第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交 第3節 経済外交 1 経済外交の概観 世界経済が引き続き堅調に推移し、新興国全体の強靱(きょうじん)性が強化されている一方で、一部の新興国経済における、金融上の脆弱(ぜいじゃく)性や地政学上の懸念などの主要なリスクが部分的に顕在化している。そうした中、市場の不安を払拭し、自由で公正な経済秩序を発展させるため、引き続き市場の動向を監視するとともに、強固かつ持続可能で、バランスの取れた包摂的な成長を支える必要がある。日本は、世界第2位の先進経済大国、G7、G20のメンバー国として、この動きに貢献していく。 日本の繁栄の基礎は、自由で開かれた国際経済システムの維持・強化にあり、また、これは世界経済の安定と成長にもつながる。このことを念頭に、日本は日・EU経済連携協定(日EU・EPA)、環太平洋パートナーシップ協定(TPP12協定)、東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)を推進してきた。その結果として、12月30日に環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)が発効し、日EU・EPAも2019年2月1日に発効を迎え、2018年は、まさしくこれまで日本が行ってきた努力が徐々に結実してきた一年とも言える。これらの協定を着実に実施するとともに、RCEP等について、包括的で、バランスのとれた、質の高い協定の妥結を目指して交渉を進めていく。 日本は、①上記のような種々の経済協定の推進といった自由で開かれた国際経済システムを強化するためのルール・メイキング、②官民連携の推進による日本企業の海外展開支援及び③資源外交とインバウンドの促進の三つの側面を軸に、日本外交の重点分野の一つである経済外交の推進を更に加速するべく、取組を進めてきた。