令和3年版外交青書(外交青書2021)巻頭言 「過去と自然」は変えることはできないが、「未来と私たちの社会」は自分たちの力で変えることができる。そうした思いで、2020年も「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を全力で推進しました。 2020年は何といっても新型コロナ対策が最大の課題になりました。外務省としても、新型コロナの世界的拡大の状況を分析しつつ、感染症危険情報を始めとする関連情報のきめ細やかな発出や水際対策の強化、さらには中国・武漢からの帰国オペレーションに始まり、海外からの出国・帰国が困難となっていた在外邦人への支援に全力で取り組みました。また、対面での外交が困難な状況になる中でも、私自身、各国の外相とテレビ会議、電話会談を112回行うとともに、8月には外国訪問を再開し、対面とリモートの双方で積極的に外交活動を展開しました。 今、国際社会は三つの大きな変化・課題に直面しています。第一に、新型コロナの世界的拡大がもたらす危機、そして、「人間の安全保障」への挑戦という厳しい状況をいかに乗り越えるか。第二に、保護主義や一方的な現状変更の試みなど、これまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的価値や国際秩序に対する挑戦。そして第三に、グローバル化、デジタル化の進展、気候変動といった国際社会が直面する共通の課題や、宇宙・サイバーといった新領域、経済安全保障など新たな課題の顕在化です。このような時代を画する変化の中にあって、日本は、ポスト・コロナの世界を見据え、多国間主義を尊重し、経済面でも、自由で公正な秩序、ルールの構築に向け、より一層主導的な役割を果たしていきます。 令和3年版外交青書(外交青書2021)では、従来の構成を大幅に見直しました。まず、喫緊の課題である新型コロナへの対応を巻頭特集として大きく取り上げました。第1章の「2020年の国際情勢と日本外交の展望」では、2020年に大きな注目を集めた米国と中国を始めとする国際的な動きを新たに記載しました。続く第2章「地域別に見た外交」では、新たに第1節で、日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を地域横断的に紹介しています。また、第3章として、「国益と世界全体の利益を増進する経済外交」を新たに設け、TPP11以来、日本が主導してきた自由でハイレベルな経済圏の拡大や、デジタル分野を含めた国際的なルール作りにおける取組などを記載しました。これまで第3章で扱ってきた安全保障やODAなどは、新たに第4章「国際社会で存在感を高める日本」の中に記述し、最後は第5章「国民と共にある外交」で邦人保護などについて記載しました。 この外交青書が、ポスト・コロナの国際社会に向けてリーダーシップを発揮し、世界の平和と安定にこれまで以上に寄与していく日本の姿を、内外に広く発信する一助となることを心から期待しています。 外務大臣