第4章 国民と共にある外交 第3節 国民の支持を得て進める外交 1 国民への積極的な情報発信 (1)全般 外交政策を円滑に遂行するに当たっては、国民の理解と支持が必要不可欠であり、政策の具体的内容や政府の役割などについて、迅速で分かりやすい説明を行うことが重要である。このため、外務省は、各種メディア、講演会、刊行物などを活用し、機動的かつ効果的な情報発信に努めている。 (2)国内メディアを通じての情報発信 外務省は、日本の外交政策などに対する国民の理解と支持を得るために、新聞・テレビ・インターネットなどの各種メディアを通じた迅速かつ的確な情報発信に努めている。効果的な情報発信のため、外務大臣及び外務報道官の定例記者会見の場が設定されているほか、必要に応じ、臨時の記者会見を行っている。外務大臣の記者会見は、インターネットメディアを含む多種のメディアに開放されており、記者会見の模様については、記録や動画を外務省ホームページに掲載している。総理大臣や外務大臣の外国訪問及び地方訪問に際しては、その内容・成果を速やかに伝えるため、訪問地においても情報発信を行っている。また、個別の国際問題に関し日本の立場を表明する外務大臣談話や外務報道官談話、日々の外交活動などについて情報を提供する外務省報道発表を随時発出している。さらに、外務大臣、外務副大臣などの各種メディアへの出演やインタビューなどを通じて国民に対し外交政策を直接説明している。なお、2019年に日本で開催されたG20大阪サミット、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)など、大型の国際会議の際は、国際メディアセンター(IMC)を設置し、現地での国内外のメディア関係者の取材活動を支援した。 定例記者会見の様子(東京・外務省) 会見による情報発信 外務大臣記者会見 111回 外務報道官記者会見 30回 合計 141回 (2019年1月1日~12月31日 外務省ホームページ掲載分) 文書による情報発信 外務大臣談話 22件 外務報道官談話 64件 外務省報道発表 1,344件 合計 1,430件 (2019年1月1日~12月31日 外務省調べ) (3)インターネットを通じた情報発信 外務省ホームページ(日本語及び英語版)では総理大臣や外務大臣の外交活動に関する情報を迅速に発信するとともに、領土保全、歴史認識、安全保障などに関する日本の外交政策や各国情勢に関する最新情報、基礎情報を提供している。2019年はG20大阪サミットやTICAD7を始めとした様々な外交行事についての情報を発信した。 また、日本語ホームページでは、「世界一周何でもレポート」や「キッズ外務省」など、様々なコンテンツを幅広い層の国民に発信している。 このほか、各種ソーシャルメディアを通じて様々な情報発信を行っている。 外務省ホームページ:https://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html 外務省公式フェイスブック:https://ja-jp.facebook.com/Mofa.Japan 「キッズ外務省」:https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/index.html (4)国民との対話 外務省は、政務三役(外務大臣、外務副大臣、外務大臣政務官)や外務省職員が国民と直接対話を行う「国民と対話する広報」を推進している。 その一環として各省庁の政務三役が地方に赴いて地元の方々と車座になって話し合う「車座ふるさとトーク」を、外務省は4月に高知県須崎市で、5月に島根県浜田市で開催し、それぞれ山田賢司外務大臣政務官、鈴木憲和外務大臣政務官が出席して外務省の施策を説明するとともに、参加者と意見交換を実施した。 また、外務省職員などを全国の国際交流団体、大学や高校に派遣して実施する「国際情勢講演会」、「外交講座」、「高校講座」といった各種講演会をそれぞれ年齢層に応じた内容で実施しているほか、大学生を対象とした「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」、大学生と若手外務省職員との意見交換の場である「学生と語る」、「小中高生の外務省訪問」、親子で参加する「こども霞が関見学デー」などの事業を通じて、外交政策や国際情勢についての理解促進や次世代の日本を担う人材育成に取り組んでいる。特に、2019年の外務省「こども霞が関見学デー」では、阿部俊子外務副大臣による「こども記者会見」を実施し、小中学生からの外交に関する様々な質問に答えた。 小中高生の外務省訪問の様子:静岡県立富士高等学校の皆さん (10月23日、東京、外務省) 国際情勢講演会の様子 (11月6日、京都市、京都新聞文化ホール) 国際問題プレゼンテーション・コンテスト (10月5日、東京、日本橋社会教育会館) 各種講演事業と小中高生による外務省訪問の実施件数 国際情勢講演会 9件 外交講座 39件 高校講座 95件 小中高生の外務省訪問 115件 (2019年1月1日~12月31日) 日本のODA政策やその具体的な取組についても、各種シンポジウムや講演会、外務省職員を学校などに派遣する「ODA出前講座」(2019年実績:33件)を通じて、国民に紹介している。 加えて外交専門誌『外交』の発行を通じて、日本を取り巻く国際情勢の現状、外交に関する各界各層の様々な議論を広く国民に紹介している。2019年は、G20大阪サミットやTICAD7のほか、米中関係や北東アジア情勢などの様々な外交課題を主なテーマとして取り上げ、内外の著名な有識者の論文などを数多く掲載した。 外交専門誌『外交』 また、外務省の組織や外交政策に対する更なる理解を得るため、分かりやすさを念頭に、各種パンフレットを作成した。このほか、外務省では、外務省ホームページ、首相官邸ホームページ及び電子政府の総合窓口(e-Gov)の御意見・御感想コーナーを通じた広聴活動を行っている。寄せられた意見は、外務省内で共有の上、政策立案などの参考としている。 (5)外交記録公開及び情報公開の促進 外務省は、外交に対する国民の理解と信頼を一層促進するため、外交記録文書の迅速な移管と公開に積極的に取り組むとともに、外交史料利用の利便性向上にも努めている。 外務省では、外交史料館において、戦前の資料4万冊を含む12万点超の歴史資料を所蔵しており、1976年から、自主的な取組として戦後の外交記録を公開している。2010年5月には、「外交記録公開に関する規則」を制定し、①作成から30年以上経過した外交記録を原則公開するとともに、②外務副大臣又は外務大臣政務官が委員長を務め、外部有識者が参加する「外交記録公開推進委員会」を設置することで、外交記録公開の推進力を高め、透明性の向上に努めている。それ以来、2019年末までに移管・公開の手続を完了した外交記録ファイル数は約3万3,000冊に及ぶ。 さらに、外務省は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」に基づいて、日本の安全や他国との信頼関係、対外交渉上の利益、個人情報の保護などに配慮しつつ、情報公開している。2019年には890件の開示請求が寄せられ、22万4,505ページの文書を開示した。 外務省創設150年記念特別展示 ~史料にみる日本外交のあゆみ~ 外務省では、年に1、2回程度、外交史料館別館展示室において、外務省の周年事業や外交史上の重要事件・人物にちなんだ特別展示を開催しています。 展示会ポスター 2019年は、1869年に外務省が創設されてから150年の節目の年に当たることから、この間に結ばれた条約や諸外国との外交交渉の記録などを展示し、150年間の日本外交を振り返る特別展示「日本外交の150年」を開催しました(開催期間:7月2日から10月4日まで)。 展示構成は、大きく二つに分かれ、前半では明治期から1970年代までの日本の外交活動を歴史の流れに沿って紹介しました。そこでは、外務省創設以来の外交課題であった不平等条約改正を大きく前進させた「日英通商航海条約」(1894年)、太平洋戦争直前の日米交渉最終段階で米国のハル国務長官が提示した「ハル・ノート」(1941年)、戦後日本の国際社会への復帰を示す「日本の国際連合加盟に関する決議文」(1956年)や「沖縄返還協定」(1972年)などを展示しました。後半では、先進国・経済大国となった日本が国際社会の一員として現在も取り組んでいる国際的な諸問題やその解決のための国際協調の枠組みを紹介しました。ここでは、サミット議事報告電報(1978年)や日本のODAによる支援を記念して諸外国で発行された紙幣や切手、21世紀の経済外交の新展開を示す「日本・シンガポール経済連携協定」(2002年)や気候変動問題への取組を示す「パリ協定」(2015年)などを展示しました。 日英通商航海条約(批准書) 見学者からは、「150年の外交史を史料とともに学べて良かった」、「学校で学んだ内容を目で見ることでさらに理解が深まった」、「貴重な史料の原本を自分の目で見ることができて良かった」、「新しい令和の時代の日本外交はどうあるべきかを考えた」などの感想を寄せていただきました。 外務省は、創設以来、国際社会の中で日本や日本国民の利益を守るため、様々な外交活動を行ってきました。現在の外交活動はそうした過去の外交活動の積み重ねの上に存在します。日本外交の歴史や現在の外務省の取組の一端を皆様に御紹介した今回の展示が、これからの日本外交や国際社会について考える一つのきっかけになればと期待しています。 外務省では、これからも歴史的に重要な文書の保存管理、利用推進を通じて、日本外交への理解を深めていただけるよう努めていきます。 外交史料館 〒106-0041 東京都港区麻布台1-5-3 開館時間:10時~17時30分(土日・祝日・年末年始を除く。臨時開館あり。詳細はHP参照) https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/index.html