令和6年版外交青書(外交青書2024)巻頭言 2023年9月に外務大臣に就任して以来、G7議長国としての活動や、ウクライナや中東を始めとする厳しい国際情勢に向き合う中で、世界が今、歴史の転換点にあることを、私は日々実感しています。同時に、先人が紡いできた日本外交への、国際社会からの確かな信頼や期待も感じています。 先人たちの努力により築き上げられてきた国際秩序は、今なお続くロシアのウクライナ侵略により、重大な挑戦にさらされています。力による一方的な現状変更の試みは日本の周辺でも続いています。また、「グローバル・サウス」と呼ばれる途上国・新興国の存在感の高まりにより国際社会の多様化が進む一方、国境や価値観を超えて対応すべき課題は山積しています。気候変動や感染症など地球規模の課題に加え、サプライチェーンの脆(ぜい)弱性や経済的威圧、知的財産の窃取などの経済安全保障の課題や、サイバーセキュリティ、偽情報の拡散を始めとする新興技術の悪用など、世界の平和と安定に対する新たな課題も生じています。 日本は、全ての人が平和と安定、繁栄を享受できるよう、G7議長国としての成果を踏まえ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、「誰一人取り残さない」という持続可能な開発目標(SDGs)の理念に基づき、「人間の尊厳」が守られる安全・安心な世界を実現するための外交を推進していきます。特に、「女性・平和・安全保障(WPS:Women, Peace and Security)」を始めとして、紛争や災害などの際に弱い立場に置かれやすい人々に寄り添う視点を重視していきます。 また、外務大臣として、日本の国益をしっかりと守る、日本の存在感を高めていく、国民の皆様からの声に耳を傾け、国民に理解され、支持される外交を展開するという3点を基本方針として外交を展開していきます。 令和6年版外交青書(外交青書2024)は、主として2023年の国際情勢と日本外交の取組を概観したものです。巻頭において、日本がG7議長国として、この1年、世界を分断と対立ではなく協調と平和へと導くためにどのような役割を担ってきたかを振り返り、特集としました。続いて第1章では、近年の国際情勢の認識とこの1年で顕在化した主要課題、さらにはそれを受けた今後の日本外交の展望について概観し、外交青書の要旨としました。第2章以降では、「しなやかで、揺るぎない地域外交」、「世界と共創し、国益を守る外交」、「国民と共にある外交」と題して、この1年の日本外交の取組について記載しました。 この外交青書を通じ、目まぐるしく変化する国際情勢の中で、揺らぎなく、日本の国益を守り、国際社会が直面する諸課題に対して、強さと「しなやかさ」を持って取り組む日本外交の姿について、国内外の皆様に理解を深めていただければ幸いです。 外務大臣