第2章 しなやかで、揺るぎない地域外交 2 東部アフリカ地域 (1)ウガンダ ウガンダは、ムセベニ大統領による長期政権の下、安定した内政を背景に経済成長を維持している。周辺国からの難民受入れを積極的に行っており、アフリカ最大となる約150万人の難民を受け入れている。また、アフリカ連合ソマリア移行ミッション(ATMIS)4や武装勢力の活動が活発なコンゴ民主共和国の東部地域へ国軍を派遣するなど、地域の安定に向けて貢献している。 8月には林外務大臣が日本の外務大臣として初めて同国を訪問し、ムセベニ大統領への表敬及びオドンゴ外相との会談を行った。表敬及び会談では二国間関係の一層の強化を確認したほか、国際社会における諸課題について今後も連携していくことを確認した。 日・ウガンダ外相会談(8月2日、ウガンダ・カンパラ) (2)エチオピア エチオピアは、アフリカ第2位の人口(1.2億人)を有し、2004年から2019年まで年間約8%の経済成長率を記録(2020年以降は約6%)するなど経済的な潜在力が高い。 2020年11月から連邦政府とティグライ人民解放戦線(TPLF)の間で軍事衝突が続いたが、2022年11月の和平合意以降情勢は改善した。一方、2023年4月以降武装勢力と政府が対立していたアムハラ州では、8月に対立が激化し、政府は同州に非常事態宣言を発出した。 8月に林外務大臣が同国を訪問し、アビィ首相への表敬及びデメケ副首相兼外相と会談を行った。経済分野での二国間連携やアフリカにおける食料安全保障の確保を始め、国際社会における諸課題への対応について今後の連携を確認した。 日・エチオピア外相会談(8月3日、エチオピア・アディスアベバ) (3)エリトリア エリトリアは、インド洋とスエズ運河・欧州を結ぶ国際航路に位置し、同国領海は多数の日本関係船舶が航行する経済安全保障上の要衝である。「アフリカの角」地域の安定に同国が果たす役割は重要であり、2024年度に、在エリトリア兼勤駐在官事務所を大使館へ格上げする予定である。 (4)ケニア ケニアは、民主主義、法の支配といった普遍的価値や原則を日本と共有する重要な同志国であり、スーダン、エチオピア、ソマリア、コンゴ民主共和国の紛争の解決にも尽力するなど、東アフリカの平和と安定に積極的に関与している。また、東アフリカの経済的ハブであり、アフリカ有数の日系企業拠点の一つである。日本との外交関係樹立60周年に当たる2023年には、5月に岸田総理大臣が同国を訪問し、ルト大統領との間で首脳会談を実施し、ロシアによるウクライナ侵略やスーダン情勢などの国際社会が直面する課題につき議論を行った。また、ビジネス関係を含む二国間関係を一層発展させていくことで一致した。2024年2月には、ルト大統領が訪日し、岸田総理大臣と首脳会談を行い、経済関係の一層の強化、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の推進、国際場裡における協力の強化などで一致した。 (5)コモロ連合 コモロ連合は、日本と同じ海洋国としてFOIPを支持しているパートナーである。2023年はAU議長国として、積極的な外交活動を展開した。日本は5月に主催したG7広島サミットに同国をAU議長国として招待し、アザリ大統領は議論に貢献した。また、その際に行われた日・コモロ首脳会談では、FOIPやAUのG20常任メンバーとしての参加への協力が確認された。 (6)ジブチ ジブチは、インド洋とスエズ運河・欧州を結び、多くの日本関係船舶も利用する国際航路に位置しており、FOIPの重要なパートナーである。日本は、2011年から自衛隊の拠点を設置し海賊対処行動に従事している。4月、スーダンにおいて衝突が発生した際の邦人などの退避にも同拠点が活用された。退避に当たって派遣された武井俊輔外務副大臣は、アリ・ハッサン外務・国際協力省次官との会談において、退避におけるジブチの全面的な協力に謝意を表明し、また、FOIPの実現に向けて、日・ジブチ関係を引き続き深化させていくことで一致した。 12月には、ジブチにおいて、在外邦人などの保護措置及び輸送並びにその可能性を見据えた臨時の態勢の整備を行う自衛隊の地位を適切な形で確保することを可能とするため、ジブチ政府との間で新たな交換公文の署名・交換が行われた。 (7)スーダン スーダンでは4月、首都ハルツームで同国の国軍と即応支援部隊との間で武力衝突が発生し、国内各地に戦闘が拡大した。国内外の避難民は600万人以上に及び、スーダン及び周辺国で人道上の危機が発生した。米国、サウジアラビアを始めとする各国、AU、政府間開発機構(IGAD)5などの地域機構及び国連が停戦のための調停努力を続けているが、持続的な停戦には至っていない。日本は、スーダン及び周辺国の人道問題などに対処するため、9,200万ドルに及ぶ支援を実施し、IGAD、AUなどの地域機構、国連などの国際機関と共に諸課題への取組を後押ししている。 (8)セーシェル セーシェルは、インド洋の要衝に位置する、FOIPの実現に向けた重要なパートナーである。一人当たりGDPが「サブサハラ・アフリカ」第1位を誇る、観光・水産資源に恵まれた島嶼(しょ)国である一方、気候変動の影響を受けやすく、小島嶼国の脆(ぜい)弱性を有している。これまで在ケニア日本国大使館が同国を兼轄し、同国には兼勤駐在官事務所が置かれていたが、2024年1月に在セーシェル日本国大使館へ格上げされた。 (9)ソマリア ソマリアにおいては、イスラム過激派アル・シャバーブによる断続的なテロ活動や干ばつなどの影響もあり、厳しい人道状況が継続している。日本は、2022年5月に就任したハッサン大統領による平和の定着に向けた取組を支援してきており、2023年には国際機関を通じて、食料、保健・医療などの様々な分野で、総額約2,700万ドルの人道支援を実施した。 (10)タンザニア タンザニアは、アフリカの東部と南部を結ぶ要衝に位置しており、安定した内政を背景に経済成長を続けている。2021年4月に就任したサミア大統領の下、投資の誘致や鉄道及び港湾などの大規模インフラ整備にも取り組んでいる。 5月に「第1回日・タンザニア・ビジネス環境改善委員会」を開催し、両国の投資と貿易の円滑化に向けた議論を行った。 (11)ブルンジ ブルンジは、アフリカ大陸中央部に位置する内陸国であり、2020年5月に就任したンダイシミエ大統領の下、汚職対策や近隣諸国との関係改善などの取組を加速させている。日本は1970年代以降ブルンジに対する開発協力を継続的に行ってきており、現在もインフラ整備や基礎的社会サービス向上などの支援を行っている。 (12)マダガスカル マダガスカルは、アフリカ東南部沖のインド洋に位置する島国でFOIPを支持している。鉱物資源供給元としても重要な国である。6月には、フランス訪問中の林外務大臣がラジョリナ大統領を表敬し、日本企業が運営するニッケル・コバルト地金の一貫生産事業を含む二国間協力や食料安全保障の強化などについて議論を行った。また、11月には大統領選挙が実施され、ラジョリナ大統領が再選した。 (13)南スーダン 南スーダンは、2013年12月の政府及び反政府勢力間の衝突以降混乱が続いたが、2018年9月には衝突解決合意が署名された。同合意の履行期限が2025年2月に迫る中、憲法の制定、選挙の実施などに向けた動きに遅れが見られている。 日本は、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた開発協力や国連平和維持活動(PKO)への支援を通じて、同国の平和と安定を継続的に支援しており、12月には国際機関などを経由して、停戦監視、選挙支援、人道支援などの分野に対する約1,200万ドルの支援を決定した。 (14)モーリシャス モーリシャスは、日本と同じ海洋国であり、FOIP実現のための重要なパートナーである。3月にはG20外相会合の機会に山田外務副大臣がガヌー外務・地域統合・国際貿易相と会談した。5月には、山田外務副大臣を団長とするアフリカ貿易・投資促進官民合同ミッションが同国を訪問した。9月には岸田総理大臣がジャグナット首相と立ち話を行い、貿易や投資を含む二国間関係を発展させていくことで一致した。 (15)ルワンダ ルワンダではカガメ大統領の下、経済開発及び国民融和に向けた努力が続けられている。ICT立国を掲げる同国は、特に情報通信技術分野において急速な発展を遂げており、スタートアップを含む日本企業の進出も増加している。10月には、同国の首都キガリ市における高度道路交通システム導入のための無償資金協力を実施するなど、日本は同国のデジタル化に貢献している。また、日・ルワンダでの産官学連携による人工衛星の打ち上げや技術者育成など、宇宙事業分野でも協力が進んでいる。 4 アフリカ連合ソマリア暫定ミッション(ATMIS:African Union Transition Mission in Somaria):2021年3月、国連安保理による承認を受け、ソマリア政府が治安維持に責任を持つ体制への移行を図るため、アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM:African Union Mission in Somalia)のマンデートを改編する形で成立 5 IGAD:Inter-Governmental Authority on Development