第3章 国益と世界全体の利益を増進する経済外交 第2節 国際会議における議論の主導 1 G7・G20 日本は、世界の主要国が集まるG7・G20における積極的な取組を通じ、国際秩序の維持・強化に取り組んでいる。 (1)G7 新型コロナの感染拡大を受け、3月16日に議長国米国主催で急遽(きゅうきょ)開催されたG7首脳テレビ会議は、G7首脳間で行われた初のテレビ会議となった。会議では、新型コロナの世界経済への影響を食い止めるためにG7があらゆる政策的手段を用いることや、治療法及びワクチンの迅速な開発などで協調していくことで一致し、G7首脳声明を発出した。安倍総理大臣は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会について、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証(あかし)として、完全な形で実施したいと述べ、他の首脳の支持を得た。 3月25日にテレビ会議形式で開催されたG7外相会合では、新型コロナ対応について外相間でも連携を確認したほか、北朝鮮、中国、イランを含む地域情勢についても活発な議論を行った。 4月16日に開催されたG7首脳テレビ会議では、ワクチン・治療薬の開発、開発途上国支援の重要性などについて一致した。安倍総理大臣は、治療薬の開発及び普及、医療体制・保健システムの脆弱(ぜいじゃく)な国への支援、危機に関する支援や情報の国際的な共有、世界全体の感染症予防体制強化や危機に強い経済の構築などについて発言した。 G7首脳テレビ会議(4月16日、東京 写真提供:内閣広報室) (2)G20 3月26日に議長国サウジアラビアが主催したG20首脳テレビ会議においては、公衆衛生及び財政措置の協調、貿易やサプライチェーンの混乱の最小化などを決意することを明記した首脳声明を採択した。安倍総理大臣は、リードスピーカーとして、治療薬などの開発を加速させるとともに、G20として強大な経済財政政策を実施すべきと呼びかけ、各国の支持を得た。首脳声明では、人類の力強さの証として、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を完全な形で主催するという日本の決意を称賛することが記載された。 9月3日に開催されたG20臨時外相テレビ会議では、新型コロナ対応に係る知見・経験を共有し、国際的な人の移動の再開に向けた国際協力の在り方につき、議論を行った。11月21日及び22日にテレビ会議形式で開催されたG20リヤド・サミットでは、「感染症との戦い及び成長と雇用の回復」及び「包括的、持続可能で強靱(きょうじん)な未来の構築」を議題として議論が行われ、その総括として、G20リヤド首脳宣言が発出された。菅総理大臣は、G20として、新型コロナへの対応、世界経済の回復、国際的な人の往来の再開、さらにはポスト・コロナの国際秩序作りを、国際社会において主導していくとのメッセージを明確に発信すべきと述べ、首脳間の議論をリードした。保健分野については、ワクチン・治療・診断への公平なアクセスの確保のための国際的枠組みへの貢献や、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の重要性が確認された。貿易については、多角的貿易体制はかつてなく重要であること、WTO改革への政治的な支持、サプライチェーンの持続可能性及び強靱性を高める必要性などを確認した。デジタル化については、デジタル技術が新型コロナ対応において鍵となる役割を果たすとした上で、「信頼性のある自由なデータ流通」(DFFT)の重要性を認識した。さらに、人の移動を促進する具体的な方法を探求することで一致した。気候変動への対応や地球環境の保全、資源・エネルギーの持続可能な利用といった課題に関しては、パリ協定を含む国際的な取組に言及した。また、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」の作業を前に進めることやSDGsの実施に貢献していくことも確認された。 G20リヤド・サミット(11月22日、東京 写真提供:内閣広報室) また、菅総理大臣は、人類がウイルスに打ち勝った証として2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意を強調し、その結果、首脳宣言には、人類の力強さとウイルスに打ち勝つ世界の結束の証として、2021年、同競技大会を主催するという日本の決意を称賛することが明記された。