西村経済産業大臣が日本の閣僚として初めて同国を訪問し、二国間関係の更なる強化・発展を図ることを確認した。 (6)ボツワナ ボツワナは1966年の独立以来、政情が安定している。経済面では、ダイヤモンドなどの鉱物収入により独立後急速に成長し、高中所得国に分類される一方、マシシ大統領は、産業多角化・知識集約型経済への移行を目指している。2月には、経済・社会の安定化やグリーン経済への移行に向けた財政支援として、「新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援借款」の交換公文が両国政府間で署名された。 (7)マラウイ マラウイは、1964年の独立以来、安定した内政を維持しているが、近年、洪水災害や外貨不足などにより経済は不安定となっており、災害からの復興や財政再建、農業の産業化などに取り組んでいる。日本は、基本的価値観を共有する同国と友好関係を築いており、3月、同国南部を襲ったサイクロン「フレディ」による洪水及び土砂災害被害に対し、JICAを通じて緊急援助物資を供与した。 (8)南アフリカ 南アフリカは、G20及びBRICSの参加国として、また、アフリカ諸国首脳によるウクライナ和平イニシアティブの取組などを通じて、国際場裡における存在感を示している。また、アフリカの経済大国であり、ビジネスの展開拠点として、日本を含む外国企業から引き続き関心を集めている。6月、林外務大臣がパンドール国際関係・協力相と電話会談を行い、8月には同国を訪問の上、外相会談を実施し、二国間関係の強化や国際場裡における連携について確認した。また、エネルギー・鉱業分野では、2月に山田外務副大臣が鉱物資源安全保障パートナーシップ会合に参加するため同国を訪問し、9月にヌジマンデ高等教育科学技術相が訪日した際には、両国政府間で水素・アンモニアに関する協力覚書を締結した。 日・南アフリカ外相会談(8月1日、南アフリカ・プレトリア) (9)モザンビーク モザンビークは、FOIPにとって重要なパートナーであり、2023年から日本と共に国連安全保障理事会(安保理)非常任理事国を務めている。 5月、山田外務副大臣を団長とするアフリカ貿易・投資促進官民合同ミッションと共にモザンビークを訪問した岸田総理大臣は、ニュシ大統領と首脳会談を行い、同国北部の液化天然ガス開発事業の早期再開に向けて、両政府が力強く後押しすることで一致した。10月、穂坂泰外務大臣政務官が同国を訪問し、日本が円借款で支援したナカラ港の完工式に出席するとともに、ニュシ大統領を表敬した。11月、上川外務大臣が、訪日したマカモ外務協力相と会談を行い、オファー型協力も活用した同国北部地域全体の成長につながる多角的な開発の重要性や「女性・平和・安全保障(WPS)」などを推進することを確認した。 (10)レソト 国土の大部分が山岳高地の内陸国であるレソトは、自然資源を活用して建設されたカツェダムのダム湖でニジマスの養殖を行っており、日本への主要な輸出品となっている。日本は食糧援助を通じた食料事情改善のほか、カツェダムの小水力発電設備を改修し、再生可能エネルギーによる発電設備容量の増強を図るなど同国のエネルギー事情改善の支援を行っている。