第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交 各論 1 開発協力(ODA等) (1)ODAの現状 ア 2017年度開発協力重点方針 開発協力は、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保により一層積極的に貢献し、日本の外交政策を推進していく上で、最も重要な手段の一つである。開発協力大綱に基づくとともに「自由で開かれたインド太平洋戦略」等の外交政策や「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」等の方針も踏まえつつ、戦略的かつ効果的な開発協力を推進するため、外務省は以下(ア)から(ウ)までを2017年度の重点と位置付け、様々な主体との連携の強化を図りつつ取り組んでいくこととしている。 (ア)国際社会の平和・安定・繁栄のための環境整備及び普遍的価値の共有 「自由で開かれたインド太平洋戦略」の下、アジアとアフリカの連結性を向上させ、地域全体の安定と繁栄を促進するとともに、開発途上国によるテロ対策・治安状況の改善への協力等を通じて、海外で活躍する日本人の安全を確保する。「平和の持続」の考え方を踏まえ、人道支援と開発協力の連携を強化しつつ、平和構築、難民等の支援、暴力的過激主義対策等の協力を通じ、国際社会の平和と安定の実現に積極的に貢献する。また、法の支配などの普遍的価値を共有する国の取組を支え、海上保安能力の強化や法制度整備等の分野で協力を行う。 (イ)SDGs達成に向けたグローバルな課題への対処と「人間の安全保障」の推進 国際社会全体として取り組む目標であるSDGsの達成に向けた協力を戦略的に実施する。特に、国家戦略や計画の策定を支援するとともに、開発政策の立案・実施に携わる人材の育成を支援する。保健、女性(ジェンダー)、教育、防災・津波対策、気候変動・地球環境問題等の分野での協力を推進する。 (ウ)開発途上国と共に「質の高い成長」を目指す経済外交・地方創生への貢献 開発途上国の「質の高い成長」の実現に向けた協力を行い、その協力を通じて、開発途上国と共に日本も成長し、日本の地域活性化にも貢献する。特に、地方自治体や中小企業等の海外展開の支援や対外直接投資の環境整備を行うとともに、日本方式の普及を含め「質の高いインフラ」の展開を一層推進する。また、開発途上国の産業人材育成を支援するとともに、新規施策を通じ、日本の国内産業のイノベーションも促進する。 上記重点(ア)から(ウ)に取り組むに当たっては、二国間協力及び国際機関を通じた協力を有機的に連携させるとともに、日本の民間企業、地方自治体、大学・研究機関、非政府組織(NGO)・市民社会組織(CSO)等の参画を得た「日本の顔の見える協力」を推進する。また、開発途上国を支援することへの国民の理解を深めるための国内広報に努めるとともに、開発協力を通して、日本の魅力や取組を積極的に対外発信する。加えて、国際協力事業関係者の安全対策を強化する。 イ 国際協力事業関係者の安全対策 2016年7月にバングラデシュの首都ダッカで発生した襲撃テロ事件では、ODAに携わっていた7人の日本人の尊い命が奪われ、1人の日本人が負傷した。政府は、テロに屈することなく、開発途上国を支援し続けていく決意であるが、その一方で国際テロ情勢は厳しさを増している。現地で国際協力に携わる日本人の安全を確保すべく、改めて万全の態勢を構築することが不可欠となっている。 このような問題意識に立って、外務大臣の下に「国際協力事業安全対策会議」を発足させ、多くの関係省庁の参加も得た5回の会合を経て、2016年8月末に国際協力事業関係者のための新たな安全対策を策定した最終報告を公表した。最終報告では、①脅威情報の収集・分析・共有の強化、②事業関係者及びNGOの行動規範、③ハード・ソフト両面の防護措置、研修・訓練の強化、④危機発生後の対応及び⑤外務省・国際協力機構(JICA)の危機管理意識の向上・態勢の在り方の五つの柱に沿って、外務省及びJICAが関係者と連携して取り組むべき安全対策を示した。 引き続き新たな安全対策を着実に実施し、国際協力事業関係者の安全を確保しながら、日本は責任ある大国として国際社会の平和と安定及び繁栄に積極的に貢献していく。 (2)日本の開発協力実績と主な地域への取組 ア 日本のODA実績 2016年の日本のODA3実績は、支出総額ベースで対前年比11.8%増の約168億1,000万米ドルとなった。これは経済協力開発機構・開発援助委員会(OECD/DAC)加盟国中では、米国、ドイツ及び英国に次いで第4位である。また、国際比較において通常用いられている支出純額ベースでは対前年比13.2%増の約104億2,000万米ドルとなり、総額と同じく米国、ドイツ及び英国に次ぐ第4位である。なお、支出純額ベースでの対国民総所得(GNI)比は0.20%となり、DAC加盟国中第20位となっている。 イ 主な地域への取組 (ア)東南・南西アジア 東南アジア地域の平和と安定及び繁栄は、同地域と密接な関係にある日本にとって重要である。日本はこれまで、開発協力を通じ、同地域の経済成長や「人間の安全保障」を促進することで、貧困削減を含む様々な開発課題の解決を後押しし、同地域の発展に貢献してきた。 2016年の二国間ODA総額に占めるアジア地域の割合は52.3%に上り、その多くが東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国向け支援である。日本は、ASEANが抱える課題の克服や統合の一層の推進に向けた努力を支援するとともに、域内連結性強化や産業基盤整備のための質の高いインフラ整備及び産業人材育成支援を重視している。例えば、2015年11月の日・ASEAN首脳会議(マレーシア)で発表した、3年間で4万人の産業人材の育成を行う「産業人材育成協力イニシアティブ」の下、2017年3月までにASEANで熟練技術者、エンジニア、研究開発人材等3万人を超える人材育成を既に達成している。さらに、自由で開かれた国際秩序を構築するため、日本のシーレーン上に位置し、地域安全保障上重要な同地域へは、巡視船艇や関連機材等の供与、人材育成等、ODAによる海上保安分野での支援を重視している。2017年11月の東アジア首脳会議(EAS)(フィリピン)では、「テロに屈しない強靱なアジア」に向けて、現下の状況を踏まえ、フィリピン南部及びスールー・セレベス海の治安改善のため包括的なアプローチによって2年間で150億円規模の支援を着実に実施することを表明した。そのほか、域内及び国内格差是正のための支援や防災、環境・気候変動、エネルギー分野等、持続可能な社会の構築のための支援についても着実に実施している。 ミャンマー・ティラワ経済特別区(SEZ)の開業式。日本はSEZ運営会社への出資、周辺インフラ整備、関連法制度整備、行政機関運営、環境社会配慮等、多面的にSEZを支援(8月14日、ミャンマー 写真提供:MJTD社) メコン地域においては、2016年7月の日・メコン外相会議(ラオス)で新たに立ち上げた「日メコン連結性イニシアティブ」の下、域内の更なるインフラ整備、制度改善や周辺開発等を通じ、物理的連結性に加え、制度的・人的連結性の強化も含む「生きた連結性」の実現に向けた取組が進展している。また、2015年に3年間で7,500億円のODAによる支援を発表したが、2017年11月に開催された第9回日メコン首脳会議(フィリピン)では、そのうち既に3分の2以上が既に実施されたことを発表した。 日本は、こうした支援を通じて、2015年12月に設立されたASEAN共同体の強化を後押ししていく。 南西アジア地域は、東アジア地域と中東地域を結ぶ海上交通の要衝として戦略的に重要であるとともに、インドを始め大きな経済的潜在力を有する国があり、輸出先・投資先として日本企業の関心が高まっている。一方、同地域は、依然としてインフラの未整備や貧困などの課題を抱えており、日本は、日本企業の投資環境整備や「人間の安全保障」も念頭に、ODAを通じ、課題の克服に向けた様々な支援を行っている。 インドに関しては、9月に安倍総理大臣が訪印した際に、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道整備計画の起工式典及び円借款供与のための書簡の交換が行われたほか、両首脳間で日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」とインドの「アクトイースト政策」の連携の下、地域連結性の向上やインド北東部の開発での日印協力を進めていくことに合意した。 インドでの高速鉄道起工式典に出席する安倍総理大臣とモディ首相(9月14日、インド・アーメダバード 写真提供:内閣広報室) スリランカに関しては、4月のウィクラマシンハ首相訪日の際に行われた首脳会談で、安倍総理大臣から、インド洋のハブとして同国の発展を全力で後押しすべく、「質の高いインフラ」を通じ、港湾や交通、エネルギー等のインフラ開発を進め、連結性の向上や国家開発を支援していくことを表明するとともに、上水道整備及び紛争影響地域等での基礎インフラ整備に係る円借款等の供与を決定した。 (イ)中央アジア 中央アジア・コーカサス地域は、ロシア、中国、南アジア、中東及び欧州に囲まれている地政学的に重要な地域であり、その安定と発展は、日本を含むユーラシア地域全体の安定と発展でも重要である。日本は、中央アジアの「開かれ、安定し、自立した」発展を支え、地域・国際の平和と安定に寄与する日本外交を掲げ、アフガニスタンやパキスタンなど近接地域を含む広域的な視点も踏まえつつ、この地域の長期的な安定と持続的発展のため、人権、民主主義、市場経済、法の支配といった普遍的価値が根付くよう国造りを支援している。 5月、トルクメニスタンで開催された「中央アジア+日本」対話・第6回外相会合共同声明の発出に際して、運輸・物流分野のこれまでの協力と今後の協力の方向性を打ち出した「運輸・物流協力イニシアティブ」を発表した。本イニシアティブに基づき、今後、道路改善・防災対策による輸送力と安全性の向上が期待される。このほか、民主化を進めるキルギスに対して供与した選挙関連機材が、2015年の議会選挙や2017年の大統領選挙で有効に活用された結果、選挙が大きな混乱もなく平和的に実施されるなど民主主義の定着にも貢献している。 (ウ)中南米 中南米は、日本と長年にわたる友好関係を有し、約210万人の日系人が在住するなど、歴史的なつながりが深い。また、資源・食料の一大供給地域であると同時に、約5兆米ドルの域内総生産を有する有望な新興市場である。一方で、国内における所得格差や農村・山岳部の貧困などの問題を抱えている国が少なくないため、日本は、各国の特殊性も勘案した上で、様々な協力を行っている。 また、中南米は、自然災害に対する脆弱性(ぜいじゃくせい)が高く、その克服のための取組が課題となっている。本年は、大地震に見舞われたメキシコへの国際緊急援助隊の派遣や、ハリケーンにより甚大な被害を受けたカリブ諸国への緊急援助物資の供与等を行った。 メキシコ地震で捜索・救助活動に従事する国際緊急援助隊・救助チーム(写真提供:JICA) 防災分野は引き続き対中南米協力の重要分野であり、災害時に役立てられる機材の供与や「中米広域防災能力向上プロジェクト“BOSAI”」を始めとする災害対応能力強化のための技術協力を継続的に実施している。加えて、減災対策の観点から、ボリビア、ホンジュラス、ハイチ、セントルシア等における無償資金協力を通じた災害に強靱(きょうじん)なインフラ整備を行っている。環境・気候変動分野では、ドル建て借款の第1号案件として、ジャマイカにおける省エネルギー推進への協力を決定した。 中南米では、各国が抱える開発課題に即した協力が重要である。2016年の安倍総理大臣の訪問時に本格的な無償資金協力の開始を表明したキューバに対しては、同国の優先課題である農業分野に対して新たな協力を行ってきている。また、2016年に和平合意に達したコロンビアに対しては、地雷除去のための無償資金協力を決定した。 (エ)中東 地政学的要衝にあり、エネルギー安全保障上も重要である中東・北アフリカ地域の平和と安定の確保は、日本のみならず世界の安定においても重要である。こうした観点から日本は、同地域の平和と安定に向け積極的に支援してきた。 日本は、2016年5月のG7伊勢志摩サミットの機会に、「中庸が最善」という考えの下、暴力的過激主義の拡大を阻止し「寛容で安定した社会」を中東に構築するため、3年間で、約2万人の人材育成を含む総額約60億米ドルの支援の実施を表明した。また、将来のシリア復興を担う人材育成の観点から、5年間で最大150人のシリア人留学生を受け入れることを発表した。2017年には、これらを着実に実施した。 9月に河野外務大臣が中東諸国を訪問した際にカイロ(エジプト)で行われた第1回日・アラブ政治対話では、①知的・人的貢献、②「人」への投資、③息の長い取組及び④政治的取組の強化、という「河野四箇条」の下、(A)「平和と繁栄の回廊」構想のグレードアップ、(B)シナイ半島駐留多国籍軍監視団(MFO)への更なる貢献、(C)教育・人材育成分野での協力拡大、(D)政治的取組の強化及び(E)難民、人道・安定化に関する新たな支援、の五つの新たなイニシアティブを表明した。その中で、シリア・イラク及びその周辺国支援の人道危機に対し、地域の更なる不安定化を防ぐため、新たに約2,500万米ドル規模の支援を発表した。また、「人」への投資につき、河野外務大臣はエジプトで、「エジプト・日本教育パートナーシップ」に基づく教育分野での協力を進展させ、エジプト政府が進める日本式教育のための円借款及びエジプト・日本科学技術大学(E-JUST)での教育・研究機材供与のための無償資金協力を実施する方針を伝えた。 エジプト日本科学技術大学(E-JUST)で、学生指導を行う日本人専門家(写真提供:JICA) 12月には、河野外務大臣は、第13回マナーマ対話に出席し、「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」等との戦いの影響を受けた国々での支援を継続するとして、シリア国内及び周辺国について新たに約2,100万米ドルの人道支援の実施を発表した。これにより、2017年におけるシリア国内で支援を必要とする全てのシリアの人々に対する支援は1億米ドルを超え、同年のシリア・イラク及びその周辺国支援は、総額3億2,000万米ドルに達している。 また、同月、河野外務大臣は中東諸国を歴訪し、パレスチナでジェリコ農産加工団地(JAIP)のフェーズ2キックオフを記念する式典でスピーチを行い、「平和と繁栄の回廊」構想のグレードアップを宣言した。ICT分野や物流円滑化等への支援に取り組んでいくとともに、約4,000万米ドルの新たなパレスチナ支援を実施していく考えを明らかにした。 (オ)アフリカ アフリカは、豊富な天然資源と急増する人口を背景に高い経済成長を遂げ、潜在的市場として国際社会の注目と期待を集めている。日本は、1993年以来、アフリカ開発会議(TICAD)プロセスを通じて、アフリカ諸国及び支援国・組織と共にアフリカの開発課題に取り組み、その経済成長の実現に向け支援してきた。TICADプロセスは、日・アフリカ関係を一層強化するものであり、アフリカ諸国の自主性を尊重しアフリカの更なる発展を議論する場として、アフリカ諸国から高く評価されている。2016年8月には、ケニア・ナイロビで、アフリカで初めてとなるTICAD Ⅵが開催され、①経済の多角化・産業化、②強靱(きょうじん)な保健システム促進及び③社会の安定化の三つの優先分野を柱とする「ナイロビ宣言」が採択された。同会議で共同議長を務めた安倍総理大臣は、基調演説の中で、2016年から2018年までの3年間に、日本の強みである質の高さをいかした約1,000万人の人材育成を始め、ナイロビ宣言の三つの優先分野に沿って、官民総額300億米ドル規模のアフリカの未来への投資を行うことを表明し、2017年はこれらを着実に実施した。8月には、モザンビークの首都マプトにおいて、TICAD閣僚会合が開催された。共同議長として出席した河野外務大臣は、TICADⅤ及びTICADⅥでのコミットメントに沿った日本の取組の進捗を発表した。 また、要人往来の機会も活用して、TICADプロセスの取組を推進しており、12月のラジャオナリマンピアニナ・マダガスカル大統領訪日の際には、TICADⅥの優先分野である食料安全保障や安全な水について、また、同月のサル・セネガル大統領の訪日の際には、保健、インフラ分野及び食料安全保障について、それぞれ協力強化に合意した。 2019年に横浜で開催予定のTICAD7に向けて、日本は今後も、民間投資を巻き込んだ経済成長、開発、社会的安定促進等の分野で、日本の強みをいかした支援を着実に実行するとともに、日本とアフリカ諸国との互恵的関係を構築し、官民が連携してアフリカの「質の高い成長」実現に貢献していく。 (3)適正かつ効果的なODA実施のための取組 ア 適正なODA実施のための取組 ODAの実施では、各段階で外部の意見を聴取し、その意見を踏まえた形で案件を形成することにより、透明性の向上に努めている。ODA実施の事前調査の段階では、公開する形で、開発協力適正会議を開催し、外部の有識者との間で検討を行った上で調査の要否を決定している。さらに、案件の実施後には、JICAは2億円以上の全ての案件について事後評価の結果をホームページ上で公表しており、10億円以上の案件については第三者による事後評価も行っている。また、外務省が実施する無償資金協力についても、2億円以上の案件については内部評価を実施の上、その結果を公表し、10億円以上の案件については第三者による評価を行う事後評価制度を2017年度から導入した。こうした事後評価で指摘された事項は、次のODAの案件形成にいかしている。 イ 効果的なODA実施のための取組 ODAは、相手国のニーズや案件の規模に応じて、無償資金協力、有償資金協力及び技術協力という三つの枠組みにより実施されているが、限られた予算を効率的に活用し、高い開発効果を実現するため、外務省及びJICAは相手国のニーズを踏まえて、国ごとに協力の重点分野を設定し、各枠組みの垣根を越えてそれらの分野に資する案件を形成している。例えば、ミャンマーではGDPの約3割を農業セクターが占めているため、農業の開発は国民の生活を向上させる上で、極めて重要である。そのような観点から、日本は、技術協力として、優良種子の増殖普及を行う体制を広めるため、2017年10月から専門家を派遣している。また、11月にはミャンマーの農家の所得向上を図るため、灌漑(かんがい)施設の改修や農村道路・橋の改修、約2,000ヘクタールに及ぶ田畑の整備、種子センターの開設等に円借款で融資することを決定した。このように複数の支援スキームを組み合わせて農作物のバリューチェーン全体の効率化を図る取組を実施している。 また、日本は効果的なODA実施に関する国際的な枠組み作りにも貢献している。国際社会が一丸となって開発途上国への開発協力の効果向上に取り組むことを目的に、先進国や開発途上国のみならず市民社会や民間セクターなど様々な開発主体が参加する枠組みとして「効果的な開発協力に関するグローバル・パートナーシップ(GPEDC)」があり、日本は2015年9月から同パートナーシップの運営委員を務めている。2016年11月に開催されたGPEDC第2回ハイレベル会合やその他の関連フォーラムで、日本は質の高いインフラ投資や三角協力などの効果的な開発協力の取組を発信し、他の参加者から、こうした日本の取組を評価する声が挙がった。 主要国におけるODA実績の推移 ウ 開発協力情報公開の推進と質の向上に向けた取組 開発協力の実施に当たっては国民の理解と支持が不可欠であり、このため効果的な情報の発信と開発協力の質の向上を通じて国民の理解促進に努めている。具体的には、東京のお台場で開催した日本最大級の国際協力イベント「グローバルフェスタJAPAN2017」(9月30日及び10月1日)や、大阪市で開催した「ワン・ワールド・フェスティバル」(2月)等の国民参加型イベントのみならず、テレビ広報番組(特別番組「宇宙船オリエンタルの地球スマイル探査隊」及びミニ番組「MA-SAの発見★スマイルアース」)を放映し、開発途上国の現場取材に基づき、日本が世界各地で行っている国際協力活動の具体例や日本にとっての開発協力の意義等を分かりやすく紹介するなど、幅広い層の人々に届くことを目指す広報を実施した。また、引き続きODAホームページを通じた開発協力に関する情報発信にも取り組んでいる。さらに、開発協力大綱では海外広報にも積極的に取り組むとしたことを踏まえ、現地の報道機関による日本の開発協力の現場視察を企画し、現地の報道でも日本の協力が取り上げられる機会を作るよう努めるとともに、英語や現地語による広報資料の作成も行ってきている。 ODAの質を高めるためには、ODAを評価し、評価結果から得られた提言や教訓を次の政策立案や事業実施にいかしていく必要がある。外務省は、主に外部有識者による政策・プログラムレベルの評価を実施しており、その評価結果を関係者間で共有し、活用している。また、JICAは、事業の透明性を高める観点から、JICA事業についてJICAホームページ上の「ODA 見える化サイト」で、案件の現状や成果などを公表している。同サイトには、2017年12月末時点で、合計3,957件の案件が掲載されている。 3 日本のODAの主な形態としては、二国間の資金贈与である無償資金協力、開発途上地域の開発のための貸付けである有償資金協力、技術協力、国際機関への拠出・出資等があるが、このうち一番大きな額を占めるのが有償資金協力である。有償資金協力による貸付けは通常、金利と共に返済が行われている。