第2章 地域別に見た外交 2 欧州地域情勢 (1)欧州連合(EU) EUは、総人口約4億4,600万人を擁し、27加盟国から成る政治・経済統合体であり、日本と基本的価値・原則を共有し、日本が地球規模の諸課題に取り組む上で重要なパートナーである。 〈EUの動き〉 2019年12月にミシェル欧州理事会議長及びフォン・デア・ライエン欧州委員長が就任し、EUは新体制で始動した。EU新指導部にとって、新型コロナ対応及び英国のEU離脱が最優先の課題となった。2020年は、新型コロナの世界的流行という未曽有の危機により欧州経済が大きな打撃を受けた。3月に新型コロナがイタリアを始めとして欧州で急速に感染拡大し、EUは初動の遅さを指摘され、欧州全体の結束が問われることとなった。加盟国が独自に国境閉鎖を行ったことで域内国境が復活し、EUの礎となる移動の自由が阻害され、EU域内市場に混乱と打撃をもたらした。 EUは、3月中旬から経済支援策を始めとする各種施策、対策を打ち出した。4月には、新型コロナ対応の国際協力として域外国支援や国際的な支援イベントの主導を発表するとともに、欧州の経済復興に向けた工程表を発表し、「復興基金」創設に関する議論が開始された。5月、欧州委員会は、「次世代のEU」(いわゆる復興基金)(7,500億ユーロ)及び次期「多年度財政枠組」(2021-2027年EU予算)(約1兆1,000億ユーロ)からなる総額1兆8,500億ユーロ規模の欧州復興計画を提案した。7月21日、欧州理事会は、復興基金(7,500億ユーロ)及び次期EU予算(1兆740億ユーロ)の総額1兆8,240億ユーロのパッケージに合意し、欧州の結束を示した。欧州復興計画パッケージについては、11月、欧州議会との政治合意が得られた一方で、EUの基本理念である「法の支配」の条件化をめぐり、ハンガリーとポーランドが承認を拒否する姿勢を示し、議論と交渉が継続されたが、12月11日の欧州理事会で妥協案の合意に至り、同16日に欧州議会、同17日にEU理事会で復興基金及び次期予算が承認された。 また、EUは、加盟国による域内国境復活の動きを受け、国境管理は加盟国権限であるが、シェンゲン域内での連携を強調し、域外との国境措置の強化についてのガイドラインを3月に発表した。加盟国は同ガイドラインを踏まえる形で、域外からの入域制限を開始した。3月に開始された入域制限は6月末まで延長され、7月から段階的かつ協調的に解除すべきとの勧告に従って、7月から、日本を含む一部の国を対象として、入域制限措置が緩和された。 経済面では、2020年のユーロ圏の経済は、上半期に深刻なショックを受け、第3四半期には封じ込め措置が徐々に解除されたことにより力強く回復したものの、新型コロナの再流行が経済活動の停滞をもたらした。 〈英国のEU離脱〉 1月末に英国はEUを離脱し、2月からEU離脱後の英国に引き続きEU法が適用される移行期間が開始され、3月からEU・英国間の貿易協定を含む将来関係交渉が開始された。英国やEU加盟国で経済活動を展開する日系企業への英国のEU離脱に伴う悪影響が最小化されるよう、日本政府としてEU及び英国双方に対し移行期間内の交渉妥結を働きかけてきたが、同交渉は、移行期間期限となる2020年末直前の12月24日に妥結に至り、EU・英国双方の手続を経て、2021年1月1日からEU・英国間の貿易及び協力に関する協定の暫定適用が開始された。英国議会については2020年内に手続を完了しており、2021年前半に欧州議会の同意を得て発効見込みとされている。 〈日・EU関係〉 日本とEUは、2019年2月に発効した日EU・EPA及び暫定的に適用が開始されたSPAの下で、協力を強化している。新型コロナの影響により対面での会合開催が困難となったが、5月の日・EU首脳テレビ会議では、復興に向けた経済対策を含む新型コロナ対策を中心に意見交換を行い、基本原則や共通の価値に基づく協調を促進し、北朝鮮、東シナ海や南シナ海などの地域的課題の解決に貢献するために連携を強化することで一致した。菅総理大臣は、就任後、9月にミシェル欧州理事会議長と、10月にフォン・デア・ライエン欧州委員長と日・EU首脳電話会談を行った。また、茂木外務大臣とボレルEU外務・安全保障政策上級代表の間で、11月に日・EU外相電話会談が行われ、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けて日・EU間の協力が重要であることで一致した。さらに、2021年1月のEU外務理事会に茂木外務大臣が日本の外務大臣として初めてオンライン形式で出席し、「自由で開かれたインド太平洋」に関する日本の考えと取組を説明した。これに対し、多くのEU加盟国がインド太平洋におけるルールに基づく国際秩序の重要性について理解と支持を表明し、日・EUは連結性、海洋安全保障などの分野で協力を更に進めることで一致した。 経済面では、2019年2月に発効した日EU・EPAを法的基盤とし、日・EU間の経済的なつながりは一層強いものとなっている。同協定の着実な運用のため、同協定に基づく合同委員会及び12分野別の専門委員会や作業部会において、同協定の運用状況の確認や、日・EU間の貿易を一層促進するための今後の取組などに関する議論を行っている。2020年には、新型コロナが拡大する中、テレビ会議を活用し、同協定の下に設置されている専門委員会や作業部会について、それぞれ第2回会合を順次開催した。各会合では、日EU・EPAに規定される各項目の実施状況や日・EU双方の関心事項を確認するとともに、今後の日・EU間の取組や協力体制について議論を行った。今後も、本協定の着実な実施の確保やその他の日・EU間の対話枠組みを通じ、日・EU経済関係を更に発展させていくことを目指す。 さらに、6月22日、日・EU間で「民間航空の安全に関する日本国と欧州連合との間の協定」(日・EU航空安全協定)の署名が行われた。この協定は、EUとの間で、航空機などの民間航空製品の輸出入に際して行われる検査などの重複を取り除くことにより、航空産業の負担を軽減し、民間航空製品の自由な流通を促進するものである。 (2)英国 英国では3月の新型コロナ拡大時にいわゆるロックダウン措置が導入された。その後、感染は落ち着いていたが、夏以降再拡大局面に入り、12月には変異株も発生した。新型コロナ発生当初、ジョンソン政権の支持率は一時的に上昇したが、その後の英国における死者数の増加や政権の対策への批判の高まりなどを受け、支持率は低下した。一方、野党労働党では、2019年末の総選挙での敗北を受けてコービン党首が辞任し、4月にスターマー新党首が就任した。中道寄りとされるスターマー党首は、ジョンソン政権の新型コロナ対応を厳しく批判し、労働党の支持率は保守党の支持率とほぼ拮抗(きっこう)するまでに上昇した。 英国のEU離脱は、2016年6月のEU離脱を問う国民投票以来、英国・EU関係上の最大の懸案の一つであったが、英国・EU間の離脱協定に関する双方の議会承認を経て、英国は2020年1月31日にEU離脱を実現した。EU離脱後のEU・英国間の貿易及び協力に関する協定については、3月から交渉が開始され、12月24日に交渉妥結、英国では同30日に同協定の実施法案が上下両院を通過した。同協定は2021年1月から暫定適用され、12月末の移行期間終了時に英国・EU間の関税が設定される事態は回避された。 日本との関係では、英国はインド太平洋地域への関与を強化しており、新型コロナの感染拡大下においても、首脳・外相を始め日英双方の様々なレベルで対話・交流が継続され、二国間関係が強化されている。安倍総理大臣は3月及び9月にジョンソン首相と電話会談を実施し、新型コロナ対策などについて意見交換を実施した。菅総理大臣も9月、ジョンソン首相と電話会談を行い、ジョンソン首相から菅総理大臣の就任に対する祝意が述べられるとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた安全保障分野の協力強化を含め、二国間関係の更なる進展に向けて協力していくことを確認したほか、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け協力していくことで一致した。 茂木外務大臣は、2月に来日したラーブ外務・英連邦相と第8回日英外相戦略対話を実施し、英国のEU離脱後を踏まえた二国間の協力強化を確認した。8月には、新型コロナ感染拡大後初の海外出張として英国を訪問し、ラーブ外務・英連邦相と外相会談を行うとともに、トラス国際貿易相との間で日英包括的経済連携協定の交渉を行った。同協定は、9月の大筋合意、10月の署名を経て、2021年1月1日に発効した(151ページ 特集参照)。 日英外相会談(8月5日、英国・ロンドン) 文化面では、ラグビーワールドカップ2019と2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の二つの大型スポーツ行事を橋渡しする「日英文化季間」の下で、新型コロナの影響を踏まえつつ、日英両国で様々な関連行事が実施された(104ページ コラム参照)。 日英文化季間 日本と英国は、1600年に英国人航海士ウィリアム・アダムス(三浦按針(あんじん))が現在の大分県にオランダ船で漂着して以来、400年以上にわたる交流の歴史があります。 日英関係は、政治、経済など様々な分野で重要ですが、国民同士の絆(きずな)を強めるという意味で欠かせないものが文化交流です。2017年8月、当時の安倍総理大臣とメイ首相は、ラグビー・ワールドカップ2019と2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を橋渡しする形で「日英文化季間」を開催することで一致しました。英国においては、「日本文化季間」として、文化・芸術分野の交流だけでなく、医療・科学技術・産業分野などにおけるイノベーションや先端技術まで、今日の日本が有する多面的な魅力を伝え、また、地域や草の根で行われてきた手作りの活動を更に促進し、長期的に両国民間の絆を強めることを目指し、様々なイベントが行われてきました。 大型の展示事業として、2019年5月から8月に大英博物館で開催された「Manga」展には約18万人が訪れ、同年の大英博物館の企画展として一日当たりの最多来場者数を記録しました。2020年の展示事業は新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の影響を大きく受けたものの、そうした中、2月から行われたロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート(V&A)博物館の「着物展」は、新型コロナの影響による一時中断中もオンライン展示やオンラインセミナーが行われ、再開以降10月の終了まで連日予約枠が埋まるほどの人気を集めました。 2019年のラグビー・ワールドカップでは、多くの英国人が日本を訪れましたが、それに引き続いて、同年11月から2020年8月までロンドンのワールド・ラグビー・ミュージアムでは「ラグビーとオリンピックの特別展」が行われ、日英の交流に寄与しました。また、今後に続く取組として、日本人民間団体から英国全土に日英友好の象徴として5,000本以上の桜を寄贈するプロジェクトが始動しています。 9月にオンラインで開催された「ジャパン祭りプレゼンツ」では、大阪府立登美丘高校ダンス部が、新型コロナの流行下にあっても新たなアイデアやコミュニケーションツールを駆使して目標に向かい奮闘する日本の高校生の姿を、新作ダンスを通じて披露したほか、日英両国から約50の団体などが参加し、日本の文化や事情を多面的に紹介するオンラインでの新たな取組として成功しました。また、ジャパン・ハウス・ロンドンにおける日英関係や両国の新型コロナ対応についてのセミナーや、中高生のための日本語スピーチ・コンテストもオンラインで行われました。日本に関連するオンライン・イベントが、大学や研究機関を含む多くの団体によって遠隔地からの参加も得て実施されており、自宅にいながらも交流の機会が得られるようになっています。 英国における「日本文化季間」は、新型コロナの流行下における多くのイベントの延期を受けて、2021年末まで延長されています。2020年、予期しなかった新型コロナの感染拡大のため様々なイベントが延期を余儀なくされたことは残念ですが、このようにオンラインでのイベント開催を中心に様々な交流が行われています。新型コロナの流行下にあっても、日英両国の国民の熱意により、こうした交流が継続されていることに、400年以上続く日英両国間の絆の強さが感じられます。 「ジャパン祭りプレゼンツ」登美丘高校ダンス部による発表(9月、オンライン開催 写真提供:登美丘高校ダンス部) 「ジャパン祭りプレゼンツ」和食デモンストレーションの様子(9月、オンライン開催 写真提供:Japan Matsuri) (3)フランス 2017年5月の就任以降、マクロン大統領は、労働法改正などの国内改革を推進し、競争力強化や財政健全化に努めるなど一定の成果を出してきた。一方、2018年11月には燃料税引上げに関する政府決定をめぐり「黄色いベスト運動」と呼ばれる大規模な抗議デモが発生した。こうした抗議の声を受け、マクロン大統領は国民の声を直接聴取する「国民討論」を実施し、マクロン大統領の支持率は一時回復したものの、2019年12月には年金制度改革案をめぐり大規模なストライキが発生し支持率は再度低下した。このような状況の中、フランス国内において2月及び3月に新型コロナが拡大、マクロン大統領はテレビ演説で規制措置について説明しつつ、国民の団結を呼びかけた。こうした対応を受け、マクロン大統領の支持率は再度上昇した。7月、マクロン大統領は新型コロナ対策の規制解除を担当していたカステックス氏を新首相に指名した。10月にはイスラム教預言者の風刺画などをめぐりフランス国内でテロが発生、テロ対策や過激主義対策が喫緊の課題となっている。外政面では、引き続き多国間主義を重視する姿勢を掲げているほか、新型コロナ危機に対する対応において、マクロン大統領が欧州の結束を呼びかけ、ドイツと共にEU復興基金の設立を主導し指導力を発揮した。 日本との関係では、3月に安倍総理大臣はマクロン大統領と電話会談を実施し、新型コロナ対応において協力していくことを確認した。5月及び6月、茂木外務大臣はル・ドリアン欧州・外相と電話会談を行い、新型コロナ対応や国際場裡(じょうり)における協力に加え、インド太平洋における日仏協力を進めていくことを確認した。10月、茂木外務大臣がフランスを訪問し、ル・ドリアン欧州・外相と外相会談を実施、新型コロナ対応やインド太平洋における二国間協力の推進、東シナ海・南シナ海や北朝鮮などの地域情勢について引き続き緊密に連携していくことを確認した。また、同月、菅総理大臣はマクロン大統領と電話会談を行い、マクロン大統領から菅総理大臣の就任に対する祝意が述べられるとともに、共に「インド太平洋国家」として、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力強化を含め、二国間関係の更なる進展に向けて協力していくことを確認したほか、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け協力していくことで一致した。 日仏外相会談(10月1日、フランス・パリ) (4)ドイツ 新型コロナの感染拡大前には、難民政策などに対する不満、度重なる州議会選挙での敗北や、メルケル首相が後継者として指名したキリスト教民主同盟(CDU)党首の辞任表明などをめぐり、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)による大連立政権の支持率は低下傾向にあった。しかし、新型コロナの感染拡大を受けて、メルケル首相が比較的早期に必要な措置をとったことで、感染者や死者数が欧州の周辺国に比べて低水準に抑えられたほか、15年にわたる同首相の在任期間で初めての国民向けのテレビ演説を行い、新型コロナ危機を「戦後最大の試練」であるとして国民の団結を呼びかけるなどリーダーシップを示したことで、同首相及びCDUの支持率は大幅に上昇した。 7月1日、ドイツは、EU議長国に就任し、フランスと協調して欧州復興計画の成立に寄与するなど、新型コロナの感染拡大への対応において欧州を牽引(けんいん)する役割を果たした。 ドイツ政府は9月、「明日の世界秩序の形成はインド太平洋において決せられる」とし、同地域における航行の自由、法の支配、連結性といった理念の重要性を強調する「インド太平洋ガイドライン」を閣議決定し、同地域への関与を強化する意向を表明した。 日本との関係では、新型コロナの感染拡大によって国際的な人の往来が制限される中にあっても、テレビ会談や電話会談の形で、首脳会談を2度、外相会談を2度実施するなど、ハイレベルな交流を継続した。7月に行われた日独首脳テレビ会談では、新型コロナ対策に関する連携について意見交換を行ったほか、翌年の日独交流160周年という節目に向けて、日独関係の再活性化に向けて協力していくことで一致した。また、9月に行われた日独首脳電話会談では、メルケル首相から菅総理大臣の就任に対する祝意が述べられ、両首脳の間で「自由で開かれたインド太平洋」の実現などに向けて緊密に連携していくことを確認した。3月の電話会談に続いて10月に実施された日独外相テレビ会談では、茂木外務大臣からドイツが策定した「インド太平洋ガイドライン」を高く評価し、両大臣は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた日独連携を強化していくことで一致した。 日独外相テレビ会談(10月1日、フランス) (5)イタリア 2019年8月に連立を組み替えて第2次内閣が成立したが、コンテ首相は異なる政治的意見を有する連立与党間のバランスを取ることが求められている。また、与党「五つ星運動」は地方選挙での惨敗や党内部の問題などを受け、ディ・マイオ外務・国際協力相が党代表を辞任した。同党が推進した議員定数削減の憲法改正案は、9月の国民投票で賛成多数で可決されたものの、党支持率は低下した。2021年1月、「欧州安定メカニズム」(ESM)の保健分野での利用や欧州復興基金運用の在り方をめぐる連立与党間の対立から、連立与党の一角である「イタリア・ヴィーヴァ」が政権を離脱した。これを受け上下両院でコンテ政権に対する信任投票が行われ、いずれも可決された。一方、上院で絶対多数の支持を確保できなかった結果、コンテ首相は辞意を表明し、マッタレッラ大統領が緊急事態に対処するため非政党内閣に信任を与えるよう全政党に呼びかけ、2021年2月、ドラギ前欧州中央銀行総裁が首相に就任した。 イタリアで欧州最初の感染拡大が起きた新型コロナについては、1月末に中国人旅行客2人が初めての陽性者と確認され、政府は1月30日に緊急事態宣言を発出した。2月末には北部で感染が拡大し、3月に全土でロックダウンを実施した。保健衛生上の危機におけるリーダーシップが評価を受け、コンテ首相の支持率は60%台を維持し、3月以降の各種政令により、新型コロナで影響を受けたセクターを中心に大規模な経済対策を発表した。しかし、11月以降の第2波では制限措置により経済的不利益を被った国民の支持が離れ、コンテ政権の支持率は低下した。 日本との関係では、3月、茂木外務大臣は、ディ・マイオ外務・国際協力相と電話会談を実施し、新型コロナに関して両国が実施している取組をそれぞれ説明するとともに、G7外相会合を含む国際場裡においても新型コロナ対策について議論・協力していくことを確認した。10月には菅総理大臣がコンテ首相と電話会談を行い、新型コロナへの対応など国際社会が直面する諸課題について2021年イタリアが議長国を努めるG20などで緊密に連携していくことや、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携していくことで一致した。 (6)スペイン 1月、サンチェス首相の第二期政権が発足し、民主化後の国政における初の連立政権となった。3月初旬からのスペインでの新型コロナの感染拡大を受けて警戒事態宣言を発令した。少数連立与党の政府は、その後の警戒事態宣言の延長や、各種経済・社会的救済措置の国会での承認に各党と協力して対応しており、新型コロナの感染拡大以後も、一定の支持率を維持している。 日本との関係では、5月、茂木外務大臣とゴンサレス外務・EU・協力相の間で外相電話会談、6月には、安倍総理大臣とサンチェス首相の間で首脳電話会談が行われ、新型コロナ対策に関して両国が引き続き協力していくこと、また、交流を再開できる状況になった際には、両国の経済関係の一層の強化、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力や人的交流の拡大を含め、両国の戦略的パートナーシップを更に深化させ、二国間関係の一層の発展に向けて協力していくことで一致した。 日・チェコ交流100周年/日・スロバキア交流100周年 2020年、日本とチェコ及びスロバキアは、交流100周年を迎えました。 遡ること100年以上前の1918年、第一次世界大戦の終焉(しゅうえん)とともにオーストリア=ハンガリー二重帝国が解体され、その支配下にあったチェコ及びスロバキアは共同国家を形成し、チェコスロバキアが建国されました。翌1919年の10月、同国のベネシュ外相は、日本の内田外務大臣宛てに書簡を発出し、日本との外交関係を開設するため、初代駐日特命全権公使派遣について日本の同意を要請しました。1920年1月、日本は受入れを決定し、外交関係が開設されました。 チェコスロバキアはその後激動の歴史を経て、1989年のビロード革命で民主化し、1993年にチェコとスロバキアは平和裡(り)に分離・独立を果たし、日本はそれぞれと改めて外交関係を開設しています。 幾多もの難局を乗り越えた両国と迎えた交流100周年ですが、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の世界的な拡大により、期待されていた要人往来が不可能になり、多くの文化行事が中止を余儀なくされるなど、残念ながら両国との周年祝賀の機会は著しく制約を受けました。そのような中でも関係者は、感染状況を見極め、対策を行いながら、できる限り記念事業を実施してきました。 チェコでは、9月、大蔵流茂山千五郎家門下のチェコ人狂言団体「なごみ狂言会」(2000年発足以来、800回以上公演)による公演をチェコ議会上院と日本国大使館で共催しました。厳しい感染状況の中、上院の強い支援もあり、少人数を招待した屋外での公演とそのライブストリーミングを実現し、ヴィストルチル上院議長やペトシーチェク外相などチェコ議会・政府の代表や叙勲受章者などが鑑賞したほか、オンラインでは視聴者が5,000人にも上り、両国の友好関係を強く印象付ける機会となりました。また、特設ウェブサイトでは、写真コンテストや、長く日本との関係発展に多大な貢献をされた方々へのインタビューなど、自宅から周年を楽しめる企画も実施しました。 スロバキアでは、友好関係が今後も長く続くことを願い、多くの関係者の協力を得ながら、日本を象徴する桜をスロバキア各地に植樹する事業を行いました。最終的には、現地での新型コロナの状況などを勘案しながら、スロバキア各地に約450本の桜が植樹されました。その中でも、10月、スロバキア中部のバンスカー・ビストリツァ県にあるスロバキア民族蜂起(SNP)博物館において開催された記念式典には、コルチョク外務・欧州問題相が出席し、日・スロバキア両国の友好関係を一層促進し、相互交流を活性化させる重要な機会となりました。 新型コロナの影響を大きく受けた周年となりましたが、困難な状況の中でも両国が日本と基本的価値を共有する重要なパートナーであることを強く認識することができた1年でした。長い友好関係が更に発展するよう、今回の周年を契機に、これからも様々な分野において交流を深めていきます。 両国の100周年記念ロゴマーク ペルグレル・チェコスロバキア初代駐日特命全権公使の派遣を承認する当時の公電(外交史料館所蔵) チェコ上院における狂言公演 中川駐スロバキア日本国大使とコルチョク同国外相の共同植樹