第4章 国際社会で存在感を高める日本 2 新たなルール作り 様々な変化に対応し、時代の要請に即した新たなルール作りが求められる中、日本はそのために必要な国際的取組を主導していく。 日本は、世界で保護主義や内向き志向が強まる中、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してきた。環太平洋パートナーシップ協定からの米国の脱退表明(2017年1月)を受けて、参加する10か国との議論を主導し、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定、2018年12月発効)を実現させた。また、欧州との間では、日・EU経済連携協定(日EU・EPA)を締結(2019年2月発効)し、米国との間でも、2020年1月に日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定が発効した。さらに、2020年11月には、2012年の交渉立ち上げから8年の交渉を経て、日本を含む15か国の間で地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の署名に至った。また、EU離脱後の英国との間では、2021年1月、日EU・EPAに代わる新たな貿易・投資の枠組みを規定する日英包括的経済連携協定(日英EPA)が発効した。TPP11協定、日EU・EPA、日米貿易協定、日英EPA、RCEP協定により、日本を中心として、世界のGDPの約8割をカバーする自由で公正な経済圏のネットワークが形成されることとなる。 ポスト・コロナで重要性が増すデジタル分野では、日本は、日米デジタル貿易協定(2020年1月発効)を始めとして、デジタル貿易に関する世界的なルール作りにおいて主導的役割を果たしている。また、日本が議長を務めたG20大阪サミット(2019年6月)で、「信頼性のある自由なデータ流通」(DFFT:Data Free Flow with Trust)の考え方を共有し、「大阪トラック」を立ち上げた。特に、日本が共同議長国を務めるWTO電子商取引交渉を始め、デジタル経済、特にデータ流通や電子商取引に関する国際的なルール作りを主導している。 さらに、サイバーや宇宙といった新領域や、技術革新の進展によって裾野が広がる経済・技術分野の安全保障といった新たな分野においても、既存の国際法が適用されることを前提としつつ、新たな国際的なルール作りに力を入れている。