令和4年版外交青書(外交青書2022)巻頭言 現在、国際社会は時代を画する変化の中にあります。世界は米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入し、パワーバランスの変化が加速化・複雑化し、これまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的な価値や国際秩序が厳しい挑戦にさらされています。とりわけ、ロシアによるウクライナ侵略は、既存の国際秩序に対するあからさまな挑戦であり、世界に大きな衝撃を与えました。今回の侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難します。 私は、先人たちの努力により世界から得た日本への信頼を基礎に、普遍的価値を守り抜く覚悟、日本の平和と安定を守り抜く覚悟、そして人類に貢献し、国際社会を主導する覚悟、これら三つの「覚悟」を持って、対応力の高い、「低重心の姿勢」で日本外交の新しいフロンティアを切り拓く取組を進めています。 「内政」と「外交」は繋(つな)がっています。国民の皆様の支持があってこそ、私たちは国として力強い外交を推進することができます。そして、そのためには国民の皆様との間で丁寧に「キャッチボール」を行い、しっかりとコミュニケーションを深めていくことが大切です。外交青書は、そのようなコミュニケーションを深めるための重要なツールの一つです。 令和4年版外交青書(外交青書2022)は、主として2021年の国際情勢と日本の外交活動を概観したものです。「すべての人が安全になるまで誰も安全ではない」、この強い意識の下、2021年も続いた新型コロナウイルス感染症との闘いを巻頭に特集しました。また、国際社会が直面する大きな変化、厳しさと複雑さを増す日本の安全保障環境について詳述した後、日米同盟の強化、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現、中国・韓国といった近隣諸国との外交、北朝鮮をめぐる諸懸案への対応、地域外交の推進、経済安全保障を含む自由で公正な経済秩序の拡大、新型コロナ・気候変動・軍縮不拡散などの地球規模課題などの重要な外交課題に関し、過去1年間の日本の取組について記載しています。また、多くの読者に外交をより深く理解していただけるよう、東日本大震災から10年を迎えた節目の外交活動などいくつかの具体的な案件を「特集」として深堀りしました。外交をより身近に感じていただけるよう、海外で活躍される日本人の声などを伝える「コラム」も随所に盛り込んでいます。 この外交青書を通じ、国際社会でリーダーシップを発揮し、世界の平和と繁栄に寄与していく日本の姿を、内外に広く発信していきます。そして、この外交青書が、国民の皆様の日本外交への理解を深める一助となることを心から期待しています。 外務大臣