令和元年版外交青書(外交青書2019)巻頭言 現在、世界情勢は大きな変動期にあります。経済のグローバル化は世界に更なる成長の機会を生み出す一方、社会的・経済的格差の増大や移民問題等により、これまで自由経済の恩恵を受けていた国々でも保護主義や内向き傾向が顕著となっています。さらに、力を背景とした一方的な現状変更の試みやテロ及び暴力的過激主義の拡大により、日本を含む世界の平和と繁栄を支えていた自由、民主主義、基本的人権、法の支配、国際法の尊重といった基本的価値に基づく国際秩序が挑戦を受けています。日本はルールに基づく国際秩序を守り、更に強化していくため、一層積極的な役割を果たしていかなければなりません。 こうした認識に基づき、以下の六つの重点分野を引き続き外交政策の中心に据えてまいります。一つ目は、日米同盟の強化及び同盟国・友好国のネットワーク化の推進、二つ目は日本周辺の安全保障環境を踏まえた上での近隣諸国等との関係の強化、三つ目は自由貿易の促進、四つ目は地球規模課題の解決への貢献、五つ目は対中東外交の強化、六つ目は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組の推進です。 そして、これらに限らず、サイバー外交、自律型致死兵器システム(LAWS)など先端技術を用いた兵器に関する議論、国際連帯税を含む、地球規模課題の解決のための革新的資金調達の方法等、取り組むべき課題は山積しています。日本は軍事力を背景とした外交を行うことはありません。日本の外交の大きな柱であるODAがピークからほぼ半減している中、知恵と工夫による「裸の外交力」が試されています。 令和元年版外交青書(外交青書2019)は、これらの取組を含め2018年の国際情勢及び日本が行ってきた外交活動の概観を記録するものです。具体的には、第1章で日本を取り巻く国際情勢と日本外交の展開について概観し、第2章では地球儀を俯瞰(ふかん)する外交、第3章で国益と世界全体の利益を増進する外交について、それぞれ2018年の重要な出来事を説明しています。また、第4章の国民と共にある外交では、世界とのつながりを深める日本社会や日本人を後押しする外務省の取組や海外における日本人への支援、外交活動を支える足腰を強固にするための外交実施体制の強化について説明します。さらに、読者の皆様に外交をより身近に感じていただけるよう、多くの写真を使った巻頭特集を新たに設けました。また、巻末には国際機関を志す皆様のための参考情報を掲載しております。 この外交青書の刊行が、国民の皆様にとって日本外交に対する理解を深める一助となるとともに、世界の平和と繁栄に積極的に貢献する日本の姿を内外に広く発信する機会となることを期待しています。 外務大臣