第5章 国民と共にある外交 第3節 国民の支持を得て進める外交 1 国民への積極的な情報発信 (1)全般 外交政策を円滑に遂行するに当たっては、国民の理解と支持が必要不可欠であり、政策の具体的内容や政府の役割などについて、迅速で分かりやすい説明を行うことが重要である。このため、外務省は、各種メディア、講演会、刊行物などを活用し、機動的かつ効果的な情報発信に努めている。 (2)国内メディアを通じての情報発信 外務省は、日本の外交政策などに対する国民の理解と支持を得るために、新聞・テレビ・インターネットなどの各種メディアを通じた迅速かつ的確な情報発信に努めている。効果的な情報発信のため、外務大臣及び外務報道官の定例記者会見の場が設定されているほか、必要に応じ、臨時の記者会見を行っている。外務大臣の記者会見は、インターネットメディアを含む多種のメディアに開放されており、記者会見の模様については、記録や動画を外務省ホームページに掲載している。総理大臣や外務大臣の外国訪問に際しては、その内容・成果を速やかに伝えるため、訪問地においてもインターネットも活用した情報発信を行っている。また、個別の国際問題に関し日本の立場を表明する外務大臣談話や外務報道官談話、日々の外交活動などについて情報を提供する外務省報道発表を随時発出している。さらに、外務大臣、外務副大臣などの各種メディアへの出演やインタビューなどを通じて国民に対し外交政策を直接説明している。 茂木外務大臣臨時会見(8月6日、英国・ロンドン) 会見による情報発信 外務大臣記者会見 112回 外務報道官記者会見 40回 合計 152回 (2020年1月1日~12月31日 外務省ホームページ掲載分) 文書による情報発信 外務大臣談話 13件 外務報道官談話 43件 外務省報道発表 1,072件 合計 1,128件 (2020年1月1日~12月31日 外務省調べ) (3)インターネットを通じた情報発信 外務省ホームページ(日本語及び英語版)では総理大臣や外務大臣の外交活動に関する情報を迅速に発信するとともに、領土・主権、歴史認識、安全保障などに関する日本の外交政策や各国情勢に関する最新情報、基礎情報を提供している。 また、日本語ホームページでは、「世界一周何でもレポート」や「キッズ外務省」など、様々なコンテンツを幅広い層の国民に発信している。特に、「キッズ外務省」では、独自のキャラクターなどを用いて外務省の活動を分かりやすく説明する動画やクイズ、ニュースや新聞で取り上げられることの多い用語や国際問題について説明するQ&Aコーナーなどのコンテンツを掲載している。 このほか、各種ソーシャルメディアを通じて様々な情報発信を行っている。2020年は新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の影響により対面での活動が大幅に制限される中、外務大臣の定例記者会見をソーシャルメディアでライブ配信するなど、インターネットを通じた新たな情報発信を行った。 外務省ホームページ:https://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html 外務省公式フェイスブック:https://ja-jp.facebook.com/Mofa.Japan 外務省公式ツイッター:https://twitter.com/MofaJapan_jp キッズ外務省:https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/index.html (4)国民との対話 外務省は、政務三役(外務大臣、外務副大臣、外務大臣政務官)や外務省職員が国民と直接対話を行う「国民と対話する広報」を推進している。 2月に実施した、学生対象の外務省セミナー「学生と語る」では、尾身朝子外務大臣政務官が開会挨拶を行ったほか、参加学生によるグループ討論を見学し、討論結果の報告に対して講評を行った。また、セミナー後の交流会で、多くの参加学生と意見交換を行った。 「小中高生の外務省訪問」、外務省職員などを全国の国際交流団体、大学や高校に派遣して実施する「国際情勢講演会」、「外交講座」、「高校講座」、親子で参加する「こども霞が関見学デー」といった各種事業は、新型コロナの感染拡大に伴い、中止又は延期を余儀なくされたが、9月以降、「高校講座」、「外交講座」、「国際情勢講演会」については、オンライン形式に切り替え、順次実施していった(「外交講座」、「高校講座」では、オンラインならではの利点を活用し、海外の大使館や総領事館で勤務する外務省職員による講演も実施した。)(298ページ コラム参照)。これらの事業を通じて、外交政策や国際情勢についての理解促進や次世代の日本を担う人材育成に取り組んでいる。 国際情勢講演会の様子(11月26日、福島市教育委員会) 外交講座の様子(12月7日、フェリス女学院大学) 高校講座の様子(10月22日、静岡県焼津中央高等学校) 日本のODA政策やその具体的な取組についても、各種シンポジウムや講演会、外務省職員を学校などに派遣する「ODA出前講座」(2019年実績:33件)を通じて、国民に紹介している。 加えて外交専門誌『外交』の発行を通じて、日本を取り巻く国際情勢の現状、外交に関する各界各層の様々な議論を広く国民に紹介している。2020年は、新型コロナで変貌する国際秩序や米大統領選挙の行方など様々な外交課題を主なテーマとして取り上げ、内外の著名な有識者の論文などを数多く掲載した。 また、外務省の組織や外交政策に対する更なる理解を得るため、分かりやすさを念頭に、各種パンフレットを作成した。このほか、外務省では、外務省ホームページなどの御意見・御感想コーナーを通じた広聴活動を行っている。寄せられた意見は、外務省内で共有の上、政策立案などの参考としている。 外交専門誌『外交』 新型コロナウイルス感染症流行下におけるオンライン国内広報 外務省では、高校や大学に職員を派遣して講義を行う「高校講座」や「外交講座」を始めとした様々な広報事業を通じて、幅広い年齢層の方々に日本の外交政策や世界の課題などについて知っていただく機会を提供しています。 新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の拡大により、これまでのような職員を現地に派遣しての講義や学生の皆さんによる外務省訪問の受入れは当面休止していますが、それに代わりウィズ・コロナの時代に即した新たな取組として、2020年秋からオンライン形式で講座や講演会を実施しています。 1.外務本省(東京)と学生を結ぶオンライン講義 初のオンライン「高校講座」は、9月に青森県立八戸北高等学校で実施しました。当日は、東京の外務本省から、講師を務める職員がオンラインでも内容が分かりやすいように写真や図の多い講義資料を使うとともに、聞き取りやすいように通常よりゆっくりはっきり話すことに留意しながら講義を進めました。また、講義が単調になり退屈してしまわないよう、途中でクイズを挟むなどの工夫も凝(こ)らしました。 これに対して、学校側では、三つの色のカラーボードを生徒一人ひとりがあらかじめ用意し、これを使ってクイズに回答しました。こうした学校側の独自のアイデアと工夫もあり、オンラインでも活気に満ちた双方向交流が可能となりました。 八戸北高校での「高校講座」の様子 2.在外公館(世界)と学生を結ぶオンライン講義 外務省職員の半数以上は、世界195か国にある大使館や総領事館などの在外公館で外交官として働いています。海外で活躍する外交官の生の声を聞けるのも、外務省の国内広報事業の魅力といえるでしょう。実際、「高校講座」や「外交講座」では、職員の在外勤務経験を話題に盛り込んでほしいという要望があります。 しかし、講師を現地に派遣するという従来の事業実施方法では、海外で働いている外交官を帰国させて各学校に派遣することは当然できません。どうしても、東京の外務本省で働いている職員から、過去の在外勤務経験について話してもらうことになります。 この点、オンラインであれば、世界中の在外公館とつないで、今まさに外交官として世界を舞台に活躍している職員からタイムリーで臨場感あふれる話を聞くことができます。オンラインによる国内広報事業は、外務省の有する強みを最大限に発揮できる方法の一つといえるでしょう。 外務省国内広報室では10月以降、在外公館で勤務する職員を講師とした講義・講演会を実施しています。インドネシアやモンゴルといった比較的日本から近い国のみならず、ルワンダやブラジルといったアフリカ、中東、中南米、欧州など、世界中の外務省職員がこれらの事業で講師を務めました。 今後は、省内見学事業をバーチャルツアーで行う取組も開始する予定です。 外務省では、新型コロナの流行下においても、従来と同様又はそれ以上に充実した効果的な国内広報事業の実施に引き続き取り組んでいきます。 (5)外交記録公開及び情報公開の促進 外務省は、外交に対する国民の理解と信頼を一層促進するため、外交記録文書の迅速な移管と公開に積極的に取り組むとともに、外交史料利用の利便性向上にも努めている。 外務省では、外交史料館において、戦前の資料4万冊を含む12万点超の歴史資料を所蔵しており、1976年から、自主的な取組として戦後の外交記録を公開している。2010年5月には、「外交記録公開に関する規則」を制定し、①作成から30年以上経過した外交記録を原則公開するとともに、②外務副大臣又は外務大臣政務官が委員長を務め、外部有識者が参加する「外交記録公開推進委員会」を設置することで、外交記録公開の推進力を高め、透明性の向上に努めている。それ以来、2020年末までに移管・公開の手続を完了した外交記録ファイル数は約3万5,000冊に及ぶ。 さらに、外務省は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」に基づいて、日本の安全や他国との信頼関係、対外交渉上の利益、個人情報の保護などに配慮しつつ、情報公開している。2020年には781件の開示請求が寄せられ、4万2,914ページの文書を開示した。