第2章 地域別に見た外交 2 日本の具体的な取組例 日本は、「インド太平洋国家」として、地域の平和と繁栄に貢献していくべく、考え方を共有する国々と連携し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を政府開発援助(ODA)も活用しながら戦略的に推進してきた。具体的には、(1)海洋秩序に関する政策発信や、海洋法の知見の国際社会との共有、(2)自由で公正な経済圏を広げるためのルール作り、(3)インド洋と太平洋にまたがる連結性の実現、(4)能力構築支援を通じたガバナンスの強化、(5)海洋安全保障及び海上安全の確保を始めとした取組を進めてきている。 (1)については、東南アジア諸国や太平洋島嶼(しょ)国に対し、海上法執行能力構築支援や研修などを通じた海洋法に関する能力構築支援などに取り組んできている。 (2)については、経済のグローバル化が進展する一方、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の流行が長期化する中、世界で保護主義的な動きが一層顕著となっている。そうした中で、TPP11協定や日EU経済連携協定(日EU・EPA)、日米貿易協定に続き、2021年1月には日英包括的経済連携協定(日英EPA)が発効したほか、2022年1月には地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が日本を含む批准書などの寄託を完了した署名国について発効するなど、日本は、自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向けて、経済・通商分野でのルール作りを主導している。 (3)については、「メコンの大動脈」といわれるホーチミン、プノンペン、バンコクの巨大都市を結びインド洋に抜ける南部経済回廊や、ベトナムのダナンからラオス、タイ内陸部を結びミャンマーを通じてインド洋につなぐ東西経済回廊などの連結性強化に資するプロジェクトを実施してきている。 (4)については、自立的かつ持続可能な成長を後押しするため、相手国政府の財政政策や公的債務管理に関する能力強化を目的に、マクロ経済政策の国別研修の実施やアドバイザーの派遣などをアジア、アフリカを中心とした国々に対して実施している。 (5)については、自由で開かれた国際秩序を構築するため、日本のシーレーン上に位置するフィリピンやベトナムなどに対し、巡視船や沿岸監視レーダーを始めとする機材供与、専門家派遣や研修による人材育成などを通じて海上法執行能力構築支援を積極的に実施している。