第4章 国民と共にある外交 各論 1 外国人の活力を日本の成長につなげる取組 (1)成長戦略とビザ(査証)緩和 2017年の訪日外国人は約2,869万人に達し、過去最高を記録した。訪日外国人数について、日本政府は、2016年3月末の「明日の日本を支える観光ビジョン」の中で、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人という新たな目標を設定した。このビジョンでは、訪日に際してビザが必要な国・地域のうち、観光客誘致の潜在的に大きな市場である中国、ロシア、インド、フィリピン及びベトナムの5か国に対し戦略的にビザ緩和を実施していくことが示された。これらを踏まえ、外務省は2017年もこの5か国を中心に、また、それ以外の国についても、人的交流の促進や二国間関係の強化等の観点から戦略的にビザ緩和を検討・実施した。具体的には、1月1日にロシア向けに観光目的等のための数次ビザの導入、2月1日にインド向けに学生等のビザ申請手続の簡素化及びビザ申請窓口の拡大、5月8日に中国向けに観光目的の一次及び数次ビザの緩和、7月1日にアラブ首長国連邦向けに旅券の事前登録制によるビザ免除、その他CIS諸国(アゼルバイジャン、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ベラルーシ及びモルドバ)及びジョージア向けに商用数次ビザの緩和等を実施した。このほか、ハンガリー、スペイン及びアルゼンチンとの間でワーキング・ホリデー制度を開始した。 ビザ発給数と訪日外国人数の推移 このようなビザ緩和は、人的交流の促進や日本経済の成長に一定の効果が見込まれ、その一層の拡大が期待されている。一方、犯罪者や不法就労を目的とする者、又は人身取引の被害者となり得る者等の入国を未然に防止するため、水際対策の一環としてビザ審査の厳格化も行っている。外務省としては、「世界一安全な日本」を維持しつつ訪日外国人を増やすとともに、富裕層、リピーター及び若年層の誘致等、質量両面で観光立国に貢献していくことを目指し、二国間関係、外交上の意義などを総合的に勘案し、今後もビザの緩和に積極的に取り組んでいくこととしている。 (2)外国人受入れ・社会統合をめぐる取組 2008年のリーマン・ショックを契機に、日本に長期滞在する外国人の数は減少傾向にあったが、2012年を境に増加傾向に転じている。少子高齢化や人口減少が進行しつつある中、日本経済の更なる活性化を図り、競争力を高めていくためには、有能な人材を国内外問わず確保することが重要である。「『未来投資戦略』2017」では外国人材の活用が掲げられており、今後、日本に滞在する有能な外国人がますます増えていくことが期待される。 在留外国人数の推移と日本の総人口に占める割合の推移 外務省は、こうした一連の施策が外国人の人権面にも配慮した効果的なものとなるよう、関係省庁と協力している。また、外務省は、「外国人の受入れと社会統合のための国際ワークショップ」を開催し、具体的課題や取組について国民参加型の議論の活性化に努めている。3月に開催した同ワークショップ(外務省と国際移住機関(IOM)の共催)では、「多文化共生社会に向けて~外国人女性の生活と活躍を中心に」をテーマに、外国人女性がどのように生活し、日本社会の中で活躍できるかについて議論を行った。 外国人の受入れと社会統合のための国際ワークショップ(3月1日、 東京) 6月には、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催などを視野において、災害時における情報連絡体制、在京大使館等との連携強化を一層図っていくため、東京都と共催で、在京大使館等向け防災施策説明会を実施した。