第3章 国際社会で存在感を高める日本 第3節 国益と世界全体の利益を増進する経済外交 1 経済外交の概観 国際社会においては、政治・経済・軍事の各分野における国家間の競争が顕在化する中、パワーバランスの変化がより加速化・複雑化するとともに、既存の国際秩序をめぐる不確実性が高まっている。新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の流行が長期化する中、極めて厳しい状況に陥った世界経済は、全体としては持ち直しの動きがみられているが、ワクチン格差による各国の経済状況のばらつきや、コロナ対策で膨らんだ政府債務、海運を始めとする物流コスト増、エネルギーやコモディティ価格の上昇、半導体不足など様々な要因に起因するインフレリスクなどにより、先行きに依然として不透明感が漂っている。 こうした中、日本は、経済連携による貿易自由化とルール作りの努力を継続した。2021年は日英包括的経済連携協定(日英EPA)1が発効し、2022年1月には地域的な包括的経済連携(RCEP)2協定が発効した。多角的貿易体制の礎である世界貿易機関(WTO)3については、2021年に延期された第12回閣僚会議は2022年に再び延期されたが、新型コロナ対応や漁業補助金交渉を始めとする重要なテーマについて議論が活発化しており、引き続き関係国と連携して改革を先導しなければならない。また、電子商取引やサービス国内規制など、有志国の取組については、第12回閣僚会議のタイミングにかかわらず、成果を積み上げていく方針である。 以上の認識も踏まえ、日本は、(1)経済連携協定の推進や多角的貿易体制の維持・強化といった、自由で開かれた国際経済システムを強化するためのルール作りや国際機関における取組、(2)官民連携の推進による日本企業の海外展開支援及び(3)資源外交とインバウンドの促進の三つの側面を軸に、外交の重点分野の一つである経済外交の推進を加速すべく取組を進めてきた。 1 EPA:Economic Partnership Agreement 2 RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership 3 WTO:World Trade Organization