第2章 地域別に見た外交 3 各国との連携・協力 2022年においても、日本は、FOIPの実現に向け外交活動を積極的に推進した。 (1)米国(95ページ 第3節参照) 2月、米国は「インド太平洋戦略」を公表した。5月、岸田総理大臣は訪日中のバイデン大統領と日米首脳会談を行い、インド太平洋地域こそがグローバルな平和、安全及び繁栄にとって極めて重要であるとの認識の下、FOIPの実現に向け、基本的価値を共有する同盟国である日米が国際社会を主導し、引き続きオーストラリア、インド、ASEAN、欧州、カナダなどの同志国と緊密に連携していくことで一致した。また、日米首脳共同声明「自由で開かれた国際秩序の強化」を発出した。 さらに、10月、米国は、「国家安全保障戦略」を公表し、同月の日米外相会談において、林外務大臣から、米国の「国家安全保障戦略」では、FOIPの推進が明記され、尖(せん)閣諸島を含む日本防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントが再確認されており、高く評価すると述べたのに対し、ブリンケン国務長官から、自由で開かれた国際秩序を守り抜くため、同盟国及びパートナーと引き続き緊密に連携していきたいとの発言があった。 (2)東南アジア諸国連合(ASEAN)(88ページ 第2節7参照) 日本とASEANの間では、2020年11月に「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)協力についての第23回日・ASEAN首脳会議共同声明」を発出し、AOIPとFOIPが本質的な原則を共有していることを確認した。2022年8月の日・ASEAN外相会議では、林外務大臣から、FOIPとAOIPの実現に向けた具体的協力を着実に実施していく、その上で、日本は「平和のための岸田ビジョン」の下、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に取り組み、FOIPの新たな展開を進めていくと発言した。11月、日・ASEAN首脳会議においては、岸田総理大臣から、2020年の共同声明以来、具体的な協力案件が計89件に上っていると述べ、AOIP協力に関する進展をまとめた報告書(プログレス・レポート)を紹介した。また、2023年の日・ASEAN友好協力50周年に向け、(1)海上交通安全などの海洋協力、(2)質の高いインフラ投資などの連結性支援、(3)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を始めとした保健、気候変動対策、防災、(4)サプライチェーン強靱(じん)化、デジタル技術、食料安全保障の強化といった幅広い経済分野での協力を強化すると発言した。 (3)カナダ(95ページ第3節参照) 10月、日加外相会談において、両外相は、日加両国が共有するビジョンであるFOIPを実現することが地域の平和と繁栄のため不可欠であることで一致し、同ビジョンに資する日加アクションプランを発表した。また11月、カナダは同国初の「インド太平洋戦略」を発表した。 (4)オーストラリア(82ページ 第2節6参照) 5月、岸田総理大臣は、訪日中のアルバニージー首相と日豪首脳会談を行い、日豪両国の「特別な戦略的パートナーシップ」を一層強化し、同盟国・同志国と共にFOIPの実現に向けた取組を進めていくことで一致した。また、10月、オーストラリアで日豪首脳会談が行われ、両首脳は、FOIPへの揺るぎないコミットメントを確認する新たな安全保障協力に関する日豪共同宣言に署名した。12月の第10回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)において、ASEAN中心性・一体性及びAOIPを支持しつつ、ASEANとの更なる協力を進めるため、日豪両国が連携を強化することで一致した。 (5)インド(76ページ 第2節5参照) 3月、デリーを訪問した岸田総理大臣は、モディ首相と日印首脳会談を行い、両首脳は、日本とインドが、FOIPの実現に向けて、二国間や日米豪印などを通じて緊密に連携していく重要性を共有した。また、威圧のない、FOIPのための共通のビジョンを再確認するとの日印首脳共同声明を発出した。さらに、9月の第2回日印外務・防衛閣僚会合(「2+2」)において、FOIP実現という共通の目標に向けて協力していくことや、ASEAN一体性・中心性を支持し、FOIP及びインドの「インド太平洋海洋イニシアティブ(IPOI)」とAOIPとの具体的協力の重要性を確認した。 (6)日米豪印 日米豪印4か国は、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を強化していくとの目標を共有している。FOIPを具体的に推進していくため、質の高いインフラ、海洋安全保障を始め様々な分野で実践的な協力を進めており、また、同ビジョンの実現に向け、より多くの国々へ連携を広げていくことの重要性を共有している。また、4か国は、AOIPを全面的に支持しており、FOIPに関する欧州を始めとする各国の前向きな取組を歓迎している。5月、日本で開催された日米豪印首脳会合において、4か国の首脳は、FOIPのビジョンが、世界中の様々な地域で共鳴し、ASEANのAOIPや、EUや欧州諸国のインド太平洋戦略など、各地で主体的取組が進んでいることを歓迎し、このビジョンの実現に向け、各国・地域との連携・協力を更に深めていくことで一致した。また、9月、米国で行われた日米豪印外相会合において、FOIPの実現に向けたコミットメントを改めて確認した。 (7)韓国(61ページ第2節3(2)参照) 11月に「自由・平和・繁栄のインド太平洋戦略」の主要ポイントを発表した韓国との間では、同月の日韓首脳会談において、両首脳は、双方のインド太平洋に関する構想について歓迎の意を表明し、包摂的で、強靱で、安全な、自由で開かれたインド太平洋の追求において、取組を連携させていくことで一致した。 (8)欧州 ア EU(122ページ 第5節2(1)参照) 2021年12月、EUは連結性戦略「グローバル・ゲートウェイ」を発表し、岸田総理大臣は、2022年2月のフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との電話会談において、同戦略を評価しており、引き続き日・EU連結性パートナーシップに基づき連携したいと述べた。また、5月に日本で行われた日・EU定期首脳協議において、岸田総理大臣から、基本的価値を共有する日・EUでFOIPの実現に向け、連携していきたいと発言した。2月、林外務大臣は、フランス・EU共催「インド太平洋閣僚会合」にオンライン出席し、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序をインド太平洋地域において構築していく必要性があり、その中で欧州、同志国、日米豪印、ASEANなどとの連携強化が重要であり、また、インド太平洋地域の中心に位置するASEANはFOIPの実現の要であり、日本とEUが共にASEANの中心性と一体性を支持し、盛り立てていくことも重要であるとのスピーチを行った。 イ 英国(124ページ 第5節2(2)参照) 5月、英国で実施された日英首脳会談及びワーキング・ランチにおいて、岸田総理大臣から、2021年の英国空母打撃群のインド太平洋への派遣や日英共同演習、英国艦艇の同地域への恒常的派遣及び北朝鮮籍船舶による「瀬取り」3への対処など、日英安全保障・防衛協力の深化と英国のインド太平洋への関与を評価したのに対し、ジョンソン首相は、英国は引き続き同地域にコミットしていくと述べた。また、両首脳は、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められないとの認識で一致し、さらに、FOIPの実現に向け両国が緊密に連携していくことを改めて確認した。その後、特に安全保障分野では、12月に日本・英国・イタリアの3か国による次期戦闘機共同開発について公表され、続けて2023年1月に岸田総理大臣が英国を訪問し、スナク首相との間で日英部隊間協力円滑化協定に署名したことで、日英安全保障・防衛協力は新たな高みに引き上げられた。 ウ フランス(125ページ 第5節2(3)参照) 1月、テレビ会議形式で第6回日仏外務・防衛閣僚会合(「2+2」)が実施され、インド太平洋地域における具体的な協力を促進していくことが確認された。5月、日仏外相会談において、林外務大臣は、フランスがEUのインド太平洋の関与強化にリーダーシップを発揮していることを改めて評価し、両大臣はインド太平洋地域の二国間の多層的な協力を実現するため、様々な枠組みでの協議を通じて具体的な協力を進めていくことで一致した。2023年1月1日、日本は、インド太平洋地域における地政学上の要衝であり、FOIPの実現に向けた日仏協力を進める上で重要な拠点となるニューカレドニアに、在ヌメア領事事務所を開設した。同月に行われた日仏首脳会談では、岸田総理大臣から、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、両国のアセットの往来や日仏共同訓練など、実質的な協力が進展していることを歓迎すると述べ、両国の連携を深めていくことで一致した。 エ ドイツ(126ページ 第5節2(4)参照) 2020年9月、ドイツは、インド太平洋における航行の自由、法の支配、連結性といった理念の重要性を強調する「インド太平洋ガイドライン」を閣議決定し、2022年9月、同ガイドラインの進捗報告書を発表した。また、同年4月に行われた日独首脳会談において、岸田総理大臣は、ドイツがインド太平洋への関心と関与を強めていることを高く評価した上で、日独情報保護協定の締結、日独外務・防衛閣僚会合(「2+2」)の開催、ドイツ海軍フリゲート艦の日本寄港など、日独間の安全保障協力は飛躍的に深化したと述べた。 オ イタリア(126ページ 第5節2(5)参照) 2月、イタリアは「イタリアのEUインド太平洋戦略に対する貢献」を発表した。岸田総理大臣は、5月にイタリアを訪問した際、ドラギ首相との間で首脳会談を実施し、同文書の策定を評価し、両首脳はFOIPの実現に向けた協力を進めることで一致した。その後も、11月の日伊外相会談などの機会にFOIPの実現に向けた協力を確認した。12月、日本・イタリア・英国の3か国は、次期戦闘機共同開発について決定・公表した。続けて2023年1月に岸田総理大臣がイタリアを訪問し、メローニ首相との間で日伊関係を「戦略的パートナー」に格上げすることで一致したほか、外務・防衛当局間の協議を立ち上げ、安全保障分野での連携を更に推進することで一致した。 カ オランダ(134ページ 第5節 その他の欧州地域参照) 7月、G20外相会合に出席するためインドネシアを訪問中の林外務大臣は日・オランダ外相ワーキングディナーを行い、FOIPの実現に向けて、安全保障や経済安全保障などの分野で連携を一層強化していくことを確認した。 3 ここでの「瀬取り」は、2017年9月に採択された国連安保理決議第2375号が国連加盟国に関与などを禁止している、北朝鮮籍船舶に対する又は北朝鮮籍船舶からの洋上での船舶間の物資の積替えのこと