第2章 地球儀を俯瞰する外交 3 南部アフリカ地域 (1)アンゴラ ロウレンソ大統領の就任(2017年)以降、アンゴラ政府は、ドス・サントス前政権関係者の汚職を積極的に摘発し、付加価値税の導入を始めとする財政・金融改革、為替相場制度の見直し、投資環境整備などの経済改革を推進している。また、天然資源に依存した経済構造から脱却すべく、経済の多角化に取り組んでいる。 8月のTICAD7にはロウレンソ大統領が現職大統領として初めて参加し、多数の閣僚を同行させ安倍総理大臣との会談に臨むなど、日本との関係を重視する姿勢が見られた。また10月には、技術協力協定が署名され、アンゴラの社会・経済開発に一層貢献することが期待される。 (2)エスワティニ エスワティニは、国王であるムスワティ3世が行政及び立法において圧倒的な権力を有し、絶対君主制を維持している。議会は諮問機関としての役割にとどまり、政府の要職も王族が占めている。2018年4月19日に、国名を「スワジランド王国」から「エスワティニ王国」に変更することを宣言し、同日発効した。2018年にブルキナファソが台湾と外交関係を断絶して以来、アフリカで唯一台湾との外交関係を有する国となっている。 8月のTICAD7参加のためドラミニ首相が訪日し、また、10月の即位礼正殿の儀参列のためムスワティ3世国王が訪日し、それぞれ安倍総理大臣と会談を行った。また、10月、鈴木外務副大臣は、リヨン(フランス)で行われた世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)第6次増資会合で、ムスワティ3世国王を表敬した。 (3)ジンバブエ 1980年の独立から、2017年まで政権を担ったムガベ前大統領が2019年9月に逝去した。政権交代後、改革に進展がみられない中、干ばつやハリケーンなど自然災害による被害も大きく、同国経済及び国民の生活への影響が懸念される。 日本は、要人往来の機会を捉え、ジンバブエにおける民主主義及び経済開発の推進の重要性を大統領を始め同国政府関係者に直接訴え続けており、ムナンガグワ大統領及び同政権による民主主義の促進及び経済改革の確実な実施が期待される。8月のTICAD7参加のためムナンガグワ大統領を始めモヨ外務国際貿易相など多くの閣僚が訪日し、首脳会談及び外相会談を行った。 (4)ナミビア ナミビアは、豊富な海洋・鉱物資源を有しており、南部アフリカ地域の大西洋側の物流ハブとして、資源開発やエネルギー分野における貿易・投資の拡大が見込まれる。2020年3月にはナミビア独立30周年を迎える。 8月のTICAD7参加のためガインゴブ大統領が訪日し、安倍総理大臣と会談を行った。また、11月には、日本で初めて開催されたラグビーワールドカップ2019にアフリカ代表としてナミビアチームが出場し、スポーツを通じた市民レベルの交流も深められた。 (5)マラウイ 1964年の独立以来、比較的安定した内政を維持する南部アフリカの内陸国であるが、2019年5月の大統領選挙後から人権擁護団体が主催するデモが頻発するなど、流動的な国内情勢が続いている。国際協力機構(JICA)海外協力隊の派遣累計数が1,800人以上と世界最多であるほか、地域ごとの特産品を育てる一村一品運動をアフリカで初めて展開するなど、日本との草の根交流は深い。 8月のTICAD7参加のためチムリレンジ副大統領が訪日し、安倍総理大臣と会談を行った。 (6)南アフリカ 南アフリカは、アフリカで唯一のG20メンバー国であり、アフリカの経済大国として、また、ビジネス展開の拠点として、日本企業を含む外国企業から引き続き注目されている。3回目となる国連安保理非常任理事国を2019年から務めており、国際場裡(じょうり)において存在感を示している。 5月に行われた総選挙の結果、現職のラマポーザ大統領が再任を果たした。同月のラマポーザ大統領就任式には、関芳弘総理特使(経済産業副大臣)が出席し、貿易・投資を中心とする二国間関係の強化を再確認した。 6月のG20大阪サミット及び8月のTICAD7参加のため、ラマポーザ大統領が訪日し、安倍総理大臣と会談を行ったほか、G20大阪サミットに際しては、パンドール国際関係・協力相が河野外務大臣と会談を行うなど良好な二国間関係の進展が確認された。11月には、ラグビーワールドカップ2019の決勝観戦のため、ラマポーザ大統領が訪日し、南アフリカは3度目となる優勝を果たすなど、スポーツ分野での二国間交流も盛んな一年となった。 (7)モザンビーク モザンビークは、ナカラ回廊地域を中心に豊富な天然資源を有しており、2019年には日本企業が同国の天然ガス開発事業に参画すると発表するなど、日本企業から高い関心が示されている。 8月のTICAD7参加のためシサノ元大統領とマレイアーネ経済・財務相が訪日し、安倍総理大臣及び河野外務大臣とそれぞれ会談を行った。また、10月の即位礼正殿の儀参列のためマカモ国民議会議長が訪日し、衆参両院議長らと会談を行うなど、議会間交流も活発である。10月の大統領選挙では現職のニュシ大統領が再選され、与党も絶対多数を獲得した。2020年1月の同大統領就任式には、三原朝彦総理特使(衆議院議員)が出席した。 (8)レソト 国土の大部分が山岳高地であり、南アフリカ共和国に囲まれた内陸国であるレソトは、鉱山や水資源開発などによって経済成長を続けている。また、その自然資源を活用して建設されたカッツェダムのダム湖ではトラウト(にじます)の養殖が行われており、日本への主要な輸出品となっている。 8月のTICAD7参加のためタバネ首相が訪日し、安倍総理大臣と会談を行った。また、10月の即位礼正殿の儀参列のためレツィエ3世国王とマセナテ王妃が訪日し、安倍総理大臣との会談を行った。