第2章 地域別に見た外交 2 欧州地域情勢 (1)欧州連合(EU) EUは、総人口約4億4,700万人を擁し、27加盟国から成る政治・経済統合体であり、日本と基本的価値・原則を共有し、日本が地球規模の諸課題に取り組む上で重要なパートナーである。 〈EUの動き〉 EUにとって2022年は、ロシアのウクライナ侵略への対応に追われる年となった。2021年12月、ロシア・ウクライナ国境におけるロシア軍増強による緊張の高まりを受け、EUは対露制裁を含む対応の協議を開始した。2月22日、対露制裁に関するEU非公式外相会合が開催され、対露制裁パッケージが全会一致で承認された。EUは、2014年のロシアによるクリミア併合から対露経済制裁を実施し、ウクライナ東部紛争をめぐる和平合意であるミンスク合意の履行が不十分であることを理由に制裁を継続していたが、2月23日のロシアによる「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」の「独立国家」としての承認及び24日のウクライナ侵略開始を受け、2月以降、複数回にわたり制裁を実施、12月には第9次制裁パッケージを発表した。この結果、EUは、経済制裁、個人・団体への資産凍結・渡航制限、外交上の措置、経済関係の制限、メディアへの制限など、これまでで最も大規模かつ広範囲な対露制裁を実施している。また、ウクライナ支援として、EUは、EU加盟国分とあわせて総額197億ユーロ(うちEUによる支援は約124億ユーロ)のマクロ財政支援をマクロ金融支援、予算支援、緊急支援、危機対応・人道支援などの形式で実施しているほか4、2023年分として最大総額180億ユーロ規模のマクロ財政支援パッケージを承認し、2023年1月に拠出を開始した。さらに、EUによる初の軍事支援として、2023年1月までに欧州平和ファシリティ5に総額36億ユーロの拠出を決定した。EUは、ウクライナとの連帯を掲げ、ポーランド1か国でも100万人以上のウクライナ避難民を受け入れていることを始めとして、EU域内で相当数のウクライナ避難民を受け入れ、支援を行っている。また、2月にゼレンスキー・ウクライナ大統領がEU加盟申請を行ったのに対し、6月にウクライナにEU加盟候補国の地位を付与するなど、異例の早さで、加盟交渉開始に向けた協議が行われている。多層的な欧州の枠組み構築の観点からは、10月、EU加盟国と非加盟国の中間ステージを設定するという構想の下、第1回欧州政治共同体首脳会合が開催された。2022年後半のEU議長国であるチェコにおいて開催された同会合には、EU加盟国、ウクライナを含む加盟候補国、EUから離脱した英国などEU近隣国44か国が招待され、今後、開催地をEU加盟国、非加盟国で持ち回り定期開催することが決定された。 〈日・EU関係〉 日本とEUは、2019年2月に発効した日・EU経済連携協定(EPA)及び暫定的に適用が開始された日・EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)の下で、協力を強化している。 2022年5月に、岸田総理大臣は、ミシェル欧州理事会議長及びフォン・デア・ライエン欧州委員長と日・EU定期首脳協議を行った。3年ぶりの対面で東京において開催された定期首脳協議では、ロシアによるウクライナ侵略及び東アジア情勢、北朝鮮情勢を中心とした国際・地域情勢、FOIP、経済安全保障、エネルギー、食料安全保障といったグローバルな課題、日・EU関係について意見交換を行い、幅広い分野での日・EUの連携・協力で一致した。さらに共同声明を発表し、「日・EUデジタルパートナーシップ」の立上げを決定した。また、3月のベルギー・ブリュッセルにおけるG7首脳会合、6月のドイツ・エルマウにおけるG7首脳会合の機会に、岸田総理大臣は、ミシェル欧州理事会議長及びフォン・デア・ライエン欧州委員長とそれぞれ首脳会合を行い、11月には、インドネシア・バリにおけるG20首脳会合の機会にフォン・デア・ライエン欧州委員長と首脳会談を行った。9月の故安倍晋三国葬儀には、ミシェル欧州理事会議長が参列のため訪日し、この機会にも岸田総理大臣との首脳会合が行われた。 林外務大臣は、2月、2022年前半のEU議長国であるフランスとEUが共催する「インド太平洋閣僚会合」にオンラインで出席し、インド太平洋地域の厳しい安全保障環境に言及し、同志国、パートナーとの連携強化が重要であるとのスピーチを行った。林外務大臣はまた、2月のドイツにおけるミュンヘン安全保障会議、4月のベルギー・ブリュッセルにおけるNATO外相会合、11月のドイツ・ミュンスターにおけるG7外相会合の機会に、ボレルEU外務・安全保障政策上級代表と日・EU外相会談を行った。 また、EUは3月に今後10年間の安全保障・防衛政策における戦略的指針である「戦略的コンパス」を発表し、日本を含む同志国及び戦略的パートナーとのパートナーシップを一層推進していくことを明記した。日本とEUは、日・EU定期首脳協議において首脳間で確認したとおり、今後、サイバーセキュリティ、偽情報への対応、海洋安全保障及び危機管理といった分野における実質的な協力の拡大を目指していく。 EUは、米国・中国に次ぐ経済規模を有し、日本の輸入相手の第2位、輸出相手の第3位、対日直接投資残高の第1位の位置を占めるなど、経済面でも日本にとって重要なパートナーである。2019年に発効した日EU・EPAを基盤として日・EUの経済関係は一層深化しており、これまで同協定に基づく合同委員会(直近では2022年3月開催)や専門委員会・作業部会を通じて協定の効果的な実施及び運用を確保してきている。10月には、「データの自由な流通に関する規定」を日EU・EPAに含めることについての正式交渉を開始した。また、同月には、日・EUハイレベル経済対話を開催し、経済安全保障を含むグローバルな経済的諸課題について、日・EUがより一層連携していくことを確認した。今後も日・EU経済関係の更なる発展を目指し、日EU・EPAの着実な実施や日・EU間での幅広い協力を行っていく。 さらに、日・EU間の航空関係の安定的な発展に向けた基盤を整備するための二国間航空協定に関する日・EU協定について、4月6日に行われた第4回政府間交渉において実質合意に至った。日・EU間の航空分野の協力を一層強化するものである。 (2)英国 7月のジョンソン首相の辞意表明を受け、同月から9月にかけて、保守党党首選挙が行われ、前政権で外務・英連邦・開発相兼女性・平等担当相を務めたトラス氏が新首相に就任した。しかしトラス首相は、大規模減税など経済政策を発端とする市場の混乱を受け、10月に辞意を表明。同月、ジョンソン政権で財相を務めたスナク氏が首相に就任し、経済の安定を最優先に掲げつつ、保健システム強化、より良い教育、英国の全ての地域の「底上げ」や、EU離脱により利益を得る経済など、2019年の総選挙時に保守党が掲げた公約を果たす取組を推進している。 9月、エリザベス2世女王陛下の崩御を受け、チャールズ3世国王陛下が即位した。 日英の政府間では、首脳・外相を始め様々なレベルで対話が活発に行われた。岸田総理大臣は、ジョンソン首相との間で、2月及び7月の電話会談に加え、3月及び6月のG7首脳会合の際に会談したほか、5月には英国を訪問し会談を行った。トラス首相とは、9月の国連総会の際に会談し、スナク首相とは、11月に電話会談、同月のG20バリ・サミットの際に立ち話、2023年1月に会談を行った。林外務大臣は、トラス外務・英連邦・開発相兼女性・平等担当相と4月に電話会談を、2月及び5月のG7外相会合の際に会談を行い、クレバリー外務・英連邦・開発相とは、9月に電話会談を実施し、同月の国連総会で立ち話を行った。また、同月の故安倍晋三国葬儀及び11月のG7外相会合の際にも会談した。 日英部隊間協力円滑化協定署名式 (2023年1月11日、英国・ロンドン 写真提供:内閣広報室) それぞれの機会に、かつてないほど緊密な日英関係を一層深化させていくことを確認した。また、ロシアによるウクライナ侵略に対するG7の結束した対応や、東アジアを含む地域情勢について緊密に意思疎通を行った。 2023年1月の岸田総理大臣とスナク首相の首脳会談では、英国がインド太平洋地域への「傾斜」を表明する中で、FOIPの実現に向けて二国間協力を引き続き推進していくことを確認し、G7広島サミット、安全保障、地域情勢などについて意見交換を行った。 安全保障分野においては、12月に日本・英国・イタリア3か国による次期戦闘機共同開発協力について発表し、2023年1月の日英首脳会談において日英部隊間協力円滑化協定の署名に至るなど、両国間の協力が新たな高みに引き上げられた。 (3)フランス マクロン大統領は、新型コロナ及びウクライナ情勢への対応により、現職大統領としては高い支持率を保って4月の大統領選挙に臨んだ。2017年の大統領選挙と同じ顔合わせとなった決選投票(第2回投票)では、極右政党とされる国民連合のル・ペン候補との得票差は縮まったもののマクロン大統領が再選された。一方、6月の国民議会選挙では、与党連合の獲得議席は過半数を下回った。 外政面では、2022年前半にEU議長国を務め、2月、EUとの共催でインド太平洋閣僚会合を開催(林外務大臣がオンライン形式で参加)するなど、引き続き欧州のインド太平洋への関与を牽(けん)引する役割を果たした。ウクライナ情勢について、フランスは対露制裁とウクライナ支援を実施した。マクロン大統領は6月にはキーウを訪問し、また、プーチン大統領とも累次にわたり電話会談を行った。 日仏関係については、首脳・外相を始め様々なレベルで対話が行われた。1月、第6回日仏外務・防衛閣僚会合(「2+2」)をオンライン形式で開催し、インド太平洋地域における各種協力などを確認する共同声明を発出した。3月、岸田総理大臣はマクロン大統領と電話会談を実施し、ウクライナ侵略を受け、ロシアを厳しく非難した。5月、林外務大臣はG7外相会合の機会にル・ドリアン欧州・外務相と会談し、様々な枠組みを通じて日仏間の具体的な協力を進めていくことで一致した。6月、岸田総理大臣は、マクロン大統領と電話会談を行い、また、林外務大臣は新任のコロンナ欧州・外務相と電話会談を行い、フランス新政権との連携を確認した。また、同月、岸田総理大臣は、G7エルマウ・サミットの際にマクロン大統領と対面で会談し、7月には電話会談を実施した。林外務大臣は、コロンナ欧州・外務相との間で、8月に電話会談を行い、11月のG7外相会合の機会には対面で会談を実施した。会談において、両外相はウクライナ情勢についてG7が結束して対応する必要性を確認した。 2023年1月1日、インド太平洋地域における地政学上の要衝であるフランス領ニューカレドニアに在ヌメア領事事務所を開設した。岸田総理大臣は同月、フランスを訪問し、マクロン大統領との首脳会談・夕食会において、新しい日仏ロードマップの作成を目指すことで一致したほか、G7広島サミット、安全保障協力、地域情勢などについて意見交換を行った。 マクロン大統領による出迎えを受ける岸田総理大臣 (2023年1月9日、フランス・パリ 写真提供:内閣広報室) (4)ドイツ 社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)による三党連立(いわゆる「信号連立」)政権は、2月24日のロシアによるウクライナ侵略以降、その対応に集中的に取り組んだ。2月27日、ショルツ首相(SPD)は連邦軍の強化のための1,000億ユーロの特別基金の設置と今後、国防費をGDP比2%に増大する方針を表明し、また、その後、紛争地域であるウクライナに対して殺傷性のある武器を供与するなど、従来の外交・安全保障政策から大幅な方針転換を行った。また、原子力発電所廃止政策に基づき、2022年末に稼働を停止する予定だった残り3基の原子力発電所について、2023年4月15日までの稼働の延長を決定した。加えて、2022年のG7議長国として、例年にない頻度でG7首脳・外相会合を開催し、G7の連携強化に貢献したほか、10月にはベルリンでの「ウクライナ復興・再建・近代化に関する国際専門家会合」を欧州委員会と共催するなど、ウクライナ対応において積極的な役割を果たした。一方、国内では、武器供与を含むウクライナ支援に関する慎重な姿勢が批判され、また、食料品、エネルギー価格の高騰を受けた国民生活への不安の高まりを背景に、2022年秋以降、世論調査における与党三党を合わせた支持率が半数に満たない状況が続いており、今後の政権運営の行方が注目される。 日本との関係では、2022年にドイツが議長国を務めたG7プロセスに加え、ドイツ側要人の相次ぐ訪日により、ハイレベルの緊密な交流がかつてない頻度で行われた。日本からは、2月、5月及び11月のG7外相会合の機会に、林外務大臣がドイツを訪問したほか、岸田総理大臣も6月のG7エルマウ・サミットのために同国を訪問し、また、11月のG20バリ・サミットの機会にショルツ首相と首脳会談を実施した。ドイツからも、4月にショルツ首相、7月にベアボック外相、11月にシュタインマイヤー大統領が訪日し、FOIPの実現やウクライナ情勢への対応などにおいて引き続き緊密に連携することを確認するなど、基本的価値を共有する重要なパートナーとしての日独関係が一段と強化された。また、9月のユーロファイターを含むドイツ軍用機の訪日や11月の第2回日独外務・防衛閣僚会合(「2+2」)の実施など、安全保障分野でも連携を深めた。 (5)イタリア 7月、ウクライナ情勢の影響を受けた国内経済支援策をめぐり、連立与党の一角を担う「五つ星運動(M5S)」が、同支援策に関する政令案の一部に反対し、議会での投票を欠席した。連立与党が一党でも欠けるならば政権は存続し得ないとの立場であったドラギ首相は、これを受け、マッタレッラ大統領に辞表を提出した。マッタレッラ大統領はドラギ首相に議会で状況を報告するよう求め、信任投票が実施されたが、M5Sに加えて「同盟」及び「フォルツァ・イタリア(FI)」を含む主要連立与党3党が投票に参加しなかったことから、ドラギ首相は再度辞表を提出し、マッタレッラ大統領は上下両院の解散及び選挙の実施を決定した。 9月、上下両院議員選挙が実施され、「イタリアの同胞(FdI)」を第一党とする「中道右派連合」が過半数の議席を獲得した。マッタレッラ大統領は、上下両院議長及び各政党代表者との協議の後、FdIのメローニ党首を首班指名し、同党首がこれを受諾したことを受けて、10月、イタリア史上初めての女性首相が誕生した。 日本との関係では、岸田総理大臣が5月にイタリアを訪問し、ドラギ首相との会談で、ウクライナ情勢を始めとする国際情勢に関し、G7を始めとする国際社会が結束していくことを改めて確認した。岸田総理大臣は、9月、故安倍晋三国葬儀に参列するため訪日したレンツィ元首相と会談した。また、11月、メローニ首相に就任の祝意を伝えるため電話会談を実施した。林外務大臣は、11月のG7外相会合の際に新任のタヤーニ外務・国際協力相と会談を実施した。 安全保障分野では、12月、日本・イタリア・英国3か国による次期戦闘機共同開発協力を発表した。2023年1月の岸田総理大臣とメローニ首相との首脳会談では、日伊関係の「戦略的パートナーシップ」への格上げ、外務・防衛当局間協議の立上げに一致したほか、日伊映画共同製作協定交渉の大筋合意を歓迎した。 日伊首脳会談 (2023年1月10日、イタリア・ローマ 写真提供:内閣広報室) (6)スペイン 2020年1月に発足した第2期サンチェス政権は、少数連立与党が閣外の各党との協力の下で政権運営を行っており、資源・エネルギー価格の高騰の影響下を受けた経済の運営が重要課題となっている。 日本との関係では、2018年に両国の首脳間で合意した戦略的パートナーシップの下、連携を強化している。6月には、マドリードで開催されたNATO首脳会合に出席した岸田総理大臣が、サンチェス首相との間で会談を実施し、再生可能エネルギー、デジタルなどの分野での企業間協力やウクライナやインド太平洋を含む地域情勢について意見交換した。6月にはバリでのG20外相会合の機会に、林外務大臣がアルバレス外務・EU・協力相と会談を行った。10月には京都で第22回日本・スペイン・シンポジウムが開催されたほか、日・スペイン次官級政務協議も実施されるなど、官民双方における協力が進展した。 日・スペイン首脳会談 (6月29日、スペイン・マドリード 写真提供:内閣広報室) (7)ポーランド 与党「法と正義(PiS)」を中核とする連立政権は、好調な経済と手厚い福祉政策を背景に比較的安定した政権運営を継続している。ロシアによるウクライナ侵略を受け隣国ウクライナを積極的に支援し、ロシアによるウクライナ侵略以降は、積極的にウクライナ避難民を受け入れている。 日本との関係では、ロシアのウクライナ侵略を受け、2月に外相電話会談、3月に首脳電話会談及び首脳会談を実施するなど、二国間の接触が維持されてきている。4月には林外務大臣が総理特使としてポーランドを訪問し、ラウ外相との外相会談において、自由で開かれた国際秩序を守るため、戦略的パートナーとして、引き続き緊密に連携していくことで一致した。また、林外務大臣は、ドゥダ大統領及びモラヴィエツキ首相へ表敬し、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序全体の根幹を揺るがす深刻な事態であると述べ、志を同じくする民主主義国が一致・結束して毅(き)然と対露制裁を継続することが重要であるとの認識で一致した。また、避難民の受入れ施設を視察し、日本への避難を希望する20人の避難民とともに政府専用機で帰国した。 (8)ウクライナ6(参考:13ページ 特集 「ロシアによるウクライナ侵略と日本の対応」) 2022年に入り、ウクライナ国境周辺におけるロシア軍増強を受けて、情勢が一層緊迫化する中、日本は、2月15日に日・ウクライナ首脳電話会談、同17日に日露首脳電話会談を行い、同19日に行われたG7外相会合を含め、国際社会と共に緊張緩和に向けた努力を継続した。 同24日、プーチン・ロシア大統領は「特別軍事作戦」の開始を発表し、ロシアによるウクライナ侵略が開始された。同日、日本は、最も強い言葉でこれを非難する外務大臣談話を発出した。また、同25日には日・ウクライナ外相電話会談、同28日には首脳電話会談を実施し、更なる対露制裁措置及び対ウクライナ支援を実施することを伝達した。また、ロシアによるウクライナ国内の原子力発電所への攻撃を受け、3月4日にも首脳電話会談を実施し、岸田総理大臣から、東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した日本としてロシアの蛮行は断じて認められないと述べた。 両国の政府間のみならず議会間でも緊密な連携が図られ、3月24日、日本の国会においてゼレンスキー・ウクライナ大統領がオンライン形式で演説を行った。また、3月31日、日本政府としてウクライナとの一層の連帯を示すため、ウクライナの首都の呼称をウクライナ語による読み方に基づく「キーウ」に変更することとし、首都以外の地名についてもウクライナ語による読み方に基づく呼称に変更することを発表した。 4月2日、総理特使としてポーランドを訪問していた林外務大臣は、クレーバ・ウクライナ外相と対面での外相会談を実施したほか、同4日、キーウ近郊の地域において、ロシアによって無辜(こ)の民間人が多数殺害されるなど残虐な行為が繰り広げられていたことが明らかになったことを受け、これを非難する外務大臣談話を発出した。また、同26日には首脳電話会談を実施し、ウクライナ側の要請を踏まえた更なる支援を伝達した。5月13日、G7外相会合(ドイツ・ヴァイセンハウス)の機会に、対面での外相会談を再度実施し、G7を始め国際社会が結束して強力な対露制裁を続けていくことの重要性を両国間で確認した。また、6月のG7エルマウ・サミットなど、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、情勢を踏まえた各種対応につき調整を継続した。 7月22日、国連・トルコ・ウクライナ・ロシアの4者の間で、黒海を通じたウクライナからの穀物輸出の再開に合意したことを受け、これを歓迎する外務大臣談話を発表した。さらに、翌23日のロシアによるオデーサ港への攻撃を強く非難する外務大臣談話を発出した。また、8月23日にはウクライナ主催による第2回クリミア・プラットフォーム首脳会合7が開催され、岸田総理大臣からビデオ・メッセージを発出した。 国連総会ハイレベル・ウィークに際しては、9月22日に岸田総理大臣がシュミハリ首相と対面での首脳会談を行い、また、同30日の電話首脳会談においては、岸田総理大臣から、ウクライナの一部地域における「住民投票」と称する行為及びロシアによるこれらの地域の「編入」と称する行為に関し、決して認められてはならず強く非難すると述べ、同日に同旨の外務大臣談話が発出された。 また、10月5日には、3月に一時閉鎖していたキーウの在ウクライナ日本国大使館を十分な安全対策を講じた上で再開し、それ以降、情報収集やウクライナ政府を始めとする各国との連絡・調整などを積極的に行ってきている。 ロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、欧州のみならずアジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす暴挙、かつ、明白な国際法違反であり、断じて許容できるものではない。日本は国際秩序を守り抜くため、ウクライナと連帯し、G7を始めとする国際社会と結束して行動していく。 4 2022年12月16日時点 5 欧州平和ファシリティ:2021年3月に創設された、EUの共通外交・安全保障政策の下で軍事又は防衛活動への資金提供を可能にし、紛争予防、平和構築、国際安全保障強化に対するEUの能力を高めることを目的とする制度。EUの通常予算枠外で実施 https://www.consilium.europa.eu/en/policies/european-peace-facility/ 6 2023年3月の岸田総理大臣のウクライナ訪問については外務省ホームページ参照: https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/c_see/page1_001548.html 7 2014年にロシアに違法に「併合」されたクリミアをめぐる諸問題解決を目的に、2020年にウクライナがイニシアティブを発表し、2021年8月に第1回首脳会合(ウクライナ・キーウ)を開催した。