第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交 4 軍縮・不拡散・原子力の平和的利用 (1)核軍縮 日本は、唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」の実現に向け国際社会の取組をリードしていく責務がある。 しかし、「核兵器のない世界」への道のりは一層厳しくなっている。核兵器禁止条約を取り巻く状況に見られるように、核軍縮の進め方をめぐっては、核兵器国と非核兵器国との間のみならず、核兵器の脅威にさらされている非核兵器国とそうでない非核兵器国との間においても立場の違いが見られる。また、5核兵器国19の首脳が1月3日に発出した「核戦争の防止及び軍拡競争の回避に関する共同声明」では、5核兵器国として初めて、核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならないことが確認されたにもかかわらず、2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略の中では、ロシアにより核兵器の威嚇が行われ、核兵器の実際の使用すらも現実の問題として顕在化するなど、核兵器の惨禍が再び繰り返されるのではないかとの懸念が深刻化している。このような状況の下、核軍縮を進めていくためには、様々な立場の国々の間を橋渡ししながら、現実的かつ実践的な取組を粘り強く進めていく必要がある。 日本は、「核兵器のない世界」の実現のため、被爆地広島出身の岸田総理大臣のリーダーシップの下、「厳しい安全保障環境」という「現実」を「核兵器のない世界」という「理想」に結び付けるための現実的なロードマップの第一歩を示すため、五つの行動を基礎とする「ヒロシマ・アクション・プラン」を岸田総理大臣自ら提唱したほか、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議、核兵器廃絶決議の国連総会への提出、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)などの同志国・有志国との協力・連携の取組や個別の協議などを通じ、立場の異なる国々の橋渡しに努めてきている。また、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進や核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始に向けた働きかけ、軍縮・不拡散教育の推進、さらには効果的な核軍縮検証の実現に向けた議論・演習といった核兵器国も参加する現実的かつ実践的な取組なども積み重ねることを通じ、核兵器不拡散条約(NPT)体制の維持・強化を進めていく考えである。 なお、核兵器禁止条約は、「核兵器のない世界」への出口とも言える重要な条約である。しかし、現実を変えるためには、核兵器国の協力が必要だが、同条約には核兵器国は1か国も参加していない。そのため、同条約の署名・批准といった対応よりも、日本は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなければならず、そのためにも、まずは、「核兵器のない世界」の実現に向けて、唯一の同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、現実的かつ実践的な取組を進めていく考えである。 ア 核兵器不拡散条約(NPT)20 日本は、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であるNPT体制の維持・強化を重視している。NPTの目的の実現及び規定の遵守を確保するために5年に1度開催される運用検討会議では、1970年のNPT発効以来、その時々の国際情勢を反映した議論が行われてきた。 第10回NPT運用検討会議は8月1日から26日に米国ニューヨークの国連本部において開催された(213ページ 特集参照)。 日本は同会議において意義ある成果が収められるよう、会議開催前から、日本単独の取組として「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」21や「核軍縮の実質的な進展のための1.5トラック会合」22の開催、また日米二国間の取組として、1月の「核兵器不拡散条約(NPT)に関する日米共同声明」の発出、さらには、多国間の取組としてのNPDIやストックホルム・イニシアティブ23による作業文書の提出など、全力を尽くしてきた。 8月に開催された同会議では、初日に岸田総理大臣が日本の総理大臣として初めて出席して一般討論演説を行い、「厳しい安全保障環境」という「現実」を「核兵器のない世界」という「理想」に結び付けるための現実的なロードマップの第一歩として、核リスク低減に取り組みつつ、(1)核兵器不使用の継続の重要性の共有、(2)透明性の向上、(3)核兵器数の減少傾向の維持、(4)核兵器の不拡散及び原子力の平和的利用、(5)各国指導者などによる被爆地訪問の促進、の五つの行動を基礎とする「ヒロシマ・アクション・プラン」を提唱し、会議において意義ある成果が収められるよう各国に呼びかけた。 その後も、日本は、岸田総理大臣の指示を踏まえ武井俊輔外務副大臣が同会議に出席し、成果文書のコンセンサス採択24に向けてスラウビネン同会議議長や各国代表団への働きかけを行うなどできる限りの努力を続けてきた。 同会議では、最終的にウクライナをめぐる問題を理由にロシア1か国のみが反対し、成果文書のコンセンサス採択に至らなかったが、締約国間の真剣な議論を経て、ロシアを除く締約国間で最終成果文書案が作成されたこと自体には意義があるものと考えている。 会議の閉会後に発出した林外務大臣の談話でも明らかにしているとおり、日本としては、今回の会議について、ロシア1か国の反対により成果文書がコンセンサス採択に至らなかったことは極めて遺憾であるが、日本の考えや提案が最終成果文書案の中に多く盛り込まれたことは大きな成果であり、今後、国際社会が核軍縮に向けた現実的な議論を進めていく上での土台の一つとなるものと考えている。また、次回の運用検討会議の会期(2026年)やそれに向けた会議プロセス、さらには、日本がNPDIを通じて従来から主張してきた運用プロセス強化のための作業部会の設置が合意されたのは、各国のNPTの維持・強化に向けた意思の表れであり、日本として評価している。 特集「核兵器のない世界」へ ─第10回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議─ 第10回NPT運用検討会議は、2020年4月に開催が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のために開催が何度か延期され、結果的には2022年8月1日から26日まで、ニューヨーク(米国)の国連本部において開催されました。 NPTは、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であり、5年ごとに締約国による運用検討会議を開催し、条約の運用状況を振り返り、今後の取組の方向性を決めています。前回の2015年運用検討会議では、当時の岸田外務大臣が一般討論演説において、核戦力の透明性向上、あらゆる核兵器の削減及びそのための将来的な核兵器削減交渉の多国間化、核兵器の非人道性についての認識を通じた国際社会の結束、北朝鮮の核・ミサイル問題などの地域の不拡散問題への対応及び政治指導者や若者による被爆地訪問の意義を訴えました。その後、鋭意交渉が行われたものの、最終的に、主に中東非大量破壊兵器地帯の設置構想(注)をめぐって関係国間の溝が埋まらず、最終文書を採択することなく終了しました。 今回の会議は、従来からの核軍縮をめぐる国際社会の深い分断に加え、ロシアによるウクライナ侵略などにより、更に厳しい状況での開催となりました。こうした状況から、会議開催当初は最終成果文書を果たしてまとめることができるのか、見通しは決して明るいものではない中で、岸田総理大臣は強い危機感を持って、日本の総理大臣として初めてNPT運用検討会議に出席し、一般討論演説を行いました。岸田総理大臣は、演説において、「核兵器のない世界」への道のりが更に厳しいものとなる中、NPT体制の維持・強化が国際社会全体にとっての利益であることを指摘し、その共通目的のために各国が協力すべきであると訴え、また、各国と共にNPTの守護者としてNPTをしっかりと守り抜いていくとの決意を表明しました。その上で、「厳しい安全保障環境」という「現実」を「核兵器のない世界」という「理想」に結び付ける現実的なロードマップの第一歩として、「ヒロシマ・アクション・プラン」に取り組んでいくべきことを訴えました。これは、NPTに対する日本の強いコミットメントと「核兵器のない世界」に向けた日本の決意を国際社会に示すこととなりました。同じく一般討論演説を行ったブリンケン米国国務長官は「岸田総理大臣の出席は非常に力強いメッセージである。」と述べるなど、日本の力強いコミットメントの表明は、会議を通して各国から高い評価を得ました。 NPT運用検討会議で一般討論演説を行う岸田総理大臣(8月1日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室) また、岸田総理大臣の指示を踏まえ、8月21日から26日の会議最終日まで、武井外務副大臣が同会議に出席し、最終成果文書案のコンセンサス採択に向けて、最後の最後まで建設的な対応を各国に呼びかけるなどしました。 最終的にはロシア1か国が最終成果文書案に合意できないと表明し、コンセンサスは成立しませんでした。しかし、岸田総理大臣が表明した「ヒロシマ・アクション・プラン」を始め、日本の主張には多くの国から支持・評価が得られ、日本が提出した軍縮・不拡散教育共同ステートメントに過去最大となる88か国が賛同し、また、核兵器の不使用の継続の重要性やグローバルな核兵器数の減少傾向の維持の重要性など、日本の考えや提案が最終成果文書案の中に多く盛り込まれました。このことは、日本として大きな成果であり、今後、国際社会が核軍縮に向けた現実的な議論を進めていく上での土台の一つとなるものと考えます。また、次回の運用検討会議の会期やそれに向けた会議プロセス、さらには、日本が軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)を通じて従来から主張してきた運用プロセス強化のための作業部会の設置が合意されました。このことは、各国のNPTの維持・強化に向けた意思の表れです。 会議後も、日本は「ヒロシマ・アクション・プラン」に沿って具体的取組を進めています。9月の国連総会の際には、岸田総理大臣が共同議長を務め、包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ会合を初めて首脳級で開催し、CTBTの普遍化と早期発効に向けた強いコミットメントを打ち出しました。10月には、国連総会第一委員会に対し、「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容を踏まえた核兵器廃絶決議案を提出し、核兵器国である米国、英国及びフランスを含む多数の国々からの支持を得て採択されました。また、12月には被爆地・広島において、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議第1回会合を開催し、オバマ元米国大統領を始めとする各国の現職・元職の政治リーダーの参加も得て、「核兵器のない世界」に向けた率直かつ忌憚(きたん)のない議論が行われました。 2023年の夏には、2026年開催予定の第11回NPT運用検討会議に向けた第1回準備委員会が開催されます。政府として、「ヒロシマ・アクション・プラン」に沿って、「核兵器のない世界」の実現に向けた、現実的かつ実践的な取組を一歩ずつ、粘り強く着実に更に進めていきます。 (注)中東地域における核兵器などの大量破壊兵器のない地帯(非大量破壊兵器地帯)の創設を目指す試み イ 「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議 岸田総理大臣は1月の施政方針演説で、核兵器国と非核兵器国、さらには、核兵器禁止条約の参加国と非参加国からの参加者が、それぞれの国の立場を超えて知恵を出し合い、また、各国の現職・元職の政治リーダーの関与も得て、「核兵器のない世界」の実現に向けた具体的な道筋について、自由闊(かっ)達な議論を行う場として国際賢人会議の立上げを表明した。 第1回会合は12月10日及び11日に広島において開催され、白石隆座長(熊本県立大学理事長)を含む日本人委員3名のほか、核兵器国、非核兵器国などからの外国人委員10名の計13名の委員、また、「開催地の有識者」として小泉崇・広島平和センター理事長が対面参加した。 「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議 (12月10-11日、広島市 写真提供:内閣広報室) 開会セッションでは、武井外務副大臣が歓迎の辞を述べつつ岸田総理大臣の挨拶を代読し、その後、政治リーダーとしてオバマ元米国大統領、シュタインマイヤー・ドイツ大統領、アルバニージー・オーストラリア首相、グテーレス国連事務総長、モゲリーニ欧州大学院大学学長(前欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長)、エルバラダイ元国際原子力機関(IAEA)事務局長、また、今次会合への対面参加がかなわなかった委員であるマルティ元インドネシア外相からのビデオメッセージがそれぞれ紹介された。 10日及び11日の2日間にわたり、委員は四つのセッションを通じ、核軍縮を取り巻く現下の国際情勢や安全保障環境についての分析を行い、核軍縮を進める上での課題、核軍縮分野で優先的に取り組むべき事項や同会議の今後の議論の進め方などについて自由闊達な議論を行った。 また、委員は被爆の実相についての認識を深めるため、被爆者(八幡照子氏)による被爆体験講話に出席し、また、原爆死没者慰霊碑への献花及び平和記念資料館視察を行った。 最後に閉会セッションで、岸田総理大臣は、同会議において、厳しい「現実」を「理想」に近づけていくための具体的な方策について更に議論を深め、次回NPT運用検討会議も見据え有益な成果を達成いただくことを期待していると述べた。 ウ 軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)25 2010年に日本とオーストラリアが主導して立ち上げた地域横断的な非核兵器国のグループであるNPDI(12か国で構成)は、現実的かつ実践的な提案を通じ、核兵器国と非核兵器国の橋渡しの役割を果たし、核軍縮・不拡散分野での国際社会の取組を主導している。8月にニューヨークで開催された第11回NPDIハイレベル会合には、岸田総理大臣が日本の総理大臣として初めて出席し、会合後に共同声明が発出された。同声明はロシアによるウクライナに対する侵略や緊張を高める行動はNPT体制を始めとするグローバルな軍縮・不拡散の取組を著しく損ねるものであると強く非難しつつ、NPDIとしてNPTの実施を強化するために必要な、継続的かつハイレベルの政治的リーダーシップ及び外交上の対話の促進にコミットし続けるとの決意を表明している。 また、NPDIとして、第9回NPT運用検討会議プロセスに計19本、第10回NPT運用検討会議プロセスに計18本の作業文書を提出するなど、現実的かつ実践的な提案を通じてNPT運用検討プロセスに積極的に貢献してきている。特に第10回NPT運用検討会議に向けて、NPTの3本柱である核軍縮、核不拡散及び原子力の平和的利用について、最終成果文書に盛り込むべき要素を提案する作業文書(「ランディングゾーン・ペーパー」)を提出し、最終成果文書案にはNPDIがこの作業文書で提案した要素が多く盛り込まれた。最終的に同会議の成果文書はコンセンサス採択には至らなかったが、NPDIがこれまで提案してきたNPTの運用プロセス強化のための作業部会の設置が全会一致で合意された。 エ 国連を通じた取組(核兵器廃絶決議) 日本は、1994年以降、その時々の核軍縮に関する課題を織り込みながら、日本が掲げる現実的かつ具体的な核軍縮のアプローチを国際社会に提示するため核兵器廃絶に向けた決議案を国連総会に提出してきている。2022年の決議案においては、8月のNPT運用検討会議の議論を踏まえ、日本として、「核兵器のない世界」を実現する上での現実的かつ実践的な取組の方向性を示す必要があるとの認識の下、同会議で岸田総理大臣が提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容を踏まえつつ、核兵器の不使用の継続や透明性の向上、被爆の実相への理解向上のための軍縮・不拡散教育の重要性などを国際社会に呼びかけることに焦点を当てた。同決議案は、10月の国連総会第一委員会で139か国、12月の国連総会本会議では147か国の幅広い支持を得て採択された。賛成国には、核兵器国である米国、英国及びフランスのほか、NATO加盟諸国、オーストラリア、韓国などの米国の同盟国や、核兵器禁止条約推進国を含む様々な立場の国々が含まれている。国連総会には、日本の核兵器廃絶決議案のほかにも核軍縮を包括的に扱う決議案が提出されているが、日本の決議案はそれらの決議案と比較して最も賛成国数が多く、例年国際社会の立場の異なる国々から幅広く支持され続けてきている。 オ 包括的核実験禁止条約(CTBT)26 日本は、核兵器国と非核兵器国の双方が参加する現実的な核軍縮措置としてCTBTの発効促進を重視し、発効要件国を含む未署名国や未批准国に対しCTBTへの署名・批准を働きかける外交努力を継続している。 岸田総理大臣は、8月のNPT運用検討会議の一般討論演説において、CTBTフレンズ会合27の初となる首脳級での開催を発表した。同会合は9月の国連総会ハイレベルウィーク期間中に開催され、岸田総理大臣が出席した。岸田総理大臣は、会合冒頭に実施したステートメントにおいて、8月のNPT運用検討会議の際に提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」に触れつつ、CTBTの発効は同プランを進めていく上で重要な一歩であるとした上で、CTBTの普遍化及び早期発効並びに検証体制の強化の重要性を訴えた。また、会合では、中満泉国連事務次長兼軍縮担当上級代表、フロイド包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)事務局長、CTBTOユースグループ代表に加え、CTBTフレンズのメンバー国からニーニスト・フィンランド大統領などが、また、そのほかの出席国からアザリ・コモロ大統領、パロリン・バチカン国務長官、アーダーン・ニュージーランド首相などがステートメントを実施し、共同声明が採択された。 CTBTフレンズ首脳級会合でスピーチする岸田総理大臣 (9月21日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室) カ 核兵器用核分裂性物質生産禁止条約28(FMCT:カットオフ条約)29 FMCTの構想は、核兵器用の核分裂性物質(高濃縮ウラン、プルトニウムなど)の生産そのものを禁止することにより、新たな核兵器国の出現を防ぎ、また、核兵器国による核兵器の生産を制限するものであることから、軍縮・不拡散双方の観点から大きな意義を有する。しかしながら、ジュネーブ軍縮会議(CD)では長年にわたり交渉開始の合意に至っていない。こうした状況を受け、2016年に、第71回国連総会でFMCTハイレベル専門家準備グループの設置が決定され、日本は同グループでの議論に積極的に参画している。同グループでは、第1回会合(2017年8月)及び第2回会合(2018年6月)における議論を経て、将来の条約の概要について考え得るオプションや交渉において考慮すべき事項を提示する内容を含む報告書が採択され、同報告書は2018年の第73回国連総会に提出された。また、上記の核兵器廃絶決議においても、FMCTの交渉の即時開始や核兵器国に対する核兵器用核分裂性物質(FM)生産モラトリアムの宣言又は維持の要請が盛り込まれている。日本としては、引き続きFMCTの議論に積極的に貢献していく。 キ 軍縮・不拡散教育 日本は、唯一の戦争被爆国として、軍縮・不拡散に関する教育を重視している。具体的には、被爆証言の多言語化、国連軍縮フェローシップ・プログラム30を通じた各国若手外交官などの広島及び長崎への招へい、海外での原爆展の開催支援31、被爆体験証言を実施する被爆者に対する「非核特使」の名称付与などを通じ、被爆の実相を国内外に伝達するため積極的に取り組んでいる。 岸田総理大臣は、8月のNPT運用検討会議の一般討論演説において、国連に1,000万米ドルを拠出して「ユース非核リーダー基金」を設けることを表明した。これは核兵器国、非核兵器国の双方を含む各国から若手政策決定者や研究者などの未来のリーダーを日本に招き、被爆の実相に触れてもらい、日本を含め、核廃絶に向けた若い世代のグローバルなネットワークを作ることを目的としている。また、日本は同会議で、軍縮・不拡散教育の重要性について訴える軍縮・不拡散教育に関する共同ステートメントを実施し、過去最高となる89か国・地域(日本を含む。)の賛同を得た。 また、被爆者の高齢化が進む中で、広島及び長崎の被爆の実相を世代や国境を越えて語り継いでいくことが重要となっている。こうした観点から、2013年から2022年までに国内外の500人以上の若者に「ユース非核特使」の名称を付与してきている。 ク 将来の軍備管理に向けた取組 核軍縮分野においては、これまで、NPTなどの多国間の枠組みを通じた取組に加えて、米露二国間での軍備管理条約が締結されてきた。2021年2月3日には、米露両国間で新戦略兵器削減条約(新START)が延長された。同条約は米露両国の核軍縮における重要な進展を示すものであり、日本は同条約の延長を歓迎した。しかし、2022年8月にはロシアは、全てのロシア関連施設を一時的に査察対象から除外するとの声明を発出し、また、11月には同月に予定されていた二国間協議委員会(BCC)の延期を米国に通告した。2023年1月には米国務省はロシアが新STARTを遵守しているとは認定できないとする議会報告書を米国議会上院に提出した。同年2月、プーチン大統領は、年次教書演説において、新STARTの履行停止を発表した。こうした動きの中で、岸田総理大臣は2月24日のG7首脳テレビ会議において、プーチン大統領が新STARTの履行を停止すると述べたことなどに言及し、「核兵器のない世界」の実現及び安全保障の確保の両面から、日本としてロシアのこうした対応を深刻に懸念していると述べた。 また、核兵器をめぐる昨今の情勢を踏まえれば、米露を超えたより広範な国家、より広範な兵器システムを含む新たな軍備管理枠組みを構築していくことが重要である。その観点から、日本は様々なレベルでこの問題について関係各国に働きかけを行ってきている。例えば、2022年1月21日に発出した「核兵器不拡散条約(NPT)に関する日米共同声明」や5月23日に発出した日米首脳共同声明では、中国による核能力の増強に留意し、中国に対し、核リスクを低減し、透明性を高め、核軍縮を進展させるアレンジメントに貢献するよう要請している。 また、上記の核兵器廃絶決議においても、軍拡競争予防の効果的な措置に関する軍備管理対話を開始する核兵器国の特別な責任につき再確認することが盛り込まれている。 (2)不拡散及び核セキュリティ ア 不拡散に関する日本の取組 日本は、自国の安全を確保し、かつ国際社会の平和と安全を維持するため、不拡散政策にも力を入れている。不拡散政策の目標は、日本及び国際社会にとって脅威となり得る兵器(核兵器、生物・化学兵器といった大量破壊兵器及びそれらを運ぶミサイル並びに通常兵器)やその開発に用いられる関連物資・技術の拡散を防ぐことにある。今日の国際社会においては、新興国の経済成長に伴い、それらの国における兵器やその開発に転用可能な物資などの生産・供給能力が増大し、また、流通形態の複雑化を始めこれら物資などの調達手法が巧妙化している。また、新技術の登場を背景として、民間の技術が軍事転用される可能性が高まっており、脅威となり得る兵器やその関連物資・技術の拡散リスクが増大している。このような状況において、日本は、国際的な不拡散体制・ルールの維持・強化、国内における不拡散措置の適切な実施、各国との緊密な連携・能力構築支援を柱として不拡散政策に取り組んでいる。 拡散を防ぐための主な手段には、(1)保障措置、(2)輸出管理、(3)拡散に対する安全保障構想(PSI)32の三つがある。 保障措置とは、原子力が平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されないことを担保することを目的に、国際原子力機関(IAEA)33と国家との間で締結される保障措置協定に従って行われる検証活動である。日本はIAEAの指定理事国34としてIAEAに対する支援を始め、様々な取組を行っている。例えば、IAEAの保障措置は国際的な核不拡散体制の中核的な措置であるとの考えの下、各国の保障措置に対する理解や実施能力を高め、より多くの国が追加議定書(AP)35を締結するよう、各国への働きかけを進めている。 12月には、アジア太平洋地域における保障措置の強化を目指すアジア太平洋保障措置ネットワーク(APSN)の第13回年次会合がベトナムで開催され、日本は、能力構築などを通じた国際的な不拡散体制強化に向けた取組や国内保障措置の実施状況に関して議論を主導するなど、地域・国際的な保障措置強化の取組にも積極的に参加している。 5月には、2020年2月に続き、グロッシーIAEA事務局長を外務省賓客として日本に招待し、岸田総理大臣への表敬や林外務大臣との会談などを通じて、北朝鮮、イランなどの不拡散問題やIAEA保障措置の強化について、日本とIAEAとの間で一層協力していくことを確認した。その際、日本は、IAEAを通じたウクライナ支援の取組として、機材調達やIAEA専門家の派遣に対し、総額200万ユーロの支援を表明した。 グロッシーIAEA事務局長による岸田総理大臣表敬 (5月20日、東京 写真提供:内閣広報室) 日本は、IAEA総会や理事会などにおいて、深い知見と経験を有するグロッシーIAEA事務局長を最大限支援しつつ、ほかの加盟国と協力してIAEAの役割強化に引き続き取り組んでいる。 輸出管理は、拡散懸念国やテロ組織など、兵器やその関連物資・技術を入手し、拡散しようとする者に対し、いわば供給サイドから規制を行う上で有益な取組である。現在、国際社会には四つの輸出管理の枠組み(国際輸出管理レジーム)があり、日本は、全てのレジームに発足当時から参加し、国際的な連携を図りつつ、厳格な輸出管理を実施している。具体的には、核兵器に関して原子力供給国グループ(NSG)、生物・化学兵器に関してオーストラリア・グループ(AG)、ミサイル36に関してミサイル技術管理レジーム(MTCR)、通常兵器に関してワッセナー・アレンジメント(WA)があり、各レジームにおいて、兵器の開発に資する汎用品・技術をそれぞれリスト化している。参加国は、それらリストの掲載品目・技術について国内法に基づき輸出管理を行うことで、大量破壊兵器などの不拡散を担保している。国際輸出管理レジームではこのほか、拡散懸念国などの動向に関する情報交換や非参加国に対する輸出管理強化の働きかけなども行われている。日本はこのような国際的なルール作り、ルールの運用に積極的に関与しているほか、核不拡散分野における国際貢献の観点から、NSGの事務局の役割を在ウィーン国際機関日本政府代表部が担っている。 また、日本は、こうした国際輸出管理レジームを補完するものとして、拡散に対する安全保障構想(PSI)37の活動にも積極的に参加しており、2018年7月には、海上阻止訓練「Pacific Shield 18」38を主催するなど、各国及び関係機関の間の連携強化などに努めている。2022年8月には米国主催訓練に参加した。 さらに、日本は、アジア諸国を中心に不拡散体制への理解促進と地域的取組の強化を図るため、毎年、アジア不拡散協議(ASTOP)39やアジア輸出管理セミナー40を開催している。 そのほかにも、非国家主体への大量破壊兵器及びその運搬手段(ミサイル)の拡散防止を目的として2004年に採択された国連安保理決議第1540号41に関し、アジア諸国による同決議の履行支援のため日本の拠出金が活用されるなど、国際的な不拡散体制の維持・強化に貢献している。 イ 地域の不拡散問題 北朝鮮は、累次の国連安保理決議に従った、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄を依然として行っていない。 北朝鮮は、2022年には、日本の上空を通過するものや複数の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイルを含め、前例のない頻度と態様で、31回、少なくとも59発に及ぶ弾道ミサイルの発射などを行った。このような、事態を更に悪化させる弾道ミサイル発射を含め、一連の北朝鮮の行動は、日本の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、かつ、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、到底看過できない。9月のIAEAの事務局長報告は、北朝鮮の核活動は引き続き深刻な懸念を生じさせるものであり、豊渓里(ブンゲリ)近郊の核実験場における坑道の復旧は深刻な問題であると指摘し、また、北朝鮮の核計画の継続は国連安保理決議の明確な違反であり非常に遺憾であると指摘した。さらに、同月のIAEA総会では、同報告に基づいた決議をコンセンサスで採択し、北朝鮮の非核化に向けたIAEA加盟国の結束した立場を示した。日本も、8月のNPT運用検討会議や9月のIAEA総会など、機会をとらえて北朝鮮の核問題への対処の重要性を国際社会に積極的に発信した。こうした国際社会の取組にもかかわらず、その後も北朝鮮は前例のない頻度と様態で弾道ミサイルの発射を繰り返している。 北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄に向け、国際社会が一致団結して、国連安保理決議を完全に履行することが重要である。日本としては、引き続き、米国、韓国を始めとする関係諸国や国連やIAEAなどの国際機関と緊密に連携し、また、国連安保理決議の完全な履行の観点から、アジア地域を中心とした輸出管理能力の構築も進めていく。NSGやMTCRなどの国際輸出管理レジームにおいても、北朝鮮の核・ミサイルに関する議論に日本は積極的に貢献していく。 イランは2018年にトランプ前米政権が包括的共同作業計画(JCPOA)42から離脱して以降、JCPOA上のコミットメントを低減する措置を継続しており、2020年1月、JCPOA上のウラン濃縮活動におけるいかなる制約も取り払うことを発表した。2021年に入ってからは1月に20%の濃縮ウランの製造、2月に追加議定書(AP)を含むJCPOA上の透明性措置の履行停止、4月には60%の濃縮ウランの製造を開始した。また、同年8月には20%までの濃縮金属ウランの製造が確認された。 日本としては、国際的な不拡散体制の強化に資するJCPOAを一貫して支持してきており、米国及びイラン双方によるJCPOAの復帰に向けた関係国の取組を注視している。また、イランがJCPOA上のコミットメントを継続的に低減させていることを強く懸念し、イランに対し、累次にわたり、JCPOAを損なう措置を控え、JCPOA上のコミットメントに完全に戻るよう求めている。 こうしたJCPOAの履行や一連の保障措置問題(イラン国内でIAEAに未申告の核物質が検出された問題)を協議するため、グロッシーIAEA事務局長は、3月にイランを訪問し、両者の間で、保障措置問題の解決に向け、6月の理事会までに取るべき措置を定めた共同声明を発出した。しかしながら、5月末に発出されたIAEA事務局長報告では、イラン側からの技術的な説明が不十分であることから、未解決のままであることが明記された。こうした状況を踏まえ、6月の理事会では、イランに対し、解決に向けたIAEA事務局長の呼びかけに直ちに応じるよう要請する内容の決議が採択された。さらに11月の理事会でも、解決に向けてイランが取るべき具体的な行動を決定し、事務局長に対し、2023年3月までに本件に係る報告書の発出を要請する内容の決議が採択された。日本としては、これまでもイランに対するIAEAの取組を支持してきており、引き続きイランに対して、IAEAと完全に協力するよう強く求めていく。日本は、NSGやMTCRなどの国際輸出管理レジームにおけるイランの核・ミサイルに関する議論にも貢献していく。 シリアは、2011年のIAEA理事会で未申告の原子炉建設などがIAEA保障措置協定下の違反を構成すると認定されており、日本としてはこの未解決の問題を解決するために、シリアがIAEAに対して完全に協力することを求めている。同国が追加議定書を署名・批准し、実施することが重要である。2022年8月に開催されたNPT運用検討会議においても、日本はシリアによる保障措置協定不遵守に関する共同ステートメントに参加した。同ステートメントは、シリア国内の原子力関連施設と北朝鮮国内の施設の類似性を指摘するIAEAの評価に言及している。 ウ 核セキュリティ 核物質やその他の放射性物質を使用したテロ活動を防止するための「核セキュリティ」については、国際的な協力が進展している。2007年に核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約、2015年に核物質の防護に関する条約の改正がそれぞれ発効し、また、2010年から2016年の間に核セキュリティ・サミットが4回開催された。2020年にIAEAが開催した「核セキュリティに関する国際会議」では、日本から政府代表として、若宮健嗣外務副大臣が閣僚会合に出席し演説を行うなど日本も取組に積極的に参加し、貢献してきている。 2022年3月、ウィーンにおいて、核物質の防護に関する条約の改正後初となる、運用検討締約国会議が開催され、条約の妥当性や実施状況を確認した。日本は、今後も、人材育成及び技術開発分野でIAEAをサポートし、国際的な核セキュリティ強化に貢献していくことを表明した。 2022年3月2日及び3日、ウィーンにおいて、ロシアによるウクライナ侵略を受けた原子力安全、核セキュリティ及び保障措置上の影響に関するIAEA特別理事会が開催された。同理事会においては、各国から、チョルノービリ原子力発電所を始めとするウクライナ内の原子力関連施設におけるロシアの攻撃などの行為について、原子力安全、核セキュリティ及び保障措置の観点から非難や懸念などが表明された。同理事会で賛成多数で採択された決議は、ウクライナにおけるロシアの行為が原子力施設及び民間人の安全に対して深刻で直接的な脅威をもたらしていることに遺憾の意を表明し、ウクライナが原子力施設の安全な操業を確保できるようロシアに対してこのような全ての行為を即座に停止するよう求めている。さらに9月及び11月のIAEA理事会においても、決議が賛成多数で採択された。これらの決議には、ロシアがウクライナの原子力施設に対するあらゆる行為を即座に停止するべきという理事会の求めに応じていないことへの重大な懸念を表明すること、ウクライナ当局がザポリッジャ原子力発電所の安全かつ確実な運転を確保するために同発電所の完全な管理を回復することができるよう、また、IAEAが保障措置活動を完全かつ安全に行うことができるよう、ロシアに対し求めること、さらに、ザポリッジャ支援ミッションや同原発におけるIAEA職員の継続的な駐在などを通じた、ウクライナにおける原子力安全、核セキュリティ及び保障措置への影響に対処するためのIAEA事務局長などの取組を支持することなどが盛り込まれている。日本としても、原子力施設の占拠を含むロシアによる侵略を強く非難しており、ウクライナにおける原子力施設の安全などの確保に向けたIAEAの取組を引き続き後押ししていく。 コラム原子力技術と国際安全保障 ─IAEAの現場から─ 国際原子力機関(IAEA)保障措置局実施B部 部長 桐生みはる 昨今、イランの核問題やウクライナ情勢などで、国際原子力機関(IAEA)(注1)の名前を報道で見かけることが多くなりました。世界情勢が原子力活動に及ぼす影響、IAEAが関与すべき国際安全保障上の問題が増えている現状があるといえます。 IAEAは、原子力の平和的利用を促進し、同時に原子力が軍事的目的で利用されないことを確保することを目的に1957年に設立された機関です。グロッシー事務局長の指揮の下、IAEAは世界を取り巻く安全保障問題や環境問題、開発などの諸問題に対して、その果たすべき役割を見極め、いち早く行動に移しメンバー国に寄与しています。 イランの核問題については、2015年にイランと米国など6か国(注2)及び欧州連合の間でイランの原子力活動に関する包括的共同作業計画(JCPOA)(注3)が合意され、国連の安全保障理事会で決議が採択されました。JCPOAはイランの原子力活動を大幅に制限することに対し経済制裁を解除するというもので、IAEAはイランがその計画に沿った活動を行っているか検認するという重要な役割を果たしていました。しかし、米国のトランプ前政権によるJCPOAからの離脱とその後の米国による対イラン制裁の再開を受けて、イランは、2019年5月からJCPOA上のコミットメントを段階的に停止する対抗措置をとり始め、2021年2月には、抜き打ち査察を可能にしていた追加議定書の履行などを停止、現在、IAEAの検認は当初の合意内容と比べて限られた範囲のみ実施されている状況です。また、IAEAは申告されていない場所でウランの存在が検出されたことについてイランに説明を求めていますが、いまだ解決されておらず、グロッシー事務局長は懸念を表明しています。 ロシアによるウクライナ侵略においては、原子力施設の安全と核セキュリティ確保について、IAEAは早い段階から懸念を表明し、専門家を原子力施設に送り状況を評価させたり、必要な機器の供与など技術支援を行ったりしているほか、砲撃を受けているザポリッジャ原発には専門家グループを継続的に常駐させ、原子力安全や核セキュリティに係る状況をリアルタイムでモニターし報告できる体制をとっています。事務局長が自らロシアとウクライナに赴き、原子力安全・核セキュリティ保護区域(nuclear safety and security protection zone)を設けることを働きかけ続けています。そしてIAEA保障措置協定で定められた査察などの活動は紛争中においても続けており、保障措置下にある核物質が平和目的のために使用され、また原子力施設が申告通りに使用されていることを確認し続けています。 ザポリッジャ原発でのIAEAミッションチーム (9月、ウクライナ 写真提供:IAEA) 北朝鮮の核開発問題、シリアの未申告の原子炉建設がIAEA保障措置協定の違反であるというIAEAの評価に関連した問題、原子力潜水艦の保有計画に対するIAEA保障措置の在り方など、国際社会を取り巻く安全保障上の懸念や諸課題にもIAEAは重要な責務として取り組んでいます。 ほかにも、“Atoms4Climate(注4)”プロジェクト、“Rays of Hope(注5)”プロジェクト、 “NUTEC Plastics(注6)”プロジェクト、“ZODIAC(注7)”プロジェクトなど幅広い分野で深刻な問題を抱えているメンバー国に寄与しています。 これらの活動には、物理、化学や原子力工学などの専門性の高い技術的知識とそれぞれの分野での経験が必要です。私は日本で国内の原子力施設の安全や保障措置を担当し、その後、IAEAでは査察官としてイランの原子力活動の検証などに従事し、現在は、100人近くのスタッフと共に100か国以上の保障措置を担当しています。IAEAにおいては、原子力安全や保障措置などの専門家が国際安全保障の一翼を担っており、関連分野の専門的な知識・経験をいかす就労機会があることも知っていただけると幸いです。 部長就任後初めての部会議で課長たちと共に(IAEA本部にて・筆者中央)(9月、オーストリア・ウィーン) (注1)International Atomic Energy Agency (注2)英国、フランス、ドイツ、米国、中国、ロシア (注3)Joint Comprehensive Plan of Action (注4)気候変動問題の解決に原子力技術が寄与できるということをテーマに活動 (注5)がん治療を世界中全ての人にというコンセプトの下に放射線医療の機会が少ない地域をサポート (注6)プラスチック問題に立ち向かうため放射線の技術を利用したプラスチックのリサイクルや海洋モニタリングなどを実施 (注7)コロナなどのウイルス、バクテリア、寄生虫、菌類などを由来とする疾患に対する準備と技術力強化をサポート (3)原子力の平和的利用 ア 多国間での取組 原子力の平和的利用は、核軍縮・不拡散と並んでNPTの3本柱の一つであり、同条約で、不拡散を進める締約国が平和的目的のために原子力の研究、生産及び利用を発展させることは「奪い得ない権利」とされている。国際的なエネルギー需要の拡大などを背景に、原子力発電43を活用する又は活用を計画する国は多い。 一方、これら原子力発電に利用される核物質、機材及び技術が軍事転用される可能性もあり、また一国の事故が周辺諸国にも影響を与え得る。したがって、原子力の平和的利用に当たっては、(1)保障措置、(2)原子力安全(原子力事故の防止に向けた安全性の確保など)及び(3)核セキュリティの「3S」44の確保が重要である。また、東京電力福島第一原子力発電所(以下「東京電力福島第一原発」という。)事故の当事国として、事故の経験と教訓を世界と共有し、国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、日本の責務である。この観点から、2013年、IAEAは日本と協力し、福島県に「IAEA緊急時対応能力研修センター(IAEA・RANET・CBC)」を指定しており、2022年12月までに26回、国内外の関係者を対象として、緊急事態の準備及び対応の分野での能力強化のための研修を実施した。 東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策、除染・環境回復は、困難な作業の中に、世界の技術や英知を結集し、原子力分野の専門機関であるIAEAとの協力も得ながら、着実に進展している。2021年4月、日本政府はALPS処理水45の処分に関する基本方針を公表し、7月には、日本政府とIAEAとの間で、ALPS処理水の取扱いに係るIAEAとの協力の枠組みに関する付託事項(TOR)が署名された。このTORの下、IAEAがALPS処理水の安全性や規制面についてのレビューを行う事業の実施に向け、協力が進められている。また、2022年5月にはグロッシーIAEA事務局長が訪日し、東京電力福島第一原発の視察を行い、「私たちIAEAは、処理水が太平洋に放出されるときに、それが国際的な基準に完全に適合した形で実施され、放出は環境にいかなる害も与えることはないと確認できるでしょう」と発言した。さらに、IAEAが選定した国際専門家を含めた第三者の立場による安全性と規制面のレビュー(評価)を2月と3月に受け、IAEAはそれぞれに対する報告書を4月と6月に公表した。11月には2回目の安全性のレビューが行われ、同IAEA事務局長は、レビュー後に「2022年2月の最初のミッションでのタスクフォースの指摘はしっかりと検討され、日本の計画の改訂に反映されている。」と発言した。今後も、引き続きIAEAのレビューが行われる予定である。 7月には、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)のハース前議長及びメットカーフUNSCEAR事務局長一行が訪日し、東京電力福島第一原発事故による放射線のレベル及び影響に関する報告書の改訂版として2021年3月に公表した「UNSCEAR 2020年/2021年報告書」について、日本政府や地元住民、関係者などと意見交換を行った。なお、同報告書内では「福島県民の健康被害で、事故による放射線被ばくに直接帰因すると思われるものは記録されていない。」と結論付けている。 国際社会の正しい理解と支援を得ながら事故対応と復興を進めるとの観点から、日本政府は、東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策の進捗、空間線量や海洋中の放射能濃度のモニタリング結果、食品の安全といった事項について、IAEAを通じて包括的な報告を定期的に公表しているほか、原則毎月1回の在京外交団を始めとする関係団体及びIAEA向けの現状の通報や、原発事故以来100回以上に上る在京外交団などに対する説明会の開催(2022年は2月、3月、5月、6月、7月、11月に実施)、在外公館を通じた情報提供などを行っている。 日本政府は、今後も国際社会に対し、科学的根拠に基づいた、透明性のある説明を丁寧に行っていく方針であり、風評被害を助長しかねない主張に対しては、引き続き高い透明性を持って説明を行っていく。 原子力は、発電のみならず、保健・医療、食糧・農業、環境、産業応用などの分野でも活用されている。これら非発電分野での原子力の平和的利用の促進と開発課題への貢献は、開発途上国がNPT締約国の大半を占める中で重要性が増してきている。IAEAも、開発途上国への技術協力や持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献に取り組んでいる。 そのような中、日本は、原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)に基づく協力を始めとする技術協力活動や平和的利用イニシアティブ(PUI)などを通じてIAEAの活動を積極的に支援している。2021年度には海洋プラスチックごみ問題に対処する事業へ、2022年度には放射線がん治療の事業などへ拠出した。 イ 二国間原子力協定 二国間原子力協定は、相手国との間で原子力の平和的利用分野における協力を実現するため、相手国との間で移転される原子力関連資機材などの平和的利用及び核不拡散の法的な確保に必要となる法的枠組みを定めるために締結するものである。また、二国間協定の下で、原子力安全の強化などに関する協力を促進することも可能である。原子力協定の枠組みを設けるかどうかは、核不拡散の観点、相手国の原子力政策、相手国の日本への信頼と期待、二国間関係などを総合的に勘案し、個別具体的に検討してきている。2022年10月時点で、日本は、発効順で、カナダ、フランス、オーストラリア、中国、米国、英国、欧州原子力共同体(EURATOM)、カザフスタン、韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシア、トルコ、アラブ首長国連邦及びインドの14か国・1機関との間で二国間原子力協定を締結している。 (4)生物兵器・化学兵器 ア 生物兵器 生物兵器禁止条約(BWC)46は、生物兵器の開発・生産・保有などを包括的に禁止する唯一の多国間の法的枠組みである。条約遵守の検証手段に関する規定や条約実施機関がなく、条約をいかに強化するかが課題となっている。 2006年以降、履行支援ユニット(事務局機能)の設置や、5年に一度開催される運用検討会議の間における年2回の会期間会合の開催などが決定され、BWC体制の強化に向けて取組が進められてきた。 2022年11月28日から12月16日までジュネーブで開催された第9回運用検討会議において、BWC強化策を議論する作業部会の設置などの内容を含む最終報告書がコンセンサスで採択された。 イ 化学兵器 化学兵器禁止条約(CWC)47は、化学兵器の開発・生産・貯蔵・使用などを包括的に禁止し、既存の化学兵器の全廃を定めている。条約の遵守を検証制度(申告と査察)によって確保しており、大量破壊兵器の軍縮・不拡散に関する国際約束としては画期的な条約である。CWCの実施機関として、ハーグ(オランダ)に化学兵器禁止機関(OPCW)48が設置されている。OPCWは、シリアの化学兵器廃棄において、国連と共に重要な役割を果たし、2013年には、「化学兵器のない世界」を目指した広範な努力が評価されノーベル平和賞を受賞した。 化学産業が発達し、化学工場の数が多い日本は、OPCWの査察を数多く受け入れている。そのほか、加盟国を増やすための施策、条約の実効性を高めるための締約国による条約の国内実施措置の強化など、OPCWに対して具体的な協力を積極的に行っている。また、日本は、CWCに基づき、中国国内で遺棄された旧日本軍の化学兵器について、中国と協力しつつ、一日も早い廃棄の完了を目指している。 (5)通常兵器 通常兵器とは、一般に大量破壊兵器以外の武器を意味し、地雷、戦車、大砲から、けん銃などの小型武器まで多岐にわたる。実際の紛争で使用され、文民の死傷にもつながる通常兵器の問題は、安全保障に加え人道の観点からも深刻であり、グテーレス国連事務総長が2018年に発表した軍縮アジェンダにおいて、通常兵器分野の軍縮は「人命を救う軍縮」として3本柱の一つに位置付けられている。日本は、通常兵器に関する国際的な基準・規範に基づく協力・支援において、積極的な活動を行っている。 ア 小型武器 小型武器は、実際に使用され多くの人命を奪っていることから「事実上の大量破壊兵器」とも称され、入手や操作が容易であるため拡散が続き、紛争の長期化や激化、治安回復や復興開発の阻害などの一因となっている。日本は、1995年以来毎年、小型武器非合法取引決議案を他国と共同で国連総会に提出し、同決議は毎年採択されてきた。また、世界各地において武器回収、廃棄、研修などの小型武器対策事業を支援してきている。2019年には、グテーレス国連事務総長の軍縮アジェンダに基づき設立された小型武器対策メカニズムに対し、200万米ドルを拠出し、2022年には、同基金を通じた小型武器対策事業がカメルーン、ジャマイカ、南スーダンにおいて開始された。 イ 武器貿易条約(ATT)49 通常兵器の国際貿易を規制するための共通基準を確立し、不正な取引などを防止することを目的としたATTは、2014年12月に発効した。日本は、条約の検討を開始する国連総会決議の原共同提案国の1か国として、国連における議論及び交渉を主導し、条約の成立に大いに貢献した。また発効後も、締約国会議などでの議論に積極的に参加し、2018年8月、アジア大洋州から選出された初めての議長国として第4回締約国会議を東京で開催するなど、引き続き貢献している。さらに日本は、ATTの普遍化も重視しており、特にアジア諸国に対し、ATT加入に向け働きかけてきている。 ウ 特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)50 CCWは、過度に傷害を与える又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用を禁止又は制限するもので、手続事項などを定めた枠組条約及び個別の通常兵器などについて規制する五つの附属議定書から構成される。枠組条約は1983年に発効した。日本は、枠組条約及び改正議定書Ⅱを含む議定書ⅠからⅣを締結している。2017年からは、急速に進歩する科学技術の軍事利用に対する国際社会の懸念を背景として、CCWの枠組みで自律型致死兵器システム(LAWS)に関する政府専門家会合が開催されており、2019年には同会合においてLAWSに関する指針11項目が作成され、同年11月のCCW締約国会議において正式承認された。日本はこうした国際的なルール作りに関する議論に積極的かつ建設的に貢献してきており、2022年3月の専門家会合において米国、英国、オーストラリア、カナダ、韓国と共に「原則とグッドプラクティス」提案を共同で提出した。他国からも多くの作業文書が提出され、3月及び7月の政府専門家会合、11月のCCW締約国会議において活発な議論が行われた。 また、CCWなどで議論されていた人口密集地における爆発性兵器(EWIPA)に関して、2022年、アイルランド主導により有志国による政治宣言が取りまとめられた。11月に行われた採択式には、日本から吉川ゆうみ外務大臣政務官が出席し、ステートメントを行うなどした。 エ 対人地雷 日本は、1998年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)51締結以来、対人地雷の実効的な禁止と被害国への地雷対策支援の強化を中心とした同条約の包括的な取組を推進してきた。アジア太平洋地域各国へのオタワ条約締結に向けた働きかけに加え、人道と開発と平和の連携の観点から、国際社会において、地雷除去や被害者支援などを通じた国際協力も着実に実施してきている。 11月にジュネーブで開催されたオタワ条約第20回締約国会議において、日本は、これまでの日本の地雷対策支援の取組及び実績を紹介し、また、対人地雷のない世界を目指し、今後とも積極的な役割を果たすとの姿勢を表明した。また、同条約の「国際協力と支援の強化」委員長として、地雷被害国への国際支援促進に尽力した。 オ クラスター弾52 クラスター弾がもたらす被害は、人道上の観点から国際的に深刻に受け止められている。日本は、被害者支援や不発弾処理といった対策を実施53している。また、クラスター弾に関する条約(CCM)54の締約国を拡大する取組も継続しており、2022年8月に開催されたCCM第10回締約国会議においても、これらの課題に関する議論に参加し、日本の積極的な取組をアピールした。 19 米国、ロシア、英国、フランス、中国 20 NPT:Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons 21 核軍縮の実質的な進展に資する提言を得ることを目的に、2017年に立ち上げられた会議。日本を含め、立場の異なる国々の有識者17名で構成される。2019年7月までに計5回の会合を行い、具体的な成果物をNPT運用検討会議第2回準備委員会及び第3回準備委員会に提出し、2019年10月にはこれまでの5回にわたる賢人会議の議論を総括する「議長レポート」を発出した。 22 「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」における議論の成果をフォローアップし更に発展させる目的で、核兵器国と非核兵器国の双方を含む各国の政府関係者及び民間有識者の参加を得て、2020年に立ち上げられた会合 23 2019年、スウェーデンが立ち上げた、核軍縮に関する問題意識を共有する非核兵器国16か国によるグループ「核軍縮とNPTに関するストックホルム・イニシアティブ」のこと 24 票決によらず、反対意志の表明がないことをもって採択すること 25 NPDI:Non-Proliferation and Disarmament Initiative 26 CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty 27 CTBT発効促進の機運を維持・強化する観点から、2002年に日本、オーストラリア、オランダが立ち上げたグループ(メンバー国は日本、オーストラリア、オランダ、カナダ、フィンランド、ドイツ)。これまでに計9回、外相会合を開催した。 28 核兵器その他の核爆発装置製造のための原料となる核分裂性物質(高濃縮ウラン、プルトニウムなど)の生産を禁止することにより、核兵器の数量増加を止めることを目的とする条約構想 29 FMCT:Treaty Banning the Production of Fissile Material for Nuclear Weapons or other Nuclear Explosive Devices / Fissile Material Cut-off Treaty 30 1983年以来、軍縮専門家を育成するために国連が実施している。同プログラムの参加者を広島・長崎に招待しており、資料館の視察や被爆者による被爆体験講話などを通じ、被爆の実相への理解促進に取り組んでいる。 31 広島市や長崎市との協力の下、ニューヨーク(米国)、ジュネーブ(スイス)及びウィーン(オーストリア)で常設原爆展が開設されている。 32 PSI:Proliferation Security Initiative 33 IAEA:International Atomic Energy Agency 34 IAEA理事会で指定される13か国。日本を含む高度な原子力技術を有する国が指定されている。 35 NPT締約国である非核兵器国は、NPT第3条1項に基づきIAEAとの間で当該国の平和的な原子力活動に係る全ての核物質を対象とした「包括的保障措置協定(CSA)」などを締結することを義務付けられているが、これに追加して、各国がIAEAとの間で締結する議定書。追加議定書(AP)の締結により、IAEAに申告すべき原子力活動情報の範囲が拡大され、未申告の原子力核物質・原子力活動がないことを確認するためのより強化された権限がIAEAに与えられる。2022年12月時点で、140か国が締結している。 36 弾道ミサイルに関しては、輸出管理体制のほかにも、その開発・配備の自制などを原則とする「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範」(HCOC)があり、2022年12月時点で、143か国が参加している。 37 大量破壊兵器などの拡散阻止のため、各国が国際法・各国国内法の範囲内で共同して取り得る措置を実施・検討するための取組で、2003年に発足。2022年12月時点で、107か国がPSIの活動に参加・協力している。2014年から、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、シンガポール及び米国の6か国が、アジア太平洋ローテーション訓練として1年ごとに訓練を主催することで合意した。日本は、外務省、警察庁、財務省、海上保安庁、防衛省・自衛隊などが連携し、これまで2004年、2007年及び2018年にPSI海上阻止訓練、2012年にPSI航空阻止訓練、2010年にオペレーション専門家会合(OEG)をそれぞれ主催したほか、他国が主催する訓練及び関連会合にも積極的に参加している。 38 横須賀市、房総半島沖海空域及び伊豆半島沖空域において開催された同訓練には、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、シンガポール及び米国がアセットや人員を参加させたほか、インド太平洋諸国などから19か国がオブザーバーを派遣した。 39 日本が主催し、ASEAN10か国、中国、インド、韓国、そしてアジア地域の安全保障に共通の利益を持つ米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、フランス及びEUの局長級が一堂に会し、アジアにおける不拡散体制の強化に関する諸問題について議論を行う多国間協議で、2003年に発足。直近では、2020年12月に第16回協議をオンラインで開催し、北朝鮮の核・ミサイル問題や輸出管理の強化について議論した。 40 日本が主催し、アジア諸国・地域の輸出管理当局関係者などが参加して、アジア地域における輸出管理強化に向けて意見・情報交換をするセミナー。1993年から毎年東京で開催している。 41 2004年4月採択。全ての国に対し(1)大量破壊兵器開発などを試みるテロリストなどへの支援の自制、(2)テロリストなどによる大量破壊兵器開発などを禁ずる法律の制定及び(3)大量破壊兵器拡散を防止する国内管理(防護措置、国境管理、輸出管理など)の実施を義務付けるとともに、国連安保理の下に国連安保理理事国から構成される「1540委員会」(国連安保理決議第1540号の履行状況の検討と国連安保理への報告が任務)を設置した。 42 イランの原子力活動に制約をかけつつ、それが平和的であることを確保し、また、これまでに課された制裁を解除していく手順を詳細に明記したもの 〈イラン側の主な措置〉 ●濃縮ウラン活動に係る制約  ・稼動遠心分離機を5,060機に限定  ・ウラン濃縮の上限は3.67%、貯蔵濃縮ウランは300kgに限定など ●アラク重水炉、再処理に係る制約  ・アラク重水炉は兵器級プルトニウムを製造しないよう再設計・改修し、使用済燃料は国外へ搬出  ・研究目的を含め再処理は行わず、再処理施設も建設しない 43 IAEAによると、2023年1月時点で、原子炉は世界中で423基が稼働中であり、56基が建設中(IAEAホームページ) 44 核不拡散の代表的な措置であるIAEAの保障措置(Safeguards)、原子力安全(Safety)及び核セキュリティ(Security)の頭文字を取って「3S」と称されている。 45 ALPS処理水とは、ALPS(多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System))などにより、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化した水。さらにALPS処理水は、その後十分に希釈され、トリチウムを含む放射性物質濃度について安全に関する規制基準値を大幅に下回るレベルにした上で、海洋放出されることが想定されている。 46 BWC:Biological Weapons Convention 1975年3月発効。締約国数は184か国(2022年12月時点) 47 CWC:Chemical Weapons Convention 1997年4月発効。締約国数は193か国(2022年12月時点) 48 OPCW:Organisation for the Prohibition of Chemical Weapons 49 武器貿易条約(ATT:Arms Trade Treaty)の2022年12月時点の締約国は112か国・地域。日本は、署名が開放された日に署名を行い、2014年5月、締約国となった。 50 特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW:Convention on Certain Conventional Weapons)の2022年12月時点の締約国は126か国・地域 51 対人地雷の使用・生産などを禁止するとともに、貯蔵地雷の廃棄、埋設地雷の除去などを義務付ける条約で、1999年3月に発効した。2022年12月時点の締約国数は、日本を含め164か国・地域 52 一般的には、多量の子弾を入れた大型の容器が空中で開かれて子弾が広範囲に散布される仕組みの爆弾及び砲弾のことをいう。不発弾となる確率が高いともいわれ、不慮の爆発によって一般市民を死傷させることなどが問題となっている。 53 クラスター弾対策及び対人地雷対策に関する国際協力の具体的な取組については、開発協力白書を参照 54 クラスター弾の使用・所持・製造などを禁止するとともに、貯蔵クラスター弾の廃棄、汚染地域におけるクラスター弾の除去などを義務付ける条約で、2010年8月に発効した。締約国数は、日本を含め110か国・地域(2022年12月時点)