第3章 国益と世界全体の利益を増進する経済外交 5 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催に向けた取組 9月、「平成37年に開催される国際博覧会の準備及び運営のために必要な特別措置に関する法律」に基づき、内閣に博覧会推進本部が設置され、大阪・関西万博の開催準備に向け、関係省庁、経済界や自治体が一体となって協力することとなった。 12月1日には、博覧会国際事務局(BIE)総会において、大阪・関西万博の登録申請が承認され、開催国政府として正式に各国・国際機関に対し、同万博への参加招請活動を開始した。また、同月21日には、博覧会推進本部において、大阪・関西万博に向けた政府の基本方針が取りまとめられた。そのほか、プロデューサー選定やロゴマーク決定、基本計画の策定など、国内における準備が進められた(177ページ コラム参照)。 大阪・関西万博が掲げるテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」であり、同万博においては日本の魅力を広く発信するとともに、2030年を目標年とする「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた取組を加速化する重要な機会とすることを目指す。世界中の人に夢や驚きを与え、日本全体を元気にするような万博にするため、引き続きオールジャパンの体制で取り組んでいく。 2025年大阪・関西万博 ロゴマークに込められた想(おも)い 2025年日本国際博覧会(以下「大阪・関西万博」という。)のロゴマークが8月25日に決定されました。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の公募に対して5,894作品の応募があり、その中から選ばれたロゴの制作者のTEAM INARI(チーム イナリ。代表者:シマダ タモツ氏)に、ロゴに込めた想いや大阪・関西万博への期待などをお聞きしました。 ──大阪・関西万博のロゴマークは、海外メディアでも取り上げられるなど、そのユニークさが話題となっています。どのように着想されたのでしょうか。 シマダ氏:大阪・関西万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマが掲げられ、そのキーワードとして「さまざまな個(一人ひとり)が輝く」、「個と個が繋(つな)がり、共創が生まれる」などが提示されていました。そこで、シンプルな円を一つの生命として見つめ、そこに様々な個性を与えた上で、もう一度繫ぎ合わせるという発想から制作がスタートしました。 ──ロゴマークに込めた想(おも)いを教えていただけますか。 シマダ氏:このロゴマークの制作に際しては、生命の活力を支える「CELL(細胞)」というコンセプトを基にしました。目玉のように見える部分は、実は1970年の大阪万博ロゴマークの桜の花びらから連想されており、フォルムや数が揃(そろ)えられています。つまり、細胞の中の「DNA(遺伝子)」として、1970年大阪万博が連続していることを暗喩(あんゆ)したもので、大阪という都市の歴史や文化を未来へ繋ぐイベントであってほしいとの願いを込めています。 ──大阪・関西万博のテーマとして、国連の定めたSDGs(持続可能な開発目標)が重視されています。ロゴマークは、SDGsと関連がありますか。 シマダ氏:SDGsの掲げる「誰一人取り残さない世界」という視点にはとても共感します。というのも、このロゴマークの誕生も、一人ひとりの個性を活(い)き活きと輝かせるというメッセージが出発点だったからです。たとえ違う方向を見つめていても、それでもきっと手を繋いでいける。認め合って、尊重していける。このロゴマークのデザインには、そんな想いが確かに込められています。 ──4年後の大阪・関西万博に向けて、ロゴマークは今後、広く世界の人々の目に触れると期待されますが、どのように活躍して欲しいと願われますか。 シマダ氏:このロゴマークは、見る人によっては異質に感じるかもしれません。立ち止まらず、留(とど)まらず、ずっと動き続けようとしている姿は、どこか不安定にも見えるかもしれません。けれどそれが「生きている」ということなのだと思います。この胎動が、いつか躍動となれるように。2025年の大阪・関西万博が、そのステージとなるように、世界中の人々に応援し、期待してもらえればと願います。 ──関西では万博記念公園や太陽の塔の存在もあり、1970年の大阪万博は今も身近に感じられていますが、大阪の御出身として今回の万博に何を期待しますか。 シマダ氏:TEAM INARIのメンバーたちは、みんな大阪を拠点として活動するクリエイターです。そのうち2人は1970年大阪万博にも触れた世代で、あのときに感じた世界という巨大なスケールの熱気は、今も記憶に焼き付いています。そして携帯電話やテレビ電話、電気自動車、リニアモーターカーなど、あのときは夢だった技術やアイデアが、いつの間にか現実になっていることに驚かされます。あの感動を、今この時代にふさわしい形で2025年の大阪・関西万博はまた見せてくれることでしょう。「きっとかなう未来」という物語を、この日本で、しかも大阪で、もう一度世界中の人々と共有できる。その瞬間を、今から心待ちにしています。 2025年大阪・関西万博 ロゴマーク 1970年大阪万博 ロゴマーク(写真提供:大阪府) 太陽の塔(写真提供:大阪府) ロゴマーク最優秀作品発表記者会見に臨むTEAM INARI(写真提供:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会)